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WINGBEAT COFFEE ROASTERS

all 石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2008/12/12(Fri) 19:24:35 [No.426]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2008/12/13(Sat) 07:49:30 [No.427]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2008/12/25(Thu) 11:27:10 [No.429]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2008/12/30(Tue) 19:20:34 [No.432]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2009/01/21(Wed) 18:31:40 [No.435]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2009/01/27(Tue) 07:49:37 [No.437]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2009/01/31(Sat) 14:30:24 [No.442]
石版 第六幕「彼は満足したのだ... - 文矢 - 2009/02/09(Mon) 18:19:31 [No.448]
石版 「カーテンコールの後に幕... - 文矢 - 2009/02/09(Mon) 18:20:19 [No.449]
感想 - 文矢 - 2009/02/09(Mon) 18:29:13 [No.450]


石版 第六幕「彼は満足したのだろうか」 其の二十 (No.437 への返信) - 文矢

「私は今、考えている。この石版が何処の星から来たのかね。おそらくは、その星の武器商人が何かのトラブルでここに墜落したものだろう。つまりだ、こんな武器が一般的にある星がこの宇宙にはあるわけだ。まあ、どうでもいいことだがね」
 イカたこは歩み寄る。ゆっくりと、でも確実に。そしてイカたこの速度と同速度でのび太に迫ってくる絶望! その絶望はどんな海溝よりも深く、そして冷たい。のび太に迫っていくは絶望。絶望。
 落ち着け、落ち着くんだ。のび太は自分に言い聞かせる。何か、何かある筈だ。落ち着こう、落ち着こう。のび太の頬を汗がつたる。
 油断はしない。冷静にだ。イカたこは自分に言い聞かせる。何か、何かあるかもしれない。落ち着こう。油断はしない。余裕はあるんだ。確実に、確実に彼らを仕留める。
 穴の中の空気は、最高に重かった。石版は例えようもない色で輝き、五人を見守っていた。
「世界を支配するのに必要なのは武力。私はこれを正しいと思っている。だが、君らは正しいとは思っていない。それについても前から考えている」
 イカたこはあざ笑いながらそうのび太達へ問いかける。
「ひっ人を殺すんだろ? 許せるかよ!」
 ジャイアンが叫ぶ。イカたこはそれに答える。
「まあ、確かに私の計画だと人は殺すな。威力というのは見せ付けてこそ恐怖になる」
「そんな事、許せるわけないじゃないか!」
 のび太が答える。そして、銃口をイカたこへ向ける。だが、手は震えている。それに、のび太自身も分かっている。イカたこにはいくら撃っても無駄だと。意味無いと。
「まあ、これ以上議論をするのは無駄かな。D・カーネギーも著書で人を納得させるには議論を避けろと言っている。議論で人の意見は変えられないとな」
 イカたこはそう言うと、また歩き始める。のび太とイカたこの間は既にほんの三メートルぐらいまで縮まっていた。のび太は後退する。
 どんどん近づいてくる。宿敵。のび太は何もできない。頭で考えても何も出てこない。のび太は慌てる。
 ドラえもん。ドラえもんは、考えていた。このままだと、のび太が! のび太が殺されてしまう。その次は僕たち。どうにかしなくてはいけない。ドラえもんは考える。考える。
 ドラえもんは穴の中を見る。のび太とイカたこ。イカたこは冷静な冷たい目でこちらを見ている。そしてその後ろの巨大な石版。不気味に輝き、穴の中で存在感を出している。ドラえもんは考える。
「あっ……!」
 その時、ドラえもんの頭に閃きが走る―― 圧倒的な閃き! のび太に伝えれば、のび太ならば。のび太ならイカたこを仕留められる。ドラえもんの頭が高速回転をする。伝えるんだ、のび太へ!
 ドラえもんは叫ぶ。
「のび太! 石版を撃て!」
 ドラえもんはのび太へと叫んだ。これなら、これなら! 何千年も無傷だった石版。恐らくは、硬いというよりも力を跳ね返すとかそういう機能がついているのだろう。それなら光だって跳ね返すだろう。ドラえもんのそんな推測からだった。石版でショックが跳ね返れば、イカたこに跳ね返ったショックが当たるかもしれない。
 事実、これは当たっていた。懐中電灯でこの石版を照らしたら、鏡のように跳ね返る。つまり、のび太がショックガンを撃ったならそのショックは跳ね返るのだ。
 やばい―― イカたこはドラえもんの言葉を理解する。危ないところだった、と心の中で安堵していた。今、今すぐ振り返れば! まだ秘密道具で別空間へ飛ばせる! 振り返るんだ。イカたこは秘密道具を構え、後ろを向いた。
 
 のび太は、石版に向けて撃たなかった。

 ドラえもんの言葉の意味が分かっていなかったのだ。一瞬でそこまで判断することはのび太にはできなかった。だから、のび太は銃を構えたままその一瞬、ボーッとしていただけだった。
 そして、見えたのは後ろを向いたイカたこの無防備な背中……!
「イカたこぉぉぉぉ!」
 のび太は叫び、引き金を引く。銃口はブレていなかった。引き金が折れるんじゃないかというぐらいのび太は力を込めて引き金を引き、銃口からは光が飛んでいく。
 イカたこは、何もできない。のび太が狙ったのは背中だった。背中、背骨の一センチ右に命中した。そして、イカたこの体中に走るショック。悲鳴とも何ともつかぬ声が口から出る。
 のび太の息が荒くなる。やったのか? 疲れた。その二つの言葉だけがのび太の頭の中でグルグル回っていた。のび太はイカたこを睨みつける。
 イカたこはうつ伏せに倒れた。呼吸はできていなかった。苦しい。イカタコの頭の中にあったのはその言葉だけだった。秘密道具は撃たれた時に石版の方へ転がっていた。右手で地面を掴み、立ち上がろうとする。
 その時、地響き。ゴゴゴという音が穴の中に響き、穴の中を揺らす。
 上からはパラパラと土や石が落ちてくる。揺れる。揺れる。そう、それは地震だった。この穴の場所はイタリア。そんな場所で! 地震が起こったのだ。普通ならありえないことだ。富士山に津波がくるぐらいありえない出来事。だが、確かに地震が来ていたのだ。
 信じられない。のび太はそう思う。立つことすら困難になってきた。のび太は思う。地震ってこんなに揺れるものなのか? 上からはどんどん石が落ちてくる。土もパラパラではなく、塊で落ちてくるようになってきていた。
「崩れるぞ!」
 ジャイアンの叫び声が穴の中に響いた―― 


[No.442] 2009/01/31(Sat) 14:30:24

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