みんな金属アレルギーが原因というカキコが結構あったのを覚えていると思う。金属アレルギーが引き起こす皮膚病の1つが汗疱状湿疹である。おそらくそれらのカキコの大本は、乳児の両足蹠に汗疱状湿疹がでたという「母乳中のクロムに対する全身型金属アレルギーによると考えられた乳児の汗疱状湿疹」 Japanese Journal of Allergology 56(7), 703-708, 2007-07-30 という論文だと思う。それでタイトルだけみて金属アレルギーだと騒いだのだと思う。だが、この論文のabstractを見ると乳児のアレルギーのパッチテストで重クロム酸カリウム(これは猛毒の六価で私生活にはまず存在しない)が陽性とでているが、実はこの乳児のアレルギー源は無毒っていうか栄養(ミネラル)の1つである三価のクロムであった。乳児は母乳からクロムを摂取していて、それは母親がたくさん摂取していたチョコレートやココアからのものだった。ようするにパッチテストで重クロム酸カリウムに引っかかり、そこからアレルギー源が母親の母乳に含まれるクロムだと判明したのだ。 さらに次のブログによると"原著論文中に、クロムの多い食品として次のようなものが挙げられていました。チョコレート ココア 紅茶 香辛料 馬鈴薯 たまねぎ マッシュルーム", http://blog.m3.com/OEM/20071114/2 と書かれていた。 僕の考察:金属アレルギーは肌に触れるものだけでなく、食品からのミネラル=金属(主にクロム、ニッケル、コバルトなど)の過剰摂取からでも起こる。それが原因でこの乳児のように汗疱ができることもある。僕らの汗疱が金属アレルギーか、クロムによるアレルギーか反応かどうかは実験をしてないから断言できない。アレルギーだと仮説を立てるなら、「栄養がある食べ物だから食べても大丈夫。」「この飲み物(あるいは食べ物)は体に良いと言われているから大丈夫。」という考えを変える必要がある。 しかし何にせよ、あふれる情報に対して懐疑的になろう。当たり前な話だが、すこしネットを見たくらいで、「これをすれば治る!これが原因に違いない!」と思い込むのは避けるべき。 |
No.460 - 2011/06/20(Mon) 09:33:41
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