| いつもお世話になっております。 丘のうえの小さな写真館の山下正樹と申します。
まず、『月光の修道院』にお目をおかけくださいましてありがとうございます。 感謝申し上げます。
これについて下記にご説明申し上げます。 少し長くなりますが、お付き合いき出さいませ。
まず、この写真は2020年6月6日 午後8時8分に撮影しました。 焦点距離126mm、f2.8、感度2000、1.3秒露出です。
これをベースにしてお話します。 まず、月は太陽の光を反射して輝いています。 なので、基本的には太陽と同じ光と思っていただいてかまいません。 少し詳しく言うと、大雑把に月表面は海とそれ以外のように、 反射率の違う場所もありますが、おおむね太陽光と同じと考えていいと思います。
次に、夕陽が赤くなる原理は、 夕陽、太陽が水平線近くになると、空気の層が分厚くなるので 波長の短い光は途中で散乱してしまい、其の結果、相対的に分厚い空気層を通過できる「波長の長い光」が増え、 我々の目には波長の長い光の割合が昼間よりも増えます。 光は、波長が長いほど、それを色で見ると、赤っぽい色になるので、 夕陽の色は赤くなります。
そういうわけで、基本、月光は同じく太陽の光と同じなので、 月の場合も、こうして綺麗なオレンジ色になることがあります。
この夜も、そんなに透明度が低いとは思いませんでしたが、 空気中に光を散乱させる水滴などが多かったのでしょう、 このように、弱い月の光であっても、実に美しいオレンジ色になるわけです。 ただ、焦点距離が126mmであることから人間の目よりも拡大率が高いので その印象は強いと思います。 また、感度2000、f2.8、露出1.3秒なので、 多少、人間の目よりは感光性は高いかもしれませんが、 満月であることもあって 現代の我々が普段扱っている全暗黒の星明りなどと比べれば極めて明るいもので、 倍率1倍の人間の目で見ても、同じ程度の感動を得られるものと思います。
そうした状況に加え、 眼前にあるのは、トラピスト修道院で、 この満月の出と共に、打ち鳴らされる修道院の礼拝の鐘の音が この撮影場所であるルルド洞窟(マリア様の像があります)にいる者全ての心を やさしく打ちます。
僕たちは、このルルド洞窟から見る修道院をとても気に入っていて 特に、満月の軌道が最も南になる夏至の頃に もう3度も出かけていって、礼拝の鐘の音色を聞きながら 満月の出を眺めさせてもらっております。
修道院の背後には、津軽海峡が横たわり、 満月が出ないような真っ暗な夜には 月にかわって、銀河、天の川が昇ってきます。 大宇宙そのもで、その中で神様への祈りの鐘が高らかになります。 感動的です!
そして、瀬戸内海生まれの僕の個人的な好みですが、 貨物船がディーゼルエンジンの音色をリズミックに響かせながら 真っ暗な海峡を行き来するのもまた、銀河や月出と共に感動的です。 宇宙に我々がやさしく見守られているという感じ!
また、このトラピスト修道院は灯台の聖母マリアの修道院で、 修道院の海峡側の葛登支岬(かっとしみさき)にある灯台に縁があります。 この灯台はフランス製の第三等弧状不動十二面フレネルレンズという魅惑的なレンズを採用した灯台で この特殊な光り方は、一度見ると、忘れ得ぬ美しさを垣間見せてくれます。 光質も例えば、現在の他の灯台、例えば恵山岬灯台に比べれば見劣りしますが それでも、感動できます。
そうした海峡の彼方にある陸地は青森県、下北半島 大間崎です。 津軽海峡冬景色 という有名な歌で知られますが、 冬じゃなくても、津軽海峡はなかなかしんみりします。
話はそれましたが、 最後に 月光の修道院に、お目をおかけくださいまして、本当にありがとうございました。 これを機に、鈴木様の豊かな感性の飛躍のための一助になればと思い 長々と書き記してきました。お忙しいところ、申し訳ございません。
明日からも今年一番の冷え込み、寒気の南下と聞いています。 冷えてきましたので、どうかお体を大事にご健勝の上で 素晴らしい絵を一枚でも多く描かれることを心から祈っております。
この度は気にかけてくださいまして、本当にありがとうございました。
丘のうえの小さな写真館 山下正樹 |
No.1095 - 2021/10/17(Sun) 20:01:50 |