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Re: フエネシャダイ発売予定記念(城さん、お許し下さい!)... - フエ猫 - 2011/05/01(Sun) 14:51:06 [No.7318]
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無限爆愛レンレンジャー:第二話(2) - 城 華一郎 - 2010/02/18(Thu) 00:22:14 [No.6249]
無限爆愛レンレンジャー・楽屋編その1 - 城 華一郎 - 2010/02/17(Wed) 20:25:03 [No.6248]


無限爆愛レンレンジャー:幕間 (No.6247 への返信) - 城 華一郎

空間に、書道家の毛筆で描き出された文字が、そのまま人間になったかの如き、峻厳な居住まいをしている、女がいた。枯淡な水墨画の味わいある黒ではなく、どっぷりと、輪郭の枯れることなき濃さで擦られた墨色をした髪が、細く一条、後頭部の、首の骨との継ぎ目で丁度窪んでいくあたりから背へと掃き流されており、いかにも丈夫そうな太い繊維で織られた胴着の白色と、また、履いた袴の、謹厳だが布地同様重たすぎぬ紺色とに、物腰同様の、調和の取れた対照性を醸し出す一助となっている。

体格は、小柄だが、華奢を感じさせず、青竹のように敢と真っ直ぐに伸びた背筋の垂直さが、作りこまれた骨肉の壮健と、それを成した主の気性とを伺わせる、生真面目な端座をした、女であった。

小造りの顔ゆえ、目の、形そのものは切れ長であるにも関わらず、それに比して大きく感じられる瞳は、やはり濃く、黒い。ぐりぐりと、峻烈という色素で塗り潰したような、意志の頑なさと、純粋性とを思わせる目つきだった。

木目の、焦げたような地肌が渋い味を出している縁側、手狭ながらも庭園様を繕った、玉石の敷かれた庭に、囲うは瓦葺きの尾根を持つ白壁と、その、まだ成人したか、しないかも、見るものの程度によっては判別のつかぬ若さをした女は、向き合うようにして、まなざしを水平に、座している。

本来は、黄色くも、また、灰色にも色味を帯びるはずの、砂漠から吹き込む風は、都を内外双方からの意味で衝立状に役割を果たす、高塀と、この屋敷を囲う白壁とに、二重に遮られ、砂の入り交じらぬ、生粋の青をした空色を、彼女の頭上に広げていた。

日の傾きもまた、浅く、高い、昼下がりのことである。

住み込みの門下生らと共に昼膳を終えた絵斗イヅルは、腹の浅くくちた心地に、普段はせぬ仕儀だが、あえて心身を任せ、五体三軸の感覚を……三軸とは、過去、すなわち記憶と、未来、すなわち目標と、それらをつなぐ、現在であるところの、意志を強く意識した、己を精神的・情報的に規定する、三点を指す言葉である……、冴え渡らせていた。

黒が、落ちてくる。瞼を閉じ、気息を整える際に、物理的に視界のそうなるように、精神を尖らせると、必ずイヅルの中には、黒が、あった。

己という存在を、十全に確認せんがための、意識的な孤独を表した以上の、拭い難い、原風景としての、黒だ。

(あれはまだ、私に色が付くよりも前の時代、だったのだろう。)

修養のため、記憶を呼び起こすというより、余人の普通にそうするように、ただ懐かしく思い出すといった風情が似合う、感触が、心の中に、不意に湧き起こっていた。

黒に対比される色、それは白に他なるまい。そしてイヅルにとり、その色が指し示すものは、今もなお、たった一つなのである。

絵斗ソーマ。イヅルの実父であり、亡父でもある、唯一の師の名。砂漠の国にあっては、月のように暖かに笑うと語られ、それ以外の国においては太陽のように笑うとされる、男であった。

けれど、イヅルには、太陽だとか、月だとか、そんな遠い存在ではなくて、絵斗ソーマという人物は、幼い自分の手を柔らかく引き、そっと歩いてくれる、ただの優しい父親だった。

優しいという以上に、優れており、それが故に、落命した、正義を行う、まさに白という色のイメージの担い手に相応しい、儚くも、一点の曇り無き人物でも、あった。

絵斗イヅルという女を、冒頭の喩えに比して、文字で表すのであれば、黒であり、その黒の内訳は、白の喪失、という、一言に集約出来る。

イヅルは、父の跡を継ぎ、剣術道場で門下生を従える師範であると同時に、未だに父を失ったという事実と戦い続ける、童女のままの自分を抱えていた。

そんな事情が、時折こうして表出して、彼女を自己の中の黒という原風景に、縫い止めるのである。

イヅルの黒は、どう、言い繕おうとも、喪失の絶望に彩られている。そのことが、今に生きようとするイヅルの中で、どうしようもなく重く、足を引きずらせている。

まなざしは、あくまで水平に白壁を向いており、青空を向くことはない。

剣士として鍛造した臓腑が、ほんの十数分もしないこの時の間に、気づけば消化の終わり、血の巡りも、腹からすっかり解放されていることを、彼女に知らせていた。

いつの日か、黒という枷からも、解き放たれる時が来るのだろうか。

父が失われてより、十数年。

時は未だに彼女を解放してはいない。


[No.6606] 2010/06/04(Fri) 22:44:15

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