東京事変5枚目のアルバム「大発見」(2011年6月29日発売)を聴きました。初回生産分のみ大発見スリーブケース仕様。ローソンで購入すると、ローソン限定特典として、オリジナル・ステッカーシート(ハガキサイズ)が添付されました。7月11日付のオリコンアルバムチャートで1位を獲得しました。
ジャケットデザインは、東京事変の孔雀マークが砂に埋もれています。アルバムタイトル「大発見」にちなんで、発見されたという意味が込められているのでしょう。CDの表面も砂色です。
13曲+Bonus Track1曲の全14曲を収録。曲名の文字数は、これまで同様にシンメトリーで配置されていますが、漢字とひらがなを含めて完全に対にはなっていないので、ずいぶん緩やかになりました。全曲に英語のタイトルがついています。歌詞カードは、アルファベットの字体が白抜きになっているのが特徴です。
アルバムタイトルの「大発見」は、違った魅力が見つかるという意味のようで、確かに前作の「スポーツ」とは性格が異なるアルバムになっています。伴奏がちょっとうるさく感じられ、印象に残るメロディーも少ないように感じましたが、何度か聴くうちに魅力が出てきました。 いくつかの曲で、作曲が共作(連名)になっているのも注目されます。ボツになりかけた曲を引き取って他のメンバーが作曲したため、連名でクレジットされているようです。椎名林檎の名義は、「vox,cho&MIDI」となっているので、ギターは弾いていないようです。MIDIが加わったのが新しい。
1曲目は「天国へようこそ For The Disc」(作詞・作曲:椎名林檎)。14曲目の「天国へようこそ For The Tube」は英語歌詞ですが、こちらは日本語歌詞でアレンジも異なります。男声の低音が「あー」と響くなか、怪しげな前奏が始まります。新機軸のサウンドで、最初に聴いたときは激しい違和感を覚えました。節目で響くベースもすごい。インタビューによると、刄田綴色はドラムではなく、箱を蹴っているようです。伴奏がごちゃごちゃして、情報量が多い。間奏は手拍子のように聴こえますが、タップを踏んでいるようです。熊谷和徳に問い合わせたとのこと。
2曲目は「絶対値対相対値」(作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉・椎名林檎)。前奏なしで歌い出し。椎名林檎はあまり感情を込めずに歌っていますが、アップテンポなのでライヴでは盛り上がるでしょう。歌詞も韻を踏んでいてノリやすい。この曲も伴奏がかなり凝っていて、細かい音符が多い。
3曲目は「新しい文明開化」(作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉・椎名林檎)。東京メトロCMソング。英語の歌詞で、速めのテンポ。地下鉄というよりは、高速道路に乗っているときのBGMにしたい曲です。地下の暗いイメージを払拭するにはいい曲でしょう。間奏で長いギターソロがあります。キーボードが聴こえないので、伊澤一葉もギターを弾いているかもしれません。
4曲目は「電気のない都市」(作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉)。ピアノ伴奏から始まります。インタビューによると、震災後の計画停電を見て椎名林檎が作詞したとのことですが、メロディーに悲壮感はありません。
5曲目は「海底に巣くう男」(作詞・作曲:浮雲)。今回のアルバムの曲で、唯一椎名林檎が作詞していません。インタビューで、浮雲は「7〜8年前に書いた曲」と語っています。サビはライヴでコール&レスポンスになりそうです。ベースを効かせて力強い。
6曲目は「禁じられた遊び」(作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉・椎名林檎)。前半は椎名林檎の歌声にエコーがかかっています。後半は開放的に歌います。理想的なバンド演奏と言えるでしょう。
7曲目は「ドーパミント!BPM103」(作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉)。2010年7月28日に配信された「ドーパミント!」とはアレンジが異なります。配信されたバージョン(BPM119)はギター中心のギスギスしたサウンドですが、アルバムのBPM103のほうがテンポ遅く、落ちついて各楽器のプレイ楽しめます。歌詞もBPM119の「GO」の男性バックコーラスが、BPM103ではなくなっているなど、実に興味深い聴きくらべができます。前半は指を鳴らす音が伴奏になっています。歌詞は「可虐趣味(サディスティック)」「被虐趣味(マゾヒスティック)」「寸止め」など、東京事変結成前の椎名林檎の世界観に近い。この曲はライヴで絶対に盛り上がるでしょう。
8曲目は「恐るべき大人達」(作詞:椎名林檎 作曲:亀田誠治・椎名林檎)。英語歌詞のさわやかな楽曲。間奏でキーボードソロがあります。
9曲目は「21世紀宇宙の子」(作詞:椎名林檎 作曲:亀田誠治・伊澤一葉)。椎名林檎が若々しい透明感ある声で歌います。歌詞は一番と二番で対になっています(朝もや/夕映え、朝焼け/夕焼け、離陸/着地)。「フレー! フレー!」など、歌詞も前向きで気持ちがいい。同じ亀田誠治作曲の「閃光少女」と雰囲気が似ています。伊澤一葉と浮雲の間奏は、あまりマッチしていません。
10曲目は「かつては男と女」(作詞:椎名林檎 作曲:浮雲)。キーボードがオルガンのように重層的に響く前奏とそれ以降でアレンジの雰囲気が違いすぎる。ちょっとアレンジが下手です。浮雲の作曲ですが、伊澤一葉のキーボードが活躍します。歌詞は詩のようでなく、改行されない文章で書かれています。ラストはエコーをかけてフェードアウトしながら遠ざかります。
11曲目は「空が鳴っている」(作詞:椎名林檎 作曲:亀田誠治)。グリコ「ウォータリングキスミント」CMソング。先に発売されたシングルと同じ音源です。シングル同様に、歌詞は「残」と「響」の文字の色を変えています。
12曲目は「風に肖って行け」(作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉)。「肖って」は「あやかって」と読むようです。歌詞がリズミカル。冒頭は四文字熟語の英訳を連呼します。「日本語と円を濫りに遣う人生」と歌っているのが興味深い。間奏ではDJのようなノイズが聴けます。ラストに英語で何か歌われますが、歌詞カードには書かれていません。
13曲目は「女の子は誰でも」(作詞・作曲:椎名林檎)。資生堂「マキアージュ」CMソング。先に発売されたシングルと同じ音源です。演奏の名義がシングルにはなかった「東京マジカルビッグバンド」という名前が付いています。
14曲目(Bonus Track)は「天国へようこそ For The Tube」(作詞・作曲:椎名林檎)。テレビ朝日系金曜ナイトドラマ「熱海の捜査官」主題歌。2010年7月21日に先行配信されました。歌詞は英語です。1曲目「天国へようこそ For The Disc」よりもスローテンポ。キーボードから始まり、ギターが加わって盛り上がります。後半では椎名林檎の絶叫が聴けます。最後は「I AM DEAD」と歌われるので、死ぬようです。 EMIミュージック・ジャパン TOCT-27070 |
No.560 - 2011/09/23(Fri) 03:23:18
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