#150 『高き彼物』 加藤健一事務所公演 
『高き彼物』は、2000年9月に、今は亡き俳優座劇場の倉林誠一郎氏が、全国演劇鑑賞団体の関越ブロックとの共同企画として、作者にマキノノゾミ、演出に鈴木裕美というコンビで、出演者は、高橋長英、歌川雅子、藤本喜久子、酒井高揚、浅野雅博、増沢望、森塚敏で製作し、初演された作品です。マキノさんはこの作品で第5回鶴屋南北戯曲賞を受賞しました。

今回の舞台は、加藤健一事務所のプロデュース公演で、文学座の高瀬久男が演出で、話題は何といっても小泉今日子の出演です。

やはりとてもいい芝居でした。知らず知らずに前に見た俳優座劇場プロデュース公演と比較してしまいますが、印象としては前よりも分かりやすく、一人ひとりの心情がよく分かるような感じを受けました。

俳優座劇場の方は、たんたんと描く中に人間味あふれる暖かさを感じる舞台でしたが、加藤健一事務所の方は、人間同士正面から向き合う中に何かが開けるという優しさを感じる舞台でした。約10年の時代と私たち日本人の生きざまの変化を感じながらも、本来もっている優しさや気遣い、ちょっぴりお節介というような普遍的な日本人のあり方みたいなものも感じました。

出演者については、どうしても前と比較してしまうので、ここでは語らないほうがいいと思っています。
2009/11/27(Fri)18:53:28

#149 『定年ゴジラ』 劇団文学座公演
東京郊外のくぬぎ台ニュータウン。開発からかなりの時が過ぎ、老朽化が目立つこの街に暮らすのは、定年を過ぎた元企業戦士とその予備軍ばかりだ。この芝居の主人公・山崎さん(坂口芳貞)も最近定年を迎えた。時間を持て余し、毎朝散歩に出かけることで、今まで知らなかった街の様子が見えはじめてきた。ある日、散歩をしていると、自分よりも年配の男性たちに声をかけられる。定年の先輩で、町内会長(加藤武)、ずっと単身赴任で浦島太郎状態のノムさん(坂部文昭)、このニュータウンの開発に関わった藤田さん(関輝雄)らだ。定年して初めて気付いた街の老朽化や娯楽の無さに驚きながらも、彼らと交流する中で、少しずつ自分の居場所が見えてきた。必死になって働き追い求めた幸せとは何だったのか、現代社会を照らしながら、個人の生き方を考えさせる、可笑しくも悲しい、そしてホロリとさせられる、オジサンたちの舞台だ。

川辺久造、加藤武、坂口芳貞、坂部文昭、関輝雄、この実力ある5人のオジサンたちが素晴らしい。個性的で魅力的だ。また山崎さんの奥さん(吉野由志子)も、普通の優しいお母さんという感じがとても良かった。他にニュータウンの住人や山崎さんの娘たちが登場するが、劇団らしい素晴らしいアンサンブルで、何とも言えない一体感のある舞台を作り上げていた。

原作の素晴らしさもあるが、この作品をうまくまとめあげた、脚本の杉浦久幸さんと演出の西川信廣さんの力が十分に発揮された舞台だったと思う。
2009/11/27(Fri)18:50:16

#148 『海をゆく者(The Seafarer)』 パルコ・プロデュース公演
アイルランド。海沿いの町、若くない兄弟が暮らす古びた家。兄は大酒飲みで暴君的だが、最近目が不自由になり、その世話のために戻ってきた禁酒中の弟が暮らしている。クリスマス・イヴの朝、兄は起きた途端に近所の友人と飲んだくれている。兄は、弟が別れた妻と今暮らしている友人を、「クリスマスだから」とカードに誘って弟を怒らせるが、その友人が連れてきた見知らぬ男こそ、弟が最も会いたくない、会ってはいけない人物だった…。行き場のない男たちのポーカーフェイスに隠された秘密とは…。

男優5人だけの密度の濃い緊張感、笑いとサスペンスあふれるいい舞台でした。

クリスマスの夜に、カードゲームを通して浮かび上がる男たちの人生。兄弟を演じる吉田鋼太郎、平田満、近所の友人の浅野和之、別れた妻と暮らす友人の大谷亮介、見知らぬ男の小日向文世。実力ある男優たちの魂のやりとりは、誰かひとりでも欠けたら生まれない重く濃い緊密な舞台で、素晴らしいアンサンブルでした。

