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No.234に関するツリー

   文章提出所 - 黒霧 - 2007/01/06(Sat) 20:45:22 [No.234]
国家関係 - 黒霧 - 2007/04/14(Sat) 11:28:39 [No.804]
国歌説明 見直しお願いしまーす - 黒霧 - 2007/04/14(Sat) 11:29:03 [No.805]
OK - 玄霧@藩王 - 2007/04/15(Sun) 10:16:40 [No.809]
[ステージ2 イベント21 藩国改造]用文章 - 黒霧 - 2007/01/21(Sun) 23:37:00 [No.439]
[吏族・理力使いに「幻影使い」を加えた説明文]未推... - 黒霧 - 2007/01/21(Sun) 23:54:58 [No.442]
第二稿 - 黒霧 - 2007/01/22(Mon) 00:05:54 [No.444]
第二稿採用、添削完了 - 玄霧@藩王 - 2007/01/22(Mon) 00:19:40 [No.445]
[医者・整備士に「名医」を加えた説明文]未推敲 - 黒霧 - 2007/01/21(Sun) 23:38:23 [No.440]
添削完了 - 玄霧@藩王 - 2007/01/21(Sun) 23:46:13 [No.441]
[ステージ1 イベント14 食糧増産命令]設定文章 - 黒霧 - 2007/01/12(Fri) 22:56:44 [No.345]
食糧増産用SS?? - ODA - 2007/01/13(Sat) 14:39:12 [No.351]
食糧増産用SS? - 睦月 - 2007/01/13(Sat) 12:09:57 [No.350]
食料増産用SS(置き場が無いのでここで) - 玄霧@藩王 - 2007/01/13(Sat) 05:55:05 [No.348]
2101文字・未校正 - 黒霧 - 2007/01/12(Fri) 23:29:49 [No.346]
添削・検閲完了 - 玄霧@藩王 - 2007/01/12(Fri) 23:57:08 [No.347]
イベント13用読み切りコンテンツ提出所 - 黒霧 - 2007/01/10(Wed) 20:36:29 [No.297]
[削除] - - 2007/01/11(Thu) 21:55:17 [No.333]
ED - 黒霧 - 2007/01/10(Wed) 22:36:45 [No.308]
添削 - 如月篤志@HP担当 - 2007/01/10(Wed) 23:03:32 [No.313]
第三話 - 黒霧 - 2007/01/10(Wed) 22:14:16 [No.303]
添削 - 如月篤志@HP担当 - 2007/01/10(Wed) 23:00:44 [No.311]
第二話 - 黒霧 - 2007/01/10(Wed) 21:44:11 [No.301]
添削 - 如月篤志@HP担当 - 2007/01/10(Wed) 22:54:13 [No.310]
一話目 - 黒霧 - 2007/01/10(Wed) 21:03:09 [No.300]
添削 - 如月篤志@HP担当 - 2007/01/10(Wed) 22:40:28 [No.309]
黒霧:OP - 黒霧 - 2007/01/10(Wed) 20:37:12 [No.298]
添削 - 如月篤志@HP担当 - 2007/01/10(Wed) 22:35:33 [No.307]
冒険レポート-NO:44失われた黄金探し - 黒霧 - 2007/01/08(Mon) 15:58:23 [No.268]
執筆者:黒霧 文字数:2216 一時添削 - 黒霧 - 2007/01/08(Mon) 16:45:21 [No.269]
添削完了 - 玄霧@藩王 - 2007/01/09(Tue) 19:34:33 [No.284]
冒険レポート NO:31帰ってきたソックスハント - 黒霧 - 2007/01/08(Mon) 15:58:08 [No.267]
執筆者:黒霧 文字数:2790 未添削 - 黒霧 - 2007/01/08(Mon) 18:31:36 [No.272]
添削完了 - 玄霧@藩王 - 2007/01/09(Tue) 19:44:10 [No.285]
イベント05 冒険開始!(その1)レポート - 黒霧 - 2007/01/06(Sat) 20:45:47 [No.235]
執筆者:黒霧 文字数:4289 第一次添削後 感想... - 黒霧 - 2007/01/06(Sat) 20:46:24 [No.236]



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文章提出所 (親記事) - 黒霧

以下のスレッドはあらゆる文章の提出所とします。

[No.234] 2007/01/06(Sat) 20:45:22
イベント05 冒険開始!(その1)レポート (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

イベント05 冒険開始!(その1)レポートの提出所

[No.235] 2007/01/06(Sat) 20:45:47
執筆者:黒霧 文字数:4289 第一次添削後 感想ぼしゅー (No.235への返信 / 2階層) - 黒霧

イベント05 冒険開始!(その1)レポート

 今レポートは「イベント05 冒険開始!(その1)」に対する物である。参加内容は「NO:11:タイトル:ブラック恋人探し」であり、舞台は搭との事。
 今回の冒険の参加者は玄霧、如月敦子、越智大治郎、黒霧の四人である。実はこの四人の設定を見てみると、藩王一人、華族一人、吏族一人に文族一人というきわめて体力弱小(アイドレス的にも本当に弱い)な面子であると言うことがわかる。そして今回4億の資金と2万トンの燃料を消費した冒険の結果は、愛情(スカ)という結末だった。
 まあこれだけならよくある話である。お金を投じようと人を投じようと必ずしも良い物が手にはいるというわけではない。それほどゲームは甘くない。人生も。

 るーるるー。

(現在藩王による制裁が入っています。しばらくお待ちください。)

 中略。必ずしも良いことが怒るとは限らないとはいえ、無論何もないわけではない。そう、確かにこのゲームでは笑えるネタが誕生したのだ。

 なお、今作戦(そう、あえて作戦と言わせてもらう。これは作戦だったのだ!)における主犯は藩王玄霧、参謀が華族如月敦子、下手人越智大治郎である。

 ここで一つ実際の冒険がどのような物だったか振り返ってみることにしよう。
 冒険どころか旅行気分で出発した藩王を代表とする四名であったが、実を言うと文士である黒霧を除けば三人の平均根源力がほぼ一万というなかなかの面子であった。そして更に特筆すべき事は、この面子は医者一人に忍者三人というすさまじい護衛スタイルだったことだ。一体どこに何をしに行くのか、このパーティを見た人々は思わず首をかしげたという。
 実際には「俺顔割れてるじゃん!」という藩王の一言によって決まったパーティであったりする。そう、藩王の似顔絵は藩国サイトのトップに表示されており、それ故に「今更忍者やって顔隠しても意味ねーし」という結論に至ったのだ。
 まあ、忍者四人で隠密行動するのもなんかあれではあるが。というか、それでは恋人探しでなく某国の姫君を拉致に行くような風情だ。ただでさえVIP警護のような状態なのにそれはいかん。冒険どころの話ではなくなる。
 と、そんな話を続けながら一行は森の中を突き進み塔の中を散策することとなった。ちなみにその間の方向指示は全て藩王による物であり、到着予定時刻がかなりオーバした理由については読者の想像にお任せしよう。
「足痛い〜疲れた〜。揉め。そして運べ!」
 やたらと居丈高にそうのたまったのは、最近ゲームするとヒロインになる事がやたらと多い如月敦子という忍者華族であった。ちなみに根源力的にはこのパーティで二番目に高く、その暴力と暴言の前に数多くの家人は涙をのんだとのもっぱらの噂である。実は犬何じゃないかとか影で囁かれているこの人物は、この時も藩王以外の残された二人を従わせて悠々と散策していた。後日、この事は「いくら忍者とは言えか弱い姫君をいつまでも歩かせるわけにもいかない」とか言いだしたすっげぇ良い手伝いに運ばれたと記録されることになる。
「というか、どこまで見ても普通ですよねー」
 そして探索から更に数時間が経過した頃そう言ったのは、如月敦子をおぶって歩く越智大治郎である。癖の強すぎるこの面子の中で唯一の良心とも言える控えめな青年は、用心深く周囲を確認しながらそう言った。
 その時だった。
 最高峰でカメラ片手に「取材活動〜」とか言っていた文士忍者黒霧が、いきなり悲鳴を上げたのである。はっとして一同が振り返れば、何故か特大の落とし穴に引っかかって下層にに落ちていく黒霧の姿があった。「おんわぁ〜!?」と情けない声を上げて落ちていくその姿を見て──三人は同時ににやりと笑った。
 なお、このとき黒霧が踏んだ床はその直前「越智大治郎が如月敦子をおぶった場所」と特記しておこう。
 さて、落下した黒霧はというと、気絶していた。あまりの出来事に忍者であるという設定を忘れて意識が飛んでしまったのである。そして意識がぶっ飛んだまま落ちていった先では、今一人の森国人女性がおろおろしていた。
 この森国人、実は先ほどこの塔に向かっていく藩王達一行を見つけて止めようとしていた人物である。藩王の指示によるやたらと長い移動を、すなわち同じところをぐるぐるぐるぐる回り続けた時に彼らを発見して、「なんかあやしいよ〜」とそわそわ見守っていた。
 よもやこれが藩王一党などとは誰も思うまい。
 そしてこの危ない一団が向かっていく先を好奇心で見ていれば、なんと塔に向かって行くではないか。あの塔はずいぶん昔から建っている物で、最近地図製作のための調査団が来た時も、床が抜けたと評判だったのだ。そしてそこにずんずん入っていく危なそーな一団。
 止めるべきかどうかかな悩んだ。
 いや、だって、何しろ森の中をぐるぐるぐるぐる延々回り続ける怪しげな一団である。ぶっちゃけ塔の中でひどい目にあって死んでしまっても世の中問題ないんじゃねーかと案外冷静にこの女は考えていた。
 が、しかし、これで放っておいて死なれてもすっごく目覚めが悪い。そこで意を決して塔の中に入り、呼び止めようとしたその時であった。
 天井が崩れた。
「うひゃー、きゃー、ぎゃーっ!?」
 乙女からかけ離れた悲鳴を上げながら彼女は瓦礫を避けた。そして黙々と灰が舞い散る中、塔の片隅でがたがた震えていた彼女は、ふいにどさりと妙に柔らかい感じの落下音を聞いた。
 無論落ちてきたのは黒霧だった。彼女はそれがあの怪しい一団だと知って泣きそうになった。ああ、あの時止めていれば助かったかもしれないのに。こんなところで死なれて……。
 せめてちゃんと弔ってあげよう……。そう思って彼女はぶっ倒れている黒霧に気がついた。
 その時。
 黒霧はううっと唸って目を開いた。目を開けばそこによくわからんが女がいる。
「は?」
 そう言ったときには、森国人の女は悲鳴を上げて逃げていた。「ぎゃー、ゾンビーっ!? 死体が、死体がぁぁぁぁぁぁあっ!?」という声がエコーになって頭ががんがんした。
 そしてふと気づいた。良く落ちて無事だったな、自分。
 そしてはっとした。もしかしてさっきの女が助けてくれたのか?
 とりあえず黒霧は立ち上がった。自分の記憶に対していろいろと都合の悪いさっきの悲鳴は全部忘れて立ち上がった。そして一言礼を言うべく彼女の背を追って走り出した。正直藩王とかその回りの奴等とかは眼中になかった。それどころではない。男の人生の一大事である。こんなファンタスティックな展開を逃してなる物か!
「待ってー、待ってください!」
「きゃー、お化けゾンビ妖怪化け物人魂ーっ! ごめんなさいごめんなさい引き留めないでごーめーんーなーさーいーっ! 謝るから謝るからどうか成仏してお願いーっ!?」
「ちょ、何それ!」
「こーなーいーでーっ」
「いやまて、聞き捨てならんぞさすがに」
 男の一大事よりもプライドが優先されたらしい。その結果黒霧は殺意をもって、そして女は遠慮のない罵倒の言葉を無自覚のうちには来ながら遁走することになる。
 一方その頃塔にて。横穴から外の光景を見ていた藩王達は首をかしげていた。
「あれ、失敗した。なんでだ?」と藩王玄霧。
「やっぱり黒霧なんかが愛を知るのは十年早いという事ね」やたらと自信満々に如月敦子。
「いや、というか、すごい勘違いされている気が……」冷静に越智大治郎。
 そう、全てはこの三人の策略であった。
 元を正せば塔の調査が最初のきっかけだった。塔を探索に行った地図製作ための調査隊は、当初塔のふるさと床の危なさを説明するので精一杯だった。報告を聞く藩王も「まあ明日にでも改めて聞こう」とか内心考えていたのである。
 しかしそこで、調査隊の一人がこういった。
「ところで道中、なんか妙な女が我々の後をつけていましたが……」
 妙な女、の一言に藩王は反応した。彼の頭の中に浮かび上がったのは、藩国制作時より文章書くくらいしかしてこなかった黒霧の存在である。そろそろ彼をからかって遊んでみたい。どうせなら何か派手にからかいたい。例えばその妙な女とやらを掛け合わせたらどうなるだろう……。
 お年頃な藩王の心の中で、遊び心という蛇がむくりと鎌首をもたげた。
 そしてそれに同調するように現れたのが華族・如月敦子だった。そこに制止しようとしていたはずなのにいつの間にか協力させられていた越智大治郎が加わり、今回の「作戦」は決行された。
 まずは道中、やたらと森の中をぐるぐる回り確実にその妙な女に自分たちを発見してもらう。そしてそれを確認した後に塔の中を歩き、如月敦子の毎度の我が儘を装って越智大治郎が床に細工をする。そこを踏み抜いた黒霧が一階でおたおたしていた妙な女と接触することになったのである。
 全部計算尽くであった。
「あっ、女がスピードを上げた」玄霧は目を見張った。
「え、あ、だけど黒霧も負けてない」如月敦子は賭をしたそうに両手を胸の前で握っている。
「というかいい加減止めましょうよ」越智大治郎はたぶん話聞いてくれないだろうなーと思いながら言った。
 無論誰も止めることなく続けられた壮絶な鬼ごっこは、結局さらに数時間続き、最後には二人同時に木の根に躓いて転んで終了と相成った。そしてすっ転んでびゃーびゃー泣く女を「なんでこんな事に」と泣きそうになりながら黒霧はあやし、そして最後は幽霊という誤解を解いて和解、解散する運びとなった。
 解散してから数秒後、まるでタイミングを計ったかのように(実際如月敦子は絶妙のタイミングを輝く瞳ではかっていた)藩王達三人が現れ、黒霧は合流、四人でとりあえず帰る事になった。
「いや、それにしても……」黒霧はぽつりと言った。
「大変な目に遭いましたね」苦笑しながら越智大治郎。平然と話しているあたり実は神経が太い。
「ああ、それもそうだけど……」
「え、他に何か?」
 正面では藩王と華族が「おもしろかったなー」「またやろうねー」「次はどうするー」「私にいい案が!」と黒霧にはよくわからない会話をしている。その後ろで、黒霧はぼんやりと考え、そして首を振った。
「……いーや、なんでもない」
「……まさか、計画成功?」
「は? 何か言ったか?」
「え、なんですか」
「いや今……」そこで黒霧は口を閉ざした。勘違いかもしれない。何しろ今日は色々あったし。「ああ、なんでもない」
 勝者、藩王・玄霧、華族・如月敦子、吏族・越智大治郎。黒霧は愛に目覚めた。
 かくして四人の友情は微妙にあがる一日と相成った。


[No.236] 2007/01/06(Sat) 20:46:24
冒険レポート NO:31帰ってきたソックスハント (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

以下のスレッドを冒険レポートの提出所とします。

[No.267] 2007/01/08(Mon) 15:58:08
冒険レポート-NO:44失われた黄金探し (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

以下のスレッドを冒険レポートの提出所とします。

[No.268] 2007/01/08(Mon) 15:58:23
執筆者:黒霧 文字数:2216 一時添削 (No.268への返信 / 2階層) - 黒霧

冒険レポート-NO:44失われた黄金探し
 今回の冒険では「イベント05 冒険開始!(その3)」に対する物である。

 さて、今回の冒険が始まる前に一つの事件があった。
 それは藩王玄霧と華族如月敦子の間で発生した微妙な戦いだった。この権力者同士の戦いの結末として、今回玄霧藩国では二つの冒険が勃発したと言っても過言ではない。
 きっかけは前回の「NO:11 ブラック恋人探し」で黒霧が愛に目覚めてしまった事だった。もともとこの事件は玄霧やら如月やらといった人物達が黒霧をからかおうというネタから始まった出来事だったが、その結果に二人は満足していなかった。いや、結果だけ見れば二人の計画は成功だったのだが、思ったほどおもしろくなかったのである。
 そこで二人は喧嘩した。以下に二人の喧嘩内容を記述する。
「どう考えてもこれは参謀の知恵不足だろう。まったく、もう少し頭を使う事を憶えたらどう?」
「これは主犯の玄霧のせいよ。もうすこし面白くなるはずだったのにっ。きぃーっ!」
 喧嘩勃発。
 そして二人は両者を陥れるべく手持ちの部下やら関係ない人々やらを巻きこんで暗躍を始めた……。
 ちなみに言うと、これが「イベント05 冒険開始!(その2)」で玄霧藩国が動かなかった理由にあたる。藩国中枢の目の向く先が冒険どころではなかったのだ……。

