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お蔵だし03:猫士育成中! - 城 華一郎 - 2009/09/15(Tue) 18:14:03 [No.5700]
お蔵だし02:夏休み - 城 華一郎 - 2009/09/15(Tue) 18:10:51 [No.5699]
お蔵だし01:ある文族 - 城 華一郎 - 2009/09/15(Tue) 18:06:48 [No.5698]
らう゛こめ - 遊佐 呉@生活苦 - 2009/09/10(Thu) 22:33:49 [No.5689]
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携帯からだから、うまく表現できているとよいが・・・... - フェ○@修正版 - 2009/08/25(Tue) 13:01:15 [No.5624]
【図書館移動済】ニューワールドの子供たち−Episode2... - 城 華一郎 - 2009/08/04(Tue) 19:51:27 [No.5573]
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予告データ - 城 華一郎 - 2009/08/04(Tue) 19:54:45 [No.5574]
『二人の間に流れるのは』 - 空馬 - 2009/07/17(Fri) 21:26:41 [No.5463]
くうちゅうがたほーぷ - 冴木悠 - 2009/07/17(Fri) 01:04:07 [No.5455]
チャットでの何人かの暖かなご声援にチョーシにのって... - フェ猫@紙一重 - 2009/07/06(Mon) 14:00:06 [No.5425]
三沢光晴追悼SS - フェ猫@題名と内容は一切か(ry - 2009/07/04(Sat) 07:35:23 [No.5420]
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ふぇっふぇっフェ猫さんのSSに乗っかる形だよ☆御無... - 空馬@(>ш<) - 2009/01/26(Mon) 02:27:29 [No.4231]
空馬さん、先に続き書いちゃったよSS - フェ猫@野菜ジュースは200円〜♪ - 2009/01/24(Sat) 07:52:06 [No.4205]
マクロスFを見たこと無い男がマクロスFネタを詰め込... - フェ猫 - 2009/01/10(Sat) 05:55:15 [No.4104]
親愛なる【いい男】へ - フェ猫@ツンデレって何? - 2009/01/08(Thu) 04:28:38 [No.4101]



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SS置場 (親記事) - フェ猫@桑の実か!(゚Д゚)クワッ

S・しんさん
S・彩貴さん 
お・お二人の
き・気付かない所から
ば・バァァァアスト・ストリィィィィイムゥゥゥゥ!


[No.4100] 2009/01/08(Thu) 04:24:22
親愛なる【いい男】へ (No.4100への返信 / 1階層) - フェ猫@ツンデレって何?

(ロールプレイとかは先方がやってくれるので、根源力という名のお給料だけもらってこれます、ウホッ)

とのことですが、阿部さんだったら、「おさまりがつかないZE☆」と言うだろうと思い、RPしちゃいました。

ただネタを思いついたので書いただけですけどねキラッ☆

楠瀬さんを病的(釘宮病)にあつかわさせていただきましたが、【だいたいあってる】タグ・・・付きますか?

べっ、別に麻雀SSを諦めた訳じゃないからね・・・もぅ、バカバカ。




レンジャー連邦が誇る【ウホッ、いい男】城華一郎より、ビッテンフェ猫と楠瀬藍に連絡が入った、
至急パイロットとしてリワマヒ国に向かってくれとの連絡であった、
連絡を受け、急いで出立した二人のホープ達の旅路での話である。



「いやぁ〜連邦でゆっくりできるかと思っていたでござるが、いきなり出撃になりもうしたでござるなぁ〜、楠瀬殿。」

「そうだねぇ〜久々に出撃だねぇ〜、何かパイロットが必要だから出撃との事だから、戦闘には巻き込まれずにすむのかねぇ〜。」

「年も明けたばかりでござるから、ゆるりといきたいでござるがなぁ〜。」

「ところで何と言う名前の国に向かうんだったっけ?」

「う〜ん、確かリウマチとかリハビリとか言ってござった様な・・・う〜ん。」

「そうか〜【リッチャン国】だったらよいのになぁ〜。」

「リッチャンコクハ、カワイイクニデスヨ。」



「ところでパイロットが必要との事でござるが、何をどうするのか楠瀬殿ご存じでござるか?」

「いやぁ〜さっぱり、知らないんだな、これが、ほらっ俺ってほとんど幽霊国民みたいなもんだしな。」

「それがしもでござるよ!」

二人「はぁ〜はっはっはっはっはぁ〜!」

ダメダメな境遇を笑い合うホープ達・・・。



「どんな任務でござろうなぁ〜。」

「きっと俺が思うによ!ちょっとつり目の気の強そーな女の子が助けを待っていてな、そこへ颯爽と俺達が助けにいくわけよ。」

「ふむふむ。」

「そして助けだされた美少女が俺達に向かって言葉を投げ掛ける訳よ!」

「ほほう、なんて言葉を?」

「べっ、別に助けに来てなんて思ってなかったんだから、あんた達なんか来なくても、自分達でなんとかするつもりだったんだからね!だから、あんた達に感謝なんかしてないんだから・・・だけど・・・助けてもらったのは事実だから・・・お礼だけは言っておかないとね・・・一応・・・何よ!勝ち誇った顔してー!最初で最後だからね・・・た、助けに来てくれて、あ、ありがとう、、嬉しかったわ、、、
なによー!もぉーバカバカバカーもう知らない!・・・っていわれるんだ俺達はきっと。」

「・・・死ねますなぁ〜。」

「あぁ俺なら軽く三回は死ねるね。」



「ところで何と言う名前の国に向かうでござったか?」

「う、う〜ん?確か・・・【リッチャン国】じゃね。」

彼らの旅路は続く・・・。


[No.4101] 2009/01/08(Thu) 04:28:38
マクロスFを見たこと無い男がマクロスFネタを詰め込んだSSだお (No.4100への返信 / 1階層) - フェ猫

蝶「蝶子でーす!」
七「シナモンでーす!」
春「春雨・・・です・・・。」

三人「三人そろって【レンフューム】でーす!」

蝶「さぁ今年もやります、毎年恒例の!」

七「第37回新春チキチキガチムチホイホイドキッ!ポロリもあるよ!タッグ麻雀大会!」

春「・・・ポロリも・・・ある・・・の?」

七「いーの、いーの、細かい事は。」


蝶「今年も超満員御礼のここ【まーにゃんランド】から私達三人【レンフューム】が実況生放送していきたいと思います。」

七「では早速、選手入場でーす!」



春「昼間は敵に【シー突】夜は旦那が私に【シー突】よ!」

七「サク選手とむつき選手入場でーす!」

サ Σ(゚Д゚)「は、春雨さん!?」

む (>_<) 「なしてばそげなことばらすべ!?」

春「ウフフ・・。」


蝶「さあ、続いての選手は!」

春「ウホッ、いい男に不可能は無い!」

七「城選手と双樹選手の入場でーす!」


城「真さん、ホイホイと私についてきてよかったのかい?」

双「はい!もちろん城さんについていきますよ、だって僕、麻雀やったことありませんから、城さんは大丈夫ですよね?」

城「いいえ、私も麻雀出来ませんよ!」

双 Σ(゚Д゚)・・・


蝶「さあさあ、どんどんいきましょう!」

春「強靭!無敵!最強! 粉砕!玉砕!大喝采!」

七「冴木選手とフェ猫選手の入場でーす!」


フ「城殿と双樹殿が整備士のアイドレスを装着しているでござる・・・しかもツナギの色が・・・。」

悠「あぁ、見間違う事無き青色だな、城さん・・・本気を出すつもりだな・・・。」


蝶「そして最終組は!」

春「タッグ麻雀大会、初出場の二人!」

七「空馬選手と彩貴選手の入場でーす!」


彩「麻雀ですって、やっぱり負けたら脱ぐのかしら、キャー! (。≧∇≦。)」

空「た・・・多分そんな事は無いと思うよ。」

彩「なぁ〜んだ、残念。」

空 Σ(゚Д゚)「さ、彩貴さん!?」


蝶「さぁ全選手の入場が終わったところで、今年の優勝者へのご褒美はなんですか?シナモンさん。」

七「はい、今年タッグ麻雀大会優勝者には、浅葱さん、小奴さんが作った特製もんじゃ焼きが食べられまーす!
実はもう別会場にて調理し始めてもらっています。中継がつながっているんですよね、春雨さん。」

春「リポーターの・・・楠瀬さぁーん。」


楠「にょろん。はいこちら調理中継所から【突撃となりの白い壁】でお馴染みの楠瀬藍がリポートしてまいりたいと思います。」

楠「早速ですが、浅葱さん、今日のもんじゃの出来具合はどうですか?」

浅「キャー!蝶子さぁーん!見てるー!後で蝶子さんだけに特別なもんじゃ焼きもっていくから、待っててねー!蝶子さんLOVE☆」

楠 (゚_゚)・・・。

楠「おっ、小奴さんはお好み焼きを作っていますねー、お好み焼きの上にマヨネーズでなにやら文字をかいていますねぇ〜なになに・・・浅尾きゅん?」

小「ご存知、ないのですか!?
中日ドラゴンズの若きイケメン投手【浅尾きゅん】に決まっているじゃないですか!これぐらい常識ですよ!今から浅尾きゅんに渡しに行って来るから、ココよろしくねぇ〜。」

小奴は部屋をでていきました。

楠 (゚_゚)・・・「以上、中継所よりでした・・・。にょろん。」


蝶「はい、楠瀬さんリポートありがとうございました。」

七「美味しそうでしたねぇ〜。もんじゃ焼き。」

春「お腹・・・すいたわ・・・。」


七「ちなみに最下位のペアにもご褒美が!」

蝶「蝶子作!2009年、夏用の危ない水着モデルになれちゃいます!えっへん!」

む「わ、私はもうモデルやったから大丈夫ですよね?」

蝶「あまいわ!むつきさん!あれは冬用の水着よ!夏用の水着はもっと露出が多いわよ♪」

フ「・・・ほぼ全裸になるでござるな・・・。」

悠「あぁ・・・。」

彩「キャー!ホント!羨ましい〜♪」

空 Σ(゚Д゚)「さ・・・彩貴さん!?」

サ「女性だけ?モデル?」

春「男性も・・・例外は・・・ないわ。」

双「ぼ・・・僕がモデルに・・・お腹を引っ込めないと。」

城「困りましたねぇ〜。私の水着は青ツナギと決めてるんですけどねぇ〜。」




蝶「さて続きましては、オープニングセレモニーとして、シィークレットゲストに歌を歌って頂きます!」

七「動画サイト等で話題、人気、共に独り占めしている、あの!【初音ミロ】さんに今日はお越しいただきましたー!」

春「えっ・・・ホント・・・サイン・・・もらわなきゃ。」

蝶「それでは【初音ミロ】さん、お願いしまーす!」

・・・ざわざわ・・・
・・・ざわ
ざわざわ・・・ざわ

突然のビックゲスト登場でざわつきだす、まーにゃんランド。

悠「誰だよ、初音ミロって?」

フ Σ(゚Д゚)「ご存知、ないのでござるか!?
彼女こそ、代役からチャンスを掴み、スターの座を駆け上がっている、超時空シンデレラ、初音ミロちゃんでござる!」


ミ「キャピピピピピーン!みんなのアイドル、初音ミロりんなりよ〜!今日も私の歌を聞いて、私に洗脳されちゃって下さぁ〜い!」

悠 ΣΣΣ(゚Д゚)「豊国ミロさんジャマイカ!」

ミ「ミッロ♪ミッロ♪にしてあげる〜♪」

双「ミッロ♪ミッロ♪にしてぇ〜♪」

フ「ミーロ(゚∀゚)ο彡゜ミーロ(゚∀゚)ο彡゜」

ミ「洗脳♪搾取♪ミッロミッロり〜ん♪」

城「ミッロ♪ミッロり〜ん♪・・・私としたことがつい・・・。」

空「ヤック・デカルチャー・・・Σ(゚Д゚)ハッ・・・放浪時代にお世話になった国の言語が・・・。」


ミ「ARが無くなっても♪か〜まわない♪あなたと沈みたい♪キラッ☆」

悠「みんな、飼い馴らされてる・・・キラッ☆」

ミ「みんな〜ありがとう〜、また遭う日まで〜キラッ☆」


蝶「はい、初音ミロさん、ありがとうございました〜、ではそろそろ、タッグ麻雀大会を始めたいと思います。」

七「大会の始まりの宣誓を、いつものように城さんお願いします。」


城「え〜コホン、それではそろそろ麻雀大会を
や・ら・な・い・か!」


こうして今年の麻雀大会は始まった、
後編へ(多分)続く・・・。


[No.4104] 2009/01/10(Sat) 05:55:15
空馬さん、先に続き書いちゃったよSS (No.4100への返信 / 1階層) - フェ猫@野菜ジュースは200円〜♪

蝶「さぁ、ついに始まりました、タッグ麻雀大会!」

七「ここで毎回恒例の!シナモ〜〜ン、チェェエック☆」

春「恒例も何も・・・初めてじゃない・・・あなた・・・。」

七「多数の皆様はドンジャラレベルだそうでぇ〜す、麻雀はあまりルール知らない方が多いらしいですよ〜。」

春「・・・麻雀に・・・なるの・・・?」



サ (><) 「キャー!始まったわよ、むつきさん、どうしましょう?」

む「任せて!(゚Д゚)クワッ
こんなこともあろうかと、旦那の書斎から初心者用の本を借りてきたのよ!」

サ「見せて、見せて!」

む「いくわよー!テェケテェケン♪【ふたりエッチ】」

サ Σ(゚Д゚)「そっ、それは夜の初心者用・・・。」

む (><)「違うのー、この本じゃない、こっちの本だったわ、テェケテェケン♪【麻雀基本偏 著者バーナード・ワイズマン】」

サΣ(゚Д゚)「まさかのバーニィ!?」


双「どうしましょう?城さん?」

城「任せてください、私はアカギ読んでますから・・・倍プッシュだ!」(゚Д゚)クワッ

双「・・・倍プッシュはありませんよ・・・。」


悠「おいおい俺、麻雀得意じゃねーから頼むぞ。」

フ「ふぅん☆任せるでござる。それよりも、例の物を用意出来たでござるか?」

悠「ああ、ジェバンニが一晩で用意してくれたよ。」

フΣ(゚Д゚)「流石ジェバンニ!」


空「フフフ、皆、麻雀できないみたいだな・・・今日は俺の勝ちで決まりだな、フフフ。」

彩「占いの本によると、今日、空馬さんは女難の相がでていますねぇ〜。勝負運も、相当悪いみたいですよ☆」

空「なに、その死亡フラグは!俺は運なんかに左右されないぜ!実力で勝利をもぎとってやる!」


そんな空馬の意気込みをよそに、世の中には【ビギナーズラック】と云う言葉があった。


サ「あっ、むつきさん、そろったんじゃない!」
む「本当だツモ!」
む「頭を作って、一から並べて〜、あっ、それロン!」
サ「おんなじ数字を集めて・・・。集めて・・・あっ、ツモってる!」


蝶「おぉっ〜と、以外や以外、序盤戦はむつきサクペアが順調に点数を伸ばしておりま〜す。」

春「序盤に調子が良いのって・・・結構・・・死亡フラグよ・・・。」


フ「やばいでござる。悠殿、例の物を某に射つでござる。」

悠「おっ、わかった、この【ヒロポン】さえ射てば【ガン牌】できるんだな。」

(【ヒロポン】覚醒剤のようなもの。【ガン牌】牌の背中の竹の目や自分で付けた指紋や印により、牌の背中を見ただけで牌の種類が解ってしまうという神業。)


七「おぉっ〜と、なにやら悠さんが、鞄の中から注射器のようなものを取出して、フェ猫さんに射っているぞぉ〜。」


フ「うおおお・・・みwなwぎwっwてwきwたwww。ガン牌できるように・・・なったお、そうなったお。」
悠「よし!いけぇー!」
フ「はぁん、ホイホイチャーハン!ロン!」
フ「仕方ないね、ツモ。」
フ「最強☆トンガリコーン☆ツモ☆」


蝶「ここで悠フェ猫ペアの追い上げ〜、一気にトップに踊りでたぁ〜。」



空「くっ、地元では麻雀の鬼・・・そう・・・麻雀鬼と呼ばれた私がこうまで素人とシャブ中におくれをとるとは・・・。」

彩「えっ・・・空馬さん、ジャギ様って、呼ばれていたんだ!」

空Σ(゚Д゚)「ジャギ様じゃなくて、麻雀鬼!」

彩「(゚∀゚)ο彡゜ジャギ様!(゚∀゚)ο彡゜ジャギ様!」

空゚・(ノД`;)・゚・「お、俺の名を呼んでくれ!」



城「そうですか・・・空馬さんがジャギを名乗るならば、致し方ありませんねぇ〜。」

空Σ(゚Д゚)「名乗っていません!」

城「この城華一郎、現北斗神拳伝承者として見過ごす訳にはいきませんねぇ〜。」(゚Д゚)クワッ

空「ちょwww城さんwww」


蝶「し・・・城さんが遂にツナギのホックに手を掛けたー!。」

テーレッテー♪テェレテェーテェレテェ♪テェレテェレェッテェー♪

七「あ・・・あの闘気は間違いなく、ケンシロウから阿部高和に伝承され、それ以降は誰も会得出来なかったと言われた・・・北斗神拳!!!」

春「しいて欠点をあげるなら・・・上半身を・・・あらわにしなければならないことね・・・。」


城「ウホッ、ツモ!」
城「命は投げ捨てるもの・・・ロン!」
城「ジョインジョイン、ツモ!」

双「流石!城さん!一気に逆転だぁー!」

ピンポン♪パンポーン♪
「双樹真さま〜双樹真さま〜、お連れの豊国ミロさまが迷子になりましてぇ〜、事務所で身柄を拘束しておりますのでぇ〜至急に(ry。」

双Σ(゚Д゚)「最後まで喋れよ!」

双「すみません、城さん、なにかわかりませんが、事務所に行ってきます。」

城「南斗乱れる時・・・北斗現れる・・・時は正に世紀末・・・罠の匂いがしますが・・・。」

双「罠があろうと、なんだろうと、ひょっとしたら本当にミロさんに何かあったのかもしれません、だったら何が待ち構えていようと、向かうのみです!」

城「流石【連邦の聖乙女】と言われた真さんだ!気を付けて。」

双Σ(゚Д゚)「呼ばれた事無いですwww」



蝶「さぁ〜事務所へ向かった真さんの運命は・・・麻雀の行方は・・・後少しで終わりそうなのに、ここで区切った作者は続きを書くのか・・・怒涛の最終回へ続く・・・のか?」


