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all T14新規アイドレス作業ツリー - アポロ - 2009/04/12(Sun) 15:58:55 [No.2289]
食品加工工場 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:01:23 [No.2291]
締切変更 - アポロ - 2009/04/27(Mon) 02:05:11 [No.2317]
文章進行状況 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:03:04 [No.2294]
食品加工工場〜酒造〜(東西天狐)第一稿 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:12:36 [No.2300]
食品加工工場〜生命の水〜(東西天狐)第二稿 - 天狐 - 2009/04/23(Thu) 08:54:06 [No.2313]
食品加工工場(東西天狐)第一稿 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:11:20 [No.2299]
食品加工工場(玄霧弦耶)第一稿 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:08:58 [No.2298]
イラスト進行状況 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:02:35 [No.2293]
外観 - しじま - 2009/04/24(Fri) 01:07:34 [No.2314]
食品加工工場 - イク - 2009/04/12(Sun) 17:36:41 [No.2304]
ページ構成進行状況 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:02:08 [No.2292]
進行状況1 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:16:31 [No.2302]
進行状況2 - アポロ - 2009/04/21(Tue) 00:51:05 [No.2311]
進行状況3 - アポロ - 2009/05/28(Thu) 02:09:45 [No.2327]
進行状況4 - アポロ - 2009/05/28(Thu) 10:44:19 [No.2328]
確認ー - 玄霧弦耶@藩王 - 2009/05/28(Thu) 18:04:39 [No.2330]
お料理教室 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:01:00 [No.2290]
締切変更 - アポロ - 2009/04/27(Mon) 02:06:21 [No.2318]
文章進行状況 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:04:53 [No.2297]
お料理教室(玄霧弦耶)第一稿 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:14:16 [No.2301]
イラスト進行状況 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:04:15 [No.2296]
進行状況1 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 17:53:24 [No.2305]
土日になるけど - イク - 2009/05/28(Thu) 21:00:08 [No.2331]
進行状況3 - アポロ - 2009/07/17(Fri) 00:29:22 [No.2394]
ページ構成進行状況 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:03:47 [No.2295]
進行状況1 - アポロ - 2009/04/12(Sun) 16:17:04 [No.2303]
進行状況2 - アポロ - 2009/04/21(Tue) 00:52:51 [No.2312]
進行状況3 - アポロ - 2009/05/28(Thu) 13:09:17 [No.2329]


お料理教室(玄霧弦耶)第一稿 (No.2297 への返信) - アポロ

#修正予定の第一稿だそうです、おつかれさまです!
#以前にいただいたものを代理投稿させていただきます。(アポロ)



『つまりはこういいたいんです』
『もっと皆さんと触れ合う場を作りたい』
『そう持ったとき、自分に出来るのはこれしかないと思ったんです』

                            22309002 玄霧弦耶、料理教室完成の際の言葉。


/*/


内乱からの復興が続く玄霧藩国に、食品加工工場に続き、新たな施設が建造された。
『玄霧藩国料理教室』
その名の通り、料理を教える教室である。
ただこの教室は普通の料理教室と違い、実技だけではなく、医食同源の考えから食事も予防医学の一環とし、食育を通じて「食」に対する理解や知識を増やす場でもあるのだ。

とはいうが、実はこの施設はそんなに大きくない。精々、大き目の一軒家程度である。
それというのも、藩国内でこういった分野に詳しい人間はそんなに多くない。
また、この教室の真の目的は、料理を通じての国民と藩王たちとの交流にあった。
そのため、数人のスタッフと、協力してくれる数少ない国民達で回る規模の大きさになった。と言うわけなのだ。

しかし、規模は小さいが、中身はなかなかに充実している。
教室が開くのは授業二回の実技二回で週に四回。一週間で一つ〜二つの料理の作り方と、食材の旬や見分け方等が判るようになっている。
そうして、和食洋食中華でローテーションを組み、授業が進められていく。
授業に出るには事前登録制で、参加したい週と作ってみたい料理の確認をとった後、一週間分の料金(材料費込み)を支払い、登録したら後は当日に通うだけである。
機材や材料などは全て教室側で準備してくれるというわけだ。
また、週に3週は和洋中で決まっているが、それでは4週目(或いは5週目)が余ってしまう。
これはどうするかというと、作りたい料理がどうしてもかみ合わない人たちの為の週であり、授業と実技が一緒になった一日分の料金のコースに当てるのだ。
主にデザートなどを学ぶ人は、一日で終わるこちらのコースを選ぶことも多い。

