*Book review

■ 伊坂幸太郎
「ジャイロスコープ(新潮文庫)」 評価:☆★★★★
Date:2015.09.08
ジャイロスコープとは、それぞれが驚きと意外性に満ちた短編集という意味があり、そこを意識して集められているらしい。

「浜田青年ホントスカ」は、確かに驚いた。まさかはじめから騙されていたとは・・・でもよく読み返せば伏線たくさん、さすが伊坂さんだ。これは結構好き。井坂さんっぽい。

「二月下旬から三月上旬」も、どこかグラスホッパーを彷彿とさせる感じで好きだが、好みが分かれるだろうなぁ。

「ギア」と「if」もSFチックでそこそこ好きだが、私のツボから少し離れる伊坂ワールドになる。でもSOSの猿たちとかのカラーです。

「一人では無理がある」はサンタクロースを伊坂流にするとこうなるんだなとちょっとうれしくなる感じ。そうすると逆にサンタクロースは実在する気がしてくるから不思議だ。

「彗星さんたち」も、私自身新幹線よく乗るので、とても親近感わいた。そしてお掃除の人たちを見る目が変わりそうだ。
ファンタジックでキャラ立ちしてて、伊坂さんの感じがしてとてもよかった。

書下ろしの「後ろの声がうるさい」もそのまとめ的で、お得意のリンクが仕掛けられていてとてもよかった。

伊坂さんやはりいいなぁ。
でもちょっと星ひとつ減らしてしまったのは、最後の少し好みじゃないのも混じってたから・・・基本すごくよかったですよ!

no.746
 

■ 住野よる
「君の膵臓を食べたい(双葉社)」 評価:★★★★★
Date:2015.08.05
ちょっと猟奇的なタイトルだ。
膵臓を、内臓を食べるとか。
でも。その本当の意味がわかったとき、もう不覚にも涙が止まらない。
いい年して嗚咽が漏れた。外で読めない。

簡単に言えば、純愛。
しかも主人公の二人は高校生ときてる。だからありきたりの青春純愛もの・・・なんて侮ってかかるとやられる。大人でも。大人こそ?

膵臓の病気で余命宣告されてる女子、咲良。
クラスで誰とも関わらず、本の世界に逃げることがすべての半ばひきこもりの男子。僕。名前はね、最後まで出てこない。それにも理由と意味があって、泣かされるんだけどね。

さくらはクラスの人気者の明るい子。だから彼女は病気を親友にさえ隠してるんだけど、それを自分を対局の世界に生きてる男の子にだけうっかり知られてしまった。
そこからやけに付きまとわれて、男の子は何となく振り回されて、クラスでも噂になって。なんたって生きてるうちにかなえたい夢ってんでいきなり思い立って二人で博多まで行っちゃったりね!旅行じゃん!それはうわさにもなるよ!でもキスすらないんだ、そういうんじゃない。
いつも軽妙な会話で・・・もどかしいやりとりだ。
でもそれがいい。そこがいい。

男の子は女子どころか、人と接することを今までしてこなかった友達もいない人生だったので、ほんと言ってることが方向ずれてる気がして、そこがさくらのまたツボなのかもしれないけど・・・。
なんたって、死を冗談にして笑い飛ばしながらの会話なんだ。ほんとに死ぬのかな?ってそんな重い病気なのかな?そここそが冗談なんじゃないの?って僕と同様思ったよ。

徐々に僕の心がすなおに彼女にひらき、認めてゆく成長の過程が自然で胸きゅんだ。

やがて・・・ほんとに彼女は死んじゃうんだけど・・・。
そこではまだ私の涙腺は崩壊しなかったんだ。
彼女が残した遺書。それを僕が読んだ。
さくらの母が僕の名前を聞いて、それを僕が答えて。そう、そこで自分の名前をきちんと出す。それにも意味はあるんだけど、そこでもまだ。

そのあと、僕は壊れて。声出して大泣き。
もうだめだ僕は壊れるって。
私もそこで我慢ならなかった。
同じようにすごい泣いちゃった。同調してたのかな、僕のほうに・・・。
さくらのこと、私も好きだった。僕のことも、頑張って認めて成長したところがとても好きだった。

簡単な純愛ものではなく、
・・・とりあえず、このタイトルの意味をわかるためにでも一読を進める。
とてもいい一冊だった。おもいがけず。

no.745
 

■ 鏑木蓮
「白砂(双葉社)」 評価:☆★★★★
Date:2015.07.27
少しだけ雰囲気が東野圭吾の白夜とかあのあたりを思い出させるのはなぜだろう、全然違う設定なのに。
それはいいとして。