[No.4205] 2009/01/24(Sat) 07:52:06
ふぇっふぇっフェ猫さんのSSに乗っかる形だよ☆御無礼 (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@(>ш<)

ジャラジャラジャラ─

─ついに始まりました…─

テレビの音と洗牌の音が響く一室で彼らは集っていた。一見ただのサラリーマン風の男に強面の男やチャイナを身に纏う女に深々とフードを被る謎の人物。フィクションノート達の麻雀大会の裏でもう一つ麻雀の試合が行われようとしていた。

「なかなか楽しそうじゃないか。」
「私達も始めましょう。」
卓のボタンを操作して牌を並べさせる。賽子もボタン操作で振る。
昔は牌は手積み、賽子も手で振る。バイニンと呼ばれた人種はそこに技(イカサマともアートとも言う)を用いて麻雀を生業としてた。そしてその技を封じるために発展したのがこの自動卓だった。
ならば、この現代に、その手の人種はいなくなってしまったのか?
いいや。彼らは今も確かに存在する。

東一局。
強面の男のダブルリーチから麻雀は始まった。

─テェケテェン!─
─違うの〜…─

麻雀が強い人間はまず牌の流れを読むのが上手い人間だと思う。こう来たらこれを切る。あれが来たらこれを切る。これが出来てくると麻雀は強くなってくる。でもこれは全体で言えば2割〜3割程度だろう。残りの7割以上の【何か】に麻雀の強さはあるのだ。
【強運】筆者が足りないモノ。以前筆者はとある社長と打った事がある。結果は手も足も出なかった、と言うのが的確だ。天和(テンホー)を初めて見た日だった。自分の運とはモノが違う。この男はそんな男だった。
結局、4順目でツモあがり。ただのダブルリーチのみの手が、裏ドラが乗り跳満となった。

「いまいちだ。」
(十分だと思います)
「飛ばすなぁ。」
「次、次〜」

【計算力】相手の捨て牌などから待ちを予想する。これはだいたい皆できるのだが、相手の役や手牌を計算で予想するのは非常に難しい。しかも三人分。だが、これが出来るようになったら自分の所に来る牌の確率が見えてくる。攻守共に強くなるのだ。ただし、意図的に捨て牌などで騙す人間もいるので注意が必要だが。

東3局
─おーっとここでなにやら悠さんが注射器を、プー…─
─しばらくお待ちください…─

「なーにやってんのかしら?」
「私、ヒロポン初めて見ました!」
「おっとツモ。ごっとー(500点、1000点)」
「あっ、流されちまった」

強面の男の運の流れを遮るようにフードの男が早アガリで場を流した。強面の男が伏せた手はすでに高めでテンパイしていた。

【観察力】一見わからないが、牌の細かい傷や汚れ、牌の大きさ等でガン牌が出来る。卓上以外からの情報はたくさんある。表情や仕草、声のトーン、捨て牌の強さ、そして場の流れ。自分がどう立ち回るかを決めるヒントになるのだ。自動卓になったとは言え、ぶっこ抜きやツモずらしなど技を使う人間への対処にもなる。

「突っ走るのは許さないよー」
「ちっ」
「あたしの親来た♪」

チャッ、チャッ、チャ…

─南斗乱れる時、北斗は…─

【勘】少しオカルト的な所もあると思うが、勘が異常に鋭い人間がいる。待ちを選ぶときに大抵残り枚数の多い方を選ぶ。だが、【なんとなく】残り1枚の方を選んだりしてそれが当たる時がある。三色同順を【なんとなく】で崩して振り込みを回避したりすり。【なんとなく】来そうな牌を集めてたらノーミスで四暗刻をあがったりする。後ろで見ていて一番不可解でそれでいて驚かされる。

南1局

「ロンだ。24000」

カンドラが乗り裏ドラまで乗ったリーチW南ドラ8がフードの男に直撃した。

「あちゃぁ!ドラ爆かっ!ハコでーす。」
「ドラまでは計算でませんね。」
「降りててよかった☆」

結果としてはサラリーマン風の男とチャイナ服の女は特には無理をせず、フードの男が強面の強運を変えようと四苦八苦するが運に飲み込まれてしまった形だった。
ここで切り良く(無理やり?)半荘終了したが…

─…怒涛の最終回に続くのか!?────


[No.4231] 2009/01/26(Mon) 02:27:29
まっこ☆まっこ☆り〜ん☆ (No.4100への返信 / 1階層) - フェネ子

そう・・・私はどこにでもいる普通のフィクショノート・・・のはずだった・・・その日の朝、目覚めるまでは・・・。

双「ふぁあ〜あ!よく寝た!しかし、こんなぐっすりと寝れたのは久しぶりだなぁ〜。けど何か胸が苦しいな〜・・・。」

Σ(゚Д゚)

双樹は絶句する・・・何と朝、目覚めたら体が女性のものに変わっているではないか・・・。

双「ふがふがふがぁ〜。」

自分の大きくなった胸を触り絶句し、自分の大切な【ナニ】を触ろうとするが・・・。

双Σ(゚Д゚)「なっ・・・ない!【ナニ】が無い!?」

双樹は混乱しながらも、政庁内の隣人であるフェ猫の部屋に向かった。

双「フェ・・・フェ猫・・・Σ(゚Д゚)!?」

そこに居たのは彼・・・いや失礼、【彼女】の知るフェ猫ではなかった、妙齢の女性がそこにいたのである・・・。
しかも自分の胸を、もの珍しげにまさぐっていた。

フ「あらっ、まこちゃん。おはよう!自分の胸を揉んでもあまり面白くないわねぇ〜。」

そう言いながら、視線はまこちゃんの胸に釘付けである。

フ「連邦の新型は化け物か!?」

双樹は舞踏子の予知能力をいかし、直ぐ様、フェネ子の部屋から脱出する。

フ「ちょっと揉ませてぇ〜!」

双「だが断りまぁ〜す!」

双樹が次に助けを求めたのは彼女が最も頼りとする、城華一郎だった。

双「じょうさぁ〜ん。Σ(゚Д゚)!?」

現実はまたしても彼女の期待を裏切った・・・。
彼も彼女に変貌していたのであった・・・。

城「あら、まこちゃん。いつもいつも助けてあげると思わないでね・・・でも今回だけは特別に助けて・あ・げ・る!」

双「じ・・・実はかくかくしかじか・・・。」

双樹は多少の不安を抱きつつ、事情を説明した。

城「なるほど・・・事情は判ったは・・・でも条件があるの・・・。」

双「じょ・・・条件とは・・・。」

男性時代にはだされたことの無い条件と言われ、嫌な予感が的中するであろう事を確信しながら、重心を出口の方に移す。

城「その余分に発達しすぎた胸の脂肪を触診させて☆」

双「いやーん☆まいっちんぐ☆」

双樹、全速で脱出。


誰に頼ればいいんだ・・・。
そんな想いを抱きながら双樹は廊下を全速力で逃げ回る。

ピンポンパンポーン「艦橋で朔太郎が倒れました。」

双Σ(゚Д゚)「誰だよ朔太郎って!そして艦橋ってどこだよ!」


そうしてたどり着いたのが楠瀬の部屋だった。

双「楠瀬さ・・・。」

もう双樹もなれたものだ、中に眼鏡美女がいても驚かない。

楠「あら、まこちゃん。どうしたの?同じ眼鏡美女でもリッチャンじゃないわよ。」

楠「ところで、まこちゃん。非常ーに、けしからん胸をしているわね。」

双Σ(゚Д゚)「な!?」

条件反射的に胸を両手で隠す双樹。

双「さよならー!ノシ」

楠「あっ、ちょっと、私のと比べ合いましょう。」



三人に増えた追っ手から逃れる為に全力で逃げまわり続けている双樹の前に、一人で修行をしている男性を見かけた。

浅「か〜め〜は〜め〜波ー!」
リ≡≡≡≡●

浅「おぉ、やっぱ男の体だと違うなぁ〜!あっ、まこちゃ〜ん。なにやってんの〜?」

双「浅葱さぁ〜ん、助けて〜。」

浅「空彦って読んでくれればいいよ!」

フ「鬼ごっこですわよ!」

城「空彦さんも加わりませんか?」

楠「じにあより・・・けしからん胸だな・・・まこちゃん・・・。」

浅「楽しそうだな〜、オラも混ぜてくれ〜。」

双Σ(゚Д゚)「ちょwww!?」


さらに増えた追っ手をまこうと走るまこちゃん。


む「テェッテェテェッテェテェッテェテェッテェ♪細マッチョ♪」

む「テェッテェテェッテェテェッテェテェッテェ♪細マッチョ♪」

ご機嫌で歌っている男性が一人。

む「遂に憧れのマッチョ体質になれたわ♪誰かに見せびらかしたい・・・。」

飛んで火に入る春のまこ。

双「あ〜れ〜。」

む「あっ!まこちゃんが走ってきた!まこちゃ〜ん。見て!見て!俺のムキムキなこの体!見て!見て!」

双「ごめんなさ〜い、今、取り込み中でぇ〜す。」

む「えぇー、そんな事言わずにー見てよこの上腕二等筋〜。」

睦夫がパーティーに加わりました。


ピンポンパンポーン「またまた艦橋にて朔太郎が倒れました。」

双「・・・・・・また・・・。」


走るまこの前に、大きな鏡の前でポーズをとっている男女が・・・。

悠「ラーメン、つけ麺、僕イケメーン!」

彩「これか?これか?これか?」

悠と彩貴だった。
二人は性転換していないことに、安堵しつつ、まこは話しかける。

双「悠さぁーん、彩貴さぁーん、助けてー!」

悠「あっ!真さんがまこちゃんになってる!」

彩「いいなーいいなー!私達が性転換できずにいるのにいいなー!」

悠「し・・・しかも、カ・・・カワイイ・・・☆」

彩「わ・・・私より大きい・・・。」

悠「好きだーー!」

彩「許さなーい!」

双「あぁ・・・やっぱりその展開なのね・・・。」



必死に逃げ回るまこだがついに・・・。

城「そこまでだ!!」

双Σ(゚Д゚)「なっ!先回りされただと・・・。」

城「べ・・・別にまこちゃんの事ばかり考えていたから、どこに行くか解って先回りしたわけじゃないんだからね☆か・・・勘違いしないでよ☆」

双「くっ!」

前方を塞がれ、後方を振り返るが・・・。

フ「揉むぜ〜揉むぜ〜超揉むぜ〜!」

楠「ぶるんぶるんしよる!・・・けしからん!」

浅「オラ、ワクワクしてきたぞー!」

む「カッチカチやで!」

悠「まこちゃーん、俺だー、結婚してくれー!」

彩「元、男のくせして、元々女の私より大きいなんて・・・・・・許せる!」

ピンポンパンポーン「艦橋に向かう途中で朔太郎が倒れました。」


双「も・・・もうダメか・・・。」

?「こっちだ!まこちゃん!」

急に横の扉が開き、まこは体を部屋の中に引きずりこまれた。

?「この部屋に来れば安心だ!簡単にはこの扉は破られないだろうからね。」

双「あ・・・ありがとうございます。」

双樹は見慣れない男にお礼を言いながらも、その男がどことなく【あの人】に容姿が似ているのが、【確定的に明らか】に不安だった・・・。

双「と・・・ところであなたは・・・。」

蝶「なぁ〜に、言ってるの、藩王の湖蝶に決まっているじゃない!」

双「も・・・もう駄目ポ・・・。」
バタッ _〇□=


蝶「な〜んちゃって!みんなで真さんへのエイプリルドッキリでしたー!真さんが寝ている隙にピドポーションを飲ませて、後のみんなは特殊メイクでしたー!」

蝶「大成功ー!・・・って・・・あれ?真さん・・・そんな泡吹いて倒れなくても・・・白目で・・・息してないじゃんΣ(゚Д゚)!?」

蝶「誰かー!衛生兵ー!」


ピンポンパンポーン「藩王の部屋でまこちゃんが倒れましたとさ・・・ちゃんちゃん。」


[No.4826] 2009/04/05(Sun) 17:50:24
アカダノサクヤの樹の下で (No.4100への返信 / 1階層) - しん@携帯でミスるとこんなぶざまな削除二連発にorz

月の夜、桜の下。
戯れる二匹の猫士と、その隣で呆けたように桜を見上げる青年。
どこかから歌声が聞こえている。

「風流ですねぇ…」

大柄な青年、双樹が完全に緩みきった顔で呟く。

「確かにな…」

背中にぺったりと張り付くタンジェリーナに溜息をつきながらドランは呟いた。

「ふーりゅー?ねーねーしんにーちゃん、ふーりゅーってなぁに?」

聞き慣れない言葉に興味をそそられたのか、ドランの背中に張り付いたまま双樹を見上げて首を傾げるタンジェリーナ。

「うーん、風流って言うのはね、中世日本で発展した高揚した美意識の……って言ってもピンとは来ないよね。俺だってそうだもの。」

ぽへーと笑って言う双樹。

「俺は、贅沢で素敵な物って言う意味で風流って言葉を使ってるんだ。」

「ぜいたく?」

「そう。贅沢。例えば今の景色なら…」

双樹は目の前の景色に視線を移す。

「視界を覆う程の桜吹雪、綺麗な夜月。遠くからはジョニ子の歌声、ゆったりとした時間。」

双樹はドランとタンジェリーナに目を移し、ぎこちなくウィンク。

「可愛い戦友二人が傍にいるしね。」

そう言ってやりすぎたと思ったのか顔を真っ赤にして手で顔を扇ぐ双樹。
ウィンクはダメだウィンクはとか呟きながら頬をぺしぺし叩いている。

「にゃーよくわかんないー」

そう言ってぴたーとドランの背中に張り付くタンジェリーナ。

「気にする事はない。そのうち心が自然と理解するだろう。」

そう言うドランの言葉に頷く双樹。

「そうそう。まぁ今のタンたんにはこっちの方が判りやすいかもね。」

にこにこと横に抱えたバスケットから何かを取り出す双樹。

「にゃー!おだんごー!!」

ぴょんとドランの背中から飛び降りて、それに駆け寄るタンジェリーナ。
それは三色団子だった。
つるんと薄紅、緑、白に輝く団子が数本、お盆に載せられている。
タンジェリーナの尻尾がぴーんと天を指し示していた。

「ねぇねぇ!これ食べていいの?食べていいの?」

目をキラキラさせながら言うタンジェリーナに苦笑する双樹とドラン。

「いいよ。ただあんまり勢いよく食べすぎて喉に詰まらせないようにね。」

タンジェリーナはわーいと一本団子を抱えてかしかしと食べはじめる。

「花より団子とはまさにこの事だな。」

目を細めてタンジェリーナを眺めるドラン。

「時にはそれもまた風流なのかなって思いますけどね。ドランもどうです?桜、よもぎ、あんこ入りとちょっと凝ってみたんですけど。」

お盆をするするとドランに差し出す双樹。
ドランがふるふると身体を揺すらせると、そこに着流しを見に纏った男性が現れる。

「戴こう。花より団子もたまには悪くない。」

ドランはお盆から一本団子を摘みあげた。

「ずっと…こんな毎日が続けられたなら…良いんですけどね…。」

遠くを見るような瞳で桜を見上げながら双樹は呟く。

「それが叶わない事はお前達が一番良く知っている筈だろう?」

桜を見上げたまま、ドランは視線を逸らさない。

「えぇ。確かに今はその通りです。」

双樹はポットのお茶を湯呑みに注ぐと、タンジェリーナとドランに差し出した。。

「でも…それでも…未来がそうであるように。未来がそれを許容出来る場所になれるように戦う人達を俺は知っています。だから…!」

「…だったら」

ドランが双樹の言葉を遮った。

「…だったら、出来ることをするといい。目の前にある事。今のお前に出来ることを。背伸びの必要は無い。焦る必要も。」

お茶をすすり、苦笑するドラン。

「もう少し仲間を信頼してやれ。自分一人で何かしよう何て奴はただの傲慢だろう?」

その言葉に少し考える双樹。
さやざやとした桜のざわめきを伴奏に、ジョニ子の涼やかな歌声が辺りに響く。

「そうですね…もう少し周りを見られるようにならなくちゃいけませんね。」

笑って団子を摘みあげる双樹。
それを見てドランはまた桜に視線を戻した。

「ねーねーしんにーちゃん。」

二人の間で団子をかじっていたタンジェリーナがすでに串だけになったそれをふりながら双樹を見上げて言った。

「ん…タンたん、どうしたの?」

不思議そうにタンジェリーナを見る双樹。

「もういっぽん貰っていーい?」

両前足を合わせて上半身を傾けるおねだりタンジェリーナを見て笑う双樹。

「いいよ。今日は好きなだけ食べるといい。」

双樹はタンジェリーナのおでこをくしくし撫でると団子を載せたお盆を差し出してやる。

「わーい!」

早速団子を抱えるタンジェリーナ。
大きく口を開けた所でぴたりとその動きを止めた。
首を傾げる双樹。

「わかった!」

尻尾をぴんと天に延ばして双樹を見上げるタンジェリーナ。

「これがふーりゅーなんだね!おだんごたべほうだい!!」

そういうと満面の笑みで団子をかじりはじめるタンジェリーナ。
意味を捉えられずぽかんとする双樹。

「なるほど…贅沢で素敵な物には違いない。」

ドランがくっくっと笑いながら身体を揺らす。

「確かに…そうですね。」

ドランの言葉に双樹は必死に笑いを堪えながら涙を拭う。

「にゃ?」

首を傾げるタンジェリーナの両脇で抑え気味の笑い声はそれからしばらく響いていた。

月の夜、桜の下。
戯れる二匹の猫士と、その隣で呆けたように桜を見上げる青年。
どこかから聞こえてくる歌声に笑い声が重なって。
さやさやと散る桜吹雪が連邦の一夜を飾っていた。


