「もう・・・!こんなに書類ためるんじゃなかった。終わらないじゃない!」
鍋の国政庁の医療室で、一人の医者が書類と格闘していた。
「あああああー、今日非番だったはずなのにー。書類仕事で日が暮れちゃうー」
半泣きになりながら、一つ一つ片付けていく。 医療室にいるのだから、患者の診察もしなければいけない。非番であれば家に持って帰って書類を片付ければいいはずだが、あまりにも量が多すぎて持ち帰れなかったのだ。自業自得である。
「……燃やしちゃおうかなぁ、これ」
いけない考えが脳裏に浮かぶ。その時強い風が吹き書類が部屋中に飛んだ。
「きゃあああ!」
慌てて書類を追いかけ、落ちた書類を拾っていく。
「え?」
妙な白衣の男に気がついた。窓枠に座りこちらを見ている。
「ど、どちら様でしょうか……?」
どうしてそんな所にいるのかとか、危ないからさっさと窓から降りた方がいいんじゃ、とか書類拾うのを手伝って欲しいなどの考えが頭をよぎったが、出てきたセリフはこれだった。
「フフフ、呼ばれたのですよ」
「呼ばれた?…ということは、新しいお医者様ですか。じゃあ一緒にお仕事をする事になるかもしれませんね」
「さあ、それはどうでしょう」
「???」
「…! イィ!スゴクイィ!!」
白衣の男は急に奇声を上げて窓から飛び出していった。
「え? ちょ、まってーー!」
慌てて窓から身を乗り出したが、もう人影はなかった。
「変な人……でも又会えるかな」
彼女にとって変な、でもとても気になる出会いだった。
暗証キー:1224
[No.1000] 2007/08/05(Sun) 23:44:14 |