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...Scene Three.-from the Hospital. その頃頭にパレットナイフを突き刺され重傷を負った黒霧は、くぅの手によって病院に運ばれていった。病院の人々は「如月様が御乱心に!」とくぅが言っただけで全てを納得したように黒霧の治療に入り、一時間後にはすべてを終了させていた。 そして黒霧は、念のため入院患者用の部屋での一日待機を命じられていた。この一日入院の理由は怪我のためというよりはどちらかというと如月敦子再襲撃に備えての措置であるとは誰もが知るところである。 患者用のベッドで寝転がっていると、ふとその部屋のドアを吹き飛ばす勢いでとある人物が現れた。 「よー黒霧っ、刺されたって? この間セッションで酷い目に遭わせてくれた仕返しだ。うははは」 「ちょ、お前が仕組んだのか内藤あらため影法師っ!?」 「おうさっ!」 やけに元気のいい声が病棟内に響いた。刹那、すさまじい轟音が全てを叩き潰す勢いで鳴り響いたことに対して疑問視する声は不思議と少なかった。 「い、痛いっ。死ぬーっ」 「やかましいっ。花瓶で頭淵割られたくらいで普通の猫ならともかくおまえが死ぬかっ! だいたい仕組んだことを認めた時点で文句言う権利を完全無欠に一切合切欠片も残さず消失していることに気づけーっ!?」 「どうでもいいけど、それを一息で言ってのけるなんて相変わらずすごい肺活量しているよね、君」 「やかましいっ。貧乳趣味のロリコン大好きソックスハンター=変態にだけは言われたくないわっ!」 「む、それは人種差別!」 最早人種どうこうの問題でもないだろうに。 それから五分ほどかけて己の喉がからっからに乾きはてるまで言い争いをした二人は、タイミングを見計らって「飲み物を買ってきましたー」と言って戻ってきたくぅを天使のように思った。ひったくる勢いで二人は飲み物を口に運んで、一気飲みした。 同時に吹き出す黒霧と影法師。 「熱いしっ。しかも甘い!」黒霧は叫んだ。ついでに言えば猫舌だった。 「お汁粉はないでしょう、さすがに」げほげほむせながら影法師。 二人の反応に慌てながら、くぅは深呼吸して、それからにこりと笑った。 「美味しいでしょう? ちょうど病院の人たちが作って回っていたんですよー」 「……つまりただでもらえるからもらってきたということ?」 「はいー」 「僕はあなたを天使のように思っていたよ」 影法師はどこか遠くを見ながら言った。黒霧は何も言わずにため息をつく。頭ががんがんした。パレットナイフで突き刺されたせい、だけではないだろう。 「で、影法師さん。藩王が散歩に出たって言うのは本当だったんだが……」 「ああ、うんうん。そこは本当だよ。何しろ僕の見ている前で散歩に行こうと抜かしたあげく如月女史と共に大勢の吏族の防衛戦を突破してのけたからね。あれは見事だった」 「ああ、さいですか」 なんで部下と戦ってしかも突破しなきゃならないんだよ、うちの藩王は。黒霧は頭の中に玄霧の笑顔を思い浮かべて、額に青筋を押っ立てた。鬼気を感じて一歩後退るくぅ。 そのくぅの背をぽんと誰かが叩いた。誰だ、と振り返ってくぅは絶句した。 満面の藩王玄霧がそこにいた。 「よー黒霧、見舞いに来たぞっ!」 「いいからあんたはとっとと仕事にもどらんかーっ!」 黒霧は叫ぶと、まだお汁粉が大量に残っていることを確認した上で紙コップを投擲した。玄霧は笑いながらそれをキャッチしてふーふー言いながら食べ始めた。 「俺はもうちょっと甘い方が好きなんだがなー」 「ふん、少しは心配して見に来てやりましたよ」 続いて、玄霧の背中からそっぽを向いた如月敦子が姿を現した。影法師は乾いた笑い声をあげて遠くを見た。戦争勃発まであと十秒。 「見舞いに来てくれたのは嬉しいんですが、もとはと言えばあんたが殺人衝動に駆られたのがいけないんじゃないんですかね?」 「それはあなたが勝手なことを言うからでしょう。私は悪くありませんっ」 「……ほう、そうか。その言葉、撤回するなら今のうちだぞ?」 「何故私が撤回しなければならないのよっ!」 ぶつん、と何かが黒霧の頭の中ではじけ飛んだ。瞬間病室の気温が下がったように感じられたのはおそらく影法師一人だけではなかっただろう。 「いい加減馬鹿やってないで仕事に戻れーっ!」 叫ぶなり、黒霧は手近にあったあらゆる物を投げ始めた。汁粉入り紙コップに始まり枕、何故かおいてあるひよこ型の時計、皮むきの途中の林檎、林檎の皮むきに使っていたナイフ。 「うおっ、危ないっ!」 「せ、せっかく謝ってやったのにその態度は何……ひーっ!?」 「やかましいさっさと出て行けーっ!」 病室から駆けだしていく玄霧と如月。後には、暗黒闘気をまとってぜーぜー言ってる黒霧と、部屋の片隅で明日どころか明後日に目を向けている影法師、そして一人せっせとお汁粉を飲んでいたくぅの姿があったという。 [No.303] 2007/01/10(Wed) 22:14:16 |