[No.4847] 2009/04/08(Wed) 00:31:43
小雲散策記 (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@小雲の紹介文書こうとしてなんか別のになってる

「あれなにー?」
「ナツメヤシの木だよ。」
「あれなにー?」
「あれは飛行機雲だよ。」

仲の良さそうな親子が手を繋いで北都のメイン通りを歩いている。ジェラートアイスを買って貰って上機嫌な子供は父親に質問攻撃をしていた。

「あれはなにー?」
「ん?さっき教えたろ?ナツメヤシの木だよ。」
「ちがうー。あれだよー。」

子供が指差した先はナツメヤシの木の上。真っ白な毛玉が乗っかっていた。

「(なんだあれ?)」
「くもなの?あれはなにぐも?」
「雲か。雲が空から降りて来て…なわけないな。」

しばらく見ていると毛玉から尻尾が出て、耳が出て、粒羅な瞳が開いた。

「あぁ、猫だ。」
「ねこ?」
「そう。にゃんこだ。」
「へー!ねこにゃんこ〜。」

毛玉から猫に格上げになったのは最近レンジャー連邦に来た猫士の小雲だ。
自分が注目されているのに気付いた小雲は恥ずかしそうに尻尾を振って応え、親子がいる反対側に木から降りて居なくなった。

小雲はとても暑がりな猫だ。だから彼は非番の時はいつも『一番涼しい場所』を探している。 ここ最近のお気に入りは空調の効いた格納庫だったのだが、今はラスターチからヴァローナへの改装が行われている為に他の場所を探す事にしたのだ。

「(見られやすい…40点)」

これは居心地ポイント。彼独自の採点基準を元に彼の中で点をつけているのだ。

//※//


「またっスか?」
「そう。例の会議室。がんばってー!」
「ふーう、行ってきます。」

彼は本来はガラスを嵌め込むタイプの窓を作る仕事を請け負っう窓職人。ショーウィンドウやオフィスの顔とか、彼にかかればお洒落な感じにしてくれる腕っこきの職人だ。ただ、何年か前よりほぼ定期的に来る仕事があった。

「ここやるの何回目だろ…。まぁいい。ちゃっちゃとやろう。」

彼が何回も来てる場所。それはフィクションノート達が集う会議室だ。 もう何回も何回も窓が割られその度に窓を張り替えて、その余りの多さに割れた窓でステンドグラスが出来る程だった。

「(最近は簡単に付け替えが出来るように改装したから楽なんだけどね。)」

慣れた手つきで作業を進め、一時間も経たない内に張り替えは終了していた。

「はい終わりー。サラサラサラっと。」

伝票を書いていつもの様に窓から放り込む。
さぁ帰ろうと何気なく上を見るとバレーボール位の綿が窓の梁の所に乗っていた。

「っ…と、と。」

ビクッとなって梯子から落ちそうになった。姿勢を安定したところでもう一度見る。

「でっかいタンポポだなーって違うかっ。」

白くて綺麗なほわほわ。多分寝ている猫だ。思わず触りたくなったが手が届かない。っと言うより、どうやって登ったんだ?

「…???」
「ぐぅ…(暑い。20点。)」


//※//


幻想的で見る者の心洗わせる日没が終わり、空と海と地の色が一つになる。翡翠はいつものように政庁の屋根の上でその様子を見ていた。

「(いつ見ても変わらぬ光景と少しずつ変わっていく街。遠くから見れば同じようなものかもしれんが近づけばはっきりとわかる。私の目にはあの太陽は変わらない様に見えるが太陽からも此処は変わらなく見えるのだろう。)」
「ぐぅ…」
「(そしていつの間にか私の尻尾に抱きついて寝ているこいつをどうすればいいのだろう?)」
「ぐぅ…」
「(動けなくなってしまった)」
「すー…(夕方なら静かで涼しい)90点…」
「90点?起きてるなら離せ。」
「ぐぅ…」
「(誰か…)」


//※//


ガチャリ。

「こんばんは〜。ハイ、これお土産です。」
「あらー!マッサージ屋さん!ありがとう。んん?カツラの色変えたの?」
「(ビクッ)な、何を言ってるんですかぃ!俺は空馬であって流離いのマッサージ士なんかではありませんてすじょ。そ、それに今日はカツラなんか…」

もふもふ

「なんだ…!?
こ、こらー!小雲!男の脳天に乗るとは何事だ!男の体で一番目か二番目に繊細な場所なんだぞ!」
「ん…。5点」
「なんだとー!?」

ばりーん

「喧嘩両成敗!喧嘩はだめですよ!」
「あぁ!しんさん!そこ張り替えたばっかりー!(カキカキ)」
「…!(きしゃー)」
「…!!(ぎゃーす)」
「…(3点)」
「…!!(ムッキー)」
「…!(じりりりり)」

…………。





小雲の冒険は続く。そこに涼しい場所が有る限り〜


[No.4972] 2009/04/21(Tue) 10:54:43
【図書館移動済】短編『唇の雪』 (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

掲示板の容量対策のため全編削除しました。
っ 図書館で見てね〜

http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/513.html


[No.5385] 2009/06/30(Tue) 23:28:32
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

この記事は投稿者により削除されました

[No.5386] 2009/06/30(Tue) 23:31:01
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

この記事は投稿者により削除されました

[No.5387] 2009/06/30(Tue) 23:32:58
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5388] 2009/06/30(Tue) 23:35:18
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5389] 2009/06/30(Tue) 23:39:12
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5390] 2009/06/30(Tue) 23:42:19
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5391] 2009/06/30(Tue) 23:47:28
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5392] 2009/06/30(Tue) 23:48:47
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5393] 2009/06/30(Tue) 23:50:32
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5394] 2009/06/30(Tue) 23:53:09
[削除] (No.5385への返信 / 2階層) -

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[No.5395] 2009/06/30(Tue) 23:55:19
三沢光晴追悼SS (No.4100への返信 / 1階層) - フェ猫@題名と内容は一切か(ry

【序】並のクオリティで【ファースト】をリメイクしないかなぁ・・・声優が今以上減る前に・・・。

作者談




フ「遊殿〜、またいつものように遊びに行こうではござらんか。」

悠「今は仕事が忙しいから遊びになんて行けないよ!それに字が違う!!!」

フ Σ(゚Д゚)「なっ!私と同じく藩国内ニートの悠殿が忙しいとは!これイカナ?」

む「悠さんは私と一緒に【データベースの整理】なんです!だからフェ猫さんと遊んでいる時間なんかないんです!!!」

フ「やや!むつき殿!ホ・・・【ホワイトベースの整備】でござるか!?」

悠「ベースしか合ってねぇ〜だろ!」

む「そうね・・・連邦に必要不可欠な事と云う点については、【データベースの整理】も【ホワイトベースの整備】も似たようなもんね・・・。」

悠 Σ(゚Д゚)「えっ・・・むつきさん・・・。」

フ「あいや判り申した!整備番長殿、悠殿、【ホワイトベースの整備】しかとお任せしたでござる!」

む「任されたわ!」

悠「えっ!えぇーー!?」



空「で、僕のところに来たんですか〜。」

フ「空馬殿が暇だろうと思ってでござるよ〜、あ〜そこそこ。」

空「べ・・・別に暇じゃないんですよ、整体の仕事が忙しいんですから。」

フ「えらい流行っているようでござるな?もうちょい上を・・・。」

空「えぇおかげさまで、昔グランドラインで整体していた時の常連さんが有名になったらしくて、その有名人が通った整体・・・と云う事で今の僕の【アフロ整体】が評判になっているんですよ!」

フ「へぇ〜グランドラインの辺りで有名人になるなんて、相当な人物だねぇ〜。その有名人を整体してみて、なんか気付いた点はあったでござるか?」

空「そうですね〜、まさに全身ゴムって感じで、整体の手応えななかったですけどね。」

フ「へぇ〜、あっ!そこ!イィ、イィ・・・。」


フ「アッーーーーーーー!!!」


空「へ・・・変な声をあげないで下さいよ!扉の向こうに順番待ちのお客さんがたくさん待っているんですから。」

フ「すまんでござる。つい、気持ち良かったから・・・けど、ノンケじゃないお客が増えるかもしれんでござるよ。」

空「ノンケじゃない方専用のサービスなんてしていないから困ります!はい、フェ猫さん終わりましたよ。」

フ「アッー!気持ち良かったでござる。代金はいつものように出世払いで!」

空「はいはい、期待せずに待ってますよ。」





?「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪」

フ Σ(゚Д゚)「この熱情的な歌い方は・・・。」

楠「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪【熱情の律子】改め【熱情の楠瀬】ですよ。こんにちはフェ猫さん。」

フ「こんにちは楠瀬爺や。相変わらず絶好調でござるな。」

楠「私は絶好調なんだが、全国的に【アイマスの筐体】が減ってきていると云う情報を得たんだが・・・。」

フ「私の近所にあったゲーセンからも(○○尾西店)いつの間にか無くなってしまったでござるよ。」

楠「まったく嘆かわしい事態だが、いつまでも悲しんではいられない。」

楠「去るものもいれば、来るものもいる・・・最近レンジャー連邦に新国民が来たらしいよ。」

フ「そうでござるか!じゃあ早速ネタにしないと・・・。」

楠「新国民は石丸春丸さんと言うらしい・・・石丸さんも早くチャットに顔だすか、BBSに自己主張しないと、この【ウホッ、いい中年】にネタ性格付けされてしまうぞ・・・あの人の様に・・・。」

フ「そう、あの人の様に・・・。」




悠「ヘェーラロロォールノォーくっしゅん!」

む Σ(゚Д゚)「く・・・くしゃみですか?」

悠「くしゃみと言えば、くしゃみですが、何か得体の知れない悪意を感じる・・・。」

む「そうですか・・・何か悪意が連邦に迫って来ているのかしら・・・尚更ホワイトベースの整備を急がないと!」

悠「データベースです!!!」



楠「ところでProject Divaというのはご存知かね・・・。」

フ「えぇ・・・最近しりましたでござる・・・。」

楠「時代が我らに追いついた!!!」(゚Д゚)クワッ

フ「日本はまさに始まったでござる!!!」(゚Д゚)クワッ




彩「しゃーんなろー!」

フ「お!元気ハツラツ、オロナミン彩貴殿ではござらんか。」

彩「聞いぃーてぇーよ!フェ猫さん!私、マイルが足りないのよ!マイルがほすぃ〜のよ!」

フ「は・・・はぁ・・・。」

彩「マイルを貯めて、ヤガミ様と【ピィー(18禁)】や【ピィー、ピィー(18禁)】で【ピィー(18禁)】したいのよ!」

フ Σ(゚Д゚)「は・・・はい・・・。」

彩「ていうか、むしろ【ドッカーン!(25禁)】して【ドドドドド(32禁)】な状態になり【チュドーン(40禁)】したいわ・・・。いや、するべきよ!!!」

フ (@_@;)「・・・・・・。」

彩「だって私!IMPCの社員よ!私に(I)マイルを(M)プリーズ(P)下さい(C)よ!」

フ「・・・・・・。」
 返事が無い・・・ただのし(ry

彩「だけど!元気があればなんでもできるんだわ!しゃーんなろー!!!」

彩貴は走ってどこかにいってしまった・・・。
フェ猫は気を失ったまま、その場に立ち尽くしたままだった・・・。




時は流れ、場所は摂政の家・・・。



フ「いやー助かったでござる城殿。」

城「いえいえ、たまたま通りすがっただけですから、一体何があったんですか?」

フ「うぅ・・・思い出したくないでござる。」

城「相当な思いをしたんですねぇ〜。さぁ、私のスペシャルランチでも食べて元気をだして下さい。」

フ「お!城殿の手料理でござるか。」

城「しかも今日のは新作です。【生きカカオ】を生きたまま【自主規制】して、【自主規制】を隠し味に【自主規制】まで詰め込んだ、私の力作です。」

フェ猫の背中に汗が流れる。

フ「あ・・・味見はしたでござるよな・・・。」

城「いいえ、今から初めて食べますよ。」(゚Д゚)クワッ

フェ猫の全身が鳥肌になる。

城「今から持ってきますね。」


城が持ってきた料理は、まだ「ぐつぐつ」煮えていた、時折動く【生きカカオ】・・・そして呻き声・・・。

フ「す・・・すまん城殿!急用を思い出・・・。」

言い終わる前に、フェ猫は家を飛び出していった・・・。

城「あ〜あ、仕方がない、1人で食べますか・・・二人分あるのになぁ〜。そうだ、真さんでも招待するか!」


余談だが、次の日、城華一郎と双樹真は政庁の仕事を休んだという・・・。




浅「う〜ん、何かいいアイデアないかなぁ・・・。」

フ「浅葱殿、悩み事でござるか?」

浅「うん、そうなの、最近連邦の皆がもんじゃを沢山食べてくれるのはいいんだけど、皆の味覚がレベルアップしちゃって、ちょっとやそっとのもんじゃの新製品じゃ、誰も驚いてくれないんだよねぇ〜。」

浅「誰か、皆があっと驚く様な斬新で【誰も見たことが無いような】料理のアイデアを教えてくれないかなぁ〜。」

フェ猫の中で、絶滅寸前の良心と、フェ猫をほぼ支配している好奇心が戦っていたが・・・。

フ (´∀`)「丁度、今、NOW Time!城殿が新作料理に挑戦しているらしいでござるから、行ってみたらどうでござろうか。」

浅「えっ!本当に!ありがとうフェ猫さん、城さんの家に行ってみるわ!」

浅葱はそう言い残すと、足早に駆けていった・・・。

フ「・・・・・・ゴッドスピード・・・浅葱空・・・恨むならば私ではなく、シェフに・・・。」


余談だが、次の日、浅葱空は・・・(ry。



?「ゥルルァッタッタッ!!ゥゥルルァァッタッタタ!!」

馬の被り物をした全身包帯付くめの女性が一心不乱に踊っている。

フ「春雨殿、なにをそんなに一生懸命に踊っているのでござるか?」

春「・・・追悼・・・よ・・・。」

フ「確かに・・・我々が失ったものは大きいでござる・・・。」

春「・・・偉大な・・・エンターテイナー・・・だった・・・わ・・・。」

フ「全世界のニコ厨も悲しんでいるでござる・・・。」

春「・・・何故・・・なの・・・中村イネ・・・。」

フ Σ(゚Д゚)「そっちかい!!!」





蝶「ちょっと〜聞いてよ〜フェ猫さ〜ん!」

フ「お!私を必要としているでござるか。」

蝶「皆、忙しそうだから、暇そうにしているフェ猫さんぐらいにしか愚痴をこぼせれないのよ〜。」

フ (・・;)「・・・・・・と・・・とりあえず聞くでござる・・・。」

蝶「ねぇねぇ、私って政治家として頼りないの?やっぱり頼りないの?心細くなるのかな?」

フ「まぁ・・・敢えて言わせて頂ければ・・・頼りないでござるな。」

蝶 ΣΣ( ̄□ ̄;)「どっ・・・どこを直せば・・・。」

フ「ズバリ言うなれば、【胸】でござるな。【胸】に説得力が無さすぎるでござる。」

蝶 ・・・_〇□= パタッ

サ「いーけないんだ、いけないんだ、フェ猫さんが蝶子さんをいじめてるんだ。」

フ Σ(゚Д゚)「ち・・・違うでござる、サク殿、私は客観的に蝶子殿の欠点を・・・。」

サ「じゃあ胸なんてどうすればいいのさ!プンプン!」

フ「よくぞ聞いて下さった!世の中には【PAD】というものがありまして・・・。」

蝶「ふんふん・・・それで・・・。」

フ「我々の世界では【大胸筋サポーター】というでござるが・・・これをつければ【ボン!】でござる【ボン!】で。」

サ「ぼ・・・ボンだと!!!」

フ「たゆんたゆんにはなりませんが、【ボン!】と!」

蝶「フッ・・・道化だな・・・。」

サ「シ○ア総帥!!!」

フ「あなたは我々の様にパイロットだけをやっていればよいだけでは(ry」

フ「で、ですな、いきなり大きくなるのも怪しまれるので、いっその事、逆説的に【水着大会】を開いてしまい、国民の皆様に【説得力のある胸】を観てもらうのが宜しいかと、フェ猫爺やは思うでござる。」

蝶 Σ( ̄□ ̄;)「wwwwww!!!」

サ「水着だと余計にばれないかしら・・・【大胸筋サポーター】。」

フ「ご安心めされい、ばれやすいからこそ、あえて完璧な偽装をして、【水着大会】に出場するのでござる。そこら辺の偽装はおそらくミロ殿任せれば、完璧な【ボン・キュ・ボン】な蝶子さんを作成可能かと・・・。」