/*/

『身土不二』という言葉がある。
仏教用語で「身」(今までの行為の結果=正報)と、「土」(身がよりどころにしている環境=依報)は切り離せない、という意味である。
これを転じて、食養運動のスローガンとして「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い。」という意味として使われている。

科学的根拠から言えば、旬の食材は栄養価が高いなどという事もあるが、この場合はこう言いたい。
『気候、風土、土地。そこで育った人は、そこで育った食べ物と共に生きる』
同じ土地で生まれたものは、同じ成分でできてるのだと。


『食育』という言葉がある。
「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること、とされている。
生きるための基本的な知識であり、単なる料理教育ではなく、食に対する心構えや栄養学、伝統的な食文化についての総合的な教育のことである。

だが、ここはもっともらしい言葉を用いて説明するより、こう説明したいと思う。
『美味しくて体にいいものを食べることができれば、人は健やかに育つ』
つまりは、そういうことなのだと。


『医食同源』という言葉がある。
元は薬食同源思想から作られた造語である。適切な食事を取ることによる予防医学の一種であり、薬膳による食の医療作用を表現している。
五行思想における「木 火 土 金 水」に対応した「酸 苦 甘 辛 鹹」の五味と「熱 温 平 涼 寒」の五気。
五味や五気にあわせた五畜(馬 羊 牛 鶏 豚)、五果(李※スモモ 杏 棗 桃 栗)、五穀(麻 麦 稲 黍※キビ 大豆)、五菜(韭※ニラ 薤※ラッキョウ 葵※オクラ等 葱 ?※豆の葉)。
さらにそれらを取ることで「肝 心 脾 肺 腎」の五臓が満たされると古くから言われている医学でもある。

ただ、そんな小難しい理論より、こっちのほうがいいだろう。
『食べ合わせのいい物を使って料理をすれば、より美味しい』
料理は楽しくなくてはいけない。難しい話は二の次なのだ。


玄霧以下のスタッフは、これらの考えや教えを基に、「食の大切さ」と「料理の楽しさ」を国民に教えつつ、料理を通じ、一つの作業を共にすることで国民に呼びかけようとしたのである。
もう一度、手を取り合うことが出来ると。
我々は、仲間なのだと。

/*/

完成してから暫くは、周囲にどのような内容か簡単に説明する必要などから、一日で簡単な授業から、直ぐに出来る料理の説明と実習が多く設定されている。
そのときは主に、クッキーの作り方や、ケーキの作り方などといった藩王がよく作っているものから教えていたようだ。

そうしてから暫く後、実際に本来の時間割で進むこととなる。
週の初めの二日分は、座学の時間。中休みがあって、次の二日分で実技。週末には練習した料理が自分で実践できるようになるのを目的としている。
座学の時間は、使う材料や調味料の扱いからはじめ、その週で作る料理によって詳細の異なる授業になる。
例えば作るものが和食なら出汁の取り方から学び、中華ならば中華鍋の扱い方、洋食では用途にあった道具の説明等で、それから更に煮物揚げ物炒め物で油の扱いや火力に下ごしらえなどを詳しく教えていく。

例えば、メジャーなところでエビフライ。
料理は五感、即ち、見て楽しみ、香りを楽しみ、食感と音を楽しみ、味を楽しむものである。
見て楽しむ為には綺麗な色で、香りを楽しむ為には油に拘り、食感と音を楽しむには適切な温度で揚げ、味を楽しむにはそれら全てに加えて下ごしらえが大事になる。
まずは、蝦の尻尾の先を少しきり、尻尾の中の水分を包丁でだし、蝦の背ワタ取る為に蝦の第二関節から第三関節の間に爪楊枝(竹串)を入れて引き上げることで抜き取り、腹のほうに斜めに切れ込みを入れることで、ピンと綺麗に揚がる。