最後のどんでん返しは、何とも言い様のない、観る人によって後味が良くも悪くも受け取れる、誰にも言いたくないラストシーンでした。
2009/11/27(Fri)18:48:59

#147 『音楽劇 十二夜』(スタジオライフ)
スタジオライフは、これまでも『夏の夜の夢』『ロミオとジュリエット』と、シェークスピアの作品を公演しているが、今回は、『夏の夜の夢』と同じロマンチックコメディの作品の中から『十二夜』を取り上げ、音楽劇として公演した。

『十二夜』といえば、セバスチャンとヴァイオラの双子の兄妹、オーシーノ公爵とオリヴィア姫、叔父のサー・トービーと侍女マライマ、そして侍従のマルヴォーリオと道化のフェステ。個人的には大好きな作品で、好きな役は、セバスチャンを助けるアントニオだ。

また前半のフェステとオリヴィアの問答、兄の死を嘆くオリヴィアに対し、フェステがそんなに嘆くのは、お兄さんが天国ではなく地獄へ行ったからですね、と言い、オリヴィアが怒って地獄ではなく天国に行ったのよ、と言うと、フェステが天国に行ったのに、なぜそんなに嘆くの? という問答のやりとりは、昔から好きなセリフです。

さて、スタジオライフ版 音楽劇 十二夜ですが、とっても楽しくいっぱい笑えて、それでいて、セバスチャンとヴァイオラとの再会のシーンではホロッとさせてくれた素敵な舞台でした。

少し羽目を外し過ぎの部分もありますが、痛快音楽活劇とでも言えばいいのか、約2時間40分楽しませてもらいました。

スタジオライフの芝居には、シェークスピアの作品が合うと思います。ロマンチックコメディでは『から騒ぎ』『間違いの喜劇』や、『ベニスの商人』なども、今後上演してほしいと思います。
2009/11/27(Fri)18:47:27

#146 『センポ・スギハァラ2009』(劇団銅鑼)
『センポ・スギハァラ』は劇団銅鑼の代表作であるとともに、日本のシンドラーと言われる杉原千畝さんを、日本で初めて舞台という形で紹介した作品です。

初演から17年、今までに2回観ています。

今回の舞台は2009とついていますが、作・演出は今までと同じ平石耕一さんで、それでいて、今までの作品と全く違う舞台で、新しい『センポ・スギハァラ』を観たという感じでした。


1940年の夏、ポーランドの東隣の国リトアニア。首都カウナスの郊外、穏やかな丘の上に突然銃声が鳴り響く。日本領事代理・杉原千畝と妻・幸子、医学生の藤島の3人は、ナチスのポーランド侵攻により祖国を追われ逃げてきたユダヤ人家族と出会う。翌日、日本領事館は大勢のユダヤ人たちに取り囲まれた。その中に丘で出会った家族の姿もあった。彼らは生き延びるために、日本領事館で「日本の通過ビザ」を手にし、その効力で第三国へ逃れることを考えたのだ。千畝は、本国にビザ発給の許可を求めるが、ナチスと軍事同盟を結ぼうとしている日本政府の答えは、「発給するな、発給した場合には、背信行為とみなす」というものだった。苦悩する千畝と幸子、2人を見つめる藤島…。


以前に2度観た『センポ・スギハァラ』とは全く違う、新しい『センポ・スギハァラ』でした。以前観た舞台は、6000人のユダヤ人を助けた「命のビザ」という歴史的な事実をノンフィクションタッチで舞台化し、どちらかといえば理屈っぽく情緒的でしたが、今回の舞台は、杉原夫妻とユダヤ人家族の物語というフィクションタッチで描かれた舞台で、全体的に明るく、日本人とユダヤ人、人間が描かれるドラマの中で浮かびあがる時代と歴史を感じました。今回の舞台のほうが以前の舞台に比べてかなり完成度が高く、「生きるということ、勇気、今自分にできること」そんなことを感じさせてくれる舞台でした。

今回の舞台では、登場人物を7人に絞り込み、夫婦のドラマ、家族のドラマとして作り上げる中に、歴史に翻弄される人間のドラマを見ることができました。

杉原千畝を演じた舘野元彦さんは、抑え気味の演技の中に明るさと苦悩を上手く表現していました。また、新人の鈴木啓司さんのストレートで素直な演技が好感持てました。
2009/11/27(Fri)18:45:33