サ「あれ?ミロさんなら、最近はシナモンさんと、【七周のミロミロ動画を感じてみた!!!】を制作中で忙しいはずよ。」

フ Σ(゚Д゚) ・・・orz

蝶「フェ猫さんはいつも【水着大会】開催を望んでいるみたいだけど・・・開催したら設定文書いてくれるの?」


フ 「だが断る!!!」(゚Д゚)クワッ

蝶、サ ヾ(`Д´)ノ「コラーーー!!!」


[No.5420] 2009/07/04(Sat) 07:35:23
チャットでの何人かの暖かなご声援にチョーシにのってSS (No.4100への返信 / 1階層) - フェ猫@紙一重

オリジンのドズルを見て、他人事レベルではない、感情移入できた事はとても幸せだと思いました・・・
独身者には申し訳ないが、子供を持って初めてわかる【アノ】感情・・・(見てや聞いてでは伝わりきらない)・・・ドズル・・・死ぬんじゃなーーーい!!!
゚・(ノД`;)・゚・


作者男



石丸春丸は藩国来て間もない為、誰が誰で、どんな性格なのかわかりません。
なので、自己紹介を兼ねつつ、藩王が【天才】とまで言った。【フェ猫】なる人物の人となりを、皆に聞いて回っているそうです。




城「そうですね〜、連邦の光ですかね〜・・・。まぁ、【なんちゃら】と【天才】は紙一重だと言いますけどね(笑)」



悠「ただの【馬鹿】ですよ、あいつは、ただの【馬ー鹿】。」



空「う〜ん・・・。【天才】って言うよりは・・・【変態】・・・うん、こっちのほうがしっくりくる。」



楠爺や「私と同じ【爺やタイプのスタンド】ですよ、フェ猫さんは。」



悠「【馬鹿】って言うほうが【馬鹿】でござる。」



悠「今こっちに俺が来なかったか?」
悠「馬ぁ〜鹿野郎〜そいつがルパ・・・じゃなくて【フェ猫】だ!!!」
悠「フェ猫はあなたの大変なものを盗んでいこうとしました・・・。」
悠「それは、あなたの【腹筋】です。」
悠(まぁ、もうすぐあなたの【キャラ設定】も盗まれるかも知れないが・・・これは黙っておこう・・・。)



楠「なんか、石丸さんが少しチャットに顔を出したらしいねぇ〜。」

フ「なんかソッコー、摂政と藩王に見付かって、テストで良い点をとったら、しばくとか脅されていたらしいでござるよ。」

楠「・・・私の聞いている話と大分違いますねぇ〜。新国民らしく、丁寧に挨拶だけして、まだなにかネタになるような発言はなかったらしいよ・・・。」

フ「噂に尾びれ、せびれは付き物でござる。」

楠「まぁ早く連邦に馴染んでもらってチャットで無駄話ができるようになれればいいんだけどねぇ〜。」

楠「ところで噂話と言えば、連邦に【パンダ】がいたらしいよ。」

フ「?砂漠の国に【パンダ】でござるか!?」

楠「しかも正式名称が【ぱんにゃ】というらしい。」

フ「今人気の【お笑いタレント】でござるか?」

楠「そうそう、【ずんずんずんだか〜】じゃなくて【ぱ・ん・に・ゃ】。しかも麻雀もできるらしい。」

フ「麻雀ができるパンダ・・・それってあれでしょ!お湯や水かけると姿が変わるんでしょ。」

楠「残念ながら【乱馬父】と違い、お湯や水をかけても変化しないそうだ・・・って【乱馬父】で若い衆はわかるのかな・・・?」

フ「麻雀のできるパンダでも、それが仮に【乱馬父】でも激レアでござるな。」

楠「【乱馬父】の方がレアっぽいが・・・。なぁ〜に、うちの技族たちは優秀だから、すぐに【画像BBS】か【予備BBS】に【ぱんにゃ】の姿をうPしてくれるよ。」

フ「【画像BBS】も【予備BBS】も停まったままでござるからねぇ〜。最近新しい絵がないでござるからなぁ〜。」

楠「あれだろ、フェ猫さんが【水着大会】を開催したいのは、開催する事によって新しい絵がBBSにアップされる事を望んでいるんだろ?」

フ「うちの技族のレベルは高いでござるからね、技族の方達が一生懸命書いた絵を鑑賞するのわ、テンダイスブログに興味を無くした私の、アイドレスでの貴重な楽しみの一つでござる。」

楠「絵を描くのは膨大な労力と時間を労するからねぇ〜。技族の方達の体と頭と時間に余裕ができるのを気長に待と〜よ。」

フ「うむ・・・でござるな。」




フ「逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!」

彩「あらっ!フェ〜ね〜こさん!」

フ「でっでたな!今日はこないだの様な事にはならんでござるぞぉ〜さぁ来いサキ道!」


彩「サキッ☆」


フ Σ(゚Д゚)「ヤ・・・ヤックデカルチャーーー!!!」


こうしてフェ猫のリベンジは失敗に終わったのであった・・・。
補足ですが【さぁ来いサキ道】は【クローズ】に元ネタあり。
元ネタが分かりにくいからと言って補足するのもどうかと思いつつ補足を・・・。





悠「くっ・・・フェ猫め、あの程度で飼い慣らされやがっ・・・・・・・・・ヤックデカルチャーー!!!」



[No.5425] 2009/07/06(Mon) 14:00:06
くうちゅうがたほーぷ (No.4100への返信 / 1階層) - 冴木悠

鉄じゃなくて、ネタは熱いうちにうて。ということで今日の会議から出たネタをSSに。オチがイマイチ、きまんね。

/*/

「レンジャーといえば?」
「女性国家。航空大国。」
「やっぱり、ホープって目立たないよねー」

「いかん、いかん!このままじゃいか〜ん!」
「ふむ、イカンでござるか」
「いや、そうじゃなくて。ほら、ホープのというか男の沽券が」
「今こそ我らで、漢の維持を見せ付けてやるのでござるな」
「そうだ、空中も得意なホープとかニーズにもあってうっはうっはじゃね」
「うっはうっはでござるな。空中も得意なホープ。あいわかった、拙者に任せるでござる」
「おお、珍しく頼もしい」

(空気を裂き、空をいくブランコ。そのブランコに乗っていた一人の男性、ホープが勢いをつけて空中に飛び出す。
勢いがなくなり落下を始める男性。見物客から上がる悲鳴。
そこでもう一人現れたブランコに乗ったホープが、落ちていくホープの腕をつかむ。
見物客スタンディングオベーション。涙ながらに答える2人のホープ。)
「で、あれは何やっているのでしょうか」
「はあ、なんでも空中もいけてるホープを作ってやるでござる…とかなんとか」
「確実に方向性間違えてるというか、本当に何をやってるのでしょうか」

/*/

pass:4649


[No.5455] 2009/07/17(Fri) 01:04:07
『二人の間に流れるのは』 (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬

*

彼と初めて会ったのはちょうど五年前だったわ。一目見て彼に夢中になった。運命的なものを感じたの。でも、今考えると必然だったのかしらね。
彼は毎日の様に私に会いに来てくれたわ。三ヶ月ずっとね。しかも、必ずプレゼントまで持ってきてくれて。そんなに毎回いらないわ。って言っても、いや、せっかくだから受け取って欲しい。って。あんなに一生懸命言われたら断ったら可哀想だし失礼よね。それに、最初に書いた通り、初めて会ったときから、彼は特別なの。
一言目は会いたかった。二言目は話したいことがたくさんある。良くまぁ毎日話題が出るものねって、感心してたわ。だから、いつも新鮮な感じがしたの。 日に日に彼への想いが大きくなって、もっともっと好きになっていくのがわかったわ。
でも、別れって来てしまうものなのね。出会って三ヶ月過ぎにその日は来たわ。
あの日に私を訪ねてきた彼はいつもの彼じゃなかった。

年老いた男性。

私には誰だか直ぐにわかったわ。戸惑う私に、彼は全てを話してくれた。
彼は古代、魔法が本当に存在していた時、の魔法使いだった。彼は研究に研究を重ねて、禁を破り、時を越える魔法を会得したの。
この、車が平気で空を飛ぶ時代に、私には最初しんじられなかったし理解も出来なかったわ。
彼は、一年に一回、魔力が最大限に発揮できる日にしか会いに来ることが出来なかったの。それでも彼は会いに来てくれたわ。毎年毎日ね。涙が止まらなかった。

世界の魔力が弱まってきた。自分の魔力ではもうここにいる事は出来ない。お別れだ。こんなことになってすまなかった。 愛してる。

消えそうな彼はそう言っていた。私は力の限り叫んだの。


私も愛してる。今度は私が会いに行くわ。絶対に会いに行くから。きっと…、きっと…

そう、私は会いに行く。私には魔法なんて使えない。でも私は世紀の科学者。不可能を可能にしてきた女。タイムマシーンなんて一年で…二年、まぁ三年で開発出来たわ。時空を越えるのに耐えられる義体も開発した。
やっと、あの人に会いに行ける。私達が出会う可能性が消えないように、一年に一日しか会えなくたって構わない。彼は100年間も毎日会いに来てくれたわ。 私もあの人がしてくれたように、毎年毎日会いに行くつもり。【私を知らないあの人】に。本当は【私を知っているあの人】に会いたいのだけど、それでは【彼を知らない私】に、彼は会いに来れなくなってしまう。私がそうであったように、彼もまたそうであっただろうから。



それにしても、楽しみだなー。
会ったら何を話そうかしら?
話したいことが、たくさんあるよのね。



(了)
(1066文字)


[No.5463] 2009/07/17(Fri) 21:26:41
【図書館移動済】ニューワールドの子供たち−Episode2:Dear My Princess 〜殺戮王女とセイギのミカタ〜 (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

https://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/625.html
https://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/626.html
移動しましたー


[No.5573] 2009/08/04(Tue) 19:51:27
予告データ (No.5573への返信 / 2階層) - 城 華一郎

アマイヒメゴト dear, my princess!! 〜殺戮王女とセイギのミカタ〜

【登場人物一覧】
・極楽  トリコ:カゴメ寮筆頭。
・鍔玄  マイル:カゴメ寮次席。
・物ノ名 イロハ:カゴメ寮三席。
・宝   カラス:カゴメ寮四席。
・白鳥  クジコ:カゴメ寮五席。
・ファルファ=ルファラ:ミハタ寮主席。
・シュリネ=ジュール:ミハタ寮次席。
・ルルル=ルルル:ミハタ寮三席。
・ヤクガシャ=ギルデーン:引率教師。
・月蝕先生:監督官。
・+1(詳細不明):ゲスト。

/*/

【しおり文章(その1)】

『夏だ! 裸だ! 温泉だ! R−18、ぽろりもあるよ!』

【しおり文章(その2)】

『徹頭徹尾、悪意』

【しおり文章(その3)】

『もう、どこにもいない』

/*/

【裏表紙あらすじ】

※注意!:これはミステリー小説ではありません

避けえぬ未来を運命と呼ぶのなら、果たしてこれは必然か――――?

ニューワールドの名もなき正義を一身に担う、三重機関No.A.H。彼らが特殊な子供を集めて運営する『学園』の、七人のプリンセス候補に掛けられた嫌疑は、リゾート中に仕掛けられた殺人試験の『満点』以上!?

時間密室、消えた仲間、連続する不可解な死……。
隠された真相とは、外部犯の存在か、それとも巧妙なトリックか。絶空の天空地底都市に張り巡らされた悪意は、果たして≪突破≫可能なものなのか。

アマイヒメゴト、あなたも一緒に、どうですか?


[No.5574] 2009/08/04(Tue) 19:54:45
携帯からだから、うまく表現できているとよいが・・・(ノンフィクションです(゚Д゚)クワッ) (No.4100への返信 / 1階層) - フェ○@修正版

←連邦会議室

   某Sさん、二人
    ↓  ↓
ゴロゴロ〜○ ゴロゴロ〜○
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


    落とし穴
       ↓
〜○ 〜○
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
   (´Д`)Ψ
あっ、空馬さん↑!?


[No.5624] 2009/08/25(Tue) 13:01:15
レンレンジャー#1 (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

※ 脚本状態です。ひっそりやってみます。

/*/

主人公(小説の人称視点):卯ノ花ミハネ

#1:命、爆愛!
今回のテーマ:愛・食・現実感・アンチ単純戦闘勝利
伏線(次回まで):アイアイ博士の素性、腕輪の秘密
伏線(遠投):フランケンシュタイナーの発想の出どころ(ケンパチのプロレス趣味)、熱いレッドの普段の寡黙さの理由
本線:ミハネの陸上部、クラウデスの思想、ケンパチのパティシエ志向
アバン(食こそすべてのクラウデス−食について大いに語る−レンジャー連邦が第一ターゲットの理由は愛の重視ゆえ)
今回の怪人:「うまいものを食べる人間の魂を食べたらさぞうまかろう」(好物:フォアグラ、ビール牛の肉、養殖モノ−意図的に肥え太らせたものが好き)
今回の怪人デザイン:両腕がバール、サイボーグ、ヤミノ料理長配下
OP
提供
−陸上部シーン(導入)
−恋する乙女・卯ノ花ミハネ(部活の仲間と帰りに恋バナ)
−ちらりと現れる謎の影(アイアイ博士)
アイキャッチA(学生服で級友と戯れあうピンク)
アイキャッチB(ぽえっとした博士)
−ケーキ屋での会話(寡黙なケンパチのどこに惚れたのか?な学友達−ケンパチの腕前で評判−アイアイ博士、舌鼓)
−人の命をもっとも美味と考える美食集団クラウデスの怪人出現(博士、変身失敗)
−魂を食べられたお客のために怒るケンパチ(パンチ−無駄だ〜の体は〜よりも硬いのだ的な台詞の途中でさらにパンチ−効くかどうかは俺が決める!−ミハネがケンパチの拳からにじむ血に痛くないのかと尋ねる−「当たり前だ!殴ったら痛ぇに決まってるだろうが!」−手首のスジと骨までおかしくしてるケンパチ−相手の攻撃を両腕でガードするも骨折−ミハネ「もうやめて」覚醒−アイアイ博士、腕輪を投げて変身催促−バクアイピンク変身−それでもなお前に出てガードするケンパチ(当然また骨折)−「まだ俺がオーダー取ってる最中なんだよ、いらっしゃいませお客様、ご注文は何ですか、ってな!」−なんでか計器が反応したのでまた腕輪投げる博士−バクアイレッド変身−「変身しても無敵になるわけじゃねえ!」−腕折れっぱなし−ケンパチ「足貸せ!」−ツープラトンフランケンシュタイナーで怪人を床に埋める−すっきりしねえよと力押しで相手を黙らせたことについて呟くケンパチ−クールでかっこいいと思っていたケンパチの熱いところと意外な一面に改めてどきりとするミハネ−EDイントロ重なる)
ED(ラストに次回予告でシメ)
提供
戦果:レッド両腕骨折(入院)


[No.5628] 2009/08/26(Wed) 17:49:42
らう゛こめ (No.4100への返信 / 1階層) - 遊佐 呉@生活苦

リアルのあまりの悪化により、ぷろじぇくとでぃーばにはまりみくみくにされたので投下。
パクりって言わないでオマージュと逝って下さい。






「私、白馬に乗った王子様が欲しい」

「「「は?」」」

いつもの仲間に、いつもの日常。
しかし、いつもじゃない発言に場が止まった。


「プリンは冷蔵庫にあるって言ってくれる様な、騎士(ナイト)様」

「王子じゃないのかよッ!」

1人語るセミロングの少女に先に我に返った短髪の青年が律儀にツッコミを入れる。

「え〜っ!あたし、プリンより苺の乗ったショートケーキが良いなあ〜」

隣に居たポニーテールの少女も我に返り頬を膨らませてる。
しかしツッコミはズレていた。


「王子様でも騎士様でも良いの。私にかしずいてくれれば。」

「ドSですね。」

尚も語る少女に今度は長髪の青年が楽しそうに呟く。
…別にMではない…多分。


「っつうか、この国砂漠だしラクダじゃねぇのか?」

「砂漠=駱駝は安直ですね。そもそも…「私がお姫様。」…」

ウンチクが始まりそうだったが、何というタイミングで割り込まれるのか。

「何か、顔色悪いよ?大丈夫?」

「そう言えばそうですね。肌が黒いので分かりませんでした。」

流石におかしいと思ったのかポニテの少女は心配し始めたのに長髪の青年、お前はドSだ。



ふと、息を飲む様な気配がしたかと思うと部屋から二人が出てきた。
笑顔だ、怖い位の笑顔だ。
いや、訂正する…男の方は黒い笑顔だ。
「邪魔しないように、我々は離れましょうね。」
首根っこを掴まれる。
なんだ、どこのコントだ。
「ねぇねぇ、あたしたちは行こうよ!何だっけ?空気嫁?」
ちょっwおまw草生やすぞwww
「刈り取っておきますね。」



二人によりその場から強制退去させられる瞬間、完全に閉まり切らなかった扉から中の様子が伺えた。
後ろから抱き締められている少女と、抱き締めつつもそっぽを向く青年の姿。
倒れそうになったのを支えた様だが、顔が赤い。
何か口を動かす様が見れたが何を言ったかは分からなかった。



後日、件の二人をからかおうとした著者は黒い笑顔に邪魔される事になる。
馬に蹴られた。
9月吉日 著者・遊佐 呉


[No.5689] 2009/09/10(Thu) 22:33:49
お蔵だし (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

なんか大量に出てきたんで、生存証明がわりに大量投下。
割と書きかけもちょくちょくある気がするが気にしない。

2018-02-15:What a perfect blue worldシリーズ図書館移動〜


[No.5697] 2009/09/15(Tue) 18:05:59
お蔵だし01:ある文族 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

「僕はねえ、昔、好きだった人に笑顔をもらったんだ。ただ、笑う、笑い転げる、それも本当にくだらないようなジョークやネタで、いつまでも、いつまでも、飽きることなく笑い続ける、そんなごく普通で当たり前の、けれど、決して忘れちゃいけない大切な笑顔をね、もらったんだ」