 さて、このとき藩王玄霧はこう考えた。あの後喧嘩別れしたまではいいのだが──どうやら吏族一同が泣いていた事は都合良く記憶から閉め出したらしい──このまま引き下がっては腹の虫が治まらない。
 と、そこで一計を案じた。そういえばあの性悪女ずいぶん金を貯め込んでいたはずだ。まったく、この玄霧の目を欺こうなどとは片腹痛いわ。ふっふっふっ。これは思い知らせねばならん……。
 そして翌日。忍者にして吏族にして更に言えば華族である雅戌は藩王に呼び出された。この二人、実は如月敦子と仲違いする度にがっしりと手を組んで共同戦線を張る仲にある。今回も雅戌は昨日のしょもない喧嘩のことを知っていたので別段不思議とも思わずに藩王の下に出向いた。この日も藩王は私室にしか見えない執務室で某携帯ゲーム機で遊んでいた。
「よう悪友」玄霧は言った。
「いや、流石にそれは身も蓋もなさ過ぎないか?」やや呆れた感じで雅戌。
「まあそれはともかくこれを見ろ」
 そう言って藩王が懐から取り出したのはなんだか子供の手による物っぽいあやしぃ地図だった。
「……って、これうちの国の地図じゃないですか」
「今新版の発注をすませた」何故か胸を張る玄霧。
「いやそれ何日も前からやれっていってたでしょう?」
「ムゥ〜ン。それはともかくだ」
 すげぇ誤魔化し方である。
「地図のここ、右側にある山を見ろ。ここになんか宝箱マークがついてるだろ」
「……ああ、箱だったんです。てっきり黒くて速くてかさかさしたものかと」
「それを言うな」
「で、これが何なんです?」
「うむ。宝の地図である」
「ぼけましたか」
 この点、雅戌は容赦がない。しかし藩王の鉄拳を顎にくらうと、容赦ない自分の性格をかなり恨む事となった。
「で、お前には今すぐこれを探しに行ってもらう」
「ちょ、今すぐですか? なんで!」
 大体これでは藩王の妙な遊びに付き合わされるだけではないか。何か少し前に黒霧とかいう文族がこっぴどい目にだかいい目にだかあったらしいが、その二の舞はごめんである。
「大丈夫。かなりのお宝があることは確約しよう。死ぬこともない。保証する。だから行け」
 しかしこの場では玄霧の押しの強さに抵抗できなかった。その後二時間ほど粘って雅戌は言い訳をしまくったが──
 その日の午後、スコップを肩に担いだ雅戌の姿が山の中腹にはあった。かなり真剣に地図とにらめっこし、黒くて、じゃない宝箱の位置を確認。マスクを取ってひげで気流やら気配やらいろいろ確認しつつ、ここだと思ったところにスコップを突き刺した。
 がちん、とすごい音が鳴った。
 まじかよとか思いながら周囲の土を掘り返すと、なんと馬鹿げたじゃない驚いた事に宝箱があったのだ。「まじかよ」と思わず呟いてしまったことを一体誰が責められよう。しかも宝箱を開けてみれば、そこにはまさしく金塊の山。まぶしくて目を瞑ってしまいそうなその輝きを目の当たりにして雅戌はしばしの間呆然としていた。
 すぐそばの山肌にくないが突き刺さったのはそれから数秒後のことだった。はっとして振り返れば、何かものすごい遠いところからすさまじい勢いで走ってくる人影がある。雅戌は殺意に背筋が粟立つのを感じた。
 とりあえず雅戌は宝箱を抱えて走り出した。「まてーどろぼー」という声を遙か彼方に危機ながら疾走、間もなくして彼は奇妙な刺客から逃げ去った。
 そして翌日、彼の持ち帰った資金4億は全て国庫に納められることとなった。
 ちなみに、その資金の話を会議の場で雅戌が持ち出したとき藩王玄霧は靴下だらけの姿、また華族如月敦子はすさまじい渋面であったことを追記しておく。

後日譚。
 議会終了後、玄霧と如月敦子は二人だけで会議室に残った。そして最後の一人が出て行きぱたんと扉が閉められると、お互いすさまじくさっきだった様子で怒鳴りあった。
「お前この靴下は何だ! 全然とれないじゃないか、しかも臭いっ。どうしてくれるんだ!」
「それはこっちの台詞だこの盗人藩王! 私のへそくりをよくもよくもよくもーっ!」

 玄霧藩国は今日も平和である。


[No.269] 2007/01/08(Mon) 16:45:21
執筆者:黒霧 文字数:2790 未添削 (No.267への返信 / 2階層) - 黒霧

冒険レポート-NO31:帰ってきたソックスハント
 今回の冒険では「イベント05 冒険開始!(その3)」に対する物である。

 さて、今回の冒険が始まる前に一つの事件があった。
 それは藩王玄霧と華族如月敦子の間で発生した微妙な戦いだった。この権力者同士の戦いの結末として、今回玄霧藩国では二つの冒険が勃発したと言っても過言ではない。
 きっかけは前回の「NO:11 ブラック恋人探し」で黒霧が愛に目覚めてしまった事だった。もともとこの事件は玄霧やら如月やらといった人物達が黒霧をからかおうというネタから始まった出来事だったが、その結果に二人は満足していなかった。いや、結果だけ見れば二人の計画は成功だったのだが、思ったほどおもしろくなかったのである。
 そこで二人は喧嘩した。以下に二人の喧嘩内容を記述する。
「どう考えてもこれは参謀の知恵不足だろう。まったく、もう少し頭を使う事を憶えたら?」
「これは主犯の玄霧のせいよ。もうすこし面白くなるはずだったのにっ。きぃーっ!」
 喧嘩勃発。
 そして二人は両者を陥れるべく手持ちの部下やら関係ない人々やらを巻きこんで暗躍を始めた……。
 ちなみに言うと、これが「イベント05 冒険開始!(その2)」で玄霧藩国が動かなかった理由にあたる。藩国中枢の目の向く先が冒険どころではなかったのだ……。

 さて、このとき華族如月敦子はこう考えた。あの後喧嘩別れしたまではいいのだが──どうやら自分の部下やらなにやらが泣いていた事は都合良く記憶から閉め出したらしい──このまま引き下がっては腹の虫が治まらない。というか、こんな風にしつこく腹を立てているあたり両者はかなり似通っていた。
 そこで如月敦子はどすどすと大股で自室まで移動、それから早文で即座に動かせる友人やら部下やらを一気に呼び出した。
 ここに集まったのが睦月、文月、アポロ、内藤の四人であった。ちなみに前二人は性別不明、アポロ氏は女性であり、内藤は男性である。吏族、技族、技族、吏族とこれてかなり頭でっかちなパーティがそろった形になる。
「なんとしてもあの鼻っ柱へし折って砕いてすりつぶして焼いて叩いて埋めてやるわよ!」
 出会い頭の一言としては最悪の部類に入る宣言を如月敦子は行った。ちなみにこういう発言に慣れっこである一同はそれぞれ適当に返事をしていた。例えば
「面白いなら俺はいいぞー」と睦月
「ああーなるほどー……ってええっ!? ど、どうしたんですか? どうすれば、あわわ」と文月。
「どうすればいいんでしょうね〜。ああ、文月さん、そこあぶない椅子が!」とアポロ。
「……いや、お前らいい加減落ち着けよ!?」叫ぶ内藤。
 実は藩国でも有数の変態じゃない変人内藤であったが、文月とアポロが同じ空間にいるときだけは例外ですさまじく常識的になる。何しろこの二人がそろうと目に映る物全てが壊れ、しかる後にほんわか空間が形成されるのであった。後は野となれ山となれ──と諦めざるを得なくなる上紀に卯にする前に二人を止めなくてはすさまじいことになる。
「と言うことで!」
 なにがと言うことでなのかは知らんが、如月敦子はこうのたまった。
「これからあんた達には村に出てソックスハントをしてもらうわ」
「ちょ、えーっ、如月さん!」
「何、文月。文句あるの?」
「あわわわ、いえそのあの……あう〜」
「それって犯罪じゃないのか?」内藤は冷静に言った。
「この印をつけた家の娘は貧乳で美少女らしいわよ」あからさまに怪しいこと言い出す如月。
「お任せください、見事ソックスをはいでやります。うはははは」
 内藤は壊れた。もとい戻った。
 勿論睦月はこれをおもしろそーと言って止めることはせず、アポロ求めるには力不足であったがため、如月敦子のやつあたり──ならぬソックスハントは開始された。
 かくして山岳近隣の村に向かって一行は進んでいったわけだが。
「ねー、本当にいいんですか?」と文月。
「まあ責任は全部あの二人が持ってくれるでしょう」勝手なことを言う睦月。
「でもでもでも、これって流石にまずいんじゃあ……あれっ!?」
「どうしましたっ?」
「内藤さんがいない!」
 文月とアポロがきゃーきゃー言って慌てる始めたその時、睦月は正面を指さして言った。
「もう行ったよ」
 そして指さされた先では、なにやら甲高い嬌声というか悲鳴というかがわき起こっていた。
「まてー、変態ーっ!」
「死ねー」
 ほどよく殺意に濡れた声に満ちていく。ちなみに追いかけ回されるようにして駆け回っているのは無論のこと「貧乳」と書かれたはちまきをまいている吏族内藤であった。後日、彼は藩王玄霧から罰則じみた量の仕事を渡され机に縛り付けられることになる。
「あわわわ。どうしましょう。た、助けますかっ?」文月は睦月を見た。
「今のうちにやろう」
「え、ええっ!」慌てるアポロ。
「いい囮だし。ゴー」
 そしてその場に新たに三人のソックスハンターが参戦することになる。
 そして一時間後、執務室で仕事ならぬゲームをしていた藩王玄霧は山岳近辺の村でのソックスハンター出現の噂を聞き、自ら討伐に向かうことを即時決定した。無論この出来事の背後に誰がいるかはわかった上で、である。そして村に急行した直後だった。
「てめー藩王っ!」
「お前が部下を管理してないからーっ!」
 ある意味でひどく核心を突いたヤジと共に、村人達が迫ってきた。「うわ、ちょ、何これ」な藩王、ひたすら逃げ始める。
 そしてその道先で見た。四人のソックスハンターの姿を。
「お、おまえらーっ!」
「み、見つかったーっ!? 見つかりました。ど、ど、ど、どうすればっ!」
 慌てすぎて我を見失ったアポロはどたばた派手に走りながら、ふいに転んだ。背中の加護にいれていたソックスがまとまって飛び散っていく。
 そしてそこに飛び込んでいく藩王。加速しすぎであった。道路交通法があれば減点確実である。
 視界が真っ暗になり、そのままソックス共々転げ回った藩王。アポロはその様子に呆然とした。
「ねえアポロ」近づいてくる睦月。
「ど、どうしましょう〜」泣きそうな声でアポロ。
「今なら誰がやったかまではばれてないかもしれないよ? 玄霧の視界はソックスで隠されたわけだし」
「え」
 0.5秒後。
「逃げましょう、早く!」
「あなたのそういうところ、好きだな」
 全速力で姿をくらましたソックスハンター達を捕まえられる者は皆無であった。

後日譚。
 そして翌日。
 議会終了後、玄霧と如月敦子は二人だけで会議室に残った。そして最後の一人が出て行きぱたんと扉が閉められると、お互いすさまじくさっきだった様子で怒鳴りあった。
「お前この靴下は何だ! 全然とれないじゃないか、しかも臭いっ。どうしてくれるんだ!」
「それはこっちの台詞だこの盗人藩王! 私のへそくりをよくもよくもよくもーっ!」

 玄霧藩国は今日も平和である。


[No.272] 2007/01/08(Mon) 18:31:36
添削完了 (No.269への返信 / 3階層) - 玄霧@藩王

冒険レポート-NO:44失われた黄金探し
 今回の冒険では「イベント05 冒険開始!(その3)」に対する物である。

 さて、今回の冒険が始まる前に一つの事件があった。
 それは藩王玄霧と華族如月敦子の間で発生した微妙な戦いだった。この権力者同士の戦いの結末として、今回玄霧藩国では二つの冒険が勃発したと言っても過言ではない。
 きっかけは前回の「NO:11 ブラック恋人探し」で黒霧が愛に目覚めてしまった事だった。もともとこの事件は玄霧やら如月やらといった人物達が黒霧をからかおうというネタから始まった出来事だったが、その結果に二人は満足していなかった。いや、結果だけ見れば二人の計画は成功だったのだが、思ったほどおもしろくなかったのである。
 そこで二人は喧嘩した。以下に二人の喧嘩内容を記述する。
「どう考えてもこれは参謀の知恵不足だろう。まったく、もう少し頭を使う事を憶えたらどう?」
「これは藩王のせいよ。もうすこし面白くなるはずだったのにぃっ。きぃーっ!」
 喧嘩勃発。
 そして二人は両者を陥れるべく手持ちの部下やら関係ない人々やらを巻きこんで暗躍を始めた……。
 ちなみに言うと、これが「イベント05 冒険開始!(その2)」で玄霧藩国が動かなかった理由にあたる。藩国中枢の目の向く先が冒険どころではなかったのだ……。

 さて、このとき藩王玄霧はこう考えた。あの後喧嘩別れしたまではいいのだが──どうやら吏族一同が泣いていた事は都合良く記憶から閉め出したらしい──このまま引き下がっては腹の虫が治まらない。
 と、そこで一計を案じた。そういえばあの性悪女め、ずいぶん金を貯め込んでいたはずだ。まったく、この玄霧の目を欺こうなどとは片腹痛いわ。ふっふっふっ。これは思い知らせねばならん……。
 そして翌日。忍者にして吏族にして更に言えば華族である雅戌は藩王に呼び出された。この二人、実は如月敦子と仲違いする度にがっしりと手を組んで共同戦線を張る仲にある。今回も雅戌は昨日のしょもない喧嘩のことを知っていたので別段不思議とも思わずに藩王の下に出向いた。この日も藩王は私室にしか見えない執務室で某携帯ゲーム機で遊んでいた。
「よう悪友」玄霧は言った。
「いや、流石にそれは身も蓋もなさ過ぎゃしませんか?」やや呆れた感じで雅戌。
「まあそれはともかくこれを見ろ」
 そう言って藩王が懐から取り出したのはなんだか子供の手による物っぽいあやしぃ地図だった。
「……って、これうちの国の地図じゃないですか」
「今、最新版の発注をすませた」何故か胸を張る玄霧。
「いやそれ何日も前からやれっていってたでしょう?」
「HAHAHA。それはともかくだ」
 すげぇ誤魔化し方である。
「地図のここ、右側にある山を見ろ。ここになんか宝箱マークがついてるだろ」
「……ああ、箱だったんですか。てっきり黒くて速くてかさかさしたやつかと」
「それを言うな」
「で、これが何なんです?」
「うむ。宝の地図である」
「・・・ぼけましたか?」
 この点、雅戌は容赦がない。しかし藩王の鉄拳を顎にくらうと、容赦ない自分の性格をかなり恨む事となった。
「で、お前には今すぐこれを探しに行ってもらう」
「ちょ、今すぐですか? なんで!」
 大体これでは藩王の妙な遊びに付き合わされるだけではないか。何か少し前に黒霧とかいう文族がこっぴどい目にだかいい目にだかあったらしいが、その二の舞はごめんである。
「大丈夫。かなりのお宝があることは確約しよう。死ぬこともない。保証する。だから行け。ハリィハリィ!」
 しかしこの場では玄霧の押しの強さに抵抗できなかった。その後二時間ほど粘って雅戌は言い訳をしまくったが──
 その日の午後、スコップを肩に担いだ雅戌の姿が山の中腹にはあった。かなり真剣に地図とにらめっこし、黒くて、じゃない宝箱の位置を確認。マスクを取ってひげで気流やら気配やらいろいろ確認しつつ、ここだと思ったところにスコップを突き刺した。
 がちん、とすごい音が鳴った。
 まじかよとか思いながら周囲の土を掘り返すと、なんと馬鹿げたじゃない驚いた事に宝箱があったのだ。「まじかよ」と思わず呟いてしまったことを一体誰が責められよう。しかも宝箱を開けてみれば、そこにはまさしく金塊の山。まぶしくて目を瞑ってしまいそうなその輝きを目の当たりにして雅戌はしばしの間呆然としていた。
 すぐそばの山肌にくないが突き刺さったのはそれから数秒後のことだ。はっとして振り返れば、何かものすごい遠いところからすさまじい勢いで走ってくる人影がある。雅戌は殺意に背筋が粟立つのを感じた。
 とりあえず雅戌は宝箱を抱えて走り出した。「まてーどろぼー」という声を遙か彼方に危機ながら疾走、間もなくして彼は奇妙な刺客から逃げ去った。
 そして翌日、彼の持ち帰った資金4億は全て国庫に納められることとなった。
 ちなみに、その資金の話を会議の場で雅戌が持ち出したとき藩王玄霧は靴下だらけの姿、また華族如月敦子はすさまじい渋面であったことを追記しておく。

後日譚。
 議会終了後、玄霧と如月敦子は二人だけで会議室に残った。そして最後の一人が出て行きぱたんと扉が閉められると、お互いすさまじくさっきだった様子で怒鳴りあった。
「テメコノ!靴下は卑怯だろ! 全然とれないじゃないか、しかも臭いっ。どうしてくれるんだ!」
「それはこっちの台詞だこの盗人藩王! 私のへそくりをよくもよくもよくもーっ!」

