[ リストに戻る ]
No.6806へ返信

all 観光地・大観光地復興ツリー - 城 華一郎 - 2010/06/22(Tue) 10:34:33 [No.6686]
提出準備用 - むつき - 2010/07/15(Thu) 09:28:31 [No.6840]
ネタ一時置き場 - むつき - 2010/06/22(Tue) 23:45:50 [No.6699]
蒸し風呂の資料 - むつき - 2010/07/05(Mon) 22:27:31 [No.6778]
えー - 楠瀬藍 - 2010/07/05(Mon) 22:59:50 [No.6779]
要考慮 - 城 華一郎 - 2010/07/03(Sat) 02:21:47 [No.6765]
会議まとめ - 城 華一郎 - 2010/06/26(Sat) 04:17:45 [No.6723]
あたしメカ風呂が欲しい - むつき - 2010/06/23(Wed) 00:12:26 [No.6701]
浅葱さんの設定から妄想してみた!(カッ - むつき - 2010/08/17(Tue) 16:35:00 [No.6916]
ぱっしょーん。 - 浅葱空 - 2010/06/23(Wed) 00:00:06 [No.6700]
案まとめつつ文 - 浅葱空 - 2010/08/17(Tue) 00:26:20 [No.6913]
むつきさんの案取り入れメモ - 浅葱空 - 2010/08/19(Thu) 01:00:02 [No.6921]
大観光地枝 - 城 華一郎 - 2010/06/22(Tue) 10:35:55 [No.6688]
まとめページ - 城 華一郎 - 2010/11/02(Tue) 01:23:54 [No.7059]
人形劇-人形つくり- 仮置き - 三園晶 - 2010/08/19(Thu) 01:04:00 [No.6922]
人形劇-人形遣い- - 三園晶 - 2010/10/28(Thu) 01:20:58 [No.7043]
タイトルイラスト - むつき - 2010/08/17(Tue) 11:39:18 [No.6914]
劇用カット - むつき - 2010/10/09(Sat) 21:01:57 [No.7024]
館内案内図、案内文 - むつき - 2010/09/10(Fri) 11:28:16 [No.6977]
施設外観 - むつき - 2010/08/23(Mon) 00:10:42 [No.6932]
案内図(外) - むつき - 2010/08/17(Tue) 14:10:08 [No.6915]
観光地枝 - 城 華一郎 - 2010/06/22(Tue) 10:35:21 [No.6687]
再審査提出 - 城 華一郎 - 2010/08/06(Fri) 00:03:36 [No.6899]
HQ頂きました。 - むつき - 2010/08/08(Sun) 19:52:37 [No.6902]
お風呂について大まかな説明 - むつき - 2010/07/22(Thu) 17:35:35 [No.6864]
修正依頼 - むつき - 2010/07/23(Fri) 09:01:30 [No.6870]
復興文章 - 城 華一郎 - 2010/07/14(Wed) 22:30:14 [No.6838]
風呂・1 - 城 華一郎 - 2010/07/07(Wed) 02:08:35 [No.6785]
風呂・2 - 城 華一郎 - 2010/07/07(Wed) 02:55:00 [No.6786]
風呂・3 - 城 華一郎 - 2010/07/07(Wed) 03:46:53 [No.6787]
風呂・4 - 城 華一郎 - 2010/07/08(Thu) 23:25:39 [No.6802]
風呂・5 - 城 華一郎 - 2010/07/09(Fri) 00:40:55 [No.6806]
−・6 - 城 華一郎 - 2010/07/09(Fri) 15:04:50 [No.6807]
風呂・了 - 城 華一郎 - 2010/07/09(Fri) 16:42:38 [No.6808]
蒸し風呂レポート風 - むつき - 2010/07/06(Tue) 17:32:35 [No.6784]
作業ノシ ミロさん、サクさんログ - むつき - 2010/07/05(Mon) 20:59:58 [No.6777]
蒸し風呂部屋 - 豊国 ミロ - 2010/07/23(Fri) 01:55:06 [No.6869]
ご報告ー - 城 華一郎 - 2010/08/05(Thu) 23:42:44 [No.6897]
アロマ+寝具 - サク - 2010/07/07(Wed) 16:09:35 [No.6789]
ご報告ー - 城 華一郎 - 2010/08/05(Thu) 23:47:52 [No.6898]
了解です - サク - 2010/08/07(Sat) 15:10:24 [No.6901]
タイトル作成 - むつき - 2010/07/05(Mon) 15:28:02 [No.6776]
その他いらすと - むつき - 2010/07/08(Thu) 15:53:48 [No.6801]
各SSイメージイラスト - むつき - 2010/07/07(Wed) 15:18:36 [No.6788]
すみませんいれかえをー… - むつき - 2010/07/07(Wed) 17:34:53 [No.6790]