笑いながらその文族は、ずっと遠くを見て、そう言った。

「僕はねえ、読み返されれば読み返されるほど、誰かの目に触れれば触れるほど、アイドレスの世界が育ち、強化される、そんな物語が書きたかったんだ。
魔法みたいだろ? 魔法遣いになりたかったのかな。それとも、魔術師になりたくて、なれなかったから、魔法を使おうと思ったのかな。
僕にとってね、物語っていうのは、魔法だったんだ。本を開けばそこに世界がある。どうしようもなく、世界があって、命があって、物語があって、何かがある。必ず、胸躍るようなスカッとする冒険談でも、心塞ぐ現実を生々しく直視させる現代ものでも、夢のようなファンタジーでも、なんでも、必ずそこには何かがある。読んだらね、僕の中に何かがやってくるんだ。魔法みたいだろう、ただ本を読んでいるだけなのに、自分の中に何かが訪れるんだ。僕はだから、そんな魔法使いの一人に、なりたいとずっとそう思ってた」

笑いながらその文族は、ずっと遠くを見て、それから自分の両手の中にある、なにもない空間を見て、そう言った。

「僕はねえ、今、好きな人に、いっしょにいるってどういうことか、教えてもらったんだ。それまでたった一人でいることに慣れて、何も考えようとはしていなかった僕に、本当にいっしょにいるってどういうことか、教えてもらったんだ。それはね、それは、笑顔の向こう側にあるものだったよ。一緒に笑って、泣いて、怒って、苦しんで、それでもいっしょにいる、いっしょにいられる、それってすごいことなんじゃないか、それって、とっても大事なことなんじゃないか、って、そう、僕は教えてもらったんだよ。誰にでもあるだろう、恥ずかしいぐらいに当たり前の、ありふれた日常の話で恐縮なんだけどもね」

笑いながらその文族は、隣を見て、そう言った。

「駄目だねえ。こんなに身近でありふれた話を面白く書けないようじゃ、魔法使い失格だねえ」

返事は待たずに、その文族は立ち上がった。

名前は、と問うと、彼女は言った。

「愛。西方を薙ぐ、愛しき愛」

「アイトシ」

/*/

アイトシはレンジャー連邦の住人である。
正確には、レンジャー連邦に何時の頃からか居た、自分を文族と名乗る、不思議な住人である。
西国人である連邦の領内では、未婚のものは腹を出し、既婚のものは腹を隠すという、不思議な風俗がある。彼女は灰色の髪の上から赤い、フード付きのローブを身にまとって、すっぽりと、腹を隠して生活していた。

彼女が誰と共に暮らしているのか、誰と結婚しているのか、知っているものはフィクショノートにもいなかったが、名前が似ていることもあり、猫士の少女、愛佳は彼女と随分親しいようだった。

「アイトシさーん」
「やあ、来たね猫少女。猫目猫耳、猫尻尾。相変わらずシルク色のミルキィな髪が見目麗しいものだ」
「やだ、そんなに誉めないでくださいなー。照れちゃいますわ」
「ははは、愛佳とは、佳き愛と書く。いい名ではないか、僕よりずっと佳い愛を、君はいずれ手にするだろうよ。ならば今のうちから誉めておいて損はない、あいつは見る目があると、将来賢い人に見られるからね」
「僕っ子のアイトシさんにそんなハスキーボイスで言われると、なんだかくすぐったいですわね……」

いやあ。
むしろ今のはこいつを、賢い人、ではなく、賢しげな人の間違いじゃないかとつっこむところだろう。

そう、声と共に現れたのは、アイトシの友人、ヒメオギ。

彼女は灰白の髪に灰白の瞳、灰白の衣と、徹底して灰白に装った、少女の愛佳とほとんど同じぐらい背の低い女性である。自らを、こちらも技族と名乗っている。小柄な体格を磨くように露出度の高い格好をしていて、こちらは腹部がちゃんと表に出ていた。

「そっちこそ、いい加減ロリータファッションは似合わない年齢になってきているのではないかな。無理はやめたまえ」
「うるさい! ちょっと自分がでっかくってプロポーションいいからって…」
「お二方が第七世界に来てから、もうかれこれ6年…でしたかしら?」

うふふ、と愛佳はそんな手馴れたやりとりを微笑ましそうに見る。

「然様」
「年月のトリックに引っかかっちゃ駄目よ。まだまだ二十代なりたてなんですからね」
「じきになりたて三周年を迎えるわけだが」
「おない年なんだから墓穴掘るようなことわざわざ言うんじゃないの」
「何、僕はもう既婚だからね。年齢はあまり気にならんのさ。若さとは華だよ、華とは実のない愚かな美だが、いずれ実を結ぶための空虚な醜さとも言い換えられるね。実のある僕には、もう華はいらないのさ」

愛佳ちゃんも愛という名の実をなるべく早く手にしたまえ、意中の人(猫)がいるのだろう? と、アイトシが語りかけると、きゃっと小さく跳ねて愛佳は頬を染めた。

一方流れから無視されたヒメオギ、

「昔馴染みの友人には応援の言葉一つもなしですかー…」
「だってお前、きゃーきゃー言うばかりでさっぱりアタックしないだろ。僕を見習え、僕を」

それかフィクショノートの人達を、と、アイトシはふんぞりかえる。

「現代の第七世界がどうなってるのかは知らないが、いい時代になったじゃないか。ゲームはゲームだ、物語じゃない。遊ぶ人の数だけキャラクターがいるんなら、獲り合い奪い合いをする必要もない。何せ子供まで出来るというんだから恐れ入った話じゃないか」

愛だよ、愛、ヒメオギくん、と、言うその顔面にアッパー。長身の体が宙に浮く。
きらんと舞う鼻血、きらんと逆切れするその目に宿る、哀しい涙。への字口。

「やーかーまーしーいー!」
「お前の意中の相手なんて元から複数人いるだろ! なにやってんだ!」
「夢の逆ハーレムという言葉を知らないか!」
「知らないね、不純な奴め!」
「人類の発展は不純なくしてありえない! 絵に描いてやりましょうか、絵に!」
「馬鹿お前それは発禁になるからやめろ」
「退かぬ! 媚びぬ! 恥じぬ!」
「最後最悪だ!?」

あー…と、
始まった乱闘を眺めながら愛佳は思った。

「こういうのも、平和っていうんですかしらねえ……」


[No.5698] 2009/09/15(Tue) 18:06:48
お蔵だし02:夏休み (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

眼下に広がる藩国たちを、その少女は足をぶらぶらさせながら眺めていた。

網目状に広がるアイドレス世界には、上下の観念はない。あるのは自分がどこに立ち、どのようにものを見ているかという、認識だけ。

それでも彼女のいる藩国は、世界の中で、一際特別だった。

天領。

世界の中心にあるわけでも、世界の頂点にあるわけでもない、小さな小さなその藩国の、縁に腰掛け、その少女は眼下に広がる藩国たちを眺めていた。

長い、夏休みをしているという。

今頃どのような暮らしを、あの国々の上で皆は営んでいるのだろうか。

少女は目をつむる。

途端、すべての藩国は、彼女の頭上に感じられる。

天。

身を、後ろに投げ出して、背中を地面につけて寝そべると、周りに広がる全天に、藩国たちの存在が感じられる。

空は、広い。この空だけは誰も奪えない。地に足つけても視線を遮るものはいくらもある。

けれど、そうだ、寝そべるならば、
こんな空に何もないところがいい。

白を、呼吸する。吸い込んだ風が、雲か。

今、心に天と地の距離の差は何もない。

流星が見えた。

それは心によぎる夏の欠片だったろうか。


[No.5699] 2009/09/15(Tue) 18:10:51
お蔵だし03:猫士育成中! (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

ぶくぶくと子供のよくするように、ストローからジュースの中へと空気を送り込み、音を立てて楽しんでいるその小柄な人物には、行儀の悪さという観念がどうやらないらしかった。目の前の男が、てちっと頭をはたいて軽く叱る。

「お前もちっとは礼儀正しく猫士候補としての訓練をだなあ」

「にゃっ」

悪びれずに口をにゃんこの形にして、その少年、イツキとレンジャー連邦の文族、城華一郎とは、しばらくの間、にらみあった。

…ぶくぶくぶく。

てちっ。

「にゃっ」

今度は頭をはたいた拍子にジュースがこぼれた。見詰め合う、気まずさ。

「………」
「………」

こ、こほんと咳払いをしながら華一郎は、すいませーん、ナツメヤシジュースおかわりー、と、何事もなかったかのようにウェイトレスさんへと注文の手を挙げた。

それを胡乱そうに半目で眺めるイツキ。

「と、ともあれだな、俺の調べた限り、この国の創世記にはいくつかのパターンがある。一つは闇蛇と竜の物語、一つは電脳と電影の子供遊びの物語、そして最後に」

「あるいは戯曲の如き、物語、でしょ?」

聞き飽きたよーといった顔でイツキが欠伸。

「僕の名前の人もいるんだよね?それに…」

「わーわーそれ以上は言うなー!」

「?」

「お前も文族付きの猫士候補なら、読者に対するネタバレの配慮というものをだなー」

「勝手に僕を育ててるのは華一郎の勝手じゃない」

なんだよそれ、と、口をとんがらせて文句を言う。

「でも、どれも今ひとつ決定打に欠ける、始まりのための始まりには物足りない。それが華一郎の説なんでしょ?」

「まあな」

「そういえば、グンブが動いてるって話は?」

クリームパフェお願いしまーす、と、唐突に遠慮も隙もなくちっちゃな腕を挙げて頼むイツキ。

「僕らのケンも含めてさー」

「お前…」

「?」

なにさ、と不思議そうに見る少年の鼻の頭をつんと突く。あいたっと不平の声。

「だんだん油断ならん奴に育ってきたなー」

「ペットは飼い主に似るっていうよ」

「人聞き悪いことぬかすな、せめて兄弟といえ兄弟と」

「変にこだわるよね、そのへん、この国の人たち」

「ん…」

まあな、と口を濁しながら、すんません俺もチョコレートパフェ追加でー、と頼む。

「それもこの国の成り立ちが大きく影響してんじゃないかなーって俺なんかは思うわけよ。だから研究してるわけなんだけど」

「知りたいの?」

「自分のけつがどこにのっかってるか知りたくない奴は案外多くても、知らないままの方がいいと思ってる奴なんてのはそれよりかずっと少ないもんさ。それと同じだ」

「知的好奇心、というわけか、ふむ」

「ふむじゃねえよ全然違うし」

二人してパフェをつつきながら、口の周りを糖分と乳脂肪分で汚してしばしもくもく。

「…パフェはパーフェクトの意味らしい」

「日本語おかしくない?」

「だまれやかましい言い直すからちょっと待て。えー、パフェは、フランス語だったかな、パルフェとか発音すんだっけ、ともかく、完璧、の意をこめた、こめられた、デザート中のデザート」

「ふんふんそれで」

「美味いよな」

「雑談ですかっ!」

つっこみと共にバナナがまろやかに二人の口の中でとろける。

「食べながらしゃべるなよ」

「そっちこそ」

「………」
「………」

鏡を見て会話しているようなものだな、と、華一郎は諦めた。

反面教師にしたくても、せいぜい鏡って左右反転しかしないよなー、と、イツキは諦めた。

「「はぁー」」

同時にため息。きっとにらみ合う。

「こんなにうまいものを食べている最中にため息をつくとは何事か!」

「むしろ華一郎さんこそ何事ですか、仮にもルールを守る法官の身でありながら」

「いいんだよルールはゲームのもの守るだけで」

「あ、そういう考え方よくないなあ。他人に迷惑かけてると思いますよ」

「ほう、どこにだ」

「こ、公共道徳?」

「今更誰かがこんなやりとり真似するとでも思ってるのか」

「…しませんよね」

「しないんだよ」

「しないですねえ」

「されたいな」

「されたいですかぁ?」

「されたくないか」

「されたいですけど…」

不毛な会話と共に、アイスクリームが溶けてしまう前に、フレークの香ばしい食感と共にたいらげてしまおう、と、二人の間で合意が生じ、十数秒間の短い停戦協定が合いコンタクトにより結ばれる。

そして破られる。

「すいませーんおかわり」

「こっちも」

「よく食うな」

「育ち盛りですから」

「俺もだ」

「絶対嘘だ!?」

「嘘つきは健康の始まりという諺がある」

「恥を知れ」

「そこまで言う!?」

「Shame on you!!」

「英語かよ!!」

「文族付きですから」

「そんなところだけちゃっかりしなくてもなあ…」

「弟子は師の背中を見て育つものですよ」

「じゃあ、師匠命令」

「ここの払いは常識的に考えて華一郎さんですよ」

「いや財布忘れたんで家からとってきてくれね?」

まさか食い逃げするわけにもいかんしさー、と、悪びれずに頭をかいて笑う男へ、眉間に皺を寄せながら、いいでしょう、と、答えてイツキはスプーンで相手を指した。

「そのかわり、もう一杯食べてからですからね」


[No.5700] 2009/09/15(Tue) 18:14:03
お蔵だし04:ある実験 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

おもちゃの剣を使う正義の味方がいるらしい。
レンジャー連邦には今、こんな噂が流行っていた。

その剣は白く白く銀色に白く、ただのプラスチックであるはずなのに、完璧なすべやかさを保っており、しかし刃はなく、丸く。

「正義を成すのに本物の剣は必要ない。腕さえあれば、おもちゃでも、十分に力は発揮出来る」

そう吹聴するのでもない。

心を、断つ。

ゆえに物語魔法剣。







細身の長剣の両側を、一対の畸形の刃が浮かんでいた。いずれも片刃だが、峰にあたる部分がVの字に凹んでおり、そして、外側の刃部分は、日本刀でもこうはいくまいというほどくっきりと物打ちの部分が直線に折れ曲がって形成されていて、それぞれ刃としてみるにはあまりに不安定で脆い。

剣そのものには、金属としての物理的な耐久力と破壊力しか宿されていないようである。

『起動認証』
「愛ゆえに」

青い、蒸気にも似た光を吹き散らし、一対の畸形の刃が長剣の細身を両側から挟む。途端、それはまるで元からこうであったとでもいうかのように、一振りの大剣となった。表面には文字が浮かぶ。

失敗だ。
開発者はその剣を放り捨てた。剣としての機能を失わせたからこそ、その剣には魔法の力が宿らねばならない。これには力がある。立派な剣としての力が。その上に魔法を上乗せするなどという情報は通らない。

大槌を振るい、剣を叩き折る。
青い光が炸裂して、その剣は無様に折れ曲がった。
強度がありすぎる。側面の刃は折れ砕けたようだが、それが衝撃を吸収して、本体まで砕けていない。

さらなる剣を開発しなければ。

開発者はペンを取った。



情報が渦を巻いて現実化する。




読まれるほどにアイドレス世界を強化する物語。その試作は失敗に終わった。
架空のプレイヤーが架空のアイドレスで遊んだ物語を、あたかも本物であるかのように語り、認識させることで、その物語のラストにあった祈りを魔術にし、架空の物語が何度も何度も繰り返されやがて本物の物語となってさらに何度も何度も繰り返されたことにすることで、半永久的な情報追加機関を開発するつもりだったのだが、ただの情報では魔術を起こすことは出来ない。星の観測をさらに繰り返し、学習の必要がある。

次なる試作は物語魔法剣。
読まれるほどに情報が収束し、やがては七界の中に実在する、本物の魔法剣を物語によって生み出そうという計画である。愛ゆえにのスローガンで知られるレンジャー連邦の構成要素…プレイヤー名、キャラクター名、全イグドラシル要点…を物語中に練りこみ、一点に集約させることで魔術を起こそうとするものである。ただの情報では魔術を起こすことは出来ない。物理法則と七界の法則を知り尽くさねば、今回も失敗となるだろう。



人の心に青い光となって映る、その光のことを、リューン、あるいは情報子と呼ぶ。
このリューン(情報子)を操る技のことを絶技と呼ぶ。






物語魔法剣。
魔術じゃない
概念を打ち上げた


[No.5701] 2009/09/15(Tue) 18:17:22
お蔵だし05:霊鳥あるいは霊長の言葉 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

その鳥は退屈をしていた。
あるものは彼を霊鳥と呼び、あるものは太古から生きる大賢者と褒め称える。
樹の下に集う人々に助言をすることも稀ではない。

それでも、その鳥は退屈をしていた。

今日もまた、彼の退屈を増やしに人が、やってくる。

/*/

●諸王の場合

取るに足りない自分とは
数にもならない自分とは
かつての自分達ではないのだろうか
それを見捨てるということは
自分を見捨てるということではないのだろうか
プレイヤーであることさえ有力すぎる
ACEとプレイヤーの確執さえ、近すぎる
設定国民とそれ以外の存在は
それほどに遠い距離で隔たれている
答えてくれ
霊鳥よ
シムルグよ
私達はどうすればよい?

/*/

●臣下の場合

自信がないのです
時間がないのです
能力がないのです
全てがないのです
だから何も出来ない
まばゆい壇上にも上がれない
素敵な夢も見られない
だからそうである人達と共にいることが苦しい
教えてください、霊鳥シームルグ
大樹の頂に棲まう古の賢者よ
私は、私達は、もはやここにいては
いけないのでしょうか?
みんなと共には行けないのでしょうか?

/*/

●民衆の場合

人と同じものが見られない
人の面白がることがわからない
自分の面白いことしかわからない
お願いだ、教えてくれ
俺は一体どうしたらいい?
俺はみんなと一緒にいたのに
みんなが遠くて仕方がない
それとも
一緒にいるなんてこと自体が
幻想なんだろうか
俺にはわからないんだよ、みんなが
あんた物知りなんだろう?
答えてくれよ、教えてくれよ!

