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all Another 感想 - Theo - 2010/03/12(Fri) 20:30:40 [No.201]
Re: Another 感想 - mihoro - 2010/03/14(Sun) 07:19:10 [No.202]
Re: Another 感想 - Theo - 2010/03/14(Sun) 18:08:35 [No.203]
Re: Another 感想 - mihoro - 2010/03/17(Wed) 06:52:22 [No.204]


Another 感想 - Theo

感想、批評

Another、十角館の殺人、のネタばらしを含みます。

 本作は、早稲田大学のトークイベントで購入し、読了したのは09年12月でした。感想を書きかけのまま日数が過ぎてしまい、このままではいかん、と本日書き上げました。
 読みやすく楽しめました。
 行列のできるラーメン屋さんに本作を持って行き、並んでいる間読んでいました。並び始めた時点で400ページあたりまで読んでいたのですが、行列を待っている間に500ページあたりまで読んでしまい、続きが気になり、ラーメン屋のあとマクドに入ってそのまま読み続け一気に読了。クライマックスシーンでは犯人の名前が見えてしまわないように、本の左側を紙で隠しながら読んでいました(笑)。

 Anotherがどんな小説か一言で言え、と言われると、個人的には……
「20年余の歳月を得て、十角館が学園ホラーの体裁をまとい、パワーアップして蘇った」といったかんじでしょうか。
 人によっては、十角館よりも、学園ホラーものであることから「囁き」シリーズを、終盤に殺人鬼がでてくることから殺人鬼シリーズを連想されるかもしれませんね。
 しかし、本格ミステリ的な視点からいうと、核をなすのは十角館であり、十角館であることを学園ホラー、超常現象で巧妙にカモフラージュしている――と読めました。

 十角館との共通点を挙げると……
○2つの世界が舞台
十角館では、島と本土との2つの世界が交互に描かれてる
Anotherでは、学校内と学校外が、描かれている。
○メイントリックは名前に関するもの
十角館では、島ではヴァンダイン 本土では守須と別々の名前で呼ばれる人物が犯人であった。
Anotherでは、学校内では三神先生、学校外(祖父母の実家)では怜子さんと呼ばれる人物が<死者>である。
○燃えるクライマックシーン
十角館では、十角館が燃え、Anotherでは合宿先の建物が燃える。

……と、このように書きましたが、十角館の二番煎じだとか、十角館と対して変わらない、などと負の意味でいっているのではありません。物語性では十角館よりも遙かに豊でしょう。学園もの、青春もの、モダンホラーとしても様々に楽しめます。

 十角館が「そして誰もいなくなった」を土台にして新しい衝撃を演出した作品、というのなら、Anotherはその十角館を土台にして、更なる高見に到達した作品、といっていいのではないでしょうか。

 あと、Anotherの表紙の謎(?)について思うことを述べます。Anotherの表紙には本格ミステリ的な野心に満ちた試みがされている、と思うんですね。表紙に<犯人>=<死者>=<もう一人>のヒントが大きく堂々と記載され、また大胆にも叙述トリック使用宣言までがなされている――のではないかと。
 叙述トリック使用宣言とは帯に書かれた「気をつけて。もうはじまっているかもしれない」という文言。これは本文中では、鳴が、(三年三組にかけられた呪いは呪いはもうはじまっているかもしれないので榊原君も気をつけて)という意味合いでいったものですが、実はもう一つ重要な意味がある。帯の文言は、(作者から読者に対する仕掛け、即ち叙述トリックはもう始まっているかもしれませんよ。騙されないように気をつけて読んでくださいね)という意味もあるのではないか、と。これは表紙に隠された大胆不敵な一種の<読者への挑戦状>とまで言えるのではないでしょうか。
 考えてみれば、綾辻さんは十角館でも冒頭でエラリイの口を借りて叙述トリック使用宣言を行っています。エラリイの最初のセリフに「僕にとって推理小説とはあくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは作者対読者の、刺激的な論理の遊び。……」とあります。叙述トリックはネットで検索したりすると、一般的には「通常のトリックが、犯人が探偵役に対して仕掛けるのに対して、作者が読者に直接仕掛けるトリック」などと定義されています。エラリイがわざわざ、「あるいは」と述べて付け加えた「作者対読者の……」という文言には、(作者が読者に対して直接仕掛けるトリック=叙述トリックが使用された作品かもしれませんよ。気をつけてくださいね)という意味が含められていた、と解釈しています。
 もちろん叙述トリック作品は、叙述トリックが使用されていることが事前にばらされると価値が減ります。しかし、本格ミステリであるなら大胆に、かつ読者に気付かれないように伏線は張っておきたい。十角館では、本文冒頭に置かれていた叙述トリック使用宣言が、Anotherではとうとう表紙に置かれるにまでなった……のではないかと。
 表紙にはさらに<死者>=<もう一人>を指し示す大きな手掛かりがあると思います。
表紙のAnotherのタイトル文字。11/18付けのAyalistの日記にもあるように、Amazon、楽天、bk1とで文字の色が異なって見えますね。私の手元にある本でも、照明の角度や種類によって、文字の色が異なって見えます。Anotherというのは日本語ではもちろん、「もう一人」という意味で、本作品最大の謎である<もう一人>=<死者>のことを指すタイトルでしょう。そのAnotherの文字が異なって見えるのです。
 本格ミステリ的な意味合いとしては、Anotherは同じ文字なのに異なって見える→<もう一人>は同一人物であるのに読者には異なる人物のように見える、という重大なヒントではないでしょうか。(三神先生と怜子さんは同一人物であるのに、読者は別人だと思っていたでしょう)


[No.201] 2010/03/12(Fri) 20:30:40

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