 #背中のほうにも切れ込みを入れて叩いて伸ばす方法もあるが、個人的には蝦の食感が乏しくなるのでこうしたほうが美味しい、と昔親から習いました。

ただ、この当たりのことが完璧に出来たほうが勿論良い。が、だからといって失敗したことを責めることは無い。
料理は、まず挑戦するのが大事である。
家庭で自分や家族の為に作る。そう思うことこそが第一歩であり、一番大事なことなのだ。
いかに技術的に優れていても、気持ちの入ってない料理は見た目だけ豪華なものと一緒で、なんだかガッカリしてしまうものだ。
やはり、『料理は心』、である。自分は、これを至極名言だと思っている。

/*/

では、ある一日の風景を覗き見て、実際どのような感じで授業が進むのか見てみよう。

この日は丁度、デザートのクッキーを教える日だったようだ。

/*/

「えー、一口にクッキーといっても、いろんな作り方があります。恐らく、皆さんが直ぐに思い浮かべるのは型で様々な形にくりぬいたやつでしょう。他には、材料を混ぜたあとに棒状に伸ばして冷やし固め、切り分けてオーブンで焼く方法や、ホイップクリームを搾り出すように生地を搾り出して形作る方法もあります。ちなみに、冷やして固めて切り分けるのがアイスボックスクッキー、搾り出すのは搾り出しクッキーと言います。そのままですね。最終的にオーブンで焼き上げるのには変わりありませんので、余り気にすることは無いかもしれませんけど」

壇上で、玄霧がとつとつと語っている。
好きな分野の話だからか、妙に饒舌だ。
余り美味くもない絵を描いて、材料や手順などを説明している
なお、アイスボックスクッキーと型抜きで作るクッキーの違いはそんなに無い。
精々が冷蔵庫で寝かせる時間程度である。あと、バターの量と、艶出しの卵黄を塗るかどうか。

「で、せっかくなので今回は手軽に出来るアイスボックスクッキーのほうをしましょうか。大体の作り方は、バターを練る、砂糖を二回ぐらいに分けて加えて更にバターを練る、卵を溶いたものを三度くらいに分け入れながら混ぜつつ、バニラエッセンスを加える。その後、薄力粉を振るいいれてよく混ぜたら冷やして固めて切って焼けば出来上がり、ということです。あとは冷やす前にお好みで隠し味を入れるとチョコやミルクなクッキーになります」

と、説明しつつエプロンと三角巾を身に付けていく。
今まで聞いていた生徒達もそれぞれ身に付け、手を洗って準備万端である。
ざっと見回してみると、壮観である。
藩王以外は殆ど女性ばかり。中には男性の姿もあるが、どうにも居心地が悪そうではあった。
中にはそんなに参加しづらいのか、外から眺めている男性もいる。
そんな様子を少し苦笑しつつ眺めた後、外に向かって呼びかける。

「そこで見てても判りにくいでしょうし、どうです?一緒にやってみませんか?参加費用はおまけしておきますので」

すると、一人だと思っていた男性が二人、三人、四人と増えていく。
どうやらどこかに隠れていたようだ。女性もいる。
落ち延びていた暗殺者達が様子でも探りに着たのか?と一瞬思うものの、気にしないことにした。
それならそれで、料理教室を開いた意味も、ある。

「じゃ、後から参加した人も三角巾とエプロンを付けてくださいね。手もちゃんと洗って。・・・はい、では皆さん。黒板の手順の通りに始めましょう。まずはバターを泡だて器で練ってくださーい。判らなかったらなんでも聞いてくださいねー」

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数分後。

「すいませーん!バターが全然練れないんですけどー」
「あー、こりゃ力が足りないね。ある程度までは練ってあげるんで、その後は自分で頑張ってみてね」

「あの、なんか砂糖入れたら塊が・・・」
「あぁ、これはちょっと面倒だな。砂糖を入れるときは一気にいれずに2・3回に分けなきゃ」
「どうしましょー・・・」
「大丈夫大丈夫。泡だて器で潰すようにして内側から外に伸ばすようにしたらある程度はなんとかなるよ」