/*/

●騎士の場合

力が欲しいのです
どうしようもないほどに欲しいのです
なにに力がわからない
どこにあるかがわからない
だから届かない
求めるもの、何もかもに
求めるべきものも、それに必要なものも
わかるのに
…こんなことを言っている暇さえ惜しい
私は何をしているのだろう
幻にすがるほど弱い私
こんなことでは何も叶えられないのも
道理だな

/*/

●労働者の場合

頭が悪いんだよ
だからわかんねえんだ、理屈っちゅうのが
荷物を持ちゃ重い、それぐらいはわかんだよ
でも何をすりゃ何が起こるとか
何が起こっててその裏の意味だとか
そーいうのがわかんね
わかんねえのってまずいのかな?
みんながわかるわかるって言ってるしよ
わからなきゃ、わからなきゃ、って言ってるし
だから俺ぁ、まずいのかなーって思って
そんで何でもわかる奴に聞こうと思ったんだ
なあ、そこんところどうなのよ?
鳥さんよ

/*/

●学生の場合

共にある、ってどういうことなんだろうな
和するって何なんだろうな
わかってるようで、全然わかってねえんだよ、俺達さ
言葉だけを見て考えない
わかりやすい言葉だけ求めて考えない
それっていいことなのか?
わかりやすいことって、そんなに大事か?
わかりやすいってどういうことだ?
知りたいよ
本当に大事なものって何なのか
それさえ手に入れてなくさなければ
俺達は、その時こそ本当に何かになれるのかな
なりたかったはずの、何者かに

/*/

「――――言いたいことを後回しにして、
君らの問いに答えよう」

「甘えるな、学生
大事なことは自分で見つけるから大事になるのだ
人に与えることばかりを考えるな
まずは己が得よ
手放し難いほどに
人生を費やして得たかけがえのないものを
惜しげもなく手渡すから勉学は輝くのだ
わかりやすさを問う前に
わかりにくい実際を飛びこんで掴め
君には頭があるのだろう?
見せかけだらけの持論さえ
磨けば真実になるのだから
戦え、己を磨くそのためだけに」

「そして唯一幸福なる労働者に福音を
頭が悪いのではない
必要のないことを知らないだけだ
求めるものを持たないのは
既に満たされているからではないかな?
人に惑わされることはない
だが人に感化されることはいい
隣人の話す言葉は意味がわからずとも
気になるものだからね
教養とは
いらぬことをつめこむことではなく
隣人の話が理解出来る
ただその喜びのためだけにある言葉なのだから」

「騎士よ、君には力を与えよう
行いなさい
君は一番必要なものを既に持っている
意志以上の力はないよ
君が欲しいのは
力ではなく言い訳だ
私はそれを君に与えない
私は確かに幻だ
行きなさい
狂おしいほどの意志だけを抱いて
ここは通りすがった迷い道だ
行け
行け!」

「民には残酷なことを伝えよう
人は常に一人だ
他人のことなどわかりはしない
だがわかろうとすることは出来る
月並みだがね
出来ないことをやろうとするのはいいことだ
それは無駄な努力とは呼ばない
それは無限の挑戦と呼ぶのだ
自分と他人が違うこと
それに気付けただけでも大成果ではないかね?
次はその違いを見つめなさい
挑戦を止めた瞬間
君は今度こそ永遠に一人になるのだから」

「さて、もっとも言うべきことを控えたものの
前に来てしまったね
甘えるな
もう一度言うぞ
甘えるな
意志なき者は去れ
自ら望んで立った地平だろう
誰に責任を求めている?
私達は一人一人が独立しているからこそ
素晴らしい
共にいることを望まぬ者は去れ
条件はたった一つだ
共にいたいと願う意志、それだけだ」

「王よ、おお、王よ
最大の愚者にして救い難き者よ
言うべきことはもはやない
誰も見捨てないということは
すべてを皆殺しにするより難しい修羅の道
現実には存在しない幻だ
もっとも現実を見るべき者が
もっとも見てはいけないものだ
君はもはや王ではない
ただ一人の、君だ
望むままにしたらいい
答えなど絶無だ
好きなようにしたらいい」

「全員に言えることは
迷いを断つために僕を利用しないで欲しいと
いうことだ
やりたいようにやったらいい
言われた通りにする気などはなからあるまい
僕を言い訳に使うなということだ
言いたいことは、たった一つだ
甘えるな
己一人で立て
一人で生きろと言うのじゃない
意志だけが、僕らを支える両の脚だ
羽根など僕にもないよ
あると思って飛んだなら、きっと焼け落ちてしまうだろうね」

「それじゃあね」

/*/

「意志なき者よ去れ」

「知らん。
 好きに生きて、好きに死ね。
 手前の責任を他人に押しつけるな」

「現実を作るものは意志だ、
 意志を笑うものよ。
 現実に破れたからとて
 己以外のものの意志まで弱いとあざ笑うな。
 笑っていいのは誰だろうが己の意志だけだ。
 甘ったれるな。
 人に自分を重ねて見ても、
 誰からも何も奪えない。
 痛みも、力も、誇りも、何もかも自分一人の神聖なものだ。
 力を合わせることと徒党を組むことは違う」

「意志の力を問う。
 孤立を求める。
 その上で連帯する。

 価値を、汲まれる事を求めるな。
 見せつけろ。
 優しさを誰かを守ることと勘違いしているのなら、
 一生優しくなんてなれはしない」

「共にある事が戦いだ。
 殺し合いなぞ、それに比べたら児戯にも等しい」

「誰かと対等に立てるかどうかは、
 まともに人間と対話したことのないやからには判らないだろうが、
 ずっと難しいぞ」

「共に和するという言葉を、
 何も考えなくていいと勘違いしてはいないか?」

「大統領は一人で考える人間じゃない。
 そんな最低なものであってたまるか」

「大統領は一人一人に問いかける、
 そんな人間。
 一人一人の答えを聞いて、
 丸呑みにするのではなくその真意を一番果たす行為をするものだ。
 自分で導き出せぬなら、
 それが出来る人を使え」

「大統領とは、優秀な人間ではない、
 優秀を見つけだせる人間だ」

「殺し合いが上手いことは自慢にはならん
 話し合いが上手いことこそ自慢になる」

「勘違いをするな」

「戦争出来ないことは誇っていい。
 人と話すだけしか出来ないのではない。
 人と話すというもっとも重要な力を持っているのだ」

「間違うな」

「自分を押しつけることも、
 他人を汲むことも、
 会話なぞではない」

「共にあろうとすることだけが、
 話し合いなのだ」

「猫は基本的に気ままだ。
 だが無責任ではあっても、
 無意志ではない」

「無責任で無意志なら、
 猫以下だ」

「他人の責任だけを見る輩は偽者だ。
 自分の責任を考えない輩は無責任だ」

「共にあろうとするならば、
 『もし』に思い至って、常に教訓を得るべきなのだ」

「それが共にあろうとすることの、
 唯一にして無二の価値なのだから」


[No.5702] 2009/09/15(Tue) 18:20:05
お蔵だし06:とある猫士と文族と あるいは名乗ろう、〜コトノマジカル〜 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

ミルク色の髪をした少女に後頭部を蹴り飛ばされながら、いつものように華一郎は戯言をほざいていた。

助走して、ジャンプして、足裏をぴたりと2つ、脊髄に対して垂直に入射角をセットした、全体重〜〜キログラムを繰り出す、鮮やかなドロップキックであった。専門用語で、サテライト・ドロップ・キックという。飛び上がる際にひねりを加えていて、蹴りつけると同時に反動を得て、くるりと蹴った相手と背中あわせになるように、反対側を向いて着地する、猫科の中でも、若猫にしか許されない、自らに倍する高さを跳躍してのける筋力あっての、芸当だった。

衛星のごとく回るがゆえに、サテライト。相手に対して、蹴りという形で雫するがゆえ、ドロップ・キック。しかし自転するだけでは衛星ではないからしてサテライトという呼称は不適切なのではなかろうかと華一郎は考える。うむであるからには真サテライトドロップキックを開発せねばなるまい。そう、自転しながらに公転する、相手の正面から後ろに回りこむようにして蹴りつけ、蹴り終えた時には再び相手の正面に着地するような、そんな技を。しかしこれを技として実現するためには回り込むようにして走りこんでくる慣性をひねりこむ回転に一瞬にして転化し爆発させる脚力が必要となる。通常の2倍の脚力に加え、通常の2倍の助走距離、さらに途中から回転力を片足だけに集中させることで最終的に回転力は加速し通常の1.5倍、いやさ3倍で1200万パワーどうだこれでオーマも一撃だ早速企画書を提出しなくてはプリントアウトプリントアウトピーガガガ。

「どうしてそう蹴られる間もタイピングを止められないでいられますの!」
「ははは文族に対してダメージを加えられるのはいつでも言葉によってのみと相場が決まっているのだよ」

絨毯敷きの広間に座り込んでたかたかとなにやら怪しげな文言をまとめていた華一郎はそのまま顔面から絨毯に着地し顔面で踏み切ったように跳ね飛び2mほど行ったところでこきりといい音を立てて元の姿勢に戻った。つまり、あぐらをかいて絨毯敷きの広間に座り込み、なおかつ首は90度ほど曲がっている状態だ。

くるりとそのまま振り返る。

「うわ気色悪い」
「どうだい無事だろう」
「頭の中身が大分無事ではないように思えますけど。しかも蹴る前から、ずっと」

レンジャー連邦の猫士、愛佳は、じと目で腕組みしながら目の前の首と頭の中身がすっかり曲がった男を見つめる。

「よく言えますわね、文族は魔法使いだなんて」

/*/

手を叩けば波紋が生まれる。青い光の波紋が生まれる。それはリューンであってリューンでなく、情報子であって情報子でない。

手を叩けば飛沫が生まれる。青い光の飛沫が生まれる。それは光であって光でなく、波であって波でない。

光は波紋し青は飛沫き、白く輝く清冽な瞬間瞬間。

夜に、

手を叩く。

光の波紋が生まれて飛沫く。

青く夜の闇から浮き上がり、白く輝いて飛散する。

その輝きを両の掌で、眼前に最大円を描くようにして広げていく。

ぐるり、天地上下に左右から、光がつながり円を描く。

それは滑らかな白い法円。夜に浮かび上がり消えることなき白の法円。

指が空間に点を穿つ。

白い点が穿たれる。

法円に点が打たれていく。

打つ。

拳で法円の外輪を、思いきり殴りつけるように、打つ。

法円は、まるで中心点に支えられているかのようにその場で回転し、穿たれた点が線を描いて立体を描く。

打つ。

拳で法円の外輪を、また異なる方角へと回転するように、打つ。

法円は球となり、その球の中にまた球が描かれる。

白い光の球体がそこに生まれる。

中心点には、いつの間にか出現しているものがある。

「――座標、090418051919161201250518/0120/2305021825/09140615-tgh-01182009031205.m/08201312。オープン、m、n、o――」

黒い染みのような中心核。

手は、光の球体を直接掴んで動かし出す。

パン!

と、球体を、掌の間で叩き潰すように、仕草する。

そこに本が生まれる。

押し固められた、革の表紙を持つ書物。

「――――転送」

書物は消える。

夜に静寂が再び戻る。

/*/

比喩とはつまるところ抽象化の能力の一つでありそのものだよ。
数学が抽象化そのものであるならば、文学は抽象化から始まる長い長い道の、その始まりそのものだ。
見えるものを見えざるものに。そこから生まれた見えざるものを、見えるものに。
数学者が世界を律する法術使いなら、文学者は世界を韻する魔法使い。
法そのものではなく、法にあらざる法を扱う異端の法術。
されど道を外れることなき、法と外法の狭間行く狭間の法の使い手なり。
そう、ゆえにこそ、我等魔法の使い手なり。
事実を以て事実とせず、真実を以て真実とせぬ、一切合財の歪め手なり。
我等表裏一体にあらず、螺旋の回廊を行く隣人なり。
我等数を数とせず、彼等文字を文字とせず、されど我等隣人なり、それゆえ我等並び立つものなり。
さて。
如何様なる魔法を、お望みかね?

/*/

…と、ここまでを独白している間に愛佳に見つかり華一郎は蹴り飛ばされたわけだ。

客観的に言えば、夜に外をほっつき歩いて怪しげにくねくね動いて、お城に、戻ってきたかと思えばいかれた電波な戯言をほざいていたわけで、そんな怪しげな電波をあたりに撒き散らすと健全な眠りを妨げるため排除するというのが愛佳がサテライトドロップキックを繰り出した理由だった。ちなみに愛佳がこんな夜更けに起きていたのは、猫が夜行性で、愛佳が若猫だからである。

「いやだなあ、電波だなんて。ちょっとした異世界へのアピールだよ」
「それを電波と言わずに何と言うかー!!」

後ろに回りこんでそのまま踏み切り、身をひねりながら蹴る片足の力をもう片足のための回転力に変えて送り込むことで、強烈な貫通力を持った蹴りが後頭部に炸裂する。地面と水平に曲がっていた首は水平のままさらに90度前方へ曲がり、ナチュラルに左を向きっぱなしになる。その、視界のちょうど真後ろに愛佳は着地、ふん、と鼻息荒くなぜか両手をぱっぱと払う。

「し、真サテライトドロップキック…」
「そのまま眠りなさい!」

ずびし、と曲がった首にチョップ。ぐはっと華一郎、横に倒れる。

「まったく…」

と、傍目には単に寝違えながらだらしなく広間で寝ているだけの華一郎を見ながら、愛佳は呟く。

「この世界を生み出した本物の魔法使いに失礼ですわ」


[No.5703] 2009/09/15(Tue) 18:22:14
お蔵だし07:E’s (前編−上/多分全3編だったと思われ) (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

竜巻のような死が通り過ぎた。
転がっている死体にどれも首はない。胸の上だとか、死体の脇だとかに、本人の首が置いてある。
たまに組み合わせを間違えて配置してあるものがあって、それが光景の恐ろしさを際立たせていた。

「酷い有様だな…………」

警官の一人が現場検証しながら呟いた。
死体の素性は近隣で不貞を働いていた輩ばかりであり、それがこうも一箇所に固まっているということは、徒党を組んでいた悪党一味ということになるのだろう。
どれも、金品は強奪されていた。
ねぐら代わりにしていただろう古代の遺跡は、塗りたくったみたいに血がぶちまけられていて、歪んだ鉄の匂いが胸糞悪いほど充満している。

「これで十件目ですか、首狩り殺人」
「ああ」

アイドレス領内で起こる事件の大半は、プレイヤーに知られることなく処理される。
ゲームとは関係ないからだ。
設定だけで動いている、設定国民が、「こうだろう」という統計や推定に導かれて暮らし、育ち、罪を犯す。それを捜査し、捕らえ、裁くのは、いちいちプレイヤーの手を煩わせてなどいられない。彼らには、もっと手強いもの、より大きなものと面する必要があるのだ。
それにしても、酷い事件だった。
今回のように悪党が狙われていることもあれば、まったく罪のない(と、当局の調べでは思えるような)善良な国民が犠牲になっていることもあり、手口が一貫しているだけあって、無差別さはいっそ不気味だ。
首を跳ね、それをもてあそび、相手が悪党なら金品を軒並み強奪する。
これが犯行の手口だ。

「普通逆なんじゃないすかねえ。
こう……食うに困ってちんぴらやってる連中なんざ放っておいて、押し入った家から盗んでいけばいいのに」
「言うな、理解しようってのが土台間違いだ。
例え、アイドレスが理解しあうゲームだとしてもな」

刑事達はぼやきあう。
そう、まるでゲームだ。
死体で遊び、その世界の司法からは完全に死角となって暴れ回る。
一瞬プレイヤーキャラクターの仕業ではないかと疑うが、止めた。
そんな危険な妄想をアイドレス世界に反映するほど垂れ流しているプレイヤーなどいるはずがない。
だが、愉快犯だという線は間違っていないように思えた。

「どっちにしても、解決を急がないとな。
ただでさえ、国民は戦争だ事件だ本国だと、落ち着かない毎日なんだ」
「そっすね。でないと俺達が仕事する意味がないや」

空は、灰色に曇っていた。
太陽の見えない午前九時、刑事達は溜め息交じりにコートの襟を立てる。
まだ寒い日のことだった。

/*/

一方、その惨状をもたらした死神はというと、

「んまんま」

露店でチョコクレープを食していた。

「おかわりー」
「はいよ」

にゃんにゃん硬貨を差し出す手と引き換えに、出来立てを差し出す店主。
薄く黄色い生地が、ほっくりと生クリーム&チョコソースをその口からはみ出させ、透かしていて、涎が出るほどフルーティーな甘い匂いを漂わせている。今度のはバナナチョコクレープだった。

「あふ、はふ」
「猫舌なんだから無理すんなよ、嬢ちゃん」
「ほふ、もふ」

声にならないほおばる音で、返事をしてみせるのは柔らかな髪の少女。
黄色い、ツバ有りのありふれた野球帽みたいな帽子を被っている。
その下から零れる赤毛は炎である。
艶やかで、陽の光を受けて白く燃え立つ、キューティクルに富んだ髪だった。
猫っ毛らしく、風を受けてふわふわとたよりなげに優しくそよいでいるが、その顔は、まるきり猫科の猛獣と同様、いつ豹変してもおかしくない、そういう一種の狂的な愛くるしさを秘めている。
綺麗というよりは、何かの冗談で生まれた神様の愛玩物みたいに可愛いその長身の少女を見つめながら、屋台の店主は頬杖を突いた。
まったく、神様って不公平だ。
同じ設定国民でも、こうも恵まれた容貌を持って生まれてくるものと、自分のように冴えないものとを明確に分けてしまう。
それだったらいっそのこと全員同じキャラでもいいのにと思って、やめとこう、焼いたクレープを食ってくれる女性客がいなくなる、と、思い直す。

「おいしいねえー、おいしいねえー」
「ははは、そいつはよかった」

泣きそうな勢いで自分の作るものに感動する相手を見ていると、冥利に尽きる、と職業意識が刺激される。

「おかわり!」
「はいよ」

注文を受けて生地を焼き、ぱらりと包んで差し出すまで、ほんの1分。
そのたった60秒でさえ待ちきれない様子で、ふんふん匂いを嗅ぎながら、こっちの手元を覗き込んでくるこの少女のことが、店主は大分好きになっていた。

「上手だねえ、上手だねえー」
「ははは、こっちもこれが商売ですから」
「ふにゃー」

猫のような口で感心する少女。
あむあむ柔らかい生地をほおばり、むしりとる、その唇が可憐である。

「それにしても、嬉しいねえ。こんなに飽きないで俺のクレープを食べてくれるんだもの」
「うん!」

にこにこと少女は力いっぱい頷いた。
差し出す手は、おかわりの催促ではなく、彼女の持つ、最後のにゃんにゃん硬貨だった。

「ごちそーさま、おだいです!」
「ありがとうございました…ねえ、君、もし良かったら、この後遊びに行かないかい?」

笑いながら、勇気を振り絞って言う。
どっく、どく。心臓が高鳴った。

「え?
おじさんと?」
「おじ…いや、まだ二十台後半なんだけど…」

たは、っと肩透かし。
そうだよなと思う一方で、しっかりしろ、俺、これが運命の出会いだろ、と、発破をかける自分がいる。
年の差なんて、関係ない!
好きになったら一直線だ!