 玄霧藩国は今日も平和である。


[No.284] 2007/01/09(Tue) 19:34:33
添削完了 (No.272への返信 / 3階層) - 玄霧@藩王

冒険レポート-NO31:帰ってきたソックスハント
 今回の冒険では「イベント05 冒険開始!(その3)」に対する物である。

 さて、今回の冒険が始まる前に一つの事件があった。
 それは藩王玄霧と華族如月敦子の間で発生した微妙な戦いだった。この権力者同士の戦いの結末として、今回玄霧藩国では二つの冒険が勃発したと言っても過言ではない。
 きっかけは前回の「NO:11 ブラック恋人探し」で黒霧が愛に目覚めてしまった事だった。もともとこの事件は玄霧やら如月やらといった人物達が黒霧をからかおうというネタから始まった出来事だったが、その結果に二人は満足していなかった。いや、結果だけ見れば二人の計画は成功だったのだが、思ったほどおもしろくなかったのである。
 そこで二人は喧嘩した。以下に二人の喧嘩内容を記述する。
「どう考えてもこれは参謀の知恵不足だろう。まったく、もう少し頭を使う事を憶えたら?」
「これは絶対藩王のせいよ。もうすこし面白くなるはずだったのにぃっ。きぃーっ!」
 喧嘩勃発。
 そして二人は両者を陥れるべく手持ちの部下やら関係ない人々やらを巻きこんで暗躍を始めた……。
 ちなみに言うと、これが「イベント05 冒険開始!(その2)」で玄霧藩国が動かなかった理由にあたる。藩国中枢の目の向く先が冒険どころではなかったのだ……。

 さて、このとき華族如月敦子はこう考えた。あの後喧嘩別れしたまではいいのだが──どうやら自分の部下やらなにやらが泣いていた事は都合良く記憶から閉め出したらしい──このまま引き下がっては腹の虫が治まらない。というか、こんな風にしつこく腹を立てているあたり両者はかなり似通っていた。
 そこで如月敦子はどすどすと大股で自室まで移動、それから早文やら瞑想通信やらで即座に動かせる友人やら部下やらを一気に呼び出した。
 ここに集まったのが睦月、文月、アポロ、内藤の四人であった。ちなみに前二人は性別不明、アポロ氏は女性であり、内藤は男性である。吏族、技族、技族、吏族とこれてかなり頭でっかちなパーティがそろった形になる。
「なんとしてもあの鼻っ柱へし折って砕いてすりつぶして焼いて叩いて埋めてやるわよ!」
 出会い頭の一言としては最悪の部類に入る宣言を如月敦子は行った。ちなみにこういう発言に慣れっこである一同はそれぞれ適当に返事をしていた。例えば
「面白いなら俺はいいぞー」と睦月
「ああーなるほどー……ってええっ!? ど、どうしたんですか? どうすれば、あわわ」と文月。
「どうすればいいんでしょうね〜。ああ、文月さん、そこあぶない椅子が!」とアポロ。
「……いや、お前らいい加減落ち着けよ!?」叫ぶ内藤。
 実は藩国でも有数の変態じゃない変人内藤であったが、文月とアポロが同じ空間にいるときだけは例外ですさまじく常識的になる。何しろこの二人がそろうと目に映る物全てが壊れ、しかる後にほんわか空間が形成されるのであった。後は野となれ山となれ──と諦めざるを得なくなる前に二人を止めなくてはすさまじいことになる。
「と言うことで!」
 なにがと言うことでなのかは知らんが、如月敦子はこうのたまった。
「これからあんた達には村に出てソックスハントをしてもらうわ」
「ちょ、えーっ、如月さん!」
「何、文月。文句あるの?」
「あわわわ、いえそのあの……あう〜」
「それって犯罪じゃないのか?」内藤は冷静に言った。
「この印をつけた家の娘は貧乳で美少女らしいわよ」地図を渡しながらあからさまに怪しいこと言い出す如月。
「お任せください、見事ソックスをはいでやります。うはははは」
 内藤は壊れた。もとい戻った。
 勿論睦月はこれをおもしろそーと言って止めることはせず、アポロに抑止力を求めるも力不足であったがため、如月敦子のやつあたり──ならぬソックスハントは開始された。
 かくして山岳近隣の村に向かって一行は進んでいったわけだが。
「ねー、本当にいいんですか?」と文月。
「まあ責任は全部あの二人が持ってくれるでしょう」勝手なことを言う睦月。
「でもでもでも、これって流石にまずいんじゃあ……あれっ!?」
「どうしましたっ?」
「内藤さんがいない!」
 文月とアポロがきゃーきゃー言って慌てる始めたその時、睦月は正面を指さして言った。
「もう行ったよ」
 そして指さされた先では、なにやら甲高い嬌声というか悲鳴というかがわき起こっていた。
「まてー、変態ーっ!」
「死ねー」
 ほどよく殺意に濡れた声に満ちていく。ちなみに追いかけ回されるようにして駆け回っているのは無論のこと「貧乳」と書かれたはちまきをまいている吏族内藤であった。後日、彼は藩王玄霧から罰則じみた量の仕事を渡され机に縛り付けられることになる。
「あわわわ。どうしましょう。た、助けますかっ?」文月は睦月を見た。
「今のうちにやろう」
「え、ええっ!」慌てるアポロ。
「いい囮だし。ゴー」
 そしてその場に新たに三人のソックスハンターが参戦することになる。
 そして一時間後、執務室で仕事ならぬゲームをしていた藩王玄霧は山岳近辺の村でのソックスハンター出現の噂を聞き、自ら討伐に向かうことを即時決定した。無論この出来事の背後に誰がいるかはわかった上で、である。そして村に急行した直後だった。
「てめー藩王っ!」
「お前が部下を管理してないからーっ!」
 ある意味でひどく核心を突いたヤジと共に、村人達が迫ってきた。「うわ、ちょ、何これ」な藩王、ひたすら逃げ始める。
 そしてその道先で見た。四人のソックスハンターの姿を。
「お、おまえらーっ!」
「み、見つかったーっ!? 見つかりました。ど、ど、ど、どうすればっ!」
 慌てすぎて我を見失ったアポロはどたばた派手に走りながら、ふいに転んだ。背中の加護にいれていたソックスがまとまって飛び散っていく。
 そしてそこに飛び込んでいく藩王。加速しすぎであった。道路交通法があれば減点確実である。
 視界が真っ暗になり、そのままソックス共々転げ回った藩王。アポロはその様子に呆然とした。
「ねえアポロ」近づいてくる睦月。
「ど、どうしましょう〜」泣きそうな声でアポロ。
「今なら誰がやったかまではばれてないかもしれないよ? 藩王の視界はソックスで隠されたわけだし」
「え」
 0.5秒後。
「逃げましょう、早く!」
「あなたのそういうところ、好きだなぁ」
 全速力で姿をくらましたソックスハンター達を捕まえられる者は皆無であった。

後日譚。
 そして翌日。
 議会終了後、玄霧と如月敦子は二人だけで会議室に残った。そして最後の一人が出て行きぱたんと扉が閉められると、お互いすさまじく殺気立った様子で怒鳴りあった。
「テメコノ! 靴下は卑怯だろ! 全然とれないじゃないか、しかも臭いっ。どうしてくれるんだ!」
「それはこっちの台詞だこの盗人藩王! 私のへそくりをよくもよくもよくもーっ!」

 玄霧藩国は今日も平和である。


[No.285] 2007/01/09(Tue) 19:44:10
イベント13用読み切りコンテンツ提出所 (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

ちょっと違う感じだけど、
イベント13用読み切りコンテンツ提出所とします。


[No.297] 2007/01/10(Wed) 20:36:29
黒霧:OP (No.297への返信 / 2階層) - 黒霧

One day theather.-UNRURY CHILDREN.-

...Opening scene.

 ──玄霧藩国は九割の悪戯っ気と五分の幸福、三分の涙と二分の苦笑から成立している。
黒霧・玄霧王国の歴史1巻冒頭より

 今日もとて玄霧藩国は玄霧藩国であった。藩王がいきなり冒険に出て行ったり、如月敦子のへそくりを盗んで国庫にいれたり、ソックスハンターを組織して藩王に粘着性靴下爆弾を見舞ったり、大金使って戦争準備始めたり。あっというまに大惨事を量産していくこの国の日常の光景が広がっている。
 藩国紹介ではのどかだとか平和そうな事が連ねられているのに、その実この藩国は騒がしいことこの上なかった。特に上が動いたときは『騒がしいだけでは終わらない』というのが特徴的で、今日も今日とて
「散歩に行こう」
 とか政務中であるにも関わらず藩王が言いだしたため、しばし議会は荒れた。藩王に同調してエスケープしようとした吏族と真面目に仕事しろともっともなことを言う吏族の間で意見が割れたためである。
 一部では議会の間中藩王の口を塞いだ方がいいのではないか、いやいやこれはもうをぐるぐるに縛ってエビフライみたいにして天井からぶら下げるしかないのではないかとか囁かれている。
 本当に藩王なのだろうか?
 そんな基本的で致命的な疑問はいざともかくとして、その日の午後。

 散歩は実行された。

 議会紛糾である。朝議に出てそれ以外全部すっ飛ばすなんてどんな王様だこの野郎! とすさまじい反響だった。なお、藩王と共にエスケープしたのは藩王の盟友にして悪友たる如月敦子であったという。
 この二人の悪戯心がおこす災難に対して、恐るべき耐久力と忍耐力を手にしている一部の古参達はそろって「またか」とこぼした。
 最早この二人の暴走はこの国でも有数の名物だった。

 そしてこれが、全てのきっかけであった。


注意・未添削


[No.298] 2007/01/10(Wed) 20:37:12
一話目 (No.297への返信 / 2階層) - 黒霧


...Scene One.-from the School.

 玄霧藩国にも学校はある。この学校、年齢性別無関係にとにかく学力だけを見て授業レベルを考えているので、クラスの中に大人も子供も交ざっていたりする。それ故に学術面でのレベルこそ高い物の、その裏では年齢差によるちょっとした差別やいじめが問題となっていた。
 そして今日はその学校で特別講師による授業が行われていた。例えば技師というか絵師である茅西瑠果(以下るかやか)という人がいる。るかやかはどちらかというとだんまりの人物で、あまり多くを語ることはない。むしろ聞き役である事が多い人物だった。
 今るかやかの前では何人かの生徒達がカンバスを手に、油絵を描いていた。書いている内容は想像上の生き物だったり、目の前の花瓶だったり、窓から見える景色だったり様々である。この授業は何故か子供に人気で、授業中はとにかくひたすら絵を描いていることが多い。
 そこに、部屋に入ってくる者がいた。文士黒霧と大族大島だった。大島はいつものごとくマタタビ手の醸造所で酒の臭いにうっとりしていたところ、黒霧に出会って引っ張り出されてきたのである。
 珍しい客人に、るかやかはわずかに眉を持ち上げて首をかしげた。あまり口を開かないるかやかになれていた二人は、てきとうに片手を持ち上げるだけで挨拶をすませた。
「藩王を見なかったか?」
 黒霧が聞くと、るかやかは不思議そうな顔をした。不思議そうにしているのにどこか堂々としている感じがする、それがるかやかの持つ七不思議の一つであった。
「どうやらまたあの二人が逃げたみたいでな」
「そうっ。今度こそこの俺の改造手術を受け入れてくれる気になったんだ!」
 大島は突然叫んだ。小学生のような小柄な体をばたばたさせて興奮している。るかやかはそれを見て、ゆっくりと右手を握り、人差し指だけをたてて口元に持って行く。静かに、と言う合図。
 見てみれば、生徒達が驚いたように大島を見ていた。実はこの中で一人、大島ではなく黒霧を見てびっくりした顔をしている女子がいたが、黒霧は視線が集まった恥ずかしさで顔を手で覆っておりこのことには気づかなかった。
「まあ改造伯爵あれこれはおいておくとして」黒霧はどこかひからびた声で言った。「実際問題、この時期にあの二人がいないと話が進まない。いや、まあ如月の方は別にいいんだが、玄霧藩王がいないのは流石にまずい──ぐあっ!?」
 黒霧、突然どこからか飛んできた絵描き用のナイフが頭に突き刺さってきてぶっ倒れる。絵の具のそれとは明らかに違う赤い液体がぶしゅーと噴き出した。
「死んだな」とるかやか。
「改造してくる」堂々と大島。
 改造って何だろうとささやき始める子供達。何故か黒霧を助けようという気持ちにはならなかったらしい。好奇心は簡単に人を殺す物である。
 大島はぼんやりと子供達を眺めた。いやー最近の子供って自分の正直というか周りを見ないというかとにかく死にかけたとき彼らを頼るのだけはやめようと思う。と、ふと気づく。
「って、如月さん!」
「うん。玄霧さんもいるよ」
 腕を組んで頷くるかやかと唖然とする大島の視界の中には、カンバスの前でがるるるしている如月とどこか遠い目をした玄霧の姿があった。
「なによ、私のこといらないとか言ったのよ、そいつ!」
「まあ俺は投げるならパレットにしておけって言ったんだけどな」
 顔を真っ赤にして如月は怒鳴る。一方の玄霧は「あーあ見つかっちゃった」と諦めたように呟いていた。
「……って、あっ! 俺、あんた達を捕まえるんだった!」
 目の前の衝撃的な出来事に彼岸を見ていた大島は、次の瞬間自分の役目に気づくと二人に駆け寄っていこうとした。
 が、それよりも早く、二人は同時に立ち上がると、窓を蹴破って逃走を開始。瞬く間に森の中に紛れていってしまう。
 大島は「待てー」といいながら追撃に出た。子供達はすでに黒霧にも藩王達の存在にも興味を失ったのか、自分達のカンバスに集中していた。
 るかやかは少し考えた後、隣の教室で絵を教えているくぅに連絡を取り、何人か人手を呼んで黒霧を搬送させた。そして雑務を全て片付けたところで、ちょっと気になって玄霧と如月の向かっていたキャンパスを見た。
「おや、これは」
 るかやかは先日起こった妙な噂を思い出した。確か藩王はソックスだらけで、如月はへそくりをうばわれとむっつりしながら会議に出席したという。
 玄霧のカンバスにはふくれっ面の如月が、如月のカンバスにはソックスだらけで顔を引く尽かせている玄霧の姿があった。


[No.300] 2007/01/10(Wed) 21:03:09
第二話 (No.297への返信 / 2階層) - 黒霧


...Scene Two.-from the Lakeside.

 玄霧藩国の湖畔は森の中を進み、砂鉄工場を抜けた先にある。森の中にある広い湖畔は静かで涼しい空気に満ち、空きの季節には赤と黄色の目にまぶしくなるような彩色の姿を見せる。
 そこにいたには技族のイクと文月、吏族の睦月の三人だった。ある意味で珍しい組み合わせといえるこの三人は、それぞれの事情があってここに集まってきていた。イクは戦争準備で疲れたのでエスケープ、文月はそれに付き合わされてきたのである。ついでに言うと、イクは一人で出て行く根性が足りなくて強引に文月を引っ張ってきた趣がある。
「あ、ヒトデ発見しましたー」と文月。
「ひ、ヒトデ? え、えー、でも」慌てるイク。
 あわてるイクを見て何故かおたおたし始める文月。こんな風に二人でパニックに陥っていると、会議滅茶苦茶になったので面倒くさくなって単独エスケープしてきた睦月が合流して
「ヒトデは湖にはいないでしょう」
 と冷静に突っこむ事で、場が収まったのである。
 今はちょうど場が収まり、三人そろって湖の畔に座り込んでぼんやりと景色を眺めていた。
「平和ですねー」と文月。
「そうでもないよ」
 睦月はそう言うとため息をついた。実際最近は平和でもないのだ。同じ共和国のフィーブル藩国は戦場と化して、正体不明の要塞艦やらが現れているという。また犬の事だからどうでもいいけどわんわんの方ではなんかものすごい兵器が出たとかでわんわん悲鳴を上げているとか。その結果、両国共にI=D開発に着手してすぐさま試作品を生産、現在では両国共同でのテスト飛行を行っている。その間にも一部の吏族は招集されてすさまじい量の仕事をこなしているのだ。テスト飛行が終わる頃には聯合陸軍が結成されていることだろう。
「こんなに平和なのは今だけかもしれないね」
 睦月がぼそりと呟いたときだった。
 ぼこり、と音を立てて湖がせり上がった。
「ふわっ!? つ、津波! 津波ですよイクさんっ!」
「あわわわわ、え、で、でもでも、はわーっ」
「湖で津波というのも変よね。……え、何これっ!?」
 睦月は思わず叫んだ。湖から現れたのは巨大ななまめかしい星形──巨大ヒトデだった。
 思わず腰が抜けた三人。イクは全身をがたがた震えさせておまけに両手もばたつかせてすさまじい慌てっぷりを披露した。
 そして謎の巨大ヒトデはゆっくりと三人の方へと近づいていこうとして──
 ぴたり、と動きを止めた。
「よー、久しぶりー」
「……は、藩王様!?」
「は、はにゃーっ!」
「言葉になってないよ、イク」
 木陰から現れた藩王はものすごい嬉しそうな笑顔で巨大ヒトデに近づいていった。ヒトデはのそりとなまめかしく動く。その動きのいやらしさに、思わず藩王以外の三人はうめいた。
「いやー、しばらく見ないうちにでかくなったな。何食ったんだ? って、おー、小さいのもいる! そうかついに子供(?)作ったのか。おっきくなれよー」
 巨大ヒトデはぶるぶるふるえると、こっくりと頷くように体を折った。それからばしゃんと音を立てて湖に沈んでいく巨大ヒトデ。小ヒトデはその後を追うように、波にゆられて湖の奥へと向かっていった。
 藩王玄霧は振り返ると、いまだ硬直している三人を見た。
「いやさ、あれ、俺の旧知の友人でね」
「そ、そうだったんですか! 類は友を呼ぶですねっ!」
 何故か感動したように文月は言った。藩王は腕を組むと、心からの悩ましげな表情を作ってうつむいた。
「これって喜べないよなー」
「は、何ですか藩王様っ!」
「いや、ちょっと世の中って複雑だよなって思ったところ。……あれ、おまえらなんでそんなびしょびしょなんだ?」
 よく見れば三人ともぐっしょり濡れていた。それどころか、イクはタイミングが悪かったのかこてんと木陰に倒れている。
「……さっきの巨大ヒトデが倒れたときに、すごい水がしぶきましたよね」睦月は口の端を引きつらせながら言う。
「ああ、そうだな」
「それがもろにかかったんですよっ!」
「……え?」
 間。
「あーっ、ごめんごめん。んじゃさよならーっ!」
「もう二度と姿を現すな! いつもいつも妙なことばっかりしでかしてもーっ!?」
 慌てて逃げる藩王。いきり立つ睦月をイクと文月が必死になって止めている間に、彼の姿は見えなくなった。
 そこから数メートル先の木陰にて。
 如月敦子はいまだがたがたふるえていた。というか、ぶるぶるふるえていた。悪寒のような物が背菅にわき起こって体中がふるえている。
 その姿を見つけて、玄霧は首をかしげた。どうしたんだーと気軽に声をかける。
「わ、わ、私っ!」
「なんだ? 愛の告白か?」
「違うっ! 私はああいう中途半端にうにょうにょした物が大っ嫌いなのよ!?」
 思い切り叫ぶ如月。玄霧はじっと如月を見つめながら、心の中でぽんと手を打った。
「そーか、苦手なんだな」
「違うっ! 嫌いなのき・ら・い。断じて苦手なわけじゃ──」
「そうか。ところで土産に小ヒトデをもってきたんだが──」
「ぎゃわーっ!?」
 すごい悲鳴を上げて逃げていく如月敦子。玄霧はげらげら大笑いすると、その後を追い掛けていった。