言ったらテーマはありきたり、なんだけど、どんでん返しも、確かにえ?そうなの?そこが隠れててた真相で真実なの!!と驚きはあるだろうものの、新鮮みはなく、ミステリー通にはあるいはすぐ見抜けるどんでん返しかもしれないなというレベルである。

・・・なんてこんな厳しいことばかり言うのだけど、惹かれる。読んでて引き込まれてる。

苦学生でつましく頑張って生活していた女子大生が殺害された。近所の目撃情報や通帳の謎の入金などから援助交際を疑われるが、刑事の目黒は勘で、そんな娘ではないこと、高価なネックレスが無造作にごみ箱に投げ捨てられていたことなどの違和感から、捜査を進めてゆく。

やがて行き着く真相。悲しい。誰も悪くないのかな・・・。でも小夜のまだあったはずの未来が途絶えたのは、無念の極みで、仕方なかったんだよ、誰のせいでもないよなんて甘い言葉で済ませられないくらいの重みがあったと感じさせる。

キーアイテムが骨。それは結構新鮮かな。
ヒ素中毒のことがわかる、なるほどそうだよなぁと。
骨は白くてきれいだし、アクセサリーにも砂のようにも使えるかもなぁ。
自然葬、散骨、ほんとにあるって聞くから、そこもリアルだよね、残された者はいろいろ思うのだ、当の本人は死んじゃったらもしかしてどっちでもいいよっていうのかもしれないけど・・・。

書評ほど大絶賛する気持ちにはなれないけど、文庫本でちょっとした隙間時間に読み進めてゆくのはいい感じの一冊だった。

no.744
 

■ 鳥飼否宇
「死と砂時計(東京創元社)」 評価:☆☆★★★
Date:2015.07.24
一言でいえば好みが分かれる小説かな・・・。
世界各国から集められた死刑囚のみが収監されているジャリーミスタン終末監獄。親殺しの罪で収監されたアラン青年は、”監獄の牢名主”と呼ばれる老人シュルツと出会う。明晰な頭脳のシュルツ老人に助手指名されアランは二人で監獄内の事件捜査に関わるのだ。
死刑執行前夜になぜその囚人は密室状態の独房で斬殺されたのか。
どうして囚人は闇夜ではなく、人目に付く満月の夜に脱獄したのか。
そしてアランが罪に問われた殺人事件の真相も明らかにされてゆく・・・。それは驚くべきものであった。そしてシュルツの正体も・・・。

ある意味ホームズなんかよりすごい気がするシュルツのじじぃ。どうしてこんな人が死刑囚なのか。その真相も思えば納得。アランも親をCENSOREDような気質でなく聡明な青年なのにどうして自分の罪については口を閉ざしてきたのか。・・・それらすべてが最後の最後に合うんだな・・・。

個人的にはちょっとご都合主義が過ぎる気もするのでいまいちだけど、
でもそうは言っても読んでてぐんぐんその推理に引き込まれてゆくのだ。
どうしてこれっぽっちの情報で(監獄内だから特に少ない)シュルツはわかってしまうんだ!でもその推理の理由もきちんと述べられており、そうすると唸らされる。なるほど・・・。

そうした意味でアランとシュルツの真相というより、そうしたこまごました推理が結構ミステリー好きには吸引力あるかもしれないな・・・。

ちょっと読むのに時間かかっちゃったけどね!(笑)

no.743
 

■ 千早茜
「男ともだち(文芸春秋)」 評価:★★★★★
Date:2015.07.04
29歳のイラストレーターの神名。彰人という同棲している恋人がいるのに真司という妻子持ちの医師と不倫している。でもどちらにも入れ込んでいない。縛られうるのは真っ平。自由に生きているつもりだ。
そんな神名と学生時代から特別な間柄のハセオ。
肉体関係はない。一緒に寝泊りしても。
そういう関係じゃないんだ。でも一番そばにいる。
お互い特別。そして理解し合えるような。

勝手ななんだ。お互い。ハセオはいつだって神名を守るため駆けつけてくれるような存在ではあるが、女との付き合いは奔放で相当な女がいる。神名には手を出さないけれど。
この関係は何だろうね?