「んー…」

少女はクレープの包み紙を、くしゃっと潰して考えた。
上の空のような、空を見て、あごに人差し指をあてて考える、不思議な格好である。
絵ではよく見るが、実際にしている人がいるかというと疑問なポーズだ。
実際にしている人が、いるかどうかわからない。
それは、実際に、何を考えているかわからないということでもある。
少なくともこの店主にとり、この数秒の間に少女が何を考えていたか、まったく想像はついていなかった。

「ねえ、おじさん」
「ん?」
「遊ぶって、どういうの?」

きょるんと愛くるしい黄色がかった瞳がこちらの目を覗き込んでくる。
どぎまぎしながら店主は答えた。

「そりゃあ…どこかでお茶したり、買い物したり、映画見たり、カラオケとか、ビリヤードとか、ダーツとか…ボウリングもいいね」

要するに、街で遊ぶということだ。
その答えを聞いて、途端に少女は関心を無くした。

「いいや。行かない」
「え!?」
「そういう遊び、つまんないんだもの」
「そ、そうかなあ」

うん、と頷きながら、少女はにっこりと笑った。

「おじさんとは遊びたくないな、好きだから」
「え!?」

同じリアクションを繰り返してしまった。
すすすすす好きってどいどうどういうことだ。
動揺をこらえながら、聞いてみた。

「おいしいもの作る人は、好きだよ」
「なあんだ…………」

がっかりして、彼は肩を落とす。
そうだよな。所詮俺なんかじゃ、柄にもなく客を口説いてみたってこんなもんだ。
まだ日は長い。じゃんじゃんクレープを焼いて稼がなければ。

「うん、わかったよ。
おいしいって言ってくれてありがとうね」

にっこり、自分に出来る精一杯の笑顔で見送ろうとする。

ちゅ、と、その頬に冷たく湿った感触が触った。

「!?」
「誘ってくれたお礼だよ」

太陽のように屈託なく笑う少女の顔が、そう言って離れていく。
ばいばーいと手を振りながら去っていく彼女に、手を振り返しながら、ぼんやりクレープ屋の店主は思った。
勇気を出して、みるもんだ。

ささやかな幸せを得て、その日を過ごした彼が、我が身に訪れた本当の僥倖というものを知る日は永遠に来ない。
少女の言った、遊ぶということ。
それが、殺戮に興じるという意味をしか持たないことを、知る術は永遠になかったのだから。

/*/

ことん、と獅子おどしが、純和風の庭園に響く。
膝を詰めて座っているのは、一人の若い少年と、壮年の男であった。
親子のようによく似ている。

「行って参ります、父様」

親子であった。

少年の身なりは、ある意味では純和風の庭園に似合う、純和風の屋敷に、とても似合ったものであった。
しかしそれが日常の範疇で似合っていたかというと、疑問。
そういう身なりをしていた。
黒い、忍者と巫女を足して二で割ったような衣の下に、白い内衣を着込んでいて、ところどころで覗くその色が、程よいコントラストを成している、よいデザインの服であった。
だが、デザインと日常性とは関係がなく、それは明らかに普段着にするような性質のものではなく。
そして少年の傍らに、家宝のように取り置かれているものは、黒鞘の小刀。
うむ、と頷いて息子を送り出す父親にも、厳格なという表現だけでは語りきれない、苔むした厳しさ(いかめしさ)があった。
当人が生まれてくるよりずっと昔から積み重ねられた、血と歳月だけが出せる重々しさである。

「必ずや、世界の敵を、討ち果たして参ります」

深々と床に手を着き頭を垂れた少年は、そうして小刀を手に取り立ち上がる。
綺麗な所作であった。
鋼にしなやかさというものがあるのなら、それを人で表わすならば、こんな具合だろうというような、堂々たるものであった。
少年は鋼であった。
意志という名のくろがねに、使命という名の焼入れを重ねて、歳月という名の鍛錬を加えた、一振りの鋼であった。
そういう日本刀のような美が、彼の所作にはつきまとっていた。

「水の名を持つもの。そう、占いに出ておる」
「はい」
「水を、求めていくがよい」
「はい」

はいという、是認より他に言葉を知らぬようであった。
はいという、是認より他に、言葉を知らぬのであった。
東(あずま)の名を頂く、しかしてその同名なるプレイヤー、キャラクター、いかなる存在とも関わりを持たぬ、東国の一氏族。
その、当代の後継者。
それが彼、トウ=エン=スバル、その人であった。
少年は、父にして家督である男より言葉を頂戴すると、その場を辞して、襖を閉じた。
すたんっ!
と、音もなく閉ざされる襖。
やはりその所作は、切れ味のよい日本刀のようなものであった。
残されたのは、無言で座する、父・大角。(だいかく)
かぽん、と獅子おどしが再び鳴る。
満ちて溢れたるものを、一気に零して、ただの竹を切り出したそれは、また、戻る。
細い水のそこに溜まる音。
時の止まったかのような光景が再び甦る。

/*/

遠い旋律が鳴り響いていた。
人形達がそれを見上げる。
遠い旋律が鳴り響いていた。
黒い風が、それを聞く。
遠い旋律が鳴り響いていた。
紫の唇が、それを笑う。
遠い旋律が鳴り響いていた。
聞くものはもう、どこにもいない。
遠い旋律はもう、聞こえない。

/*/

目が覚めると、彼女は薄暗い洞窟の中にいた。

「やあやあ、ようこそNoahへ、箱舟へ。選ばれた者達の最後の聖地へ。君を歓迎するよ、後輩くん」

やはははは、と笑う陽気な女の声がして、それで我を取り戻す。
記憶が、なかった。

「???」

額に手をやる。長い髪が鬱陶しかったので、その際ついでに後ろへ流した。
自分がとても髪の長い、しかも女であることだけは、その時思い出せた。
馬鹿でかい胸に腕がつっかえて、髪を上げる動作が鈍ったからだ。
その服装は青い。
まるきり青いチャイナドレスであるが、センスが悪いなと思ったので、多分自分のチョイスではないのだろう。それか、記憶を失ったショックで好みがまったく変わったか、だ。

「ああ、その服は私が選んだのさー」

センスが悪いのは目の前のこの女だった。
糸目に狐顔、金髪ショートカット、長い耳。
不思議な顔立ちをしている。昔、本で読んだファンタジーに出てくる、アルフとかいう種族みたいだ。
それで、ああ、自分は記憶喪失をしていると言っても、一般教養は備えているのだなと安心した。
なにぶん知識がなければいきなり知らない世界で生き延びることは難しい。

「センスが悪いな」

センスが悪いなとはっきり口頭で伝えてやった。

「あははははー!
いや、いや、いや、ありがとねー!
でっすよねー!」

けらけら糸目の女は腹を抱えて笑い出す。

「その服は、俺が選んだ」

糸目の女の後ろから、ぶすっとした顔でサングラスをかけた、けったいな男が現れる。
髪をポニーテイルのようにして束ねている。
だけなら、別段おかしくはない。
問題なのは、その髪が、左右で白と黒とに分かれていることだ。
センスが悪いのは、服選びだけではなく彼のファッション全般だったらしい。

「前言を撤回しよう。センスが酷いな」
「悪化した!!?
表現が悪化した!!???」

やははははははと笑い転げる糸目の女を、むすりと睨みつけながら、そのポニーテイルの白黒男は前に出る。

「お前には、二つの選択肢がある」
「服を脱いで素っ裸になるか、着替えを自分で見繕うかの二択だな?」
「違う」

まったく、どいつもこいつも女というものは……と、深い深い嘆息を漏らし、男は気を取り直して告げた。

「我々Noahの仲間になるか、ならないか、だ」
「ならん」
「早っ!?
即決!!?
っていうかコンマ何秒!!!??」

五月蝿いぞ、アルハ、と、その男は女の名を呼んでたしなめた。
口調の重々しさと、ツッコミに対するそのリアクションで、こいつはなるほど会話のセンスもないのだなと判断する。
今度は直接口にしなかった。
用件を片付ける方が先だからだ。

「記憶のない人間を相手に勧誘をかけるというのは一種のペテンだ。ペテンには乗るわけには行かんな。
私は記憶がない。よってそのNoahなるものがいかなる団体か秘密結社か知る術がない。最初から懇切丁寧に教えるならともかく、いきなり二択を突きつけるような輩に返す言葉はNO一点張りだ、わかったか」
「ふむ…………」

男は考え込む。

「どうするさ、チギラー。このまんまじゃ埒があかないよー」
「別段、我々は強制的な団体ではない…が…我々の仲間にならないことで、自身がこうむることになる害だけは、伝えておかねば義務を果たせん」
「りょーかーい!」

びしっ、と口で擬音を出しながら敬礼する糸目の女。
どこからともなく取り出されたのはクリップボードだった。

「順を追って説明しましょー。
まずここは、私達Noahのアジトです。どこにあるのかは秘密です。
見てのとおり洞窟にあるけど、見てのとおり、明かりもあれば、こんな文明的な道具もありまーす」

マジックペンできゅっきゅとシンナーの真新しい匂いをさせながら、彼女はクリップボードに丸を書いた。
その中に、「どーくつ」とひらがなで記入する。

「私達Noahは、正式名称を、えーと…………
えーと…………」
「…………」

糸目の女が横目で男に目配せをする。
男は目を閉じ応じない。

「えーと、確か、の、のっと…おあー…」
「Not Ace‘s Hostel、英雄ならざるものたちの宿、だ」
「そうそうそれそれ!」
「スペルからどう考えてもオアは出てこなかっただろう、今」

ツッコミを入れてみる。
糸目の女はやははははと笑った。
どうやらこれが彼女の芸風らしい。

「まあ、和名の方がなんだか無駄にカッコイイ感じだけど、要するに寄り合いなんだよね。
このアイドレスの世界の中で、エースじゃない連中が集まって、相互扶助?みたいのをするっていう」
「ほほう…で、その労働組合が私に何のようだ」
「労組じゃなくってー!」

クリップボードに再びペンが走る。
ACE、Not−ACEという二つが丸の下に書き込まれた。丸とNot−ACEの方が結び付けられている。

「のっと・えーす!」
「ふむ。で、エースとは何かね」
「偉そうだな、この後輩くん候補…」

さりげなく候補に格下げしながら女は説明を続けた。

「エースっていうのはー、こう…強いんデスよ!」
「ははは何の説明にもなってないではないか馬鹿め」
「チギラー、この子私をいじめるー!」
「お前の頭が悪いのが、八割方の原因だと思うが……」

再び嘆息する男。

「手っ取り早く結論から言うぞ」

そうして彼は、自らの着用しているサングラスに手をかけた。

「お……」

下から現れたのは、右だけ白目と黒目が反転した、異形の瞳。

「俺達は、この世界に産み落とされた、一種のエラー体だ」

/*/

説明を引き受けたチギラという男は言った。

「この、髪も、目も、本来ならばありうべからざる存在だ。
にも関わらず、俺はこうしてここにいる。
ありうべからざる存在が、ありえてしまった時、それはどうなると思う?」
「普通は定義の方が見直されるな。科学の発展の歴史なぞその繰り返しだ」
「だが、この世界では違う」

チギラは再びサングラスをかけなおしながら、クリップボードの白い領域を指差す。

「ここはアイドレス。
情報が世界を構築し、情報が世界を定義する、限りなく情報のみに近づけられた世界。
そして、『ゲームの中』、だ」

いそいそと、嬉しそうに糸目の女、アルハはクリップボードに『アイドレス』と書き込んだ。

「ゲーム。そう、ゲームなのだ。
ゲームにおいて、正しい処理がなされない情報のことを、何と言うか、知っているか」
「いや知らんが」
「バグ、だ」

アルハが、バグ、と追記して、隣に『=虫』と書く。

「俺達は、虫けらだ。
あってはならない存在だからという、たったそれだけの理由で存在を否定される、世界にとっての、虫けらだ」
「そう卑下する必要はなかろう。虫といえば世界最強の繁殖数を誇る生態系ではないか、何を恥じている?」
「…………アルハ、確かにこいつは扱いづらい。アドラに来てもらった方が良かったかも知れん」
「でっしょー?」
「何の話か知らんが言われようが随分なことだけは私にもわかるぞ、おい」

クリップボードに、『後輩くん候補(仮)』と、アルハが書き込んで、その横に『=いろんな意味でお邪魔虫』と付け足す。
チギラがそれを溜め息をつきながら消してやると、アルハは不服なようにイーっとこちらに舌を向けてきた。

「虫というのは、つまり、通念でいうところの比喩だ。それだけ俺達の扱いは常人に比べて酷いということの、な」
「やーい、通念なしー」
「アルハ」
「はあい」

やっはははは、と悪びれずに糸目をさらに細くて笑うアルハ。
チギラは、これ以上話を横道にそれさせるようなら、もう喋るな、と念を押してから説明を再開した。

「バグは、消される。だが俺達は生きている。
設定だけだろうが、生きている。ゲームの中だろうが、生きている。
それが、消される。
どういうことか、お前にもわかるか?」
「通念で言えば、消すとは殺すの隠喩にも使われることがあるな。死ぬのかね」
「そうだ」

アルハから取り上げたペンでチギラは『世界=ゲーム』という構図と、『バグ=俺達』という構図の2つを書き込む。

「バグをなくすためには、デバッグという作業が行われる。
これを担当するのがエースならびにそれに準じる、アイドレスプレイヤー達というわけだ」
「おお、やっと話がつながったな。随分かかったではないか」

その偉そうな口振りに対し、何か言いたそうにしているアルハを目で牽制するチギラ。

「いいか。
俺達は、殺されたくない。
だが、世界は殺してくる。
生き延びるために力をあわせるのが、俺達Noahの存在意義と、そういうわけだ。
仲間にならないデメリットを理解したか」
「したぞ」

うむ、と腕組みしながら頷いた『彼女』は、だが、その場で勢いよく服を脱ぎ出した。
慌ててアルハがチギラに飛びつき目隠しをする。

「ちょ、ちょっと、何をいきなりしてくれちゃったりしちゃってるかなー、この子はー!?」
「仲間には、ならん。恩義も受けん。よって服は返却する。
明快なことではないか」
「そうじゃなく、常識としてだねー…って、ええ!?」

素っ裸になった『彼女』が言った言葉の意味を、ようやく理解して、アルハは今度こそ目を丸くした。

「き、君、死にたいの!?」
「馬鹿め、死にたいなら服を脱がずに死ぬに決まっているだろう」
「そうなの!?
いや、っていうか、そうじゃなくて……」
「Noahに入らず、1人で生きるというのだな」

背後から目隠しをされたまま、チギラは言った。
『彼女』はそれに対して平然と頷き、また、口にする。

「そうだ」
「そうか」

それきり彼は何も言わなかった。

「え、え……
ちょっとチギラ、勧誘止めちゃってもいいのかなー?!」
「言っただろう。
俺達は強制的な団体ではない。相手に確たる意思があり、また、必要最低限の危険性を伝えたのであれば、無理矢理にする必要はないはずだ」
「それは、そのー…建前?っていうんじゃない、かな?
どうかな?」
「建前ではない。本音だ」
「ええーっ!?」

やは、やは、やは、と、困ったように笑うアルハ。

「行くがいい」

チギラは告げた。

「だが、なぜだ」
「―――そんなもの」

ふ、と『彼女』は、笑って、そして苛烈に言い切る。

「自分の体に聞いてみろ。
血の匂いが染みついた二人組みの、言うことも、その仲間入りにも、私は興味がない。
それだけのこと」

そのまま『彼女』は、洞窟の、明かりのない暗がりの方へと消えていった。

/*/

「やっはっは、行っちゃったねえ……」

床に脱ぎ捨てられた青いチャイナドレスを、拾い上げるアルハ。
その糸目が丸く見開かれる。

「あり?」
「どうした」
「いや…」

ほら、これ、と、アルハがつまみ上げたのは長い髪の毛。
その色は綺麗な銀色をしている。

「おかしいねえ……」
「む……」

一本の髪の毛を見て、首を傾げあう二人。

「一本ぐらいなら、ってことも、あるかな?」
「…………」

何故、その髪の毛がおかしいのか。
それは彼らにとり明白なことだった。

去っていった『彼女』の髪の色は、彼らの記憶の中で、青いチャイナドレスに似合う、美しい青色をしていたからだ。

「おかしいねえ……」

手の中のドレスと、髪の毛とをしきりに見比べるアルハ。

/*/

雷鳴が轟く。
外は豪雨であった。

「む……」

それでも、『彼女』は躊躇うことなくその中へと踏み出していく。
足の裏が感じるぬかるみ。
面を叩く雨垂れ。
森に、響く旋律――――
冷え切った洞窟の中を歩いてきた体が、さらに熱を奪われていく。
しかし。