[No.301] 2007/01/10(Wed) 21:44:11
第三話 (No.297への返信 / 2階層) - 黒霧


...Scene Three.-from the Hospital.

 その頃頭にパレットナイフを突き刺され重傷を負った黒霧は、くぅの手によって病院に運ばれていった。病院の人々は「如月様が御乱心に!」とくぅが言っただけで全てを納得したように黒霧の治療に入り、一時間後にはすべてを終了させていた。
 そして黒霧は、念のため入院患者用の部屋での一日待機を命じられていた。この一日入院の理由は怪我のためというよりはどちらかというと如月敦子再襲撃に備えての措置であるとは誰もが知るところである。
 患者用のベッドで寝転がっていると、ふとその部屋のドアを吹き飛ばす勢いでとある人物が現れた。
「よー黒霧っ、刺されたって? この間セッションで酷い目に遭わせてくれた仕返しだ。うははは」
「ちょ、お前が仕組んだのか内藤あらため影法師っ!?」
「おうさっ!」
 やけに元気のいい声が病棟内に響いた。刹那、すさまじい轟音が全てを叩き潰す勢いで鳴り響いたことに対して疑問視する声は不思議と少なかった。
「い、痛いっ。死ぬーっ」
「やかましいっ。花瓶で頭淵割られたくらいで普通の猫ならともかくおまえが死ぬかっ! だいたい仕組んだことを認めた時点で文句言う権利を完全無欠に一切合切欠片も残さず消失していることに気づけーっ!?」
「どうでもいいけど、それを一息で言ってのけるなんて相変わらずすごい肺活量しているよね、君」
「やかましいっ。貧乳趣味のロリコン大好きソックスハンター=変態にだけは言われたくないわっ!」
「む、それは人種差別!」
 最早人種どうこうの問題でもないだろうに。
 それから五分ほどかけて己の喉がからっからに乾きはてるまで言い争いをした二人は、タイミングを見計らって「飲み物を買ってきましたー」と言って戻ってきたくぅを天使のように思った。ひったくる勢いで二人は飲み物を口に運んで、一気飲みした。
 同時に吹き出す黒霧と影法師。
「熱いしっ。しかも甘い!」黒霧は叫んだ。ついでに言えば猫舌だった。
「お汁粉はないでしょう、さすがに」げほげほむせながら影法師。
 二人の反応に慌てながら、くぅは深呼吸して、それからにこりと笑った。
「美味しいでしょう? ちょうど病院の人たちが作って回っていたんですよー」
「……つまりただでもらえるからもらってきたということ?」
「はいー」
「僕はあなたを天使のように思っていたよ」
 影法師はどこか遠くを見ながら言った。黒霧は何も言わずにため息をつく。頭ががんがんした。パレットナイフで突き刺されたせい、だけではないだろう。
「で、影法師さん。藩王が散歩に出たって言うのは本当だったんだが……」
「ああ、うんうん。そこは本当だよ。何しろ僕の見ている前で散歩に行こうと抜かしたあげく如月女史と共に大勢の吏族の防衛戦を突破してのけたからね。あれは見事だった」
「ああ、さいですか」
 なんで部下と戦ってしかも突破しなきゃならないんだよ、うちの藩王は。黒霧は頭の中に玄霧の笑顔を思い浮かべて、額に青筋を押っ立てた。鬼気を感じて一歩後退るくぅ。
 そのくぅの背をぽんと誰かが叩いた。誰だ、と振り返ってくぅは絶句した。
 満面の藩王玄霧がそこにいた。
「よー黒霧、見舞いに来たぞっ!」
「いいからあんたはとっとと仕事にもどらんかーっ!」
 黒霧は叫ぶと、まだお汁粉が大量に残っていることを確認した上で紙コップを投擲した。玄霧は笑いながらそれをキャッチしてふーふー言いながら食べ始めた。
「俺はもうちょっと甘い方が好きなんだがなー」
「ふん、少しは心配して見に来てやりましたよ」
 続いて、玄霧の背中からそっぽを向いた如月敦子が姿を現した。影法師は乾いた笑い声をあげて遠くを見た。戦争勃発まであと十秒。
「見舞いに来てくれたのは嬉しいんですが、もとはと言えばあんたが殺人衝動に駆られたのがいけないんじゃないんですかね?」
「それはあなたが勝手なことを言うからでしょう。私は悪くありませんっ」
「……ほう、そうか。その言葉、撤回するなら今のうちだぞ?」
「何故私が撤回しなければならないのよっ!」
 ぶつん、と何かが黒霧の頭の中ではじけ飛んだ。瞬間病室の気温が下がったように感じられたのはおそらく影法師一人だけではなかっただろう。
「いい加減馬鹿やってないで仕事に戻れーっ!」
 叫ぶなり、黒霧は手近にあったあらゆる物を投げ始めた。汁粉入り紙コップに始まり枕、何故かおいてあるひよこ型の時計、皮むきの途中の林檎、林檎の皮むきに使っていたナイフ。
「うおっ、危ないっ!」
「せ、せっかく謝ってやったのにその態度は何……ひーっ!?」
「やかましいさっさと出て行けーっ!」
 病室から駆けだしていく玄霧と如月。後には、暗黒闘気をまとってぜーぜー言ってる黒霧と、部屋の片隅で明日どころか明後日に目を向けている影法師、そして一人せっせとお汁粉を飲んでいたくぅの姿があったという。


[No.303] 2007/01/10(Wed) 22:14:16
添削 (No.298への返信 / 3階層) - 如月篤志@HP担当

One day theather.-UNRURY CHILDREN.-

...Opening scene.

 ──玄霧藩国は九割の悪戯っ気と五分の幸福、三分の涙と二分の苦笑から成立している。
黒霧・玄霧王国の歴史1巻冒頭より

 今日も今日とて、玄霧藩国は玄霧藩国であった。藩王がいきなり冒険に出て行ったり、如月敦子のへそくりを盗んで国庫にいれたり、ソックスハンターを組織して藩王に粘着性靴下爆弾を見舞ったり、大金使って戦争準備始めたり。あっというまに大惨事を量産していくこの国の日常の光景が広がっている。
 藩国紹介ではのどかだとか平和そうな事が連ねられているのに、その実この藩国は騒がしいことこの上なかった。特に上が動いたときは『騒がしいだけでは終わらない』というのが特徴的で、今日も
「散歩に行こう」
 とか政務中であるにも関わらず藩王が言いだしたため、しばし議会は荒れた。藩王に同調してエスケープしようとした吏族と真面目に仕事しろともっともなことを言う吏族の間で意見が割れたためである。
 一部では議会の間中藩王の口を塞いだ方がいいのではないか、いやいやこれはもうぐるぐるに縛ってエビフライみたいにして天井からぶら下げるしかないのではないかとか囁かれている。
 本当に藩王なのだろうか?
 そんな基本的で致命的な疑問はいざともかくとして、その日の午後。

 散歩は実行された。

 議会紛糾である。朝議に出てそれ以外全部すっ飛ばすなんてどんな王様だこの野郎! とすさまじい反響だった。なお、藩王と共にエスケープしたのは藩王の盟友にして悪友たる如月敦子であったという。
 この二人の悪戯心がおこす災難に対して、恐るべき耐久力と忍耐力を手にしている一部の古参達はそろって「またか」とこぼした。
 最早この二人の暴走はこの国でも有数の名物だった。

 そしてこれが、全てのきっかけであった。


[No.307] 2007/01/10(Wed) 22:35:33
ED (No.297への返信 / 2階層) - 黒霧



...Ending Scene.

 日が暮れる頃、今日はもう仕事はだめだーと諦めて帰り始める吏族達の姿があった。彼らはそれぞれ疲れたように肩をもみ、杖をつきながら政庁を後にする。その姿はいろいろな意味での心労のせいですっかりしょぼくれていた。
 そして彼らが帰ったその後で、こそこそ政庁に姿を現す二人の姿があった。
 藩王玄霧と、華族如月敦子である。
「さて、仕事は……おおー。ずいぶん進んでるみたいだな」
「でもこの書類、評価甘いわよ」
「だなー。じゃあ他にもあれなのを見つけたら出しておいてくれ。さて、と」
 玄霧は藩王専用椅子に座ると、両手両足を伸ばしてうんとのびをした。そしてテーブルに広げられた書類を一読し、次々に処理を開始していく。
 その隣で如月敦子はぶつぶつ文句を言いながら書類の整頓を始めていた。二人の手際の良さは万人が知るところであり、実はこれで能力だけは無駄に高いのである。これで毎日まともに仕事してくれればと、多くの吏族達はそう嘆く。
 二人が仕事を終わらせる頃には、すでに真夜中になっていた。静まりかえった政庁に、二人のため息が響いた。
 次いで、きゅるるるる〜という音が、二人の腹からちょうど同じタイミングで流れた。
「お腹空いたわ」
「そうだなー。どこか屋台あいてないかな」
「藩王の発想じゃないわよ、それ」
 滅茶苦茶冷めた声で、その場に割ってはいる一人の吏族の姿があった。二人はばっと起き上がってそちらを見る。睦月であった。
 何故か鍋を両手で持っていた。
「これ、調理場に残ってたカレーなんだけどいりますか?」
「いるっ!」
「ありがとーむっちゃん!」
「こら、抱きつくな!」
 二人して同時に突撃してきたので、睦月は手近のデーブルに鍋をおくと軽やかに飛んだ。そのまま回転。ハイキックで二人を撃沈させた。ある意味この国で一番容赦ないのが睦月であった。
「そういう事するならこれ持って帰るけど?」
「ごめんなさいごめんなさいほんっとうにごめんなさい!」
「あやまります土下座でも何でもしますからそれだけは勘弁をっ!」
 身分とか矜持とか一切合切地平線の彼方に放り捨てる勢いで二人は睦月の足下に跪いた。睦月鼻を鳴らすと、よろしいと言って近場のテーブルに腰掛けた。
「で、仕事の方は?」
「あー、まあこんな物だろう」玄霧は起き上がりながら答えた。「戦争始まったわけだし、あわただしくなったが、仕方ないんじゃないか? 大体うちはこれですんでるがもっと酷いところだってあるだろう。文句は言ってられん」
「そうそう。それにこの国が戦場になった時のための視察も終わったし、あとはまともに仕事するだけよ」
 本当に仕事するのかこの二人、と睦月は微妙に心配になったが、まあいいかと呟いて考えを放棄した。まあなるようになるでしょう。
「じゃあどうぞ。ここにあるのはカレーよ」
「いただきますっ!」
「あこら藩王、何フライングしてるのよ……って、あれ?」
 がばっと蓋を開けて硬直した玄霧。止めようとして腕を伸ばした如月も、鍋の中を見てフリーズした。
「……あの、睦月さん」玄霧はぼんやりと呟く。
「何?」
「なんでこのカレーにはタマネギと肉ばっかりで、じゃがいもとかにんじんが無いんでしょーか」
「みんなの食べた残りだから」
 玄霧と如月ははからずしてお互いをまじまじと見つめた。これ、カレーって言えるのか?
「昼間さぼった罰だと思えば?」
 睦月はあっさりと言った。やっぱり、この国で一番容赦ない人物というのは伊達ではなかった。


[No.308] 2007/01/10(Wed) 22:36:45
添削 (No.300への返信 / 3階層) - 如月篤志@HP担当

...Scene One.-from the School.

 玄霧藩国にも学校はある。この学校、年齢性別無関係にとにかく学力だけを見て授業レベルを考えているので、クラスの中に大人も子供もまざっていたりする。それ故に学術面でのレベルこそ高い物の、その裏では年齢差によるちょっとした差別やいじめが問題となっていた。
 そして今日はその学校で特別講師による授業が行われていた。例えば技師というか絵師である茅西瑠果(以下るかやか)という人がいる。るかやかはどちらかというとだんまりの人物で、あまり多くを語ることはない。むしろ聞き役である事が多い人物だった。
 今るかやかの前では何人かの生徒達がカンバスを手に、油絵を描いていた。書いている内容は想像上の生き物だったり、目の前の花瓶だったり、窓から見える景色だったり様々である。この授業は何故か子供に人気で、授業中はとにかくひたすら絵を描いていることが多い。
 そこに、部屋に入ってくる者がいた。文士黒霧と大族大島だった。大島はいつものごとくマタタビ手の醸造所で酒の臭いにうっとりしていたところ、黒霧に出会って引っ張り出されてきたのである。
 珍しい客人に、るかやかはわずかに眉を持ち上げて首をかしげた。あまり口を開かないるかやかになれていた二人は、てきとうに片手を持ち上げるだけで挨拶をすませた。
「藩王を見なかったか?」
 黒霧が聞くと、るかやかは不思議そうな顔をした。不思議そうにしているのにどこか堂々としている感じがする、それがるかやかの持つ七不思議の一つであった。
「どうやらまたあの二人が逃げたみたいでな」
「そうっ。今度こそこの俺の改造手術を受け入れてくれる気になったんだ!」
 大島は突然叫んだ。小学生のような小柄な体をばたばたさせて興奮している。るかやかはそれを見て、ゆっくりと右手を握り、人差し指だけをたてて口元に持って行く。静かに、と言う合図。
 見てみれば、生徒達が驚いたように大島を見ていた。実はこの中で一人、大島ではなく黒霧を見てびっくりした顔をしている女子がいたが、黒霧は視線が集まった恥ずかしさで顔を手で覆っておりこのことには気づかなかった。
「まあ改造伯爵あれこれはおいておくとして」黒霧はどこかひからびた声で言った。「実際問題、この時期にあの二人がいないと話が進まない。いや、まあ如月の方は別にいいんだが、玄霧藩王がいないのは流石にまずい──ぐあっ!?」
 黒霧、突然どこからか飛んできた絵描き用のナイフが頭に突き刺さってきてぶっ倒れる。絵の具のそれとは明らかに違う赤い液体がぶしゅーと噴き出した。
「死んだな」とるかやか。
「改造してくる」堂々と大島。
 改造って何だろうとささやき始める子供達。何故か黒霧を助けようという気持ちにはならなかったらしい。好奇心は簡単に人を殺す物である。
 大島はぼんやりと子供達を眺めた。いやー最近の子供って自分に正直というか周りを見ないというかとにかく死にかけたとき彼らを頼るのだけはやめようと思う。と、ふと気づく。
「って、如月さん!」
「うん。玄霧さんもいるよ」
 腕を組んで頷くるかやかと唖然とする大島の視界の中には、カンバスの前でがるるるしている如月とどこか遠い目をした玄霧の姿があった。
「なによ、私のこといらないとか言ったのよ、そいつ!」
「まあ俺は投げるならパレットにしておけって言ったんだけどな」
 顔を真っ赤にして如月は怒鳴る。一方の玄霧は「あーあ見つかっちゃった」と諦めたように呟いていた。
「……って、あっ! 俺、あんた達を捕まえるんだった!」
 目の前の衝撃的な出来事に彼岸を見ていた大島は、次の瞬間自分の役目に気づくと二人に駆け寄っていこうとした。
 が、それよりも早く、二人は同時に立ち上がると、窓を蹴破って逃走を開始。瞬く間に森の中に紛れていってしまう。
 大島は「待てー」といいながら追撃に出た。子供達はすでに黒霧にも藩王達の存在にも興味を失ったのか、自分達のカンバスに集中していた。
 るかやかは少し考えた後、隣の教室で絵を教えているくぅに連絡を取り、何人か人手を呼んで黒霧を搬送させた。そして雑務を全て片付けたところで、ちょっと気になって玄霧と如月の向かっていたカンバスを見た。
「おや、これは」
 るかやかは先日起こった妙な噂を思い出した。確か藩王はソックスだらけで、如月はへそくりをうばわれてむっつりしながら会議に出席したという。
 玄霧のカンバスにはふくれっ面の如月が、如月のカンバスにはソックスだらけで顔をひくつかせている玄霧の姿があった。


[No.309] 2007/01/10(Wed) 22:40:28
添削 (No.301への返信 / 3階層) - 如月篤志@HP担当

...Scene Two.-from the Lakeside.

