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all 【公共事業】宰相府藩国職業アイドレスのページ作成ツ... - 雅戌 - 2008/06/07(Sat) 18:33:37 [No.1818]
主な方針と初期アイドレスのイラスト分担 - 雅戌 - 2008/06/07(Sat) 18:35:18 [No.1819]
設定文プロット他 - 雅戌 - 2008/06/18(Wed) 02:53:53 [No.1836]
設定文(欠けあり) - 雅戌 - 2008/06/20(Fri) 08:57:13 [No.1839]
ドラッパ設定文 - 雅戌 - 2008/06/21(Sat) 01:30:27 [No.1841]


ドラッパ設定文 (No.1839 への返信) - 雅戌

西国人+ドラッガー+パイロット


 宰相府藩国、ひいては帝國軍の中核を為すのは、I=Dや航空機の操縦・コパイを担当するパイロット系職業である。
 帝國軍や東方有翼騎士団がターン10以降の宇宙戦で華々しい戦果を上げ事はまだ記憶に新しく、宰相府のパイロット系職業の強力さについては、皆が認める所と言っていいだろう。
 そう。確かに、宰相府のパイロットは強い。
 だが、彼らも決して、最初から強かったわけではなかったという事は、決して忘れてはならない。


***西国人であるということ

 宰相府は国内に巨大な水路を設けた立体構造型の藩国であり、各区画が水路や巨大な壁によって区切られている。
 面積も決して狭い訳ではないので、国内の流通ルートの一つとして、水路を利用した船舶輸送が積極的に使われていた。
 重要な区画の近くなどに建設されているいくつかの大きな港は、国内のみの物資輸送に限らず、諸外国との各種交易にも用いられるため、
当然ながら、人の集まりも多かった。

 そんな港のひとつ、居住区にある港のすぐ裏手に、帝國軍に所属するパイロット達の住居となるアパートがある。
 他区画とのアクセスが容易で、立地条件もさして悪くないこのアパート群ではあったが、
残念ながら、住民達がここで過ごす時間は少なく、休日以外の大部分は軍施設内にある宿泊施設で寝泊りしているのが現状だった。
 
 とはいえ、たまの休日には各人自宅に戻り、貯まった洗濯物と格闘したり、ひたすらに眠り続けたりしていて、何だかんだと自宅を大切にしているようであったから、
宰相府としてもアパートを引き払うわけにはいかず、結果として近隣住民からは、静かな住宅街と見られていたりもした。


 前述の通り、水をかなり潤沢に確保できているという点で他の西国人国家とやや異なる部分もあるが、それでも帝國においては珍い西国人国家であり、
当然、そこに住む人々は、砂漠地帯での生活を前提とした暮らしをしている。
 外を出歩く時には肌を晒さずに済むようにし、ただし服の通気性は損なわないように気を使う。
肌の色はそれでも焼けてくるのが自然ではあるが、女性の場合は化粧で白く見せる場合もあり、また白くみせようと思えば見せられるくらいには、日差し対策がしっかりとなされていた。

 肌を陽に晒さないための、丈の長いローブ。それは確かに、この国において一般的な格好ではある。
 ただし、それはあくまで屋外の話だった。
 宰相府藩国ではクーラーが非常に普及しており、施設内の過ごし易さには相当に気を使っている。
 冷房によって室温は涼しく保たれているから、室内においては当然のように薄着が可能で、屋外で出来ない反動か、ラフな格好をしているものも多い。
 その快適な環境を維持するために、宰相府が電力の確保に相当気を使っている事は、あまり深く考えられてはいないのだが。


 /*/

 その日、24時間の非番を使って自宅に帰っていたあるパイロットの少女は、アパートの鍵を締めた所で、同僚の男女二人に会った。

「よ。ちゃんと寝れたか?」
「おはよー。って言ってももう昼だけどね」

 に、と笑う男性と、朗らかに挨拶してくる女性。どちらも少女にとっては先輩で、何かと世話になっている。
 丁寧に挨拶を返した。自分が少し寝過ごしてたことについては、黙っておくことにする。

「次のスクランブル待機まで、まだ4時間あったよな。何か食べてから……」

 二人は自分を食事に誘おうとしてくれているようだった。いつもならば、このままファミリーレストランかファーストフードにでも入って談笑しつつ時間を潰す所だろう。
 ただ、今日の彼女には、これから行かなければならない所があった。

「ああ、その前にメディカルセンターか。しんどいよな、あれ」

 スクランブル待機に入る前に、宰相府メディカルセンターに行かなくてはいけなかったからだった。
 本当は二人と一緒に昼を食べたかったが、我慢して誘いを断ることにする。

「仕方ねえって。投与サボった時の疲れ具合なら俺も知ってるし」
「強化措置受けるのって着任から少しの期間だけだから、乗り越えれば楽になるよ。頑張って」
「ま、体調不良が続くようなら申告すりゃ投与量調節してくれっから。我慢できないくらい苦しかったらちゃんと言うんだぞ」