風呂・5 (No.6802 への返信) - 城 華一郎

さらに半月が経過した。

ブラスフィールド兄妹は、月明かりの下で、その名の通り、真鍮の色をした、
分厚い砂除けの衣を身にまとい、自然石の上に腰掛けている。

岩と砂とで、風呂屋の、本棟と食事処の渡り廊下から見える中庭に、
レンジャー様式の庭園をしつらえる予定の場所である。

まだ、無造作に大小の岩が置かれているだけだが、
岩のでこぼこ具合が、波間に突き出た島にも見立てられるような並びをしている。

「諸島造(しょとうづくり)か」

無精髭をなでつけながら、ぴしゃり、尻に敷いた岩を、
メイが手のひらで面白そうにぶっ叩く。口にしたのは、庭園様式の名前だ。

「こんな短い期間だってのに、よくやるじゃねえか、あのデザイナー」

三つに編んだ、長い灰髪を、己の膝にしなだれかけつつ、
妹であるメイロードの方は、これも、自分たちの足元を見つめている。

「そりゃ、わざわざ荒れた故郷に戻ってくるぐらいの奴ですからね。
 根性は座ってるでしょう」

二人の影が、月光に、圧し伸ばされて、大地に投げかけられていた。

「こいつも人を使ってやった仕事でしょ?
 いい目、してますよ」
「違えねえ」

いつになく、雷鳴のようなメイの大声は、鳴りを潜め、
しみじみと呟くように相槌を打つ。

「ああいう若いのが、いいんだよ。なあ、妹っこよ」

上機嫌に呼びかけられて、メイロードは皺深く苦笑した。
妹っこ、という呼ばれ方を、最後にしたのは、両親が工事現場の事故で亡くなる前だ。
それっきり、二度と兄は、自分のことを、そう呼ばなくなった。

社長、副社長、で、それからずっと、やってきたのだ。

だから、兄がその呼び方を口にしたことで、
メイロードには、すべて、わかったのだ。

「引退する気ですか」
「ははっ、まあなー」

メイロードを振り返り、からりと笑ったその日焼け顔は、
蒼い光を受けて、どこか穏やかでさえある。

「あの坊主、やれるじゃねえか。
 ああいうのがいるんなら、もう俺らの時代は、終わりよ」
「現場第一主義も、ここまでですか……長かったですね?」
「あん? 馬鹿言えェ、社長辞めるってだけだろが」
「まだ、働く気ですか、兄さんは」
「阿呆、おめえさんだって引退させねえからな。
 あいつにいい人が出来るか、いい相棒が出来るまで、当分現役だぞ」
「あら、事務方の子を慰めて、いい雰囲気になってたみたいですよ?
 若いっていいですよねえ、勢いだけで、あんなに真っ赤になって」
「あ? 聞いてねえぞ!? ちっきしょ、羨ましい野郎だな」

