PCオーディオ導入報告 - ハシモト |
2007年ころよりAirbowの上位機種のCD/SACDプレイヤー(UX1SE、以後CDプレイヤー)を使っていましたが、2017年よりPCオーディオに転換しました。Airbowのi3(Vegas)から始まり、偶然にもi5(Vegas)、i5(embedded)、i7(Galaxy)を使用する機会がありましたので、この場にて一連の機種での音質の差異や印象を中心に報告させていただきます。PCオーディオでの使用DAコンバータはすべてAirbow HD-DAC1、再生ソフトはHQプレイヤーです。音源はリッピングしたCD、ダウンロードしたDSD(2.8MHz)およびWAVファイル(48、88.2、96、192 KHz)で、クラシック音楽を主体に聴いています。
まず、CDプレイヤー再生に比しこれらのPCを使っていて共通に認められた差異は以下となります。 1. PCオーディオの再生では聴感上、周波数帯域が広がった。特に低音部分がよく伸び分解能も改善した(たとえば、オーケストラ演奏での低音弦楽器の存在感が大きくなり、チェンバロやピアノがよりリアルになりました。サンプリング周波数が高くなると、理論上、高周波数帯域の伸びが改善しますが、この低音の大きな改善は意外でした)。 2. PCオーディオでのDSDファイルの再生は、CDプレイヤーのSACD再生に比し、音質・分解能ともに大きく向上した。 3. CDR盤は、CDプレイヤーでの再生はやせた音がしていたが、PCオーディオではCDと同質といってよいほどの音質となった。 4. PCオーディオでの再生でCDプレイヤーと同等の再生となるCD盤がある一方で、PCオーディオの再生で驚くほど好ましい方向に変化する盤がある(カラヤン Rシュトラウス 70年代録音=ドイツグラモフォン など)。
以下が先述した4機種の再生上の特徴および感想となります。 i3(Vegas): CDプレイヤーに比し、分解能は上がりましたが、元気のよい再生音で音質が少々硬めでした(どちらかというとジャズやロック向きと感じ、平静な気持ちでクラシックをきくのはむつかしい)。本PC購入と合わせHD-DAC1を購入しましたが、(当時はPC側で音質が変化するという認識をもっておらず)HD-DAC1の音質がこのような元気のよい音になっていると思っていました。一方で、それまで聴いていたCD(Philips西独盤)のクレーメルのバッハ無伴奏をDSD音源で再生しましたが、CDでは伝わることがなかった感情の強さが伝わってきたことを今でも鮮明に記憶しています(特にシャコンヌはずばらしいです)。
i5(Vegas): この機種では、i3(Vegas)での元気の良さはなくなり、穏やかな雰囲気の再生となりました。その結果、平穏な気持ちで演奏を聴くことができるようになりました。i3に比べ、音の硬さは感じませんし、低音部が豊かで、高音もよく伸びます。特にオーケストラのヴァイオリンの表現力が数段上がったのが印象的です。オーケストラの弦楽器群では、低音から高音の楽器がバランスよく聞こえてきて、結果的に音楽にふくよかさ感じること多くなりました。i5(Vegas)での再生を聴くことにより、i3(Vegas)での再生音の元気の良さ、音の硬さはi3の固有のものであり、HD-DAC-1のものでないことがわかりました。i5(Vegas)では、CD音源(44.1KhzのWAVファイル)でも、再生の精度がかなり上がっており、低レベル信号の再現が可能になっています。バーンスタイン=ウィーンフィルのブラームス交響曲第1番(ドイツグラモフォン)の第2楽章冒頭部分では、楽章間の聴衆のザワザワとした雰囲気が、(=こんな音がCDに記録されていたのか!レコード再生では聞こえない音でした)、演奏が始まるとムジークフェラインでの天井から音が降りてくるかのような雰囲気がつたわってきます。また、ヴェーグのハイドン交響曲第88番4楽章(Orfeo盤、ライブを録音)では、ユーモアたっぷりの演奏が進んでいく最中、(次の旋律でヴェーグがなにを仕掛けてくるのか、私はついつい音楽に入ってしまう演奏なのですが)、新たな旋律がでてきた際にホールにいる聴衆が驚きでザワザワとする雰囲気が伝わってきました(スピーカー再生ではたしかにこのザワザワを感じるのですが、ヘッドフォン(HD-DAC-1=Elear)で確認したところ、このザワザワはまったく感じることができませんでした、不思議なことです)。なお、HQプレイヤーでのサンプリング周波数のアップコンバードには大きなメリットは感じませんでした。
i5(embeded)・i7(Galaxy): i5(embeded)では、CD音源、DSDファイルの再生ともに大きく変化しました。演奏の細部がよく聞こえ、ホールの残響時間も長く感じるようになり、低音もより豊かにかつ分解能が高くなりました。この低音部の改善は、弦楽器はだだ鳴っているだけではなく、演奏者の意図を感じることができるといってもよいレベルと思います。ヴェーグのモーツァルト ディヴェルティメント(Capriccio)KV136やKV138 第2楽章Andanteでは、ヴェーグが呼吸にて演奏をコントロールしている様子が手に取るようにわかるようになりました。また、これら両曲の全体を通して低音部の楽器が音楽の楽しい雰囲気を増加させるような役目をしていることを感じました。特に後者は、i3(Vegas)やi5(Vegas)では感じることがなかったものと思います。i5(embeded)からi7(Galaxy)に変えたことで、CD音源(88.2KHzへのアップコンバートを含み)の再生は大きな変化は感じませんでしたが、DSDファイル再生での変化は予想外にあり、大編成の演奏では、各楽器のニュアンスがより明瞭にききとれる(=演奏者の意図がよりわかりやすくなった)ようになりました。HQプレイヤーのアップコンバートは、すべてのCD音源で効果がみられるというわけではありませんが、わたくしの聴いた6〜7割ほどのソフトに(大きくはないですが)好ましい効果がでていると思っています。
Roonに関しては、時間とともに安定感が増しました。PC導入期のころは、PCに登録したアルバム、つまり複数チャプター(楽章)からなる、が分かれて登録されたことが多数ありましたが、今は安定しており、何の不都合も感じません。 PC再生での音質の変化にはCPUの能力のほかにシステムやメモリー書き込みの速さなど、さまざまな原因があるとは思いますが、PC間でこれほどの差異があるのは驚きました。現在使用しているi7(Galaxy)では、50〜60年代のレコード初期盤に比べ、PCオーディオでのDSDやハイレゾが音楽の感じ方で上回る例も多数あることがわかりました。私にとってPC再生は価値あるものとなりました。
[No.16289] 2019/09/12(Thu) 22:29:39 |