 玄霧藩国の湖畔は森の中を進み、砂鉄工場を抜けた先にある。森の中にある広い湖畔は静かで涼しい空気に満ち、秋の季節には赤と黄色の目にまぶしくなるような彩色の姿を見せる。
 そこにいたには技族のイクと文月、吏族の睦月の三人だった。ある意味で珍しい組み合わせといえるこの三人は、それぞれの事情があってここに集まってきていた。イクは戦争準備で疲れたのでエスケープ、文月はそれに付き合わされてきたのである。ついでに言うと、イクは一人で出て行く根性が足りなくて強引に文月を引っ張ってきた趣がある。
「あ、ヒトデ発見しましたー」と文月。
「ひ、ヒトデ? え、えー、でも」慌てるイク。
 あわてるイクを見て何故かおたおたし始める文月。こんな風に二人でパニックに陥っていると、会議滅茶苦茶になったので面倒くさくなって単独エスケープしてきた睦月が合流して
「ヒトデは湖にはいないでしょう」
 と冷静に突っこむ事で、場が収まったのである。
 今はちょうど場が収まり、三人そろって湖の畔に座り込んでぼんやりと景色を眺めていた。
「平和ですねー」と文月。
「そうでもないよ」
 睦月はそう言うとため息をついた。実際最近は平和でもないのだ。同じ共和国のフィーブル藩国は戦場と化して、正体不明の要塞艦やらが現れているという。また犬の事だからどうでもいいけどわんわんの方ではなんかものすごい兵器が出たとかでわんわん悲鳴を上げているとか。その結果、両国共にI=D開発に着手してすぐさま試作品を生産、現在では両国共同でのテスト飛行を行っている。その間にも一部の吏族は招集されてすさまじい量の仕事をこなしているのだ。テスト飛行が終わる頃には聯合陸軍が結成されていることだろう。
「こんなに平和なのは今だけかもしれないね」
 睦月がぼそりと呟いたときだった。
 ぼこり、と音を立てて湖がせり上がった。
「ふわっ!? つ、津波! 津波ですよイクさんっ!」
「あわわわわ、え、で、でもでも、はわーっ」
「湖で津波というのも変よね。……え、何これっ!?」
 睦月は思わず叫んだ。湖から現れたのは巨大ななまめかしい星形──巨大ヒトデだった。
 思わず腰が抜けた三人。イクは全身をがたがた震えさせておまけに両手もばたつかせてすさまじい慌てっぷりを披露した。
 そして謎の巨大ヒトデはゆっくりと三人の方へと近づいていこうとして──
 ぴたり、と動きを止めた。
「よー、久しぶりー」
「……は、藩王様!?」
「は、はにゃーっ!」
「言葉になってないよ、イク」
 木陰から現れた藩王はものすごい嬉しそうな笑顔で巨大ヒトデに近づいていった。ヒトデはのそりとなまめかしく動く。その動きのいやらしさに、思わず藩王以外の三人はうめいた。
「いやー、しばらく見ないうちにでかくなったな。何食ったんだ? って、おー、小さいのもいる! そうかついに子供(?)作ったのか。おっきくなれよー」
 巨大ヒトデはぶるぶるふるえると、こっくりと頷くように体を折った。それからばしゃんと音を立てて湖に沈んでいく巨大ヒトデ。小ヒトデはその後を追うように、波にゆられて湖の奥へと向かっていった。
 藩王玄霧は振り返ると、いまだ硬直している三人を見た。
「いやさ、あれ、俺の旧知の友人でね」
「そ、そうだったんですか! 類は友を呼ぶですねっ!」
 何故か感動したように文月は言った。藩王は腕を組むと、心からの悩ましげな表情を作ってうつむいた。
「これって喜べないよなー」
「は、何ですか藩王様っ!」
「いや、ちょっと世の中って複雑だよなって思ったところ。……あれ、おまえらなんでそんなびしょびしょなんだ?」
 よく見れば三人ともぐっしょり濡れていた。それどころか、イクはタイミングが悪かったのかこてんと木陰に倒れている。
「……さっきの巨大ヒトデが倒れたときに、すごい水がしぶきましたよね」睦月は口の端を引きつらせながら言う。
「ああ、そうだな」
「それがもろにかかったんですよっ!」
「……え?」
 間。
「あーっ、ごめんごめん。んじゃさよならーっ!」
「もう二度と姿を現すな! いつもいつも妙なことばっかりしでかしてもーっ!?」
 慌てて逃げる藩王。いきり立つ睦月をイクと文月が必死になって止めている間に、彼の姿は見えなくなった。
 そこから数メートル先の木陰にて。
 如月敦子はいまだがたがたふるえていた。というか、ぶるぶるふるえていた。悪寒のような物が背菅にわき起こって体中がふるえている。
 その姿を見つけて、玄霧は首をかしげた。どうしたんだーと気軽に声をかける。
「わ、わ、私っ!」
「なんだ? 愛の告白か?」
「違うっ! 私はああいう中途半端にうにょうにょした物が大っ嫌いなのよ!?」
 思い切り叫ぶ如月。玄霧はじっと如月を見つめながら、心の中でぽんと手を打った。
「そーか、苦手なんだな」
「違うっ! 嫌いなのき・ら・い。断じて苦手なわけじゃ──」
「そうか。ところで土産に小ヒトデをもってきたんだが──」
「ぎゃわーっ!?」
 すごい悲鳴を上げて逃げていく如月敦子。玄霧はげらげら大笑いすると、その後を追い掛けていった。


[No.310] 2007/01/10(Wed) 22:54:13
添削 (No.303への返信 / 3階層) - 如月篤志@HP担当

...Scene Three.-from the Hospital.

 その頃頭にパレットナイフを突き刺され重傷を負った黒霧は、くぅの手によって病院に運ばれていった。病院の人々は「如月様が御乱心に!」とくぅが言っただけで全てを納得したように黒霧の治療に入り、一時間後にはすべてを終了させていた。
 そして黒霧は、念のため入院患者用の部屋での一日待機を命じられていた。この一日入院の理由は怪我のためというよりはどちらかというと如月敦子再襲撃に備えての措置であるとは誰もが知るところである。
 患者用のベッドで寝転がっていると、ふとその部屋のドアを吹き飛ばす勢いでとある人物が現れた。
「よー黒霧っ、刺されたって? この間セッションで酷い目に遭わせてくれた仕返しだ。うははは」
「ちょ、お前が仕組んだのか内藤あらため影法師っ!?」
「おうさっ!」
 やけに元気のいい声が病棟内に響いた。刹那、すさまじい轟音が全てを叩き潰す勢いで鳴り響いたことに対して疑問視する声は不思議と少なかった。
「い、痛いっ。死ぬーっ」
「やかましいっ。花瓶で頭ぶち割られたくらいで普通の猫ならともかくおまえが死ぬかっ! だいたい仕組んだことを認めた時点で文句言う権利を完全無欠に一切合切欠片も残さず消失していることに気づけーっ!?」
「どうでもいいけど、それを一息で言ってのけるなんて相変わらずすごい肺活量しているよね、君」
「やかましいっ。貧乳趣味のロリコン大好きソックスハンター=変態にだけは言われたくないわっ!」
「む、それは人種差別!」
 最早人種どうこうの問題でもないだろうに。
 それから五分ほどかけて己の喉がからっからに乾きはてるまで言い争いをした二人は、タイミングを見計らって「飲み物を買ってきましたー」と言って戻ってきたくぅを天使のように思った。ひったくる勢いで二人は飲み物を口に運んで、一気飲みした。
 同時に吹き出す黒霧と影法師。
「熱いしっ。しかも甘い!」黒霧は叫んだ。ついでに言えば猫舌だった。
「お汁粉はないでしょう、さすがに」げほげほむせながら影法師。
 二人の反応に慌てながら、くぅは深呼吸して、それからにこりと笑った。
「美味しいでしょう? ちょうど病院の人たちが作って回っていたんですよー」
「……つまりただでもらえるからもらってきたということ?」
「はいー」
「僕はあなたを天使のように思っていたよ」
 影法師はどこか遠くを見ながら言った。黒霧は何も言わずにため息をつく。頭ががんがんした。パレットナイフで突き刺されたせい、だけではないだろう。
「で、影法師さん。藩王が散歩に出たって言うのは本当だったんだが……」
「ああ、うんうん。そこは本当だよ。何しろ僕の見ている前で散歩に行こうと抜かしたあげく如月女史と共に大勢の吏族の防衛戦を突破してのけたからね。あれは見事だった」
「ああ、さいですか」
 なんで部下と戦ってしかも突破しなきゃならないんだよ、うちの藩王は。黒霧は頭の中に玄霧の笑顔を思い浮かべて、額に青筋を押っ立てた。危機を感じて一歩後退るくぅ。
 そのくぅの背をぽんと誰かが叩いた。誰だ、と振り返ってくぅは絶句した。
 満面の藩王玄霧がそこにいた。
「よー黒霧、見舞いに来たぞっ!」
「いいからあんたはとっとと仕事にもどらんかーっ!」
 黒霧は叫ぶと、まだお汁粉が大量に残っていることを確認した上で紙コップを投擲した。玄霧は笑いながらそれをキャッチしてふーふー言いながら食べ始めた。
「俺はもうちょっと甘い方が好きなんだがなー」
「ふん、少しは心配して見に来てやりましたよ」
 続いて、玄霧の背中からそっぽを向いた如月敦子が姿を現した。影法師は乾いた笑い声をあげて遠くを見た。戦争勃発まであと十秒。
「見舞いに来てくれたのは嬉しいんですが、もとはと言えばあんたが殺人衝動に駆られたのがいけないんじゃないんですかね?」
「それはあなたが勝手なことを言うからでしょう。私は悪くありませんっ」
「……ほう、そうか。その言葉、撤回するなら今のうちだぞ?」
「何故私が撤回しなければならないのよっ!」
 ぶつん、と何かが黒霧の頭の中ではじけ飛んだ。瞬間病室の気温が下がったように感じられたのはおそらく影法師一人だけではなかっただろう。
「いい加減馬鹿やってないで仕事に戻れーっ!」
 叫ぶなり、黒霧は手近にあったあらゆる物を投げ始めた。汁粉入り紙コップに始まり枕、何故かおいてあるひよこ型の時計、皮むきの途中の林檎、林檎の皮むきに使っていたナイフ。
「うおっ、危ないっ!」
「せ、せっかく謝ってやったのにその態度は何……ひーっ!?」
「やかましいさっさと出て行けーっ!」
 病室から駆けだしていく玄霧と如月。後には、暗黒闘気をまとってぜーぜー言ってる黒霧と、部屋の片隅で明日どころか明後日に目を向けている影法師、そして一人せっせとお汁粉を飲んでいたくぅの姿があったという。


[No.311] 2007/01/10(Wed) 23:00:44
添削 (No.308への返信 / 3階層) - 如月篤志@HP担当

...Ending Scene.

 日が暮れる頃、今日はもう仕事はだめだーと諦めて帰り始める吏族達の姿があった。彼らはそれぞれ疲れたように肩をもみ、杖をつきながら政庁を後にする。その姿はいろいろな意味での心労のせいですっかりしょぼくれていた。
 そして彼らが帰ったその後で、こそこそ政庁に姿を現す二人の姿があった。
 藩王玄霧と、華族如月敦子である。
「さて、仕事は……おおー。ずいぶん進んでるみたいだな」
「でもこの書類、評価甘いわよ」
「だなー。じゃあ他にもあれなのを見つけたら出しておいてくれ。さて、と」
 玄霧は藩王専用椅子に座ると、両手両足を伸ばしてうんとのびをした。そしてテーブルに広げられた書類を一読し、次々に処理を開始していく。
 その隣で如月敦子はぶつぶつ文句を言いながら書類の整頓を始めていた。二人の手際の良さは万人が知るところであり、実はこれで能力だけは無駄に高いのである。これで毎日まともに仕事してくれればと、多くの吏族達はそう嘆く。
 二人が仕事を終わらせる頃には、すでに真夜中になっていた。静まりかえった政庁に、二人のため息が響いた。
 次いで、きゅるるるる〜という音が、二人の腹からちょうど同じタイミングで流れた。
「お腹空いたわ」
「そうだなー。どこか屋台あいてないかな」
「藩王の発想じゃないわよ、それ」
 滅茶苦茶冷めた声で、その場に割ってはいる一人の吏族の姿があった。二人はばっと起き上がってそちらを見る。睦月であった。
 何故か鍋を両手で持っていた。
「これ、調理場に残ってたカレーなんだけどいりますか?」
「いるっ!」
「ありがとーむっちゃん!」
「こら、抱きつくな!」
 二人して同時に突撃してきたので、睦月は手近のデーブルに鍋をおくと軽やかに飛んだ。そのまま回転。ハイキックで二人を撃沈させた。ある意味この国で一番容赦ないのが睦月であった。
「そういう事するならこれ持って帰るけど?」
「ごめんなさいごめんなさいほんっとうにごめんなさい!」
「あやまります土下座でも何でもしますからそれだけは勘弁をっ!」
 身分とか矜持とか一切合切地平線の彼方に放り捨てる勢いで二人は睦月の足下に跪いた。睦月は鼻を鳴らすと、よろしいと言って近場のテーブルに腰掛けた。
「で、仕事の方は?」
「あー、まあこんな物だろう」玄霧は起き上がりながら答えた。「戦争始まったわけだし、あわただしくなったが、仕方ないんじゃないか? 大体うちはこれですんでるがもっと酷いところだってあるだろう。文句は言ってられん」
「そうそう。それにこの国が戦場になった時のための視察も終わったし、あとはまともに仕事するだけよ」
 本当に仕事するのかこの二人、と睦月は微妙に心配になったが、まあいいかと呟いて考えを放棄した。まあなるようになるでしょう。
「じゃあどうぞ。ここにあるのはカレーよ」
「いただきますっ!」
「あこら藩王、何フライングしてるのよ……って、あれ?」
 がばっと蓋を開けて硬直した玄霧。止めようとして腕を伸ばした如月も、鍋の中を見てフリーズした。
「……あの、睦月さん」玄霧はぼんやりと呟く。
「何?」
「なんでこのカレーにはタマネギと肉ばっかりで、じゃがいもとかにんじんが無いんでしょーか」
「みんなの食べた残りだから」
 玄霧と如月ははからずしてお互いをまじまじと見つめた。これ、カレーって言えるのか?
「昼間さぼった罰だと思えば?」
 睦月はあっさりと言った。やっぱり、この国で一番容赦ない人物というのは伊達ではなかった。


[No.313] 2007/01/10(Wed) 23:03:32
[削除] (No.297への返信 / 2階層) -

この記事は投稿者により削除されました

[No.333] 2007/01/11(Thu) 21:55:17
[ステージ1 イベント14 食糧増産命令]設定文章 (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