やがて終焉をむかえる、彰人とも真司とも。ハセオだけ残れば困らないのかもしれない・・・。逆を言えば、恋人も愛人ももともと不要だったのかもしれない。

男友達って都合のいい言葉だな。彰人に言われる。でもほんとそうかもなと私も思った。でもそうとしか呼びようがない。
私にはハセオみたいな人はいないが、うらやましいなぁと心から思った。

珠玉の言葉がつまった一冊だよ。
抜き出しておこう。

ハセオの言葉は神名だけでなく私をも掬い取るようだ。
神名の言葉は同調しすぎて苦しくなり、それが浄化となる気がする。

「俺は病気は嫌いなの。具合悪いことくらいつまんねぇことねぇしな」

「未練なんて暇人の趣味だぞ。馬鹿やな」

「旦那や愛人では駄目な時ってあるもの。ただ話を聞いて優しくしてもらいたい時があるよね。でも、女ともだちじゃなくて、そこはやっぱり男ともだちじゃなきゃ埋められない。弱っている時は心の女の部分を慰めてもらいたい。それはすごくわかるよ。でも近づきすぎちゃったら失っちゃうもんね」

「あんたははね、男を信用してないの。すぐ寝ちゃうのもそのせい。身体を与えておいて、自分に欲情する男という生き物を見下しているのよね。けど、あの坊やは決してあんたを抱かない。あんたから何も奪わず、守ってくれる。だからあんたにとっては最上の男なの」

ベースとしてはほんとは好みではないストーリーなんだけど、このせりふの数々と、ハセオの圧倒的魅力で、星が5つなってしまいました。

no.742
 

■ 角田光代
「平凡(新潮社)」 評価:☆★★★★
Date:2015.06.27
短編集である。
離婚というのはこうして突然、でも決まるとあっというまに訪れて人生を変えてしまうこともあるんだなぁと思わされる。
結婚より唐突かもな、と。
そもそも結婚しなきゃ離婚もないんだけれど。

不倫の場合叶わない結婚に固執して、海外旅行先の教会で擬似の式を挙げようとする男女はこっけいだ。

妻が不貞の末、妊娠して離婚を求めてきた。ひどい。傷つく夫だったが、子供の頃に車に轢かれたのに婦警さんにその加害者を許すと言ったことをふと思い出し・・・妻を許してやろうと、そう思う。切ないがそうありたいと思わされた。天晴、と。

かつて夫が浮気して離婚した。その後その夫とは正反対の男と再婚・・・幸せな主婦をしている。でもどこか願っている。元夫と相手の女が自分より不幸であってほしいと・・・・。

夫が去った日に飼い始めた猫のぴょん吉はよりどころだった。ところが窓から逃がしてしまって見つからない。涙が止まらない。一緒に探してくれたと愛さんという女性。彼女もかつて子供を亡くし自分を責めて生きてきた人だった。人生って最初からあるのかしら、それともできていくのかな・・・。

学生時代親友と同じ人を好きになった。彼は私を選び、だから結婚してこの土地で平凡な主婦となった。おめでとうと笑って祝ってくれた友人は東京に出ていき、料理研究家として有名になりテレビによく出ている。疎遠になっていたのだが突然会いたいと連絡を受ける・・・。一番忘れがたい愛した男と同姓同名の人が火事で死亡したニュースに名前が出て、それがこの近所だったという。だから確かめたくてきたと。勇気がないので調べてほしいといわれて、別人だったよと嘘をついた。友は感謝して帰ってゆくが、もしかしてそれだけじゃなく、かつての恋敵で幸せか不幸か見に来たのかもとふと思ったりする・・・。

かつて結婚願望を強い年上の女性と同棲していた。別れたのち、違う女性と結婚したがうまくゆかなかった。そしてかつての女を思い出し、彼女がやって繁盛させている飲み屋に通うようになる・・・。

どれもこれも、離婚がちらつく設定で、そして未練たらたらな男女が出てくる。
赦すこと、呪うこと、表裏一体。
相手を、赦して、幸せになってくれと願う。
赦せず、自分よりどうか不幸になってくれと呪う。
前者でありたいのはもちろんだが、人間だからね・・・なかなかコントロールしきれないよね・・・。

なかなかに考えさせられてしまう深いテーマのものばかり。
読み応えあります。私は結構好きでした。

no.741
 

■ 柚木麻子
「本屋さんのダイアナ(新潮社)」 評価:★★★★★
Date:2015.06.11
矢島大穴・・・大穴と書いてダイアナと読む。キャバ嬢を経てスナックのママをしているシングルマザーのティアナ(源氏名)のせいで、一人娘のダイアナは毎日散々だったのだ。髪の毛も金髪。顔もティアナに似て派手で、いやがおうなく目立ってしまう。そもそもが名前だ。ダイアナは読書が大好きで物静かな性格のだ・・・。

10歳のあの日。運命の出会い。彩子というダイアナと正反対の聡明で美しい家柄もよいお嬢様の彩子。なんと彩子もダイアナに憧れており、二人は急速に親友となってゆく。お互い読書も好きで、本の話もできるのだ。好きな童話も偶然同じだった!!運命の出会いだ!!

