「T××と私。」用ツリー - 城 華一郎 - 2010/05/11(Tue) 00:12:13 [No.6490] |
└ 書いたー - 城 華一郎 - 2011/01/02(Sun) 21:44:08 [No.7242] |
└ 【締切追加】「T16と私。」開催告知 - 城 華一郎 - 2010/12/18(Sat) 00:53:21 [No.7223] |
└ イラスト提出準備用 - むつき - 2010/05/21(Fri) 23:53:10 [No.6574] |
└ 出さないけど書いたお。 - むつき - 2010/05/21(Fri) 15:57:25 [No.6573] |
└ 書いたよー - 城 華一郎 - 2010/05/18(Tue) 09:08:10 [No.6540] |
ただの言葉だよ。 見上げながら、ソラを想う。 ここには轟々と全身を内臓まで震わせる重低音が響き渡っていた。 大勢の誰かを乗せて、大量の熱を水蒸気に換えて吐き出しながら、 小さなアーチを直線に丸く描いているのは、 僕達が始めて、いつか皆が引き継いだ、僕達の翼だった。 君の手を引いて砂丘を下る。 刻まれる幾つもの有限で数え切れない足跡の、 隣をまた戻る道行きに、去年買った飛行機の、 本のことを思い出した。 重なる掌の間に篭もる汗。 乾いて厳しい日差しが、どうかすると、 瞳からも潤みを奪っていくけど、 そこだけは吹きつける砂塵の粒だって及ばない。 ここは砂漠だ。 どんな命も、いつかはこの微小な砂粒に還る。 積み上げればきっと、今、二人で越えている、 砂丘ほどの大きさにもなっただろうなと、 屍を数で勘定した。 姓を数で、感情した。 見失わないよう、指を絡めて強く彼女の手を握る。 市街から離れた地域では、目印が他にないせいで、 遠近感が、よく、狂うからだ。 砂丘も、振り返れば大きなものは数百m級にも届くのに、 その表面が平坦で、淡々として、大小もなく、特徴も色も他にないので、 考えて見つめなければ、そうとは気付けない。 生きていた頃の赤さは、砂塵の中には、微塵もない。 「一緒に、空を作りたかったな。」 今は、岬の墓標からの、報告の帰り道。 2人で持っていた花束は、もう、どちらの手の中にも、ない。 「はい、マスター。いいえ。」 「……?」 尋ね返すように覗き込んだ瞳は青く、 雲の少なく透明度の高い、ソラよりも、 冴え冴えと晴れやかにきらめいていた。 この瞳のことを思い起こすたびに、 胸の中には言葉が充ちる。 「私達は一緒にあります。 思い出の宇宙は網の目のようにつながり生きていて、 私達は、何一つ失われることなく全員で、レンジャー連邦です。 華一郎。貴方の感じたこの国は、そのような処だったと、 私は貴方の言葉で記憶しています。」 「……そうか。そうだな。」 そうだった。 ただの言葉だよと見上げながら、ソラを想う。 この言葉はただの文字で、本物の空じゃない。 ここはニューワールド。 ここはレンジャー連邦。 ここは砂漠。 ここは命の最果て。 ここは今。 君は本当に翼だな、テイタニア。 去年興した産業も、元をたどれば君につながる。 君を想うと、空も飛べる。 いつか僕達が失われようと、失われないものがあると、 君と過ごしたターンで知った。 心が飛べるなら、世界はいつでもそこにあるんだね。 [No.7242] 2011/01/02(Sun) 21:44:08 |