[ステージ1 イベント14 食糧増産命令]設定文章の提出所とします。

[No.345] 2007/01/12(Fri) 22:56:44
2101文字・未校正 (No.345への返信 / 2階層) - 黒霧

 玄霧藩国は酒の名産地である。特に代表的な物がマタタビ酒であるが、この国の果樹園には勿論他にも食用の物が数多くある。無論、それも酒に転用されているわけではあるが。
 この国の果樹園で生産されているのはりんご・ぶどう・みかん・いちご・すいかといった果実類である。いずれの果実も酒やジュースに転用される事が多く、そうでない物は保存用の大樽で漬け物状態にされて保存される。生産者はいずれも果樹園を経営する物がごくわずかと、あとは観光客に対して開かれる「イベント」と称した農作業の手伝いや近隣の学校からの手伝いをうけている。特に摘果作業や収穫作業は人気があり、近年ではそれほど大規模な宣伝をせずともつまみ食いの誘惑にかられて多くの人々が尋ねてくると言う。無論のこと、果樹園に務める正規の農家達による地道な下草狩りや水やり、風雨に対する備えと言った地道な作業があって故のイベントであることには違いない。ちなみに、一年に一度この国では「リンゴ祭り」なる物が開かれるらしい。ちなみにこの「リンゴ祭り」の発案者は、とあるゲームにはまった華族だとも藩王だとも言われている。これが玄霧王国が存続する間は欠かさず続けられるようになろうとは誰も考えなかったであろう。
 また他にも、この国の特性を生かした食料がいくつかある。例えばこの国は土地は森と山からなる。野生の果実や山菜はそこかしこに見られ、簡単なキノコなどは家庭で栽培されることもしばしばであった。中にはキノコ栽培を主な職業とする者もおり、彼らの手により作られた極上のキノコは焼いて食べるだけでなく、病院にもっていって漢方薬の材料とてし高値で取引されることもある。もっとも、キノコを生産する森国人の場合大概が酒の肴に用いる前提で作っていたため、これは思わぬ収穫といえた。
 森の中にはバナナ、びわ、イチジクと言った物ね見られる。時々猫たちが果実の臭いに引かれてやって現れたカブトムシとかクワガタを捕まえてにゃんにゃんいじり倒している姿が見受けられる。また、野生の山菜や根菜、キノコ、果実もそれぞれ保存食風に加工されて木の洞を利用した倉庫にしまわれている。多くとれすぎた物があれば、国がお金を払って購入して有事に備えて補完している場合も多々ある。ちなみに、会議中に振る舞われる果実類はたいていの場合こうやって蓄えられたけれどそろそろ駄目になりそーと言った紙一重の代物であり、まだ就任して間もない吏族や下手な物にあたった吏族は数時間腹痛と闘うことになる。これを見越して、病院からはいくつもの薬が送られてきているとか。
 果実類の保存方法は、そのままたるにまとめて保存する場合もあれば、何らかの形に加工してとっておく場合もある。その代表例と言われる物が酒とジャムであった。特にジャムは、この国の隠れファンの間では有名な代物で、各家庭で作られた独特の味付けのジャムは時に如月敦子のようなプライドの高そうなツンデレ華族ですら直に頼み込んで買い取ることがある逸品である。果樹園には専用の隠しジャム工場などもあって、果実としてはそのまま売れない商品もジャムにして無駄なく利用している。また、同様に果実から作られる味の濃いジュースも同じような理由から多種多様に生産されている。そしてこやはり、ジャムやジュースといった物も酒と同じで国をあげて買い上げに回り市場に回すことがある。
 っておまえら果実とか山菜ばっかりじゃねーかよー、と一部の人々はここで文句を言う。だがしかし! 当然それだけではない。玄霧藩国にはれっきとした川があり、これを利用して川魚の養殖も行われている。ここでとれた魚は燻製にされて保存されたり、居酒屋に持ち込まれて焼かれて食べられたり、あるいは干物にしているところで猫たちに盗まれたりしている。この猫の被害に養殖業者は「こなくそーっ!?」と怒り狂っているが、子に国にいる大抵人々は「まあいいじゃないか」と魚をくわえて逃げていく猫たちに温かいまなざしを向けていた。
 特筆すると、この国で捕れる川魚は何の因果か酒のつまみに良く合うらしい。そのため一級の酒飲みとあらば自ら釣り竿と船でもって川に出て、急流に流されながら決死の魚釣りをするらしい。時には急流に飲まれて流れていく者もいるとかいないとか。
 捕捉。数日前藩王が川を流れてきたという噂が下町では流れている。
 最後にこれらの食料を補完しておく倉庫について詳しく説明しておく。この国で扱われる倉庫はたいていの場合巨木の木の洞を利用した物で、木の持つ生来の温度管理機能もあってか非情に涼しくなっている。ただしこの木の洞を利用した倉庫は倉庫として使うに相応しい木を選定し、相応の技師達が特別な道具で加工する必要があり、誰もが簡単に作れるわけではない。もっと手軽な保存方法としては、深く掘った土を木枠で囲い地下水脈の冷気に当てて保存しておくことも出来る。一般家庭では川に近いごく一部の森国人がこうやって果実を保存しておいたりするが、実は森の中には国専用の巨大保管庫が用意されている。そこには各所から集めた膨大な量の食料が保存されている。


[No.346] 2007/01/12(Fri) 23:29:49
添削・検閲完了 (No.346への返信 / 3階層) - 玄霧@藩王

 玄霧藩国は酒の名産地である。特に代表的な物がマタタビ酒であるが、この国の果樹園には勿論他にも食用の物が数多くある。無論、それも酒に転用されているわけではあるが。
 この国の果樹園で生産されているのはりんご・ぶどう・みかん・いちごといった果実類である。いずれの果実も酒やジュースに転用される事が多く、そうでない物は生のまま、アルコール付け、乾物(ドライフルーツ)などにされ樽で保存される。生産者はいずれも果樹園を経営する物がごくわずかと、あとは観光客に対して開かれる「イベント」と称した農作業の手伝いや近隣の学校からの手伝いをうけている。特に摘果作業や収穫作業は人気があり、近年ではそれほど大規模な宣伝をせずともつまみ食いの誘惑にかられて多くの人々が尋ねてくると言う。無論のこと、果樹園に務める正規の農家達による地道な下草狩りや水やり、風雨に対する備えと言った地道な作業があって故のイベントであることには違いない。ちなみに、一年に一度この国では「リンゴ祭り」なる物が開かれるらしい。ちなみにこの「リンゴ祭り」の発案者は、とあるゲームにはまった華族だとも藩王だとも言われている。これが玄霧王国が存続する間は欠かさず続けられるようになろうとは誰も考えなかったであろう。
 また他にも、この国の特性を生かした食料がいくつかある。例えばこの国の土地の殆どが森と山からなる。野生の果実や山菜はそこかしこに見られ、簡単なキノコなどは家庭で栽培されることもしばしばであった。中にはキノコ栽培を主な職業とする者もおり、彼らの手により作られた極上のキノコは焼いて食べるだけでなく、病院にもっていって漢方薬の材料として高値で取引されることもある。もっとも、キノコを生産する森国人の場合大概が酒の肴に用いる前提で作っていたため、これは思わぬ収穫といえた。
 森の中には栗、胡桃、枇杷、無花果、アケビと言った物も見られる。時々猫たちが果実の臭いに引かれてやって現れたカブトムシとかクワガタを捕まえてにゃんにゃんいじり倒している姿が見受けられる。また、野生の山菜や根菜、キノコ、果実もそれぞれ保存食風に加工されて木の洞を利用した倉庫にしまわれている。多くとれすぎた物があれば、国がお金を払って購入して有事に備えて補完している場合も多々ある。ちなみに、会議中に振る舞われる果実類はたいていの場合こうやって蓄えられたけれどそろそろ駄目になりそーと言った紙一重の代物であり、まだ就任して間もない吏族や下手な物にあたった吏族は数時間腹痛と闘うことになる。これを見越して、病院からはいくつもの薬が送られてきているとか。
 果実類の保存方法は、そのままたるにまとめて保存する場合もあれば、何らかの形に加工してとっておく場合もある。その代表例と言われる物が酒とジャムであった。特にジャムは、この国の隠れファンの間では有名な代物で、各家庭で作られた独特の味付けのジャムは時に如月敦子のようなプライドの高そうなツンデレ華族ですら直に頼み込んで買い取ることがある逸品である。果樹園には専用の隠しジャム工場などもあって、果実としてはそのまま売れない商品や生のまま保存され、少し痛んできた物もジャムにして無駄なく利用している。また、同様に果実から作られる味の濃いジュースも同じような理由から多種多様に生産されている。そしてやはり、ジャムやジュースといった物も酒と同じで国をあげて買い上げに回り市場に回すことがある。
 っておまえら果実とか山菜ばっかりじゃねーかよー、と一部の人々はここで文句を言う。だがしかし! 当然それだけではない。玄霧藩国にはれっきとした川があり、これを利用して川魚の養殖も行われている。ここでとれた魚は燻製にされて保存されたり、居酒屋に持ち込まれて焼かれて食べられたり、あるいは干物にしているところで猫たちに盗まれたりしている。この猫の被害に養殖業者は「こなくそーっ!?」と怒り狂っているが、この国にいる大抵の人々は「まあいいじゃないか」と魚をくわえて逃げていく猫たちに温かいまなざしを向けていた。
 特筆すると、この国で捕れる川魚は何の因果か酒のつまみに良く合うらしい。そのため一級の酒飲みとあらば自ら釣り竿と船でもって川に出て、急流に流されながら決死の魚釣りをするらしい。時には急流に飲まれて流れていく者もいるとかいないとか。
 捕捉。数日前藩王が川を流れてきたという噂が下町では流れている。
 最後にこれらの食料を補完しておく倉庫について詳しく説明しておこう。この国で扱われる倉庫はたいていの場合巨木の木の洞を利用した物で、木の持つ生来の温度管理機能もあってか非情に涼しくなっている。ただしこの木の洞を利用した倉庫は倉庫として使うに相応しい木を選定し、相応の技師達が特別な道具で加工する必要があり、誰もが簡単に作れるわけではない。もっと手軽な保存方法としては、深く掘った土を木枠で囲い地下水脈の冷気に当てて保存しておくことも出来る。一般家庭では川に近いごく一部の森国人がこうやって果実を保存しておいたりするが、実は森の中には国専用の巨大保管庫が用意されている。そこには各所から集めた膨大な量の食料が保存されている。


添削完了しました。バナナ・スイカなどを削ってドライフルーツなどを増やしました。


[No.347] 2007/01/12(Fri) 23:57:08
食料増産用SS(置き場が無いのでここで) (No.345への返信 / 2階層) - 玄霧@藩王

ひゃっほー、書きあがったぜー!
一度書いてから添削したら別物になったのは君と俺だけの内緒!




食料増産における藩王の死闘〜または、彼はいかにして弱点を克服し、巨大魚と対決することになったか〜

文:玄霧


ここは山と森の国、玄霧藩国。
そんな国にも川はある。むしろ河というべき大きさの河が。幅は広く底は深く、しかし水は澄んでおり魚影も確認できる。
まぁ、いくら澄んでいても一番深い場所は底が良く見えない訳だが。ちなみに子供たちが間違って覚えれないように色々工夫を凝らしている。そのへん説明するとSS一本近く使うので次の機会にしたい。
さて、そんな河べりに釣り糸をたらす男が一人。この国の藩王である玄霧である。
「・・・やっぱり題名に『異常な』って入れるべきかねぇ」
とまぁ、謎なことをのたまいながら生あくびを噛み潰す藩王。この人物、都合が悪くなるともっぱら旧友の家に逃げたり釣りをしたりすることで有名である。
その彼が釣りをしていると言う事は、何か都合が悪くなったのであろう。
「ふぅ・・・急に食料増産っつってもなぁ・・・」
溜息をつく彼を笑うようかのように魚が跳ねた。


さて、時は少し戻る。
以前の戦闘動員から数日。『やれやれ大変だったなぁ』と吏族が口をそろえて言う中に、慌てて駆け込んで来る影が一つ。
「た、た、大変だぁっ!」
と言いながら、文字通り転がり込んでくる若き吏族。彼の手には書簡が握られていた。倒れた彼を解放している吏族をヨソに藩王は書簡を取り上げ、中を見た。
「えー、なになに?『戦闘動員に付く食糧不足が予測されるため、各藩国は規定の量以上を増産されたし』か。んーと、ウチの割り当ては・・・19万tか」
無言で所定の位置に座る吏族達。『会議始めろ』の合図である。藩王は溜息つきながら上座に歩いて行き
「はい、じゃー藩国会議はじめまーす。技師と文師呼んでー」
と、非常にやる気の無い声で宣言した。
その後はテキパキと進み、恙無く会議は終了した。
一言で言えば「食糧生産地の規模を広げよう」で決着が付いた。
だが、しかし。
どう計算しても足りない。強いて言えば4万tほど。
足りない分は山から頂戴しよう。ということになったが、ほぼ全員が足りないだろうなぁと思っていた。


時は戻る。
つまりの所、彼は妙案を求めて釣りに来ていたのだった。無論、釣りで食料を増やそうとは考えておらず『肴が釣れればいいか』位の気分である。
だが、珍しく上流のほうまで脚を伸ばし、釣り糸をたらすがマッタク釣れない。自分の釣りの腕が落ちたかとか思ったが即座に考えないことにした。
「やれやれ。今日は坊主か。たまにはそんなこともあらぁなぁ」
そう呟きながら片付けようとすると、手に感触があった。
「おっと。最後にいっぴぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
急に重くなる竿、そして衝撃。
もしもこの状況を見ていたものがいたら『人が水面を跳ねる決定的瞬間を目撃した』と口をそろえて言うだろう。
「わちょっ!まっ!なっ!なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇ」
見事なドップラー効果付きで川下に爆走というか水切り石のごとく飛び跳ねる藩王。
どうでも良いが水に擦れた影響でズボンが脱げそうである。
「誰かたぁーすぅーけぇーてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
非常に情けない声を上げながら飛び跳ね続けるこの国のTOP。国民が見たら目を疑うだろう。
いや、そもそも人が水面を跳ねる時点で目を疑うとは思うが。
そのとき。
『ザバァァァァァァァッ!!!』
魚が跳ねた。魚というには幾分大きすぎるがシルエットは確かに魚であった。と、同時に
『ブチィッ!!』
糸が切れた。糸と言っても皮紐をねじり合わせただけのものであり、今まで持ったのが奇跡と言えるだろう。
で、慣性というものを殺せずに吹っ飛んでいく藩王。
・・・1時間後。だいぶ下流のほうで水死体っぽい藩王が救出された。なお、まだ生きていたという。


ズドドドドド、と何かが疾走する音。そして・・・
「くぉーれぇーどぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バァン、と政庁の扉を叩き壊さんかの勢いで開く藩王。救出されたままなのでずぶぬれである。
「・・・あー、えー。とにかく体を拭いてズボンをキッチリはいて下さい」
「それどころじゃねぇこれだ!」
「だからなんなんですか」
堂々巡りになりそうな予感を感じ取ったのか、目で合図する雅戌。即座に如月が首筋にチョップをかます。
其れを見事に回避失敗しながらも続ける藩王。
「だから!食料問題が解決しそうなんだよ!全員集合!!」
先ほどとは打って変わって物凄いやる気な藩王を止めるよりか会議に付き合ったほうが労力が低いと判断し、即座に集合する吏族達。
というか藩王の扱い酷すぎである。
そして数分後。
「というわけで、魚を釣って食料にするぞ!」
微妙に諦めたような空気の中、雅戌が手を上げる。
「はい、藩王。ウチの国には魚の養殖所がありますが其れとは別物ですね?」
「違う!天と地ほどの差の大きさだ!」
「で、何処までが本当ですか」
「100%本当だ!嘘偽りは無いっ!」
「私怨でそんなこと言ってるんじゃ無いですね?」
「否ッ!断じて否ッ!!」
「じゃ、検討しますかね。先ずは釣竿ですか」


藩王と摂政の三文芝居のような論戦の後。
遂に「対・巨大魚?」用の竿が出来た。
本体は粘度を高く保った鉄製。糸は皮紐を3本より合わせて強化したもの。針は硬度を高くした鉄製。
藩王も大満足で「うむ、完璧だ」と言った後、重くて持てんわっ!と床に叩きつけた。
「重くて使いもんにならんわーい!!」
「藩王。其れは固定して使うものです」
以下略。
さて、問題の最初に掛かった場所まで人員動員してえっちらおっちら竿を担いでやってくる藩王一向。
指示を出す前に自分で設置に掛かる藩王。基本的に釣り好きなのである。
程なくして設置完了。竿の持ち手から伸びた皮紐を周囲の木々に固定し、押し切られるのを防ぐ形らしい。
常に持っている必要も無い(掛かれば確実に気付く)ため、藩王と一部の側近以外はやや下流の場所で釣りをすることになった。


そして、2時間ほどした後。
「・・・かかりませんねぇ」
側近が折れた。
暇で耐えられないと言ったので下流のグループに混じって釣りするように言うと暇つぶしにいいやと逃げた。
さらに、1時間後。
「藩王。もう諦めませんか?」
摂政たちが折れた。
煩いので下流に行けと言うと渋々行った。その割にはちゃっかり釣竿を持っていた。
それからさらに1時間後。
いい加減に太陽も沈みそうなので藩王拾って帰るか。と側近達が思い立った頃に異変は起こった。
あまりに長い間待ったため船を漕いでいた藩王を尻目にしなる竿。木々の揺れる音。次第に大きくなっていく。
と、ここで藩王が気付いた。
「うぉっしゃー!掛かったー!」
嬉々として釣竿に近づく。何かを踏んづけた気もするが気のせいだろうと竿にかじりつき、魚の動きにあわせて竿を振る。
流石に質量差がありすぎるため、疲れさせてからゆっくりと引き上げる算段である。
「ぬぉっちょっ!クソ、竿を振るだけでやたら疲れる!側近達は下流に行ったしどうするかっ・・・!」
そうこうしている間にも竿は振れる。既に固定してた台座は吹っ飛んでいる。
『プチ・・・プチプチ・・・』
嫌な音が藩王に聞こえ、振り向いたときにはジ・エンド。
バツンバツンバツン、と木に固定していた皮紐が弾け跳び、藩王は再び水上の人となった。
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
二度目でも慣れないようで、彼は泣いていた。


