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...Scene Two.-from the Lakeside. 玄霧藩国の湖畔は森の中を進み、砂鉄工場を抜けた先にある。森の中にある広い湖畔は静かで涼しい空気に満ち、空きの季節には赤と黄色の目にまぶしくなるような彩色の姿を見せる。 そこにいたには技族のイクと文月、吏族の睦月の三人だった。ある意味で珍しい組み合わせといえるこの三人は、それぞれの事情があってここに集まってきていた。イクは戦争準備で疲れたのでエスケープ、文月はそれに付き合わされてきたのである。ついでに言うと、イクは一人で出て行く根性が足りなくて強引に文月を引っ張ってきた趣がある。 「あ、ヒトデ発見しましたー」と文月。 「ひ、ヒトデ? え、えー、でも」慌てるイク。 あわてるイクを見て何故かおたおたし始める文月。こんな風に二人でパニックに陥っていると、会議滅茶苦茶になったので面倒くさくなって単独エスケープしてきた睦月が合流して 「ヒトデは湖にはいないでしょう」 と冷静に突っこむ事で、場が収まったのである。 今はちょうど場が収まり、三人そろって湖の畔に座り込んでぼんやりと景色を眺めていた。 「平和ですねー」と文月。 「そうでもないよ」 睦月はそう言うとため息をついた。実際最近は平和でもないのだ。同じ共和国のフィーブル藩国は戦場と化して、正体不明の要塞艦やらが現れているという。また犬の事だからどうでもいいけどわんわんの方ではなんかものすごい兵器が出たとかでわんわん悲鳴を上げているとか。その結果、両国共にI=D開発に着手してすぐさま試作品を生産、現在では両国共同でのテスト飛行を行っている。その間にも一部の吏族は招集されてすさまじい量の仕事をこなしているのだ。テスト飛行が終わる頃には聯合陸軍が結成されていることだろう。 「こんなに平和なのは今だけかもしれないね」 睦月がぼそりと呟いたときだった。 ぼこり、と音を立てて湖がせり上がった。 「ふわっ!? つ、津波! 津波ですよイクさんっ!」 「あわわわわ、え、で、でもでも、はわーっ」 「湖で津波というのも変よね。……え、何これっ!?」 睦月は思わず叫んだ。湖から現れたのは巨大ななまめかしい星形──巨大ヒトデだった。 思わず腰が抜けた三人。イクは全身をがたがた震えさせておまけに両手もばたつかせてすさまじい慌てっぷりを披露した。 そして謎の巨大ヒトデはゆっくりと三人の方へと近づいていこうとして── ぴたり、と動きを止めた。 「よー、久しぶりー」 「……は、藩王様!?」 「は、はにゃーっ!」 「言葉になってないよ、イク」 木陰から現れた藩王はものすごい嬉しそうな笑顔で巨大ヒトデに近づいていった。ヒトデはのそりとなまめかしく動く。その動きのいやらしさに、思わず藩王以外の三人はうめいた。 「いやー、しばらく見ないうちにでかくなったな。何食ったんだ? って、おー、小さいのもいる! そうかついに子供(?)作ったのか。おっきくなれよー」 巨大ヒトデはぶるぶるふるえると、こっくりと頷くように体を折った。それからばしゃんと音を立てて湖に沈んでいく巨大ヒトデ。小ヒトデはその後を追うように、波にゆられて湖の奥へと向かっていった。 藩王玄霧は振り返ると、いまだ硬直している三人を見た。 「いやさ、あれ、俺の旧知の友人でね」 「そ、そうだったんですか! 類は友を呼ぶですねっ!」 何故か感動したように文月は言った。藩王は腕を組むと、心からの悩ましげな表情を作ってうつむいた。 「これって喜べないよなー」 「は、何ですか藩王様っ!」 「いや、ちょっと世の中って複雑だよなって思ったところ。……あれ、おまえらなんでそんなびしょびしょなんだ?」 よく見れば三人ともぐっしょり濡れていた。それどころか、イクはタイミングが悪かったのかこてんと木陰に倒れている。 「……さっきの巨大ヒトデが倒れたときに、すごい水がしぶきましたよね」睦月は口の端を引きつらせながら言う。 「ああ、そうだな」 「それがもろにかかったんですよっ!」 「……え?」 間。 「あーっ、ごめんごめん。んじゃさよならーっ!」 「もう二度と姿を現すな! いつもいつも妙なことばっかりしでかしてもーっ!?」 慌てて逃げる藩王。いきり立つ睦月をイクと文月が必死になって止めている間に、彼の姿は見えなくなった。 そこから数メートル先の木陰にて。 如月敦子はいまだがたがたふるえていた。というか、ぶるぶるふるえていた。悪寒のような物が背菅にわき起こって体中がふるえている。 その姿を見つけて、玄霧は首をかしげた。どうしたんだーと気軽に声をかける。 「わ、わ、私っ!」 「なんだ? 愛の告白か?」 「違うっ! 私はああいう中途半端にうにょうにょした物が大っ嫌いなのよ!?」 思い切り叫ぶ如月。玄霧はじっと如月を見つめながら、心の中でぽんと手を打った。 「そーか、苦手なんだな」 「違うっ! 嫌いなのき・ら・い。断じて苦手なわけじゃ──」 「そうか。ところで土産に小ヒトデをもってきたんだが──」 「ぎゃわーっ!?」 すごい悲鳴を上げて逃げていく如月敦子。玄霧はげらげら大笑いすると、その後を追い掛けていった。 [No.301] 2007/01/10(Wed) 21:44:11 |