私は数年前、ある女性マジシャンのブログに「暗黒館の殺人」の感想記事と「週間ブックレビュー」に綾辻行人さんが出演した時の番組に対するコメントが書いてあるのを読んだのがきっかけで、綾辻作品に興味を持ち始めました。その女性マジシャンからメールで伺った話ですが、綾辻さんもマジックがお好きだとのことです。「奇面館の殺人」にもマジシャンが登場しますね。推理小説とマジックは通じるものがあると私は思います。どちらも謎があり、仕掛けがあり、意外性があるからです。特に密室トリックはマジックそのものです。だから、ミステリ好きの人ならマジックに興味が沸くだろうし、マジックファンならミステリの謎解きに興味を覚えるでしょう。「十角館の殺人」の中で登場人物の一人が「ミステリのファンで、マジックに興味のない人も珍しいねえ」というセリフを言っていましたが、そのとおりだと思います。 「奇面館の殺人」の最大の見せ場は、招待客全員が同姓同名であったということでしょう。ある雑誌で綾辻さんが「この作品のメイントリックが、どこまで読者の皆さんに通用するかドキドキしています」と言っていましたが、そのメイントリックとは‘同姓同名’のことを指しているのは間違いないでしょう。(仮面のトリックも、密室トリックも、犯人自体もそれほど意外ではないからです)。タイトルに「仮面」という言葉が使われているし、登場人物が全員仮面を被るので、てっきり仮面がメイントリックだと思わせますが、実はこれはダミーでした。読者に、仮面に注意を向けさせておいて、本当の意外さは全く別のところに仕掛けられていたというわけです。このように、人が注意を向けている場所とは違う場所にトリックを仕掛けるというのはマジックの常套手段であって、綾辻さんはこのマジシャンのやり方を応用したのです。この真相が分かった時、完全にヤラレタと思いました。他の館シリーズと違い、招待客全員が男だったので、オヤッ?と思いましたが、こういうことだったんですね。
余談ですが、綾辻行人さんてプライベートでも、どこかの館で、作家仲間たちを招いてパーティーを開いているんでしょうかね。それも、招待客をアッと言わせるような趣向を凝らして・・・。そんなイメージがあります。
[No.223] 2012/02/05(Sun) 00:35:30 |