一方その頃、側近達。
「ぅわー、またつれたー」
「おー、こっちも。ここは穴場だなぁ」
既にピクニック気分である。
「さて、そろそろ日も暮れるし藩王を拾って帰ろうかー」
「おーぅ」
と言った会話の中、とある吏族が川上に異変を発見した。
「あ、あのー。あそこ、なんか、水飛沫上がってません?ねぇ!?」
彼女の言葉に皆が振り向くと同時に疾走する物体が通り過ぎる。
「ぁぁぁぁすぅぅぅけぇぇぇてぇぇぇぇぇぇぇ」(ドップラー効果)
ブオシャアァ! と濡れ鼠になる側近達。
あるものは眉間を押さえ、あるものは帰還の準備をし、あるものは目をパチパチさせながら川上と川下を見比べている。
「・・・藩王だったな」「ですね」「いきますか」「そだな」
有る意味抜群のタイミングで各自呟いたあと、やや投げやり気味に追跡が始まった。
「助けてって言うくらいなら話せば良いのに」
と、誰かが呟いたが返すものは居なかった。


そして藩王サイド。
「作者っ!同じネタはっ!禁止っ!って俺だぁぁぁぁ!!」
ザパッ、ザパッ、ザパッ、っと水面を跳ね回りながら意味不明な言葉を叫ぶ藩王。きっと錯乱しているのだろう。
「うぬぉぉぉ、埒があかん!何か!何か無いかっ!?」
必死にあたりを見回す。すると、高速で流れていく風景の端に何かが見えた。
「ちょいやっ!!」
足を伸ばして掴む。ややタイミングがずれたか足に痛みが走るが、気にせずに掴んだものを凝視する。太めの枝だった。
即座に捨てて次に視界に入ったものを必死で挟む。しかし今度は空振り。
「何か!何かぁぁぁぁぁ」
そのとき、彼はふとデジャヴを感じた。そう、確かこの辺で・・・
『ザッパァァァァァァァ!!!』
『ブチィィィッ!!』
「ギィィィヤァァァーーー!!」
彼は今日二度目のフライングを楽しんだ。
なお、今回は10分程度で側近達に改修されたらしい。


翌日。
どう見ても不機嫌な顔の藩王と其れをなだめる吏族が一人。
「結局国の総力を挙げて魚一匹連れんのか」
「自然と言うものは強大です、藩王」
「ところでこの国は巨大ヒトデだの巨大魚だの怪獣があつまっとるのか」
「類友かと」
そんな会話を尻目に今日も帳簿をつける吏族達。なんとか食料も集まりつつあるらしい。
「ところで藩王」
世間話を思い出したかのようになだめていた吏族が告げてくる。
「ウチの国、釣り糸に使えるのが皮紐しかないんでそもそも糸の強度が足りませんよ?」
藩王、固まる。たっぷり100秒の後再起動。
「てめぇー!気付いてるなら言えぇー!?」
「言ったところですむとは思えませんでしたので。ギブギブ」
首を掴んでガクガク揺らしながら訴える藩王と吏族。
そんなこんなで一日はすぎてゆく。もう直ぐ戦争があるのかも知れないという不安を吹き飛ばすかのように。
ともかく。玄霧藩国は今日も今日とて平和である。
そして、藩王の闘いも続く。


ここからは余談である。
藩王は即急に交易を開始し、強度の高い糸を手に入れようと画策しているようだ。
また、藩王以外の釣りに出たものは大量で食糧増産に少なからず貢献したと言う。
結局、坊主は藩王だけであった。



こんなかんじで。
うへ、ナゲェ


[No.348] 2007/01/13(Sat) 05:55:05
食糧増産用SS? (No.345への返信 / 2階層) - 睦月

とんでも無く駄文です。
というか、文章書く能力が0だという事を露呈しているので死にそうな程恥ずかしいです(涙
でも、出しておきます、食糧の為に(涙


題『食糧増産風景?〜ある吏族の場合〜』
              報告者 睦月
****************************************
フィーブル藩国への義勇隊の出兵を目前にしたある日の事。
にゃんにゃん共和国大統領府より食糧増産命令が下った。
これを受けて玄霧藩国でも吏族、技族、文族、大族を召集し緊急の会議が開始された。
その席で玄霧藩王は『というわけでちゃっちゃと食糧を増やそう』
とか、やる気無さそうに言った。
皆はまたこの藩王は・・・それがどれだけ大変な事か・・とかちょっと思ったが、
顔には出さない、藩王だって大変な事は分ってるのだ。
藩王は藩国の最高責任者と言えど共和国全体で見ると中間管理職に過ぎない。
無理だったら藩国は御取潰しらしいからどうしようもないしね。
玄霧藩王『即座に藩国中に通達を出せ。技族、文族は勿論、吏族も各地で食糧増産の指導を行なってくれ。以上、かいさ〜ん!』
あっ、と言う間に会議も終わり。各自が迅速に行動を開始する。時間が無いのだ、急がなくては!
〜吏族睦月の場合〜
睦月は藩国の中でも一番大きな果樹園にやってきていた。
この果樹園はその敷地面積もさる事ながら、収穫できる果物も巨大な事で有名だった。
ただ・・・一つだけ問題があるのだが
「なんで私がこんなやっかいな場所に・・・」ボヤク睦月。
原因不明の体調不良(と言う名の仮病)で会議を欠席していた吏族の睦月は同じ吏族仲間に瞑想通信で呼び出され、強引にここに来させられたのである。もう罰ゲームに近い。
そこには平常時の数倍の速さ、人員で収穫を進める国民の姿があった。
食糧増産命令は藩国各地の農業地帯に瞑想通信によって伝えられていたのである。
『おぉ、良く育ってるっぺ。収穫するっぺ』
『時間が無いべー 早く作業すすめるっぺー』
『わしらのあいどる文月様の為にも頑張るっぺ(謎』
『こっちにも誰か回してくれー。人食いりんごが出たぞー!(ぇ』
『ぎゃー!』
もう分ったであろう、ここの果樹園には人食いりんごと呼ばれる巨大肉食植物が生育しているのである。
成長しきりまでは普通のデカイりんごに過ぎないのだが、成長しきると知能を持ち、動き回り、動物を食べだす。何とも厄介なのでこの時期には理を使える吏族が派遣されるのだが・・・これが非常に大変で危険な作業なので誰もやりたがらない。
「・・・・(うへぇ・・・だからここは嫌だったのよ・・)」
睦月は彼らの姿を横に眺めつつ、この地域の長老殿の下へ。
「おー、これはこれは吏族殿、ようこそいらっしゃいました」
「村長さん、どうやら作業は順調のようですね」
『ぎゃー!与作ドンがやられたー!』
『村長―!今年の人食いりんごは強すぎだっぺー!』
『誰カー!誰かー!』
「・・・・・・そう見えますか?」
「ええ、もう、私の出番などどこにもありませんわね(輝くような笑顔」
人食いりんごの事は超無視する睦月。とことん仕事がやりたくないのである。
「とりあえずあの人食いりんごを何とかして欲しいのですが・・・」
それも無視する長老。この国は図々しい奴等ばっかりのようだ。
「・・・・はぁ、しょうがないですわね。」
うんざりしたような顔で睦月は承諾した。
そこに丁度よい事に突撃してくる人食いりんご、何と農民達はこちらが承諾しようがすまいがお構い無しに人食いりんごをこちらに誘導していたようだ。本当にこの国の国民は厚かましいというか、吏族使いの荒い奴等だ
(自分の仕事だから、しょうがないとは思わない辺りこの人も厚かましい)
人食いりんごの大きさは実に3mにも上る。というか、これホントにりんごなのか?
睦月は突撃してくる巨大なりんごに向かって杖をむけ、呪文を唱えだす。
瞬間。理の力が発動し、人食いりんごは強い衝撃を受け動きを止めた。
『おー、さすがは吏族様だっぺ!』
『これで食料も安泰だっぺ!』
『吏族様がいれば人食いりんごも怖くねえっぺ!』
農民達は倒された人食いりんごを運んでいく。
人食いりんごはその凶暴性で恐れられる存在であるが、
その味は藩国で取れるりんごの中でも最高級品と言われている。
しかも育成が早く、量も多い事で緊急時の食糧としても重宝されているとかいないとか
「ふう、ちかれた・・・(面倒くさそうな表情」
「おぉ、さすがは吏族様。どうもありがとうございます」
「では、これで私の仕事は終わりですわね・・・」
「いえ、実は・・・・」
ドーンと後ろで爆音が響く。
『ぎゃー!また出たぞー!今年は人食いりんごが多いっぺー!』
「という事ですので・・・どうか、よろしくお願いします」
満面の笑顔の長老。それとは逆にうんざりしている睦月。
「・・・・はぁ」
睦月は深いため息をつき、次の人食いりんごに向かっていく。
****************************************
その後睦月は体力の続く限り馬車馬のように働かされたという。
ともかく食糧増産とは本当に大変な作業であったとさ。


[No.350] 2007/01/13(Sat) 12:09:57
食糧増産用SS?? (No.345への返信 / 2階層) - ODA

下手ですけど許してください…


ある吏族の記録

今現在,にゃんにゃんわんわんにおける他の藩国と同様にして,
玄霧藩国も兵力動員のために食料増産まっしぐらである.

玄霧藩国もそれなりな大所帯であり,
食料の増産目安である15万tを超えて19万tの増産の必要がある.
かなりの量である.
猫士の鳴き声もにゃーんからぎにゃーになるくらいである.

越智大治郎がその報せを聞いたのは出仕から帰ってきた直後である.

越智はボロボロな姿で,
「俺はもーだめだーいっそ死んだほうが…」
とかなんとかぶつくさ言いながら藩国の象徴である立派な大木,政庁に帰ってきた.
政庁の自分の席に放心状態で座り込むとすぐに,
藩王より緊急のお知らせが流れた.

「ぞ,増産!?そんな急に言われても…」
この男,かなり無能である.
だが,頑張って考えた.自分に何が出来るか.
「そうだ!!無いなら分けてもらえば!!」
なんと貧困な発想か.
「誰にだよ」
と普通に藩王からツッコミが入る.
「えーと,あーと,そうそうだ山の主に頼もう!!
塔近くの山には昔から主がすんでて,
果実とかを蓄えてるんだって」
「ずいぶん都合のいい話だな….
まぁ死んで来い…」
ということで,越智は塔近くの山に行くことになりました.

越智はしょせんは体力も筋力も持久力も無い吏族.
山に至る前の道のりですでに息を切らしていました.
「やーや,やぁまーのにゅしさぁ,さまはぁーくれ,るかにゃー」
同行してる案内人のそこらの村人Aに,
「吏族さま,落ち着いて,
そんなんでは主さまと交渉などできませんよ」
と苦笑しながら諭されました.
「ひーふーひーふー,了解.落ち着いた」
駄目な吏族である.
そんなやり取りを続けながら,
山の奥深くそのまた奥深くへと入っていきました.
「吏族様.これより先は主さまのテリトリーです.
相手を威嚇しないようお願いします」
と,もっともなことを言って越智を諭す村人A.
だが,そんな村人Aの言うことを理解してないのか,
「わかったわかった〜.
おーい主さま〜ん.食料分けてちょうだいな〜」
と大声で叫びながら,歩いて行く.
「ちょっ,もっと静かに…相手に警戒させてしまうぅぅ」
村人Aは顔面蒼白である.
「なんで?だって,戦いに来たんじゃないじゃない.
こっそり近づかなくていいじゃない」
「いやまぁ…そうなんですけど,
ここは相手の領地なわけですし…ね?」
「んー領地は藩国民みんなのものよ」
なんか話が噛み合わないまま,二人が言い争っていると,
がさがさっと音がする.
「あん?」
と越智が周りを見回すと,木の上やら下やらたくさんの影がある.
よーく見るとお猿さんの大群である.
きーきーきーきーうるさく鳴いている.
お猿さん達が二人を覆うように囲み,大合唱.
あまりの多さに山中響いてるようだ.
「あーうるさいなー」
という感想しかでないバカ一名と,
「あわわわ…これやばくないですかやばいじゃないですかやばいでしょ」
と,うろたえまくりの案内人のはずの村人A.
すると,奥からとてつもなく大きな猿がやってくる.
ノッシノッシとおよそ猿とは思えない緩慢な動きで2人の前に立つ.
そして,のっそりとしゃべりだす.
「きーききーきーうききききー」
何かしゃべったらしいが越智は悲しいかな人である.
理解が出来るわけがない.
「いや,意味わからないし」
「吏族さま,この方が山の主さまですよ」
と最早敬いとかから縁の遠い越智を見ながら気絶しそうな声でしゃべる村人A.
「だって,猿じゃん.もっと凄い化け物が出てくると思ってたんだよ.
なんだ…つまんない…」
と指をさして言う越智.
もはや,何が目的で山に来たのかわからない男である.
越智には猿の言葉がわからずとも,
猿の方はどうやらわかるらしい.
「きききききききー」
と憤慨した様子で,地団太踏みながら怒っている.
その大猿の言葉にあわせるように周りの猿達も,
きーきー叫び始める.
どうやら,2人(主に越智)は猿達を怒らせたらしい.
「ちょっとーどうすんですか!!
僕単なる案内人なのにーこのくそ吏族めー!!」
がちがち震えながら越智の両肩をつかみブンブン前後に揺らす村人A.
「うわわわ,だって化け物のほうがかっこいいじゃんんんん」
意味のわからないことを言い出す越智.
まぁいつものことではあるが,そんな意味のわからない理由で,
死ぬかもしれない村人Aは気のどくである.
「ききききっききー」
どうやらしばらく無視されていることにさらに怒った,
大猿はポキポキ腕を鳴らしながら2人に近づいてくる.
周りは猿の大群.
前も後ろも右も左も逃げ道はない.
「死ぬー」
「あ,あの煎餅湿気ちゃうなはやめに食べよ」
「あんたこんな時に何言ってるんだーーーー!! 」
大猿が2人に殴りかかろうとしたとき,
空から物音が….
ひゅーーーーーーーーどすん.
「おらぁぁぁぁ遅いんじゃーーー期限過ぎちまうぞボケがぁぁぁ」
と猫忍を従えて藩王参上.
どうやら,猫忍に抱いてもらって木の上を渡ってきたようだ.
お約束のごとく大猿は足の下.
「あ,藩王」
と,今度はおびえる越智.
「仕事が遅いぞこのあほーーー」
「いや,だって…」
「きーきーきー」
と自分の体の上で藩王の説教が始まったのに対し抗議をする大猿.
「五月蠅い」
泣く子も黙る藩王の鉄拳である.
完璧に伸される大猿….どよめく周囲の猿.
「つーかなんだこの猿?」
「山の主です」
答える案内人の村人A.
「弱いな,ということで,俺最強!!,俺首領!!俺,山の主決定!!」
「えーーー」
唐突の発表に愕然とする2人と猿と猫忍たち.
「おっし猿ども供物をよこせ今すぐだー!!」
藩王の立ち居振る舞いに恐れをなしたのか,従う猿達….
ついでに大猿も命令に従って果物を取りに行く.
小一時間で藩王の前に大量の果物類が置かれる.
「うむうむ苦しゅうない.全部は寄越さないでもよいぞ,ははははは」
満足顔の藩王.
「なんだかなぁ…」
脱力顔の村人A.
「煎餅が湿気てませんように…」
良くわからない顔の越智.

食料増産成功…???


