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...Scene One.-from the School. 玄霧藩国にも学校はある。この学校、年齢性別無関係にとにかく学力だけを見て授業レベルを考えているので、クラスの中に大人も子供も交ざっていたりする。それ故に学術面でのレベルこそ高い物の、その裏では年齢差によるちょっとした差別やいじめが問題となっていた。 そして今日はその学校で特別講師による授業が行われていた。例えば技師というか絵師である茅西瑠果(以下るかやか)という人がいる。るかやかはどちらかというとだんまりの人物で、あまり多くを語ることはない。むしろ聞き役である事が多い人物だった。 今るかやかの前では何人かの生徒達がカンバスを手に、油絵を描いていた。書いている内容は想像上の生き物だったり、目の前の花瓶だったり、窓から見える景色だったり様々である。この授業は何故か子供に人気で、授業中はとにかくひたすら絵を描いていることが多い。 そこに、部屋に入ってくる者がいた。文士黒霧と大族大島だった。大島はいつものごとくマタタビ手の醸造所で酒の臭いにうっとりしていたところ、黒霧に出会って引っ張り出されてきたのである。 珍しい客人に、るかやかはわずかに眉を持ち上げて首をかしげた。あまり口を開かないるかやかになれていた二人は、てきとうに片手を持ち上げるだけで挨拶をすませた。 「藩王を見なかったか?」 黒霧が聞くと、るかやかは不思議そうな顔をした。不思議そうにしているのにどこか堂々としている感じがする、それがるかやかの持つ七不思議の一つであった。 「どうやらまたあの二人が逃げたみたいでな」 「そうっ。今度こそこの俺の改造手術を受け入れてくれる気になったんだ!」 大島は突然叫んだ。小学生のような小柄な体をばたばたさせて興奮している。るかやかはそれを見て、ゆっくりと右手を握り、人差し指だけをたてて口元に持って行く。静かに、と言う合図。 見てみれば、生徒達が驚いたように大島を見ていた。実はこの中で一人、大島ではなく黒霧を見てびっくりした顔をしている女子がいたが、黒霧は視線が集まった恥ずかしさで顔を手で覆っておりこのことには気づかなかった。 「まあ改造伯爵あれこれはおいておくとして」黒霧はどこかひからびた声で言った。「実際問題、この時期にあの二人がいないと話が進まない。いや、まあ如月の方は別にいいんだが、玄霧藩王がいないのは流石にまずい──ぐあっ!?」 黒霧、突然どこからか飛んできた絵描き用のナイフが頭に突き刺さってきてぶっ倒れる。絵の具のそれとは明らかに違う赤い液体がぶしゅーと噴き出した。 「死んだな」とるかやか。 「改造してくる」堂々と大島。 改造って何だろうとささやき始める子供達。何故か黒霧を助けようという気持ちにはならなかったらしい。好奇心は簡単に人を殺す物である。 大島はぼんやりと子供達を眺めた。いやー最近の子供って自分の正直というか周りを見ないというかとにかく死にかけたとき彼らを頼るのだけはやめようと思う。と、ふと気づく。 「って、如月さん!」 「うん。玄霧さんもいるよ」 腕を組んで頷くるかやかと唖然とする大島の視界の中には、カンバスの前でがるるるしている如月とどこか遠い目をした玄霧の姿があった。 「なによ、私のこといらないとか言ったのよ、そいつ!」 「まあ俺は投げるならパレットにしておけって言ったんだけどな」 顔を真っ赤にして如月は怒鳴る。一方の玄霧は「あーあ見つかっちゃった」と諦めたように呟いていた。 「……って、あっ! 俺、あんた達を捕まえるんだった!」 目の前の衝撃的な出来事に彼岸を見ていた大島は、次の瞬間自分の役目に気づくと二人に駆け寄っていこうとした。 が、それよりも早く、二人は同時に立ち上がると、窓を蹴破って逃走を開始。瞬く間に森の中に紛れていってしまう。 大島は「待てー」といいながら追撃に出た。子供達はすでに黒霧にも藩王達の存在にも興味を失ったのか、自分達のカンバスに集中していた。 るかやかは少し考えた後、隣の教室で絵を教えているくぅに連絡を取り、何人か人手を呼んで黒霧を搬送させた。そして雑務を全て片付けたところで、ちょっと気になって玄霧と如月の向かっていたキャンパスを見た。 「おや、これは」 るかやかは先日起こった妙な噂を思い出した。確か藩王はソックスだらけで、如月はへそくりをうばわれとむっつりしながら会議に出席したという。 玄霧のカンバスにはふくれっ面の如月が、如月のカンバスにはソックスだらけで顔を引く尽かせている玄霧の姿があった。 [No.300] 2007/01/10(Wed) 21:03:09 |