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...Ending Scene. 日が暮れる頃、今日はもう仕事はだめだーと諦めて帰り始める吏族達の姿があった。彼らはそれぞれ疲れたように肩をもみ、杖をつきながら政庁を後にする。その姿はいろいろな意味での心労のせいですっかりしょぼくれていた。 そして彼らが帰ったその後で、こそこそ政庁に姿を現す二人の姿があった。 藩王玄霧と、華族如月敦子である。 「さて、仕事は……おおー。ずいぶん進んでるみたいだな」 「でもこの書類、評価甘いわよ」 「だなー。じゃあ他にもあれなのを見つけたら出しておいてくれ。さて、と」 玄霧は藩王専用椅子に座ると、両手両足を伸ばしてうんとのびをした。そしてテーブルに広げられた書類を一読し、次々に処理を開始していく。 その隣で如月敦子はぶつぶつ文句を言いながら書類の整頓を始めていた。二人の手際の良さは万人が知るところであり、実はこれで能力だけは無駄に高いのである。これで毎日まともに仕事してくれればと、多くの吏族達はそう嘆く。 二人が仕事を終わらせる頃には、すでに真夜中になっていた。静まりかえった政庁に、二人のため息が響いた。 次いで、きゅるるるる〜という音が、二人の腹からちょうど同じタイミングで流れた。 「お腹空いたわ」 「そうだなー。どこか屋台あいてないかな」 「藩王の発想じゃないわよ、それ」 滅茶苦茶冷めた声で、その場に割ってはいる一人の吏族の姿があった。二人はばっと起き上がってそちらを見る。睦月であった。 何故か鍋を両手で持っていた。 「これ、調理場に残ってたカレーなんだけどいりますか?」 「いるっ!」 「ありがとーむっちゃん!」 「こら、抱きつくな!」 二人して同時に突撃してきたので、睦月は手近のデーブルに鍋をおくと軽やかに飛んだ。そのまま回転。ハイキックで二人を撃沈させた。ある意味この国で一番容赦ないのが睦月であった。 「そういう事するならこれ持って帰るけど?」 「ごめんなさいごめんなさいほんっとうにごめんなさい!」 「あやまります土下座でも何でもしますからそれだけは勘弁をっ!」 身分とか矜持とか一切合切地平線の彼方に放り捨てる勢いで二人は睦月の足下に跪いた。睦月鼻を鳴らすと、よろしいと言って近場のテーブルに腰掛けた。 「で、仕事の方は?」 「あー、まあこんな物だろう」玄霧は起き上がりながら答えた。「戦争始まったわけだし、あわただしくなったが、仕方ないんじゃないか? 大体うちはこれですんでるがもっと酷いところだってあるだろう。文句は言ってられん」 「そうそう。それにこの国が戦場になった時のための視察も終わったし、あとはまともに仕事するだけよ」 本当に仕事するのかこの二人、と睦月は微妙に心配になったが、まあいいかと呟いて考えを放棄した。まあなるようになるでしょう。 「じゃあどうぞ。ここにあるのはカレーよ」 「いただきますっ!」 「あこら藩王、何フライングしてるのよ……って、あれ?」 がばっと蓋を開けて硬直した玄霧。止めようとして腕を伸ばした如月も、鍋の中を見てフリーズした。 「……あの、睦月さん」玄霧はぼんやりと呟く。 「何?」 「なんでこのカレーにはタマネギと肉ばっかりで、じゃがいもとかにんじんが無いんでしょーか」 「みんなの食べた残りだから」 玄霧と如月ははからずしてお互いをまじまじと見つめた。これ、カレーって言えるのか? 「昼間さぼった罰だと思えば?」 睦月はあっさりと言った。やっぱり、この国で一番容赦ない人物というのは伊達ではなかった。 [No.308] 2007/01/10(Wed) 22:36:45 |