「た、卵混ぜてたら分離してきたんだけどどうしたらいいですか!」
「うむ、まだ慌てるような時間じゃない。落ちついて混ぜ続けるのだ。バニラエッセンスも忘れずに」

すいすいと作っていく者もいるが、何人かはなかなかに悪戦苦闘しているようだ。
先ほどの途中参加の面々は黙って黙々と作業を続けている。まさに機械のような手つきでこなしていく・・・と思いきや、卵が美味く割れなかったりもして中々に面白い。
それでも、玄霧自体が誰かに何かを教えるのが好きなのと、料理が好きなのが効いたか、定期的に見回り、丁寧に教えて回ったお陰で大きな失敗をするものもなく、のんびりと楽しく時間が過ぎていった。
そうして、暫くたったころ。大体の人が卵を混ぜ終わった頃に玄霧が声をあげる。

「はーい、じゃー薄力粉とかを入れる前に注目して下さい。このまま粉だけを入れるとプレーンクッキーになりまーす。で、ここでココアとかお茶とかハーブとかを練りこむと、それぞれの好みの味付けにすることが出来ます。練乳とかを混ぜてミルク味にもできますねー。基本、甘みか少し苦味のあるものだったら失敗はしないので、挑戦してみたい人は挑戦して見ましょう。但し、自分でも食べれないものは混ぜないようにー」

はーい、という声が聞こえ、それぞれが思い思いの材料を混ぜている。
何も混ぜないものもいれば、ココアの粉末を混ぜるもの、牛乳と粉ミルクを多く混ぜるもの、中には摩り下ろしたニンジンを混ぜているものもいる。
なんだか不思議なものを混ぜているものもいたが、この時点では誰も気づいていなかった・・・

/*/

混ぜ終わって冷やし、固まるのを待つこと暫く。
その間は、質問に答えたり、ちょっとしたウンチクを語ったり、世間話に花を咲かせる皆を見たりですごしながらも、皆一様にワクワクしていたようだ。
初めて作るものでも何度も作るものでも、やはり皆で料理を作ってる間の話というのはどんなときも楽しいものだ。
そうしておおよそ1時間半ほどたった頃、懐中時計をみて玄霧が言う。

「よし、じゃあそろそろ見てみようか。掌で押してへこまないくらいに固まってたら、包丁かナイフで切り分けて、オーブンで焼きまーす。硬いので気を着けてねー。オーブンの温度は170℃にあわせて下さい。今回はこっちで設定しておいたので、そのままいれてOK。大体20分くらいで焼きあがるので、表面がいい色になってきたら取り出してねー。火傷にだけは十分注意するようにー」

冷やす時の形次第で思い思いの形に作れるが、今回は簡単に棒状か直方体にかため、輪切りの要領で形作っていく。
厚さは、大体4mm程。まぁ、そんなに気にせずとも、薄すぎず厚すぎずなら問題は無い。

「焼いてる最中はじっとオーブンを見るのもよし、本でも読んで時間を潰すもよし。他のことで時間を潰す人はそっちに夢中になって焦げないように。白状すると、自分が既に何度もやってるのでガッカリ感はしゃれにならないよ?」

などと言いつつ、玄霧もオーブンに自分の作品を入れる。
今回はプレーンとチョコの二層の渦巻きクッキーだ。二つの生地を用意し、薄く延ばして重ねて丸めて形を整えれば出来る。
あとは、20分程度のんびりしながら香ばしい匂いがするのを待つだけだ。

「あ、そうそう。いい匂いがしてきても、表面がなんかやわらかそうなときがあります。そういう時も一旦取り出して冷ますように。冷えればいい感じに固まってくるので、失敗じゃありませんよー」

……体験談である。
一番最初に作ったとき、バターが多かったのかオーブンの火力が弱かったのか、なかなか表面が固まらず何度も焼きなおしたお陰で岩のように硬いクッキーが出来たことが、あった。
案外、表面がやわらかそうでも冷めれば十分固まるものです。これほんと。

/*/

「じゃ、出来上がったようなので試食の時間でーす。皆さん、出来たクッキーをもって向こうのテーブルに移動しましょー」
『はーい!』

さて、実習の一番のお楽しみ。試食の時間である。
講師役である玄霧が参加者の作品を一つずつ味見し、感想を言う。
その後で、皆で食べあって参考にしたり、話の種にしたりする。
ルールは一つ。他人の料理に関して文句はつけないこと。

