みなさん、こんばんは。 アキ・カウリスマキの『街のあかり』(2006)のレヴューでイアン・ジョンストンは、この映画をメルヴィルの『仁義』やブレッソンの『スリ』と比べています。 http://www.brightlightsfilm.com/57/lights.html 実は『街のあかり』は未見なのですが、アキ・カウリスマキの『コントラクト・キラー』(90)は、寡黙さやブルーがかった灰色のトーンがメルヴィル調だったという記憶があります。ジャン=ピエール・レオー主演のコミカルな犯罪劇ですが、セルジュ・レジャーニが最後に出てきます。 『コントラクト・キラー』は、ロンドンを舞台にした、カウリスマキ唯一の英語映画ですが、英国のイーリング・コメディ(『マダムと泥棒』や昨年ついに国内盤DVDの出たものの早くも廃盤で再発が待たれる『ラベンダー・ヒル・モブ』のエッフェル塔の模型)、1950年の日本未公開のアレック・ギネス主演作『Last Holiday』、ジャン=ピエール・メルヴィルなどへのオマージュともいわれます。 『ラヴェンダー・ヒル・モブ』冒頭のオードリー・ヘプバーン登場場面(無字幕) http://jp.youtube.com/watch?v=9mM5Du6rhSQ DVD『トータル・カウリスマキ4』(『ラヴィ・ド・ボエーム』『コントラクト・キラー』の2本を収録)が出ていましたが廃盤で高値が付いているようです。レンタルがありますが。 http://www.uplink.co.jp/dvd/uld/uld071.html
『コントラクト・キラー』のジョー・ストラマーが、"Burning Lights"を歌う場面。壁にエルヴィス・プレスリーの写真。ジャン=ピエール・レオーにサングラスを売る男はアキ・カウリスマキ。 http://jp.youtube.com/watch?v=2I9KXRr3VhI
Some dreams are made for children But most grow old with us And when the air can hope to hold on And to the ground from dust to rust.
Burning lights in the desert Such a sign only you would know Your running tyres, they're out of pressure Such a sign only you would know
And I've been a long haul driver Moving things but the cops don't know Now I can see the writing You are the last of the buffalo
Burning lights in the desert Such a sign only you would know Your running tyres, they're out of pressure Such a sign only you would know.
Now I've been to California And I've been to New South Wales Sometimes I, I pull over When I realise I've left no trace
Burning lights in the desert Such a sign only you would know Your running tyres, they're out of pressure Such a sign only you would know.
ところでジャン=ピエール・レオーの最新作は、セルジュ・ル・ペロン監督の、しばしばメルヴィル風とも言われる実録ノワール『私はベン・バルカ殺害を目撃した J'ai vu tuer Ben Barka 』(2005)です。 1966年に実際にパリで起きたモロッコの左翼活動家メフディ・ベン・バルカ(20−65)拉致殺害事件(未だに真相不明)を映画化しています。 この事件への言及はレオーやマリアンヌ・フェイスフルやフィリップ・ラブロも出ているゴダールの『メイド・イン・USA』(66)にもあります。 ジャン=パトリック・マンシェットの長編小説『ヌ・ギュストロ事件 L’Affaire N’Gustro』(71。邦訳なし)もこの事件を下敷きにしているようです。 レオーは実在の映画監督ジョルジュ・フランジュに扮しています。映画製作者役はシャルル・ベルリング。作家マルグリット・デュラス役は女優・作家・監督のジョジアーヌ・バラスコ。 セルジュ・ル・ペロン(48年生まれ)は68年世代の左翼映画作家で、1975年にパレスチナについての記録映画『L'Olivier』を撮り、1984年にパリ郊外(バンリュー)を描く、ジャン=ピエール・カルフォン主演の劇映画『Laisse beton』を監督。「カイエ・デュ・シネマ」の編集委員も務めました。ジャン=ピエール・レオー、イレーヌ・ジャコブ主演『L'Affaire Marcorelle』(2000)を監督。レオーについての記録映画『Leaud l'unique』(2001)も演出しています。 『私はベン・バルカ殺害を目撃した』予告編と2抜粋(無字幕) http://www.allocine.fr/video/player_gen_cmedia=18402951&cfilm=59231.html 『私はベン・バルカ殺害を目撃した』のDVDは英国Artificial Eyeから2007年に出ています。 http://www.dvdtimes.co.uk/content.php?contentid=64157 イヴ・ボワッセの代表作ともいわれる『影の暗殺者/フランスの陰謀 L'Attentat』(ビデオ題。72)もベン・バルカ事件を踏まえた映画です。出演者は、ジャン=ルイ・トランティニャン、ミシェル・ピコリ、シーン・シバーグ、ジャン・マリア・ヴォロンテ、ミシェル・ブケ、ブリュノ・クレメールなど。フィリップ・ノワレ、フランソワ・ペリエ、先ごろ亡くなったロイ・シャイダーも出ています。 検閲のため人物名は変えられていますが、ベン・バルカにあたるサディエル役はヴォロンテです。 脚本は赤狩り脚本家のベン・バーズマン、バーズマンと『ローマ帝国の滅亡』(64)で組んだシチリア出身のバジリオ・フランキーナ、『戦争は終わった』(66)、『Z』(69)、『告白』(70)、『薔薇のスタビスキー』(74)のホルヘ・センプルン。 撮影はラウル・ルイスの『見出された時-「失われた時を求めて」より-』(99)、『クリムト』(06)のリカルド・アロノヴィッチ。音楽はエンニオ・モリコーネ。未見ですが一度見てみたいです。 『影の暗殺者/フランスの陰謀』抜粋(無字幕) http://jp.youtube.com/watch?v=nJBnR6hAExM |
No.1033 - 2008/04/13(Sun) 01:47:44
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