#145 『OH マイ ママ !』(劇団NLT)
16年前に『パパと呼ばないで…』という題名で初演された作品ですが、今回は翻訳も演出も代えての上演なので、新作の初演みたいなものです。

20年前に妻のマリィが失踪したアルベールは、今は野党だがフランスの有力国会議員。妻の失踪以来、息子のルイを妻の友人のマチルドの助けを借りながら育ててきた。来月、息子と同じ日にマチルドと結婚式を挙げて、好感度をあげることを狙っている。そんな時、国連の人権委員のアメリカ陸軍大佐フランク・J・バーターが訪ねてくる。表向きは国連でのアメリカの提案に対しての協力なのだが、話題はアルベールの息子ルイの事ばかり。実は、フランクはルイの母親マリィが性転換して男性になった姿だったのだ。息子のルイに知られないように必死になるが、ルイはフランクに何か説明のできない感情を感じ、ついに「パパ!」と抱きついてしまう。その上、マチルドをママと思い込む…。

アルベール、マチルド、フランク、ルイは、この絡み合った複数な関係を、上手く解きほぐしていけるのか、ハラハラドキドキで急転直下のラストシーンへ。


と〜っても楽しく、オシャレなコメディで、大笑いしながら、ホロッとさせられる舞台でした。舞台装置がとても素敵でオシャレ、また音楽もとても良かった。

16年前に観たときは、こんなに面白い舞台だとは感じませんでした。これはパンフレットにもありましたが、「性転換」に対する社会的認知度の違いが大きいのかも知れません。16年前は失踪した妻が性転換して男性になって戻ってきたというのは、時代としては奇想天外なアイディアと捉えられたのではないかと思う。現代はどうかといえは、性同一性障害(障害という表現はあまり好きではないが)に対する治療としての性転換手術や、また、性転換をしたテレビタレントらの活躍などで、社会的認知度が高くなり、そのことも、この舞台をストレートに受け止めやすい素地があったのだと思う。

この舞台でフランクを演じた川端槙二さんは、制服姿が本当にかっこいいし、息子を想う男性の姿をした母親の気持ちには、ホロッとさせられました。アルベール役の加納健次さん、マチルド役の木村有里さんもとても素敵でした。ルイ役の弓澤公望さんは軽快な演技でさわやかな青年を演じ、若手の成長株の役者さんと感じました。
2009/11/27(Fri)18:43:15

#144 ミュージカル 月のしずく
東池袋にある劇場〔あうるすぽっと〕で、イッツフォーリース公演『ミュージカル 月のしずく』を観劇しました。

浅田次郎さんの原作を佐藤万里さんの脚本・作詞、菊池準さんの演出、酒井義久さんの音楽でミュージカル化した舞台です。

2年前の2007年3月に俳優座劇場で初演され、今回は再演です。

初演を観ているのですが、そのときの評価は「まあまあ良かった」でした。

今回の公演では、かなりキャストも替わっていたので、初演以上の完成度をちょっと期待しながら観に行きました。

かなりいいミュージカルでした。初演の倍ぐらいの完成度を持ったいい舞台でした。観た人の中には「これがミュージカル?」と思われる方がいるかも知れませんが、これもミュージカルだと私は思いました。

ミュージカルは、それを作り上げる集団、劇団、ユニットによって様々な個性があり、一概にひとくくりにできるものではないと思います。先日観劇した俳優座劇場プロデュースの『サマーハウスの夢』は音楽劇でした。観る側が演劇をジャンル分けするのではなく、作り手がどういう思いで創造しているのかに思いを馳せたいと、個人的には思っています。

『ミュージカル 月のしずく』は、理屈ではなく感性で感じるストーリー展開、懐かしさを感じる音楽と美しいメロディ、そして歌。前半に少しもたもた感がありましたが、全体的には振幅の大きな、純愛とファンタジーを感じる舞台でした。

今回は、客演の安藤聖・大谷美智浩・佐山陽規・世古陽丸・ごんどうけんがとてもいい味を出しながら、いい歌声でした。
2009/09/29(Tue)13:35:41

50/50件 [ ページ : << 1 2 3 4 5 6 7 8 >> ]

- HOME - 新規投稿 - お知らせ(3/8) - 記事検索 - 携帯用URL - フィード - ヘルプ - 環境設定 -

Rocket Board Type-X (Free) Rocket BBS