「では失礼して。お、これはチョコ味かな・・・と、ありゃ、チョットだけ焦げちゃったみたいだね。ココア混ぜると焼き色わかりにくいから。でも、ソレくらいのほうが手作り感があって良いと思うよ、うん。美味しい美味しい」
「はぁ・・・次は色の薄いもの混ぜてみます」

「お、コッチは・・・あ、ニンジンクッキーか。これならニンジンが嫌いな子も食べれるね、うん。後でドレくらいニンジン入れたか教えてくれる?」
「はい。結構多く入れたけど、ちゃんと甘くて美味しく出来たと思います」

「んー、これは・・・えーとネ、何を混ぜたんだろうカナ。舌がピリピリするんだけドネ?」
「あ、そのー。ちょっと毒を。いえ、違うんですよ!命を狙ったとかじゃなくて!忍者の家系は毒物になれないといけないんですけど、ほら、今の子達が中々!」
「うん、わかった、わかったから。取り合えず今回の試食会では持ち帰ってね。何かあったらいかんので」

ぶんぶか手を振りながら弁明する女の子を宥めつつ、次のを食べる。

「で、これは・・・ハーブかな・・・んー・・・ん?」

ピタリ、と玄霧の動きが止まる。
作ったのは、後から参加した面々のようだ。とりあえず、皆に少し待つように言い、その面々を部屋の隅に連れて行く。

「その、なんだ。こんなこと聞くのも野暮なんだが、これ、スペースなお菓子(#1)じゃない?」
「・・・ええ、良くご存知で。普通食べただけではわからないと思ったのですが」
「あー、うん。アレから色々勉強してね。前に大麻の葉っぱを使った料理を一度だけ作ってみたわけだが、それに味が似ていたんで気になってな」
「ご安心を。医療大麻(#2)として処方されているものです」
「・・・分量は?」
「そちらについては我々も心得てますので。食べても大きな害はありませんよ。逆に薬物依存にも効果がある(#3)のはご存知でしょう?」
「む・・・確かに開いた文献の中にはそういう描写もあったが・・・エビデンス(#4)は取れてないし・・・ソレについては後で話をさせてくれ。兎も角、流石に皆で食うわけには行かんので、後でお茶でも飲みながら話そうじゃないか」
「まぁ、仕方ありませんな。チョット試しただけで、我々も害を与えるのが目的ではありませんので」
「判ってくれて嬉しい。では、戻ろうか」

#1:一般に、お菓子などの生地に大麻を混ぜたものをスペース○○(○○にはお菓子の名前が入る)という。合法な国に行けばスペースケーキとかが食べれるけど、日本では違法です。
#2:大麻を使用した医療方法。現実でも一部の国で認可されており、現在も研究中なところが多い。前出のスペースお菓子を治療の際に使うことも多い。
#3:コカインやヘロインのような依存症の強い薬物から脱却する為に、依存性が低く、耐性の付きにくい大麻を使うことがある。なお、場所によってはこれも違法なので注意。日本ではアウト。玄霧藩国では医療用などに限り合法。
#4:科学的根拠のこと。大抵の場合、ある治療法がある病気に対して効果があるか検証した証明・証拠のこと。

と、密談を終えた後、毒入りクッキーを横に避け、皆でクッキーを摘まみながら紅茶を飲む。
これが和食や洋食などを作るときは流石に紅茶は出ないが、同じように皆で囲んでつまむ。

「座学でも軽く説明したけど、五行説の考えでは相生というのがあってね。例えば、クッキーの原料である麦は五行の火。砂糖で味付けしたことによる甘みは五行の土でね。火は物を燃やし、灰になったものは土にかえるという『火生土』の関係なんだね。で、昔からこういうレシピが残ってるって事は、皆なんとなく感じてたんだろうね。あとはまぁ、やっぱり自分の国で取れた物を料理するのはいいね。ウン」

美味いものを食べて気分が良くなったか、座学の続きを藩王が語る。
真剣に聞いてる者もいれば、適当に流して聞いてるものもいるが、特に気にすることも無く聞いてくれるものに話をしている。
と、その時。

「まーたペラペラ話しちゃって。なに?浮気?」
「げぇっ!火焔!!」

こつん、と玄霧の頭を叩きながら火焔が声をかけてきた。
どうやら様子を見に来たらしい。政治面の細かい部分を摂政たちに任せたことを怒ってるのかも、しれない。
なお、ジャーンジャーンという銅鑼の音が聞こえた人は耳鼻科に行くことをオススメする。

