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No.6572へ返信

all SS置場 - 城 華一郎 - 2010/02/17(Wed) 20:23:41 [No.6247]
お祭りイベント用。へんなのでけた。 - 浅葱空 - 2011/12/11(Sun) 02:32:04 [No.7642]
お祭りイベントていしゅつよーSS - 城 華一郎 - 2011/12/11(Sun) 01:22:42 [No.7640]
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猫士SS2 - むつき - 2011/06/10(Fri) 16:00:19 [No.7415]
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猫士SS(じにあ編) - 楠瀬藍 - 2011/06/05(Sun) 23:45:54 [No.7401]
にゃふにゃふSS - 浅葱空 - 2011/06/05(Sun) 03:04:06 [No.7397]
猫士SS - むつき - 2011/06/04(Sat) 16:15:19 [No.7392]
(No Subject) - 蝶子 - 2011/06/01(Wed) 19:00:01 [No.7379]
フエネシャダイ発売予定記念SS - フエ猫 - 2011/05/01(Sun) 09:45:06 [No.7316]
Re: フエネシャダイ発売予定記念(蝶子さん、お許し下さい!... - フエ猫 - 2011/05/01(Sun) 10:31:06 [No.7317]
Re: フエネシャダイ発売予定記念(城さん、お許し下さい!)... - フエ猫 - 2011/05/01(Sun) 14:51:06 [No.7318]
夜明けのBlue Wheel - 城 華一郎 - 2011/02/12(Sat) 19:48:12 [No.7291]
5970-12895 - 城 華一郎 - 2010/12/07(Tue) 06:15:49 [No.7177]
スーパーオペレーター(書き溜め分+α) - 城 華一郎 - 2010/11/28(Sun) 05:57:11 [No.7133]
ただの古い/そしていつか新しい/モノローグ - 城 華一郎 - 2010/11/28(Sun) 05:09:54 [No.7132]
赤夢 - 城 華一郎 - 2010/11/28(Sun) 04:50:45 [No.7131]
ニューワールドの子供たち−Episode2:Dear My Prince... - 城 華一郎 - 2010/11/24(Wed) 02:45:26 [No.7118]
ニューワールドの子供たち - 城 華一郎 - 2010/11/05(Fri) 22:36:28 [No.7069]
007 - 城 華一郎 - 2010/11/27(Sat) 23:54:36 [No.7126]
006 - 城 華一郎 - 2010/11/26(Fri) 23:41:54 [No.7124]
005 - 城 華一郎 - 2010/11/25(Thu) 23:48:40 [No.7122]
004 - 城 華一郎 - 2010/11/24(Wed) 23:22:01 [No.7119]
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001 - 城 華一郎 - 2010/11/21(Sun) 20:04:50 [No.7110]
秘宝館SS:日向美弥様オーダー - 城 華一郎 - 2010/10/12(Tue) 20:01:26 [No.7028]
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後書き - 城 華一郎 - 2010/10/03(Sun) 15:41:18 [No.7014]
秘宝館SS:蒼のあおひと様オーダー - 城 華一郎 - 2010/09/04(Sat) 16:52:00 [No.6965]
『遺言』 - 城 華一郎 - 2010/06/22(Tue) 11:20:17 [No.6690]
『遺言』(20900102改訂版) - 城 華一郎 - 2010/09/02(Thu) 01:43:12 [No.6958]
秘宝館SS:砂浜ミサゴ様オーダー - 城 華一郎 - 2010/06/17(Thu) 05:10:26 [No.6642]
後書き - 城 華一郎 - 2010/06/17(Thu) 05:28:18 [No.6643]
無限爆愛レンレンジャー:幕間 - 城 華一郎 - 2010/06/04(Fri) 22:44:15 [No.6606]
無限爆愛レンレンジャー:幕間2 - 城 華一郎 - 2010/09/10(Fri) 00:15:20 [No.6974]
赤い刻印 - 城 華一郎 - 2010/05/30(Sun) 20:32:37 [No.6587]
白い感情。 - 城 華一郎 - 2010/05/29(Sat) 16:58:55 [No.6585]
20100527(夕):とある男の姿あり - 城 華一郎 - 2010/05/27(Thu) 17:50:54 [No.6580]
20100521(朝):市民病院裏 - 城 華一郎 - 2010/05/21(Fri) 08:40:11 [No.6572]
『宛先のない恋文』 - 城 華一郎 - 2010/05/10(Mon) 17:55:51 [No.6486]
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やまなし、おちなし、いみなしな突発もの。 - 遊佐呉 - 2010/05/02(Sun) 02:41:32 [No.6440]
ニューワールドの子供たち−Episode1:World Out Side... - 城 華一郎 - 2010/04/06(Tue) 22:47:27 [No.6342]
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ニューワールドの子供たち−Episode3:Digital Person... - 城 華一郎 - 2010/04/06(Tue) 22:14:10 [No.6341]
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ミニインタビュー:アイドルに聞く! - 城 華一郎 - 2010/04/06(Tue) 03:20:33 [No.6335]
秘宝館SS:城 華一郎様オーダー - 城 華一郎 - 2010/03/12(Fri) 06:45:15 [No.6285]
後書き - 城 華一郎 - 2010/03/12(Fri) 07:16:33 [No.6286]
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鳥物語(3) - 城 華一郎 - 2010/03/03(Wed) 14:11:09 [No.6275]
鳥物語(2) - 城 華一郎 - 2010/02/27(Sat) 18:20:14 [No.6271]
無限爆愛レンレンジャー:第二話(2) - 城 華一郎 - 2010/02/18(Thu) 00:22:14 [No.6249]
無限爆愛レンレンジャー・楽屋編その1 - 城 華一郎 - 2010/02/17(Wed) 20:25:03 [No.6248]