 誘いを断った事を気にするどころか、自分を気遣ってくれた二人に感謝し、メディカルセンターに向かうことにする。
 
「うん。じゃ、また後でねー」
「遅れんなよー」

 先達に恵まれているのは、帝国軍のパイロットをやっていて良かったと思う理由の一つだ。

 /*/


ドラッガー

 体に多大な負荷のかかるパイロットを続けていくためには、体力・技術を鍛える訓練だけでなく、直接的な強化もある程度必要になってくる。
 そのため、パイロット養成過程及び実戦配備当初には、薬物による強化措置が施されることになっていた。
 薬剤投与対象については、執拗なまでに精密検査が繰り返される。あまりにも多いのでパイロット達からは面倒だと不評だが、
薬物障害や後遺症の出ないように、かつこれから長く続くパイロット生活に耐えられるようにと、軍が細心の注意を支払っているお陰で、彼らが助かっている部分は間違いなくあった。

 とはいえ、ドラッグはやはりドラッグ。体に対するマイナス効果が0になるわけではないため、パイロットの訓練と習熟が進むに従って、自然と投薬量は制限され、やがてほぼなくなることになる。
 元々、心技体が揃いきっていないパイロットの生存性を上げるための処置であり、鍛えた業は強化など凌駕するという事を、帝國軍では誰もが知っているから、
新米パイロット達は皆、早くドラッグなどに頼らなくていいようにと、日々訓練に明け暮れることになる。
 同時に、支給された薬物を投与する姿を、仲間に見られたくない、というような事を考える者も多かった。未熟の証明を人に見せるのが嫌だ、という者も、いておかしいことはないだろう。


 /*/

 少女はメディカルセンターを出て、今は使われていない旧施設に忍び込んだ。
 精密検査には、詳細なデータを何度も繰り返し取得し蓄積することで、パイロットのその後の健康管理を効果的に行うという目的もあるのだが、それでもこんなに頻繁では疲れもする。
 処方された薬物と投与器具を取り出して壁際に座り、指示通りに体へと投与する。

 少し体が軽くなるような感覚。同時に、軽い倦怠感。
 やはり、こんなものに頼りたくない、と思った。

 投薬が終わると、少女は立ち上がる。そろそろ非番も終わり。スクランブル待機のために集合しなくてはならない。

/*/


パイロット

 パイロットの仕事とは、基本的に『守るべきものを守る事』である。
 任務は数多くあり、その合間にこなすべきタスクも山のようにあるが、大本を辿れば、全てがそこへ帰結する。
 訓練を行うのは任務の達成率を高めるためであり、任務の達成率を高めることは、作戦成功率を高める。そして、作戦成功率が上がるほどに情勢に対する影響力は強まり、
結果として防衛対象である民衆の安全に繋がるのだった。

/*/

 その防衛のための一歩に、スクランブル待機というものがある。
 不意に敵性組織などからの攻撃があった事を察知した時、最速で現場に急行するための待機人員の事で、
いつでも出撃出来る状態を維持するために、長時間飛行場に詰めて待機することをさす。

「退屈しのぎにしりとりでもしないか!」
「やだ。あんた弱いし」

 先輩二人と待機を続けている少女。新米である彼女が一人でスクランブルに応じるなどという事は当然ながらなく、
経験豊富なベテランとチームを組んで、今は発着場のロビーで三人、くつろいでいた。

「お前、スクランブルに出くわしたこと、あったっけ?」

 退屈を紛らわすためか、男性の方の先輩が話しかけてくる。
 スクランブル待機は何回か経験していても、本当のスクランブルに出くわすケースは珍しい。
 正しくは、スクランブルがあっても実戦になることが珍しい。

「ああ、誤報には出くわしてるよな。やる気削がれるけど慣れだ、慣れ」
「あればっかりはねー。管制室の人も別にサボってるわけじゃないし」

 未確認機影を見つけても、それが敵性存在である場合など、そう多くないのだ。
 本来の航路を外れてしまった民間機などと出くわすケースも多い。

「ま、そういうのを見逃さないからこそ、いざ事件がおきた時も遅れずに対処できるって事だ」

 疲労はするが、それでも彼らは守るべき物を守っている。
 それを誇らしいものだと、彼女は感じた。
 その時。

『30A11、30A11、D32のポイントに未確認機影あり。待機中の各員は――』

 スクランブルが、かかった。
 先輩二人を見ると、もう姿がない。走り出している。
 慌てて、後を追った。

/*/

 新人時代の彼らは、決して特別な強さを持っているわけではない。
だが、胸にしっかりと誇りを抱き、守るべきものを心に持っている事については、後の姿と何ら変わりない。

 彼らが着ているパイロットスーツ、宰相府のモチーフカラーである白を基調としたその姿については、男女問わずパイロット全体から人気が高い。
 砂塵と共に舞う風にマフラーを棚引かせるその姿は、宰相府の子供達の憧れの的となってもいる。

 宰相府藩国、帝國軍パイロット。それは、弱者を守る剣であった。


[No.1841] 2008/06/21(Sat) 01:30:27

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