「なにが『げぇっ!』よ。・・・ふーん。邪魔しちゃった?」
「いや、違う、断じて違う。ようこそいらっしゃいました火焔様!ささ、お席にどうぞ」
「ま・・・いいけど。お、クッキーじゃん。いただきー」

横に取り分けておいたクッキーを火焔がおもむろに摘まむ。
まぁ、少しくらい減ってもかまわない、と見逃していたのが運のつきだった。
モリモリ食べてた火焔が急に倒れたのである。それも、派手に。
『バターン』という擬音がピッタリな倒れ方をした火焔に、周りの者もざわつきだす。

「ちょ、何で?・・・って、さっきの毒入り食ったのか!横に避けてたのに!だだだだれかこの中にお医者様はおりませんかー!」

玄霧、PLACEみなしに医療行為がない男。
運悪く、活動しやすいPLACEを着用して料理していたのであった。

「あ、あの、ええと、それ作ったのアタシなんですけど、大丈夫です!」
「ナニガー!一体何が大丈夫なのさー!」

もはや@@である。
製作者の女の子(参加申請の書類によると15歳)の肩をガクガク揺らしながら問い詰める。

「えっと、これは精々が舌先が痺れるくらいしか入れてないので、作った分全部食べてもあんなに派手に倒れることは無いはずなんですよー!」
「でも実際倒れてるんですけどどうしたらいいんですか!」
「だ、だから、ビックリして喉詰まらせたんじゃ・・・ないかなーって・・・」
「それもっと早く言いなさいよ!」
「言おうとしたんですけど藩王がー!」

取り合えず女の子をガクガクするのを止めて、火焔の背中を叩いてみる。
咳き込むと同時に、クッキーの塊が口から飛び出る。
少し勿体無いが、吐き出したものを食べるわけにもいかないので拾ってテーブルの端に置き、火焔の解放を続ける。
飲んでいたお茶を渡し、飲み干すこと数秒。ようやく火焔が大きく息をついた。

「あ゛ー・・・死ぬかと思った。うぇー」
「あー。その。すまん。こうなるかもしれんと思って避けてたんだが」
「もー。なにこれ、なに入れたらこんな味になんの?」
「えーと、多分、毒?」
「・・・・・・・・・」

視線が、痛い。
俺が悪いんじゃない、とかの弁解の言葉も出ず、ただ慌てて周囲に救いの視線を送る。
右を向く。目が合った男性が全力で目をそらした。ハハハ、こやつめ。
左を向く。多数の生暖かい視線が注がれる。こやつめハハハ。
後ろを向いてみる。このクッキーを作った女の子が地面に付くほど頭を下げている。チィ、これは責められぬ。
覚悟を決めて、正面を向く。怒った火焔がいる。ドウシヨウ。

「いや、違うぞ。そういうのを教えてるんじゃなくてだな。チョットした事故と言うか」
「・・・何か言うことは?」
「スイマセンデシタ。ワタシガワルカッタデス。ゴメンナサイモウシマセン」
「よろしい。じゃ、美味しいの頂戴。舌の痺れないヤツね。」

無名世界観の女性は強いのが多いとはいえ、やはり尻に敷かれる運命なのだろうか。
今後、大変そうである。

/*/

以上が、ある日の風景である。
どうにも特別な一日のようにも見えるが、特にそういったことは無い。
むしろ、他の日のほうがすごいこともある。
和食で煮物を作って鍋が吹き零れて大騒動や、中華で中華鍋の扱いで大騒動や、洋食のオムレツをひっくり返すときに勢いを付けすぎて大騒動など、大抵何かがあるものだ。
だが、それもまた、過ぎれば楽しいものである。食材も生き物であるので、料理が台無しになるのはなるべく避けたいのも本音ではあるが。
まぁ、大怪我をしない限りは概ね問題ない。道具や機材の修理は出来ても、命の修理は出来ないものだから。