けらけらけら、本気になってやっかむ兄を、笑う。

「なんでも、湧き水にふっ飛ばされて、なんでかその時、服も脱げちゃって、
 真っ裸で落っこちちゃった子なんですって。
 もうお嫁にいけないとか、わんわん泣いて、『えー、ほんとに空から女の子、降ってくるのかよー』
 って、愕然としてましたよ、あの子。
 しかももう一人慰めた後だったから、なんだか微妙に修羅場っちゃったみたいで、大変で」
「おいおい、どんな漫画体質だよ、あいつは。分けろよその運を一人分ぐらい」
「結局私ら、独り身ですからねえ……遅咲きの華を目指しますか?」
「まず、おめえから片付いてもらわねえとな。
 俺にゃあ言い寄る女、いっぺえいるからよ!」
「はい、はい」

ついさっきの台詞と、もう矛盾してますよ、とは、
つっこまないでおくのが、言わぬが華ってものだろう。

……こんな時間を過ごすのは、久しぶりだ。
昼夜を問わない突貫作業も、国を背負ったプレッシャーも、
誰かの命を預かる責任感も、みんな、みんな、慣れっこで。

でも、いつの間にか、体は年老いていて、
疲れは深く骨身にこびりつき、拭いきれない。

とっぷり、今日みたいな、静かな夜に、
その疲れが浮かんできて、我にもなく、センチメンタルな気分にさせるのだ。

砂漠の夜は、冷たく、染みる。空の、冴え冴えとした黒さも、また。

「――――この国のことを、ちゃんと覚えていて。
 隅々まで目を通して、自分のセンスで新しく作り直せるような子、
 そうはいないものね。兄さん、本当にいい拾いものしましたね」
「あたぼうよ、こちとらめ組の大将だからよ!」

快活な哄笑が、夜空に響く。

「人の心をデザインするのが、デザイナーってもんだろう。
 明るくて、和めて、くつろげる。風呂だけじゃねえ。
 観光ってのは、光を観に、来るんだ。
 誰にとっても、光である、そういう心を、あいつはモノに籠めてしつらえられる奴なのさ。
 今、一番必要だろ? この国にはよ」
「だからって、最初っから総代丸投げはやりすぎだったと思いますけどね」
「なんだよ、おめえも反対しなかったじゃねえか」
「はい」

にっこり、笑い返しながら、思い出すのはアウ=ルのこと。

光を観ることを、諦めない。
たったそれだけのことを、アウ=ルは、やってのけ続けている。
だから、人がついてくるのだ。

ただの若造を、冗談で親方と仰ぐ奴らは、現場には、いない。
自分の命を預ける責任者なのだ。

性根の座っていない、「わかっていない」出向の臨時現場監督が、
影でどんな扱いを受けるかは、メイロードのよく知るところだ。

「あの子は、ちゃあんと人の命が動く、現場にいて、
 命で動く、現場を見て、仕事しようとする子ですからね」
「おうよ。それが商売ってもんだろ、なあ、妹っこ!」

にやにや、自分が座る岩とも大して変わらない、いかつい面構えを、
楽しそうにひん曲げ、メイは笑っている。

「あいつは国に戻ってきた。
 そこで、自分の仕事の意味を求めようとしてたんだよ。
 拾ってやりゃあ、働くさ。
 あいつは商売ってものをわかってる。
 生きるだけなら、ただの糞袋なのが、人間だ。
 生かそうとするから、人間って奴ぁ、すごくなれるんだよ。
 そいつが本当の商売だろう。
 あいつは国を、生かしたかったんだよ」

だから、それでメシを食わしてもらうことに、
疑いを持たずに、突っ走れる。

「見ろ。俺らみてえなロートルまで、あいつが帰ってきたせいで、
 働いちまってるじゃねえか」
「はい。生かされてますね、兄さん」

フフ、と微笑み、頷いた。

風は相変わらず冷たいが、砂漠の夜に、今日も月明かりは優しい。

/*/


[No.6806] 2010/07/09(Fri) 00:40:55

Name
E-Mail
URL
Subject
Color
Cookie / Pass

- HOME - お知らせ(3/8) - 新着記事 - 記事検索 - 携帯用URL - フィード - ヘルプ - 環境設定 -

Rocket Board Type-T (Free) Rocket BBS