[No.351] 2007/01/13(Sat) 14:39:12
[ステージ2 イベント21 藩国改造]用文章 (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

[ステージ2 イベント21 藩国改造]用文章の提出所です

[No.439] 2007/01/21(Sun) 23:37:00
[医者・整備士に「名医」を加えた説明文]未推敲 (No.439への返信 / 2階層) - 黒霧

―――――――――――――――――――――
+補足(文章外の物)
医者・整備士に「名医」を加えた説明文
名称:・名医(職業)
要点:・ゴーグル・マスク・手術服
周辺環境:・手術台
―――――――――――――――――――――


 医者・整備士。彼らは進化した。それは卵を内側からつついて砕くような細やかな努力の末ら現れた結果だった。そしてその結果、彼らは「名医」と呼ばれるようになる。
 そもそも特別だらけの玄霧藩国においてもその技術の高さ、立場の重要性を考慮されひときわ特殊な立場にあったのが医者・整備士である。特に医者としての技能は上層部の不毛な争いに対する救済策として重宝されている。
 え、なにそれって言われるかもしれないのでここで補足しておこう。例を挙げるならば1ターン目での冒険レポートを参照すればいい。そこでは一部華族と藩王が共謀して国家予算を用いた末に一人の文族を愛に目覚めさせたり、あるいは一部華族と藩王の対立における騒動によって粘着性ソックス爆弾をくらったり、はたまた川の主と一騎打ちを挑んだ末に川流しってあって全身打撲傷となったり、まあとにかくイベントとそれに付随した怪我には事欠かない事例がある。
 大概それらの事例には国を運営する上での重鎮が関係しているのが特に問題であり、それ故にどれほど馬鹿げた災難によって被った被害かを綺麗に無視して目前の怪我を治療する名医達の存在はことさら重宝されることとなったのである。
 そしてまあ、生傷の絶えない人々を相手にしていれば彼らもまた腕を上げる。結果、かなりの緊急時の対応でもスムーズにこなし、的確な処置を即座に行うだけの精神力と胆力と我慢強さと、あとまあ当然ながら能力が医者達には備わった。かくして彼らは名医と呼ばれるようになった。
 彼らの神経の太さは、昨日の戦争「14に賭けた黄金の林檎作戦」に参加することでさらに鍛えられた。実質やることがなかった彼らだが、やはりそれでもぴりぴりとした空気、緊張が適度に浸透したその空気は体外の人々の神経をすり減らした。が、彼らは動じなかった。常日頃から全身複雑骨折だの意識不明の重体だのといった状態になって担ぎ込まれてくる藩王を筆頭とした国の人々を相手にする彼らにとっては、もはやたいていのことは「日常」として位置づけられてしまっていたのである。この神経の太さは転じて彼らの集中力の高さと、いかなる時でも正確な判断と処置を行う能力の高さを示しており、「おまえらそれはそれで馬鹿だろう」という言葉を手術服の背中で跳ね返していた。ちなみに、面と向かってそういわれたとき、ゴーグルとマスクに隠されたその顔がどのような表情を浮かべていたものか、知る者はいない。
 もしかして病んでいるんじゃ、とこの国に不慣れな者は思うだろうが、ひとたび手術台の前に彼らの姿を知った時、その言葉を吐いたことを悔やまぬ者は存在しないであろう。


[No.440] 2007/01/21(Sun) 23:38:23
添削完了 (No.440への返信 / 3階層) - 玄霧@藩王

―――――――――――――――――――――
+補足(文章外の物)
医者・整備士に「名医」を加えた説明文
名称:・名医(職業)
要点:・ゴーグル・マスク・手術服
周辺環境:・手術台
―――――――――――――――――――――


 医者・整備士。彼らは進化した。それは卵を内側からつついて砕くような細やかな努力の末ら現れた結果だった。そしてその結果、彼らは「名医」と呼ばれるようになる。
 そもそも(いろんな意味での)特別だらけの玄霧藩国においてもその技術の高さ、立場の重要性を考慮されひときわ特殊な立場にあったのが医者・整備士である。特に医者としての技能は上層部の不毛な争いに対する救済策として重宝されている。
 「え、なにそれ」と言われるかもしれないのでここで補足しておこう。例を挙げるならば1ターン目での冒険レポートを参照すればいい。そこでは一部華族と藩王が共謀して国家予算を用いた末に一人の文族を愛に目覚めさせたり、あるいは一部華族と藩王の対立における騒動によって粘着性ソックス爆弾をくらったり、はたまた川の主と一騎打ちを挑んだ末に川流しにあって全身打撲傷となったり、まあとにかくイベントとそれに付随した怪我には事欠かない事例がある。
 大概それらの事例には国を運営する上での重鎮が関係しているのが特に問題であり、それ故にどれほど馬鹿げた災難によって被った被害かを綺麗に無視して目前の怪我を治療する名医達の存在はことさら重宝されることとなったのである。
 そしてまあ、生傷の絶えない人々を相手にしていれば彼らもまた腕を上げる。結果、かなりの緊急時の対応でもスムーズにこなし、的確な処置を即座に行うだけの精神力と胆力と我慢強さと、あとまあ当然ながら能力が医者達には備わった。かくして彼らは名医と呼ばれるようになった。
 彼らの神経の太さは、昨日の戦争「14に賭けた黄金の林檎作戦」に参加することでさらに鍛えられた。実質やることがなかった彼らだが、やはりそれでもぴりぴりとした空気、緊張が適度に浸透したその空気は大抵の人々の神経をすり減らした。が、彼らは動じなかった。常日頃から全身複雑骨折だの意識不明の重体だのといった状態になって担ぎ込まれてくる藩王を筆頭とした国の人々を相手にする彼らにとっては、もはやたいていのことは「日常」として位置づけられてしまっていたのである。この神経の太さは転じて彼らの集中力の高さと、いかなる時でも正確な判断と処置を行う能力の高さを示しており、「おまえらそれはそれで馬鹿だろう」という言葉を手術服の背中で跳ね返していた。ちなみに、面と向かってそういわれたとき、ゴーグルとマスクに隠されたその顔がどのような表情を浮かべていたものか、知る者はいない。
 もしかして病んでいるんじゃ、とこの国に不慣れな者は思うだろうが、ひとたび手術台の前に彼らの姿を知った時、その言葉を吐いたことを悔やまぬ者は存在しないであろう。


[No.441] 2007/01/21(Sun) 23:46:13
[吏族・理力使いに「幻影使い」を加えた説明文]未推敲 (No.439への返信 / 2階層) - 黒霧

――――――――――――――――――――――――――――
吏族・理力使いに「幻影使い」を加えた説明文
名称:・幻影使い(職業)
要点:・指輪・シルクハット
周辺環境:・飛び交うハト
――――――――――――――――――――――――――――
 この藩国の吏族は変わり者揃いで有名である。まあむろんのこと玄霧藩国意外にいる人々がそもそものユニークさでぶっ飛んだ人揃いなので相対的に見るとうにゃむにゃな感じなのだが、まあそれはさておくとする。
 最近玄霧藩国ではブームになっていることがある。それがよくわからない品をつかった手品であった。これも「14に賭けた黄金の林檎作戦」に参加した際、よくわからないがでかくて長くて空飛ぶ物が轟沈するときにまき散らした物が関係していた。そこから飛び散った品々の中に、指輪やシルクハットといった物があったのである。
 それらを吏族は手柄がわりに持って行った。俗に言う戦利品とか言うやつである。もしかしてこれって略奪になるのか? とも思ったが、しかし不当に攻撃されていたのはこちらだし、敵が倒れた跡にこれをもらったのだからまあ文句は言われまいと考えた。何よりこれらの品々を拾った者の大半は、これがあの船のまき散らした物だとは思っていなかった。意外とこのあたりアバウトな国民である。まあどうせこんなところに落ちているんだから拾って持って行ったところで誰も困るまい。それに返せと言われれば返せばいい。それまでせいぜい遊べばいい。そんな風に、思っていた。
 それがきっかけとなり、ちょっとした出来事が起こった。指輪が吏族の持つ杖と共鳴し、幻術を作り出す能力を発揮することが判明したのである。以後藩王と華族の独断により指輪はいったん回収され、吏族達に再配分される形になった。ちなみにこのとき藩王は吏族に対して半ば強制的に「何か芸をしろ」と言いつけて、指輪を提供させられた人々には「演目の無料鑑賞券」と「ヤジを言うときのためのメガホン」と「つっこみようハリセン」さらには「ポップコーン無料券一回分」等をプレゼントした。それ故に指輪提供者は全員が納得し、満足する形となり、大半の吏族が「俺もそっちがいいー」と演目を考えながら涙することになった。
 そしてどうせならと某華族を筆頭とした一団が吏族達全員にシルクハットをプレゼントして、げんなりする吏族一同を見てげらげら笑って去っていったりというイベントも発生した。
 そしてその手品大会当日、吏族達は全員そろって一斉に白い鳩を出現させ、大声を上げる観客達を見て「ざまぁみろ!」とこれまでの鬱憤を晴らした。
 なお、この際逃げ回ったりひっくり返ったりと観客達かひどく慌てたために起こった大惨事の責任により、その吏族達は一週間の間急な急患達の出現にぶち切れた医者達の元に頭を下げに行くことになり、藩王は引きつった笑顔と共に吏族達は滅多なことでは手品やら幻影で遊んだりはしないようにと言い渡されることとなる。


[No.442] 2007/01/21(Sun) 23:54:58
第二稿 (No.442への返信 / 3階層) - 黒霧

 この藩国の吏族は変わり者揃いで有名である。まあむろんのこと玄霧藩国意外にいる人々がそもそものユニークさでぶっ飛んだ人揃いなので相対的に見るとうにゃむにゃな感じなのだが、まあそれはさておくとする。
 最近玄霧藩国ではブームになっていることがある。それがよくわからない品をつかった手品であった。これも「14に賭けた黄金の林檎作戦」に参加したのがきっかけだった。作戦からの帰還時に、彼らは国の外れに妙な遺跡を見つけた。
 むろんそのときはスルーする気全快ばりばりガンパレードな状況だった。何しろ疲れたのである。わんわんでは国家予算つかって水泳したという話を聞いた彼らは、後日「いいなー、僕たちも泳ぎたい」とか抜かすことになるのだが、それはともかく、このときは疲れていて、とにかく早く帰りたかった。
 が、それに否という人物がいた。むろんのこと藩王玄霧である。この発言の直後藩王は部下数名の手にかかって簀巻きにされたあげく山の斜面から頃がされるという目に遭っている。
 しかし誰かが言った。
「あれ、誰が回収するの?」
 かくして藩王を助けに行く舞台が急遽編成され、救出に向かうことになった。その方向が藩王の指さした遺跡であったことを知って、彼らは人生に絶望したくなった。
 そして数時間かけて探索した結果、遺跡内部の奥深くというなんかとんでもないところで藩王は発見された。
 そのついでに、実は彼らは遺跡の中に落ちていた様々な品物を手に入れている。たえば赤い宝石のついた指輪といった物である。
 せめてこれくらい持って行かなきゃ気が収まらない。救出部隊の面々は藩王を引きずりながらこれらの品を手柄がわりに持って帰った行った。俗に言う戦利品とか言うやつである。
 それがきっかけとなって、ちょっとした出来事が起こった。指輪が吏族の持つ杖と共鳴し、幻術を作り出す能力を発揮することが判明したのである。以後藩王と華族の独断により指輪はいったん回収され、吏族達に再配分される形になった。ちなみにこのとき藩王は吏族に対して半ば強制的に「何か芸をしろ」と言いつけて、指輪を提供させられた人々には「演目の無料鑑賞券」と「ヤジを言うときのためのメガホン」と「つっこみようハリセン」さらには「ポップコーン無料券一回分」等をプレゼントした。それ故に指輪提供者は全員が納得し、満足する形となり、大半の吏族が「俺もそっちがいいー」と演目を考えながら涙することになった。
 そしてどうせならと某華族を筆頭とした一団が吏族達全員にシルクハットをプレゼントして、げんなりする吏族一同を見てげらげら笑って去っていったりというイベントも発生した。
 そしてその手品大会当日、吏族達は全員そろって一斉に白い鳩を出現させ、大声を上げる観客達を見て「ざまぁみろ!」とこれまでの鬱憤を晴らした。
 なお、この際逃げ回ったりひっくり返ったりと観客達かひどく慌てたために起こった大惨事の責任により、その吏族達は一週間の間急な急患達の出現にぶち切れた医者達の元に頭を下げに行くことになり、藩王は引きつった笑顔と共に吏族達は滅多なことでは手品やら幻影で遊んだりはしないようにと言い渡されることとなる。


[No.444] 2007/01/22(Mon) 00:05:54
第二稿採用、添削完了 (No.444への返信 / 4階層) - 玄霧@藩王

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吏族・理力使いに「幻影使い」を加えた説明文
名称:・幻影使い(職業)
要点:・指輪・シルクハット
周辺環境:・飛び交うハト
――――――――――――――――――――――――――――
 この藩国の吏族は変わり者揃いで有名である。まあむろんのこと玄霧藩国以外にいる人々がそもそものユニークさでぶっ飛んだ人揃いなので相対的に見るとうにゃむにゃな感じなのだが、まあそれはさておくとする。
 最近玄霧藩国ではブームになっていることがある。それがよくわからない品をつかった手品であった。それと言うのも「14に賭けた黄金の林檎作戦」に参加した事がきっかけだった。作戦からの帰還時に、彼らは国の外れに妙な遺跡を見つけた。
 むろんそのときはスルーする気全快ばりばりガンパレードな状況だった。何しろ疲れたのである。わんわんでは国家予算つかって水泳したという話を聞いた彼らは、後日「いいなー、僕たちも泳ぎたい」とか抜かすことになるのだが、それはともかく、このときは疲れていて、とにかく早く帰りたかった。
 が、それに否という人物がいた。むろんのこと藩王玄霧である。この発言の直後藩王は部下数名の手にかかって簀巻きにされたあげく山の斜面から転がされるという目に遭っている。
 しかし誰かが言った。
「あれ、誰が回収するの?」
 かくして藩王を助けに行く部隊が急遽編成され、救出に向かうことになった。その方向が藩王の指さした遺跡であったことを知って、彼らは人生に絶望したくなった。
 そして数時間かけて探索した結果、遺跡内部の奥深くというなんかとんでもないところで藩王は発見された。
 そのついでに、実は彼らは遺跡の中に落ちていた様々な品物を手に入れている。たえば赤い宝石のついた指輪といった物である。
 せめてこれくらい持って行かなきゃ気が収まらない。救出部隊の面々は藩王を引きずりながらこれらの品を手柄がわりに持って帰った行った。俗に言う戦利品とか言うやつである。
 それがきっかけとなって、ちょっとした出来事が起こった。指輪が吏族の持つ杖と共鳴し、幻術を作り出す能力を発揮することが判明したのである。以後藩王と華族の独断により指輪はいったん回収され、吏族達に再配分される形になった。ちなみにこのとき藩王は吏族に対して半ば強制的に「何か芸をしろ」と言いつけて、指輪を提供させられた人々には「演目の無料鑑賞券」と「ヤジを言うときのためのメガホン」と「つっこみようハリセン」さらには「ポップコーン無料券一回分」等をプレゼントした。それ故に指輪提供者は全員が納得し、満足する形となり、大半の吏族が「俺もそっちがいいー」と演目を考えながら涙することになった。
 そしてどうせならと某華族を筆頭とした一団が吏族達全員にシルクハットをプレゼントして、げんなりする吏族一同を見てげらげら笑って去っていったりというイベントも発生した。
 そしてその手品大会当日、吏族達は全員そろって一斉に白い鳩を出現させ、大声を上げる観客達を見て「ざまぁみろ!」とこれまでの鬱憤を晴らした。
 なお、この際に逃げ回ったりひっくり返ったりと観客達がひどく慌てたために起こった大惨事の責任により、その吏族達は一週間の間急な患者達の出現にぶち切れた医者達の元に頭を下げに行くことになり、藩王は引きつった笑顔と共に吏族達は滅多なことでは手品やら幻影やらで遊んだりはしないようにと言い渡されることとなる。


[No.445] 2007/01/22(Mon) 00:19:40
国家関係 (No.234への返信 / 1階層) - 黒霧

国家関係の文章を投下します。

[No.804] 2007/04/14(Sat) 11:28:39
国歌説明 見直しお願いしまーす (No.804への返信 / 2階層) - 黒霧

 国歌欲しいと最初にわめいたのは誰だったか、今やこの国の中でそれを知る者はいない。いたところでたぶん数秒後には忘れて「一体誰だ!」という事になっているだろう。
 そんなこんなで歌詞を作ることになった夜継である。彼は時々床が抜けることで有名な森の中の塔に閉じこもり、「缶詰だー、缶詰だー、うー」とぶつぶつ繰り返しながら歌詞を考えていた。
 ちなみに、静かにしているとすぐ近くにある大水車ががらがらと音を立てている様子が聞こえてくる。静かに考えられると思っていたのにーと思って、しかしよくよく考えれば森の中に村を築くこの国の習慣上、森の中の塔にこもったところであまり意味はないことに気づいた。
 「あほかー」と呟くと夜継は塔から出て行った。そしてまだぼんやりと考えながら対岸の森の中に向かい、またもや藩王が主の魚に食われていたり湖畔で巨大ヒトデがばしゃばしゃ水浴びしていたり、河の製鉄所を経由して、ゆっくりと成長付近の瞑想通信施設にたどり着いた。ちなみに、今日は霧で視界が悪かったため、これだけ歩いていると全身びしょ濡れになる。
 そういや霧がやたらと多いよなぁーと、夜継は瞑想通信施設を眺めながら思った。ちなみに、このまま政庁に戻る気にはならなかった。戻ったら最後また「出来た? 出来た?」と質問攻めに会うに違いない。考えるのですら恥ずかしいというのにそんな風に質問攻めにされてはたまったものではない。
 でも、まあ、何も考えていないわけでもなくて……。
 ──その翌日になって発表された国歌は焼けに短く、しかも一番だけからなる物だった。
 夜継はがたがたしながら感想を待ったが、政庁に集まった人々は「これでいいんじゃない?」と意外と好評のうちに許可を出した。
 まあ、あれである。心の底にはみんながみんな「いやー俺にはできねー」という考えもあったのだろうが、ここではあえてそうではないと書こう。
 彼らは確かにそれを良いと思ったのだ。
 それ故に彼らは、一番を歌え終えた後も、各々好きなように決まった言葉も旋律もない二番を歌い始める。それこそが我らの歌であるとでも言うように、誇らし気に、声高に。
 かくして、この国の国歌は誕生した。


[No.805] 2007/04/14(Sat) 11:29:03
OK (No.805への返信 / 3階層) - 玄霧@藩王

後は歌詞を一緒に掲載すればOKだな。
ご苦労、すばやい仕事に感謝する


[No.809] 2007/04/15(Sun) 10:16:40
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