中学校は彩子は受験で私立のエスカレーターのお嬢様学校を目指すことに。同じ学校に願ったが、経済的に叶う術もなくダイアナは近所の公立中学へ。ばらばらの進路を辿ることに。
彩子が受験勉強の間、ダイアナの力強い見方である武井くんと、彩子の勉強の迷惑にならないようにこっそり自分の父親を調べるダイアナだったが、思わぬティアラの過去がわかったりもして、そんな姿を彩子に誤解されたりもして、二人はぎくしゃくしたまま疎遠になってしまうのであった。

やがて大学で、それまでの守られた環境でなく、初めて汚い世界を知る彩子。それまでレールの上を安寧に歩いてきた自分の人生に初めて疑問を抱いたのである。
一方、憧れの本屋さんでの仕事で生き生き活躍してゆくダイアナ。
それぞれの成長。
ダイアナはずっとあきらめず調べていた父のこと・・・その正体が明らかになってゆく。それは衝撃的でドラマチックな・・・。
彩子も、ダイアナの活躍を見ながら、自分の崩れた足元を再構築してゆく・・・。

そして二人は再びめぐり合う。成長した今・・・再び友情を結びなおすのである。
遠回りしたけど、やはりソウルメイト。
より深くなったお互いの書評など交わしながら歩んでいける・・・。

二人ともある意味奥手すぎる恋愛事情も、萌芽を感じる。・・・・青春だ。

読後感すこぶるよし。
わたしも、かつて・・・赤毛のアンを読みふけり、ダイアナとの友情に胸を焦がしたことがあった、そのことを思い出した。
これだから読書はやめられないと思わず胸を熱くさせてもらった一冊である。

no.740
 

■ 桜木紫乃
「ブルース(文芸春秋)」 評価:☆★★★★
Date:2015.04.25
これは博人という男の物語なのだろう。
数奇な生まれ、殺伐としたふるさとでの生活、生まれつき手足に6本の指をもつ・・・。
女を惑わす魔性の手。闇が深すぎて何を思っているのか、それとも何も思っていないのかわからない美形の男。
博人にかかればどんな女も快楽の波で溺れる。何年たっても特別の男になる。
そう、様々な女たち。それぞれの視点から博人と関わる、不気味な謎めいた男。
どん底から這い上がって闇の黒幕となって経済界にも政治界にも力を持つ、闇の仕事で君臨していった男。

でも彼の選んだ女は醜い脳天気なまち子。
まち子の娘の梨奈は美しいカメラマンとなるが、実の娘のように、でもどこか梨奈にとって理想の男として存在する博人。

17歳くらいから始まる博人の様子の回想が、化け物じみた暗い者から、徐々に人間味のある・・・そう、人間的なものを感じるようになってゆくさま。

怖いけど、きっと会ったらわたしも惹かれてしまうんだろうか。
その手にとろけてしまうんだろうか。

博人は手の指を左右切り落とした。いびつになったが手の指は5本になった。

そして・・・北海道が舞台なので雪がよく感じられるのも凍える空気が博人に似合っている気がする。
それなのにセーヌ川の橋で月明かりを浴びる姿も様になる。

ラスト・・・これは死んでしまったのではないか?と思わせる、でも曖昧でわからない、その感じも胸が苦しくなる。

なんと数奇な人生、でもなんて魅力的な男。

桜木さんの作品ははじめてだけど、迫力に満ちていて圧倒された。
北海道の大地そのものみたいな。

ずっしり読み応えを感じた。ページはそんなに厚くないのに。
すごい筆力の作家さんだなぁと思っている。

no.739
 

■ 辻村深月
「盲目的な恋と友情(新潮社)」 評価:★★★★★
Date:2015.04.12
久々読んだ辻村さん。
二つの章から成る。
一つのことを別々の視点から捉えた2章だ。そしてそれはタイトルの通り、恋視点の盲目と友情視点の盲目。それぞれの盲目の女。