「人を良くすると書いて食。食というものは生きるうえで重要であると共に、精神的成長にも必要なものである。と・・・」

政庁の中にある寝室で、そこまで書いて、玄霧がペンを止める。
どうやら、料理教室での出来事を日誌に書いていたようだ。

「で、なにやってんの?」

後ろで髪を梳いていた火焔が声をかける。

「あぁ、せっかくなので日誌をつけようかなと思って。何の料理作ったとか判ると被りも少ないし」
「へぇ。暇人ねー」
「・・・いや、まぁ、うん。そうかも。日誌の最後の部分書いたら相手します」

いずれ、この料理教室で学んだことを何かに生かす人も出てくるだろう。
それは家族へのちょっとしたお返しだったり、愛する人へのプレゼントだったり、中には医食同源や食育の考えから医療法の一つとして研究する人も居るかもしれない。
その昔、中国には食医という職業があった。医者の中でも特に優れたものが古代の王たちの食事の調理や管理を任されていたのである。
医者と料理人は、昔は一つだった。ならば、医療国家である玄霧藩国でも、そういった人が出てくるかも、知れない。
それは今の段階ではただの夢物語だが、きっといつかは現れるだろう。
そのときこそ、新しい段階に進めるのではなかろうか。解決策が一つの方向性だけなのではなく、様々な方法から好みの手段を選べるような段階へ。
今を乗り越えれば、きっと。そう願っている。


                                     玄霧弦耶の手記より抜粋。

/*/

○おまけ

今回作ったアイスボックスクッキーのレシピをおまけということで乗っけます。
皆も是非作ってみてください。

・材料(およそ20枚分)

バター:80g
砂糖:40g
卵黄:1個
バニラエッセンス:少量
薄力粉:150g

以下、作りたいものによって追加してください。

●ニンジンクッキー
にんじん:50g
りんご:20g
#両方摩り下ろしたものを用意すること

●カカオクッキー
ココア:20g
#薄力粉をその分減らすと粉っぽくなりにくいです。

●ミルククッキー
生クリーム:50g
コンデンスミルク:大匙1〜2杯
#砂糖の量を調節すると甘すぎないものが出来ます。

●レーズンクッキー
レーズン:5〜10g(お好みで)

●ナッツクッキー
好みのナッツ類を砕いたもの:約10g


・下準備

1.バターと卵とを室温に戻す(冷蔵庫から出して30〜1時間放置。冬場の温かい室内だと、バターは様子を見ながら、指で押すと軽く凹む程度)塩が入ってなければいいので、無塩マーガリンでもOK。
2.薄力粉をふるっておく。2、3度やるのが一番良いが、1度でもOK。ココアを入れる人は、他のボウルについでにふるっておこう。
4.レーズンやナッツを入れる場合、刻んでおく。(1個ずつ刻まなくても適当でOK)
5.天板にクッキングシートを敷き、オーブンを180度に温めておく。


・作り方

1.ボールにバターを入れ、泡だて器でクリーム状になるまで練る。

2.クリーム状になったら砂糖を2度くらいに分けて入れ、さらに白っぽくなるまで混ぜる。

3.解きほぐした卵を3度くらいに分けて少しずつ入れる。加える度にしっかりと混ぜること。分離しそうになっても慌てずに掻き回し続けること。バニラエッセンスもこのとき加える。
#分離しかけるのは結構良くあるので、落ちついて対処しましょう。

4.泡立て器からヘラに持ち替えて、ふるった粉類を混ぜる。このとき、切るようにして混ぜると良い。
#このまま焼けばプレーンなクッキーです。

5.他の材料を加える人は、それぞれにボウルに入れて再度混ぜ合わせ、3センチくらいの筒状にしてラップで包み、冷凍庫で1〜2時間固める。

6.固まったら4〜5ミリ程度の厚さに切り、170度のオーブンで17〜20分焼く。オーブンによって時間は5分くらいは前後するので、中の様子を見ながらがお勧めです。

7.焼けたらオーブンから出し、荒熱を取ってからヘラなどで掬うようにして取り、キッチンペーパーの上などで冷ます。

8.完全に冷めたら、美味しく食べれます。余った分は、別のキッチンペーパーをしいたタッパーなどに保存しましょう。


チョットくらい焦げても、それはそれで美味しいものです。
是非、挑戦してみてください。


[No.2301] 2009/04/12(Sun) 16:14:16

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