20100521(朝):市民病院裏 (No.6247 への返信) - 城 華一郎

「適当な話をしてもいいかい?」
「いやぁよ、息抜きならもっと真面目な話、して頂戴」

ちえっ、と城 華一郎は舌打ちを零す。
愛佳は病院勤めになってから、大分変わったと思う。
それこそネコっ可愛がりに猫士たちを面倒見ていた頃に比べれば、
今の時代は鋭くなった。

もっと、丸くなってほしいなあ。ネコだけに。

「感動がさ、足りないと思うのよ」
「仕事しなさいよ、文族さん」

このミルク色の髪をした猫士は、最近この呼び方ばかりをする。

ある、フィクショノートの娘の名を戴いた彼女は、
由来の通り、佳き愛の結晶として生まれ育つところから、
どうやら生み、育むところへ至ったらしい、と、
華一郎は微妙な笑い方をして考える。

命を相手に日々を営んでいたら、こうも育つのかな、と、思う。

愛らしい、少女としての振る舞いはなりを潜め、
愛しげに時々刻々を過ごす、佳い女になった、そう思う。

女とは、つまるところ愛だから、
ああ、愛佳は愛佳になったのだな、
華一郎の主観からすると、そう、感慨に耽ったことになる。

「俺さ、取材を頼まれてるのよ」
「よかったじゃない。妄想だけを書き散らすよりはずっと健全よ」
「きっついなあ。尖るなよう」

愛佳、嘆息。
腰に手を当て振り返る姿は、目がキツい。

「みんなが大変な時に、身内相手に笑っていられるほど、
 優しくなんてないんですよー、だ」

そういうのは担当してるアイドルさんに求めなさいな、と、
これまたキツいことを言われる。

まだ、身内として見てくれているのは、すごく嬉しい反面、
確かにこんなこと、してる場合じゃないよなあと現実に帰らされる。
ゲームしてるのに現実に帰らされるって何よ。

それだけアイドレスが俺にとって現実として認識されているのか、
と、喜ばしくも思えるが、それはそれで、人間として、いいのか、
そう思う。第七世界人だって、生きているのだ。

何しろここは市民病院の裏庭で、
華一郎は、玄霧藩国から来てくれた、藩王率いる医療部隊の、
顔ぶれ含む、人間的主観の混じったデータを渡した後であり、
愛佳は白衣のまんまで、つまりは勤務時間の途中なのである。

渡した相手が愛佳であり、
渡された相手がデータを読む、片手間に、世間話に応じてくれているのだから、
問題は、ないといえば、ないのだが。

「自信、なくなるねえ」
「こういう時ほど燃えるんじゃなかった?」

ほら、あの頃みたいに。
誰だったっけ、今でも時々、義腕のメンテナンスに来る、
ナイスミドルの彼。

「なくなるものさ。
 結局、文族ってのは現実に対する無力感で一杯の奴がなるもんだ。
 威勢がいいのも、全部、文章のためだけだからな」
「クラシックな作家っぷりね。明治時代の文豪じゃないんだから」
「あぁ? でも、黒霧さんなんか、結構同じタイプだと思うぞ」
「腕が違うじゃない。向こうの方が立派よ」
「俺は摂政だぞ」
「彼は作家よ、この上もなく」
「……言い負かされるよなあ」

結局、俺にとっちゃ、
華族稼業ってのは、挫折した結果に行き着いた先だからなあ。
そう、独りごちる華一郎。

「無力感に打ちのめされていた頃よりは、ずっと行動出来てるんじゃない?」
「作家としては堕落だろ」
「人間としてはマシになったかもしれないのに」

くすすっ。
この会話が始まって以来、初めて愛佳が、瑞々しくも、
微笑みの華を咲かせた。
それは髪色と相まって、白百合が揺れた様にも似ていたと、
華一郎は述懐する。

「戦わなきゃ、現実と。なーんて言葉、あるけどさ。
 手段が違うだけなのはわかってるよ。
 華族としての充実感にも、浸っちゃいる。時々ね。
 だから、俺が今、もやもやして、煮え切れないのは、
 単純に、何やってんだよ、自分、そう思ってるからだ」
「愛しい彼女が待ってるんじゃないの? そろそろ行ったら?」
「愛しくはないさ。愛しているだけだ」
「おお、ごちそうさま!」
「……割と、愛っていうのも、どうかと思うぜ、最近。
 それこそいろんな愛があるんだ。いろんな命があるように。
 俺の、彼女に対する愛は、誉められたもんじゃない」
「向こうがそれに気づいていても、面と向かって、そう言える?」
「わからん。言える気もするし、言う、間柄になった時点で、
 ずっと現実的なステージに進んだとも感じるようになると思うが」

華一郎、立ち上がる。

「私小説も、ほどほどにしないとな。
 こちとらエンタメ稼業が本業よ!」
「ぷろでゅーさーさん、スーツがお似合いよっ!」
「ばーか」

そう言って、愛佳の頭を、
それだけは昔と何も変わらないかのように、ポンと撫でるように叩いて、
華一郎は歩き出す。

「今の俺ゃ、法の司で、ハッカーよ」
「どうだかね、スターファイターで猫妖精2さん」
「あばよ、またな」
「元気でやれよ、フィクショノート」

軽口と、挙げた手を、ピシ、パシ、叩きあって、
愛佳と華一郎はすれ違った。

愛佳は中へ、華一郎は街へ。

動乱、未だ続く、5月21日の朝の光景であった。


[No.6572] 2010/05/21(Fri) 08:40:11

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