元タカラジェンヌの母を持つ、ずば抜けて美しい一瀬蘭子。あまりに美しすぎて逆に男性から声を掛けられずうぶなまま大学生活に入る。バイオリンが得意だったのでオーケストラのサークルで同期だった留理絵と出会った。同じバイオリンの上手な、でも地味で蘭子とは正反対な雰囲気の。派手で華やかな美波とも。そして何より・・・指導者として招かれていた茂美星近というこれもまた嘘のように美しい男とも。星近と蘭子はお似合いのカップルとなる。誰が見ても理想的な2人だったのに・・・。星近は恩師の妻の奈々子と不倫していた。もう少年の時から。それを知ってから蘭子の苦しい恋が幕をあげるのだ。それでも蘭子は離れなかったし、星近も蘭子と結婚する気持ちがあったのだ。奈々子が邪魔をするだけで。しかしやがて奈々子の夫、つまり星近の恩師が知るところとなり、星近は音楽家として失墜する。自信に満ちて美しかった男がみるみる腐り堕ちてゆく。それでも蘭子は離れなかった。お金をせびられるようになり・・・これではいけないと新しく恋人を作ったら脅迫され・・・。離れたくとも離れられない・・・。そんな矢先、星近が死んだ。CENSOREDと見られている。蘭子は泣き崩れ、新しい恋人とおだやかな結婚することになるまで、数年要し、幸せになるところだった。ずっと同居して彼女を支えた親友、留理絵のスピーチの瞬間まで・・・。

そこから第二章目で、それは留理枝視点、すなわち友情。彼女は男に相手されない。どころか馬鹿にされてきた人生だったので、男というものに絶望している。出会った女性の利想像のような美しい蘭子は、だから留理絵のよりどころのような存在の友達だった。だから彼女と仲の良い派手で無神経な美波が嫌いだった。だから茂美との恋愛でぼろぼろになる蘭子が自分を頼ってくるのは嬉しかった。ずっと寄り添った。でもまた違う男のところにあっさり妻として行ってしまうことになった蘭子・・・。複雑な気持ちで留理絵はとんでもないことをしてしまうのだ・・・。2人の友情を最後決して切ることのできないような2人だけの秘密・・・それを壊した。すべて壊れると知っていて。それでその夫となる男でなく・・・私がそばにいられる。だって共犯なんだから。

そう、茂美の死の真相。
結構重たい。私は蘭子のような恵まれた美貌や家柄の経験がないのでわからない。けど、男に無垢なゆえに一途で・・・というところは本当にあわれでいじらしくもあり・・・。
その一方、ほんとにネガティブで気難しい留理絵・・・同調してしまう。
私もそちらの方の体験者だもの・・・。
わたしだけ好きって思って欲しい、蘭子・・・すべて捧げてもいいから。

悲劇的なオチだけど、どこか透明感があるのは、辻村さんならではと・・・
一途過ぎた恋と友情がテーマだからかな・・・

no.738
 

■ 柳広司
「ナイト&シャドウ(講談社)」 評価:☆★★★★
Date:2015.02.25
ご存知わたくし大絶賛だったジョーカーゲームの・・・続編というべきか。
ジョーカーゲームの時の主人公の子孫が今回の主人公・・・というべきか。
戦時下のスパイという設定だった居間までと違って、今回は現在。SPという仕事に就く首藤という男が主人公である。

異例なことである。アメリカのシークレットサービスに引き抜かれて研修という形で実際に大統領の警護にあたるのである。
これは通常なら考えられないことで、だからバーンははじめ面白くない。この無表情の首藤という男。その教育係となったことも。ところが・・・。

そう、首藤。はっきり言って教えることなどないのである。むしろ教わることばかりなくらいの・・・パーフェクトマン。でも無表情・・・感情が読み取れない。
そんななか、大統領暗殺の計画があるという情報が。

プライベートも侮れない。フリージャーナリストカメラマンの山岸美和子。美しい二本女性と知り合う。
しかしその出会いからしてまるで運命のように爆弾テロリストと繋がってゆくのである・・・。いや、偶然じゃなかったのか??

首藤は、それでも美和子の命の危機のときにはじまてバーンに人間らしい途方にくれた顔を見せ、バーンは協力する決意をする。・・というか、惹かれたのと、官僚に絶望して挫折した気持ちを重ねたのだろう。

きれいにもちろんハッピーエンド。
首藤のかっこよさやスマートさ、スリリングさはすごく面白かったが、正直わたしは個人的にジョーカーゲームなど、戦時下のスパイのほうがすごく好きだったので、少し星が減ってしまった。

とはいえ、また別物として読むとなかなか面白い。犯人が二転三転するところとか。←ややご都合主義だったけれど。

まぁエンターテイメントとしては非常にいい出来。オススメではあります。

no.737
 

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