「――――しかし、それでも寒いとは感じないのだな、私の体は」

これが、私のバグか、と思う。
あの二人組みが語っていたことのうち、それだけは信じても良さそうだった。
常人は、こんな状態で寒気を感じることもなしに歩けはしない。
我慢をしているというのではない。
寒くないのだ。

「―――――――――」

無言のうちに、空を見上げた。
軋む。
記憶のないことに、ではない。
記憶がなくても一向に頓着を示さない、自らの人格というものに。
その心の空疎に、胸が、軋む。

「こんな私を待っているものなど、きっとどこにも居りはしないのだろうな…………」

それでも、さっきの二人のところに戻ろうという気は起こらなかった。
ただ、進む。
柔らかい足の裏を、小石でずたずたにし、泥まみれにし。
長い髪を、曇天豪雨の灰色に、同じ鈍色で染め上げて。
引きずりながら、進む。

「私の、私の名前は――――」

/*/

そして物語は始まる。

/*/


[No.5704] 2009/09/15(Tue) 18:27:59
お蔵だし08:E’s (前編−下) (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

【E‘s:君の名前】

/*/

旋律が洞窟に鳴り響く。
軽やかな旋律である。閉空間の残響を計算に入れた、ふわりと包みこむような、心に余韻たなびく音。

「ふあ」

ゴザに毛布だけという粗末な寝床で涎を垂らしながら起き上がったのは、あの、赤毛の少女であった。
当然寝ていたわけであるからして、帽子などかぶっているわけもなく、柔らかな髪に寝癖が着き放題である。
くしくし顔を手で洗うと立ち上がって、毛布を畳み、欠伸する。
髪だけではなく、まるきり猫のような仕草をする少女だ。
とたとた音もなく歩き、旋律の源へと少女の足は向かっている。

「こら、寝癖ぐらいは直さんか。
と、いうか、今の今まで寝ておったんかい、お主」
「んおー、じいちゃん」
「人のことは名前で呼べと言うただろうが。まったく……」

現れたのは、長い髭を蓄えた、逞しい矮躯の老人。
その髪も髭も既に白いが、まだどこかにちらほらと、黒や灰色が混じっていて、丸く突き出た腹が筋肉で盛り上がっているように、寄る年波を感じさせない。
Noahの鍛冶師、橘玄翁(たちばな げんのう)である。

「ふあい、じいちゃん」
「もうええ。ほれ、急がんと皆を待たせてしまう」

せかすように、孫と祖父ほどの年の差のみならず随分離れた背丈のその背中を押す。

「あん」
「ほれ、ほれ、ほれ!」

後ろから押されて仕方なく小走りになる少女。
その身長は、170の後半にも達しようかというセンチメートルである。
洞窟とは言っても、あちこちに明かりが灯されており、慣れたものには危なくない。
黒目の大きな金色の目で、その道の先にいる人影を見やる少女。
彼女よりさらに頭1つはでかい、この暗いのにサングラスを着けた屈強そうなよく絞り込まれた五体を持つ男や、その腕にぶら下がるようにして歩いている、彼女より頭1つは小さい糸目の女。

「やあやあおはよう孫娘とそのおじいちゃん」
「お前さんがそんな口を聞くからこやつの口の聞き方がいつまで経っても直らんのだぞ、アルハ」
「いやあ、そんな」
「誉めとらんわ!」

照れるアルハに、ったく、と顔をしかめる玄翁。
サングラスの男は寡黙そうなその見た目とは裏腹に、折り目正しく頭を垂れて、年長者への敬意を示した。

「おはようございます、橘翁」
「おう、おはよう…二人もチギラを見習うようにせんとな。
どうだ?その後、『竜哮』の様子は」
「お蔭様で。ただ、このところ少し弾道がずれるようになりました」
「お前さんの使い方は荒いからの…近いうちにまた手を入れてやる、持って来い」
「ありがとうございます」

ほえー、と、そのやりとりを目を丸くしながら眺めているのは、二人の女達。

「大人のやりとりって感じだねえ、大人だねえ」
「そうっかなー?普通じゃない?
というか、その括りで言うとまるで私が大人のカテゴリーに入ってないみたいに聞こえるんだけどー」
「うん」
「あれえー!?」

等と、アルハが頓狂な声を挙げたりしつつ、そんなやりとりをしながら四人は洞窟の奥へと進んでいく。
徐々に旋律源は近づいてきている。
だが、不思議なことに、近づけば近づくほど、その音の響きは大きく強くなるのではなく、軽やかに繊細にほどけている。
これでは音の源などは、絹のような居心地のよさに包まれているのではないかという、ほどである。
開けた空間が見えてきた。
一際明るい照明が、天井からいくつもの蝋燭とそれを乗せた小さなシャンデリアという形で成されている。
その奥にある、玉座のような椅子に腰掛けているのは、白い白いやせぎすの男。

「これで揃いましたね」

その白い男の唇から、音楽的な声が響く。
旋律は止んだ。

「まだ、絶風(ぜっふう)の奴が来ていないようだが」

チギラが言う。
いいえ、とアドラは首を横に振った。

「同志なら、既に、ここに」

す。
と、椅子の後ろから、明らかに椅子よりもサイズの大きな、黒塗りの男が現れた。
その挙動から、屈みこんで隠れていたわけではないのは明らかだが、では、どうやって姿を隠していたのかというと、この場にいる誰もがわからぬことであった。

「ようこそ、英雄ならざるものたちの宿へ集いし兄弟達よ」

扇状に並ぶ4人と、傍らに立つ1人とにそう呼びかけて、盲目の白き貴人・アドラ=ハースティラは会合を始めた。

/*/

「まず、始めに。
チギラさん、皆さんへと報告をお願いします」

促され、頷く。

「先日見つけた新たなエラー体は、Noahに帰属することを拒んだ」
「え、だれだれ、どんな人?」

赤毛の少女が口を挟む。
それをアドラがとりなした。

「彼女だけは、外を出歩いていましたから。チギラさん、説明してあげてください」
「長い髪の女だ。とても小柄で…アルハより、さらに小さい。お前から見れば、頭2つは丸々小さいだろう」
「やったら胸がでかくてねー、あと、偉そう!」

アルハが聞かれもしないのに補足する。

「あー」

少女はアルハの平たい胸を見て納得した。

「それは偉そうだ」
「偉いの定義が違くない!?」
「さておき」

脇にそれそうになる話題をチギラが取り戻す。

「憂慮すべきことではある。
その女、確かに鼻は多少効くようだったが、どう見ても戦闘に向いていない」
「なるほどー。それはあんまり偉くなさそうだなあ」

ふに、と少女は猫のような口をして言う。
黒塗りの男が、ぬう、とそこへ言葉を挟んだ。
鉛のような声だった。

「トウ家の連中に動きがあった」
「ほう」

と、長い顎鬚を楽しげにしごくのは玄翁。
皺と共に業の深い、職人ならではの刻み方をした年輪が、その顔には浮かび上がっている。

「やっこさんらが動きよるか」
「若造を1人、繰り上げただけのこと」
「あそこも今人手不足だもんねー」

やっはははと歯を見せて笑うアルハ。

「あの元後輩くん候補(仮)の、出現でも予知して対応させたのかな?」
「そんなところだ」

黒塗りの男・絶風は、それだけ言って、口を閉ざす。
肌も、髪も、服も、その佇まいも何もかもが黒く、そして重たい。
唯一、瞳だけが金色である。
チギラの見た目が強靭に引き絞られそれでも盛り上がった無駄のない戦士の肉体ならば、絶風の肉体は、さながら巌のようであった。
大きく、強く、そして揺るがない。
たったそれだけ。
だが、それだけ。
それだけの印象で構成された人間は、もはや人間を通り越して自然物のような風格を持つ。
その、自然物のような風格を持つ男が、黙る。
それでもう、いるだけで、身動き1つしなくとも気にならない。
それこそが、彼の隠行のからくりの正体であった。
あまりにも自然である。それだけで、人は気配を人と感じわけることが出来なくなる。
そういうものが、絶風の技術であり、そういうものが、絶風のNoah内で知られている人格を現していた。
つまるところ、得体の知れないがとにかくそこにいつもいる、だ。

「仲間ではないとしても、無碍に、その命が狩られるのを見過ごしているわけには参りません」

アドラが言った。
その言葉は染み入るように、彼らの胸で旋律を刻む。

「絶風さん。また、テラ領域へ降りて、牽制を行ってください」
「応」
「チギラさん、アルハさん。天領側の情報操作をお願いできますか」
「おっまかせー!」
「了解した」
「すまんが、アドラ殿」

玄翁が言った。

「わしはまた居残りかの?」
「ええ。薫さんを見てやってあげてください」
「ふむ……ま、鍛冶師が前線に出る意味もないし、よかろうて」

しごいた髭が、指に絡む。
最後にアドラは、暇そうに寝癖を手で抑えて直していた、少女の方を向いて告げる。
その気配に、彼女は、ん?と振り返った。

「キリヒメさん」
「うん」
「あなたがその、トウ家の方を抑えてください」
「遊んでいいの?」
「ええ」

ですから……と、歌うようにアドラは、彼女の名前を旋律で呼んだ。

「その名の意味を、存分に果たして来て下さい。
斬姫(キリヒメ)さん」

にんまあ〜…っと、少女の顔が笑う。
金色の瞳が、猫のようにすぼまった、獰猛な焔の獣の笑み。

「いってくるー」

声は無邪気な脳天気。

/*/

「にしても…」

大丈夫かなーとアルハは、退屈な道中の穴塞ぎに喋り出した。

「何がだ?」
「キリヒメ1人で行かせて、ちゃんと仕事するかなーってことー」
「…………」
「否定しきれませんか!!」

チギラが沈黙したので驚きながらも、思う。
自分達のことを、ねーちゃん、にーちゃんと慕う彼女。
猫のように人懐っこく、それはほとんど猫にしても度を越している。

「これまで仕事だけは失敗させたことはなかったろう、あいつは」
「代わりに、いつまで経っても仕事しないとか、余計なことばっかりするとか、ありましたー」
「…………」
「…………」

今度は二人して黙ってしまう。

「情報操作って言っても、半分はあの子のやらかしたことの始末だしねー……」

ふ、と、苦笑する。
それでも憎めない。
天真爛漫な彼女を見ていると、正直、救われる。
薫がキリヒメに憧れているのも、そういうところのせいだろう。
生き延びるために、Noahがやっていること。
それは、殺されないために、相手を殺す、血生臭いマッチポンプ行為にすぎない。
先の見えない生活で、それでも笑顔でいられるのは、あの子みたいなのがいてくれるからだ、と、アルハは口が裂けても本人には言わないようなことを思いながら、その細い頬に浮かべた苦笑を微笑みにした。
チギラが言う。

「俺達は俺達で、成すべきことをするだけだ」
「うん!」

にこにこと、その逞しい腕に組みつくアルハ。

「くっつくな」
「腕組みー」
「しない」
「してよー」

じゃれあいながら、森の中。
雨上がりの濃い霧を、男と女が、ふたーり。
だが、彼らは気がつかなかった。
その道程のすぐそばで、ぬかるみに刻み込まれた1つの足跡が、突然途中で途絶えていることに。
時刻は未だ薄暗い、早朝であった。

/*/

体が重い。
首筋がやたらと痛い。
目もなんだか痛いし、耳の下あたりも痛い。
全身が軋む。
ねっとりと、普段とは異なる汗が吹き出ていて、唾もひどい味だ。
喉が膨れて呼吸するのも辛い。
おまけに、吸い込んだ空気で肺まで軋む。

(こりゃあ……)

どうにもならないな、と、少年は心の中でだけ、うめいた。
傍らではメイドがキンキンに冷えた氷水で手ぬぐいを絞っている。
わけのわからない光景に、彼、トウ=エン=スバルは改めて後悔する。
人助けなんて、するんじゃなかった、と。

/*/

星空だけは、どこにいても変わらないな。
スバルは砂漠の夜に腰掛けながら、そんなことを思っていた。

「…………」

牡牛座を探す。
そう、あれだ。あの中に、昴という星がある。
ぎゅ、と胸の前で握り締めた拳。
母様、僕は、まどかはここまでたどり着きました。
瞬く星は素直だ。
乾季と雨季ぐらいしか季節のないこの国では、空を遮るものが何もない。
海に取り囲まれ、その海と、向き合う形で街を四方に置いている。
水の名。
統計上、国民がそれを殊更多く持っているのは、この国しかなかった。
心(ハート)の形をした島国、冗談のような愛国家、テラ領域の中流国。
レンジャー連邦。
年寄り衆の下したお告げが正しいのなら、この領域で『それ』と出会うはずだった。
アイドレスのバグの化身、『E‘s』が。

「設定国民唯一の、バグを狩る一族、か…………」

信じているわけではなかった。
旧家だの、名家だのというところが誇っている伝統など、話半分に聞く位で丁度いい。
そう、その中で暮らしている人間として、切に思う。
でなければ、あまりにこの一族は呪われている。
時には人の形を取るバグを、同じ設定国民を、ただ、バグだからという理由だけで殺す。
そこに正義はあるのかと悩んだ時期は遥かに昔だ。
今はもう、彼はその手を血に染めるための第一歩を踏み出してしまっている。
ああ、星空は美しい。
人の手に、届かないから美しいのだろうなと、彼は思う。
遠い浪漫だからこそ美しいというものも、この世には確かにあるのだ。
正義のための人殺しほど胡散臭いものはない。
だからスバルが幼い頃たどり着いた答えは、『これは、生き残りを賭けた戦争なんだ』という真理。
バグがはびこれば、アイドレスは世界そのものが不安定になる。
そうなれば、真っ先に煽りを食らうのは、プレイヤーではなく、もっともか弱い設定国民の自分達なのだ。
誰かのためのなどという、口幅ったい理屈はいらない。
ただ、運命に抗えない誰かの代わりとして、ここにいる。
たまたま自分が、その誰かではなく、代わりの役をしているに過ぎない。
そういう悟りを、スバルは齢14にして早くも得ていた。
風が砂塵を巻き上げる。
口に入り込まぬよう引き上げていた砂避けが、その風にはためいた。

「寒い、な」

ぽつり、呟く。
海と、陸との蓄えた熱量差が、強い風を生んでいた。
旅行者を装ったていではあるが、今の彼は暗殺者だ。
正規のルートから、記録を残して入国するわけにはいかない。
地走りが用意したリンクゲートを経由して、直接砂漠に落ちた。
だから、スバルはこの国の昼の顔というものをまだ知らない。
愛の国と呼ばれるほど、浪漫を全力で掲げた藩国だ。
少し、それを、この目で直接感じたかったと思う。
何故、この国には水の名が多いのか、調べたのは図書館藩国でのことだったが、各国の事情に精通した吏族を運良く掴まえて聞き出しただけなので、その由来まではわかっていない。
それが知りたかった。
尻を払って立ち上がる。
水平線に見える遠い明かりは民間の船舶だろう。灯台がそれを導いている。
世界は眠らない。
そこに暮らす人々が、真には眠らぬように。
行こう、と、スバルは決意する。
これから自分が殺そうとする相手。
それを知りたいと思うのは、まだどこかで罪の意識を感じているからだ。
それを持ち続ける限り、おそらく自分は相手を殺せないだろう。
だから、もう、行くのだ。
星を見て、己のルーツを思うのは止めだ。
風を見て、この国を思うのは止めだ。
水平線を見て、甘い答えを求めるのは、止めだ。
誰も己を灯台のようには導いてはくれない。
誰も風に乗せた追憶など理解してはくれない。
だから、自分の答えは見上げた星ではなく、自分の中に見出すべきなのだ。
だからスバルは歩き出した。
まずは目に見える、あの街を目指して。

その時ふと、行く道先を照らす月影の、その輪郭が崩れたような気がして、もう一度だけ彼は空を見上げた。

空から人が、降って来た。

/*/

どぼおおおおん!!!!

盛大な水音が夜の静寂と共に聴覚をぶち抜く。

「!!」

人影はすぐ近くのオアシスに落ちたようだった。

(何だ!?)

純粋な困惑が湧き上がる。
同時に嫌な予感がした。
単調な見た目に反して意外と小高い砂丘を駆け上がり、今度はそこを滑り降りる。
オアシスは公園になっていた。
と言っても、ジャングルジムやシーソー、鉄棒があるような類のものではない。
観光名所として整備された、ベンチや囲いのあるものだ。
その、囲いのロープを飛び越して、立ち入り禁止の札を無視し、駆けつけた泉に、

「おん、な…………?」

人影は、裸の女になって、浮かんでいた。

非常な小柄、そして、髪が長い。
水面いっぱいに、体よりも大きく広がっている。
星月夜に照らし出されたその裸身は、濃い肌色。
彼の目を引いたのは、だが、突き出たような規格外の胸の張りや、整った端正な顔立ちなどではなかった。

「青い、髪だと…………?」

それはありうべからざるべき色。
北国の白でも、南国の金でも、
はてないの赤でも、東国の黒でも、
そして西国の灰色でもない、異端の色。
藍色の夜に透明な、水色に限りなく近い、青。
咄嗟に構えて腰裏の小刀を抜く。
殺すべき標的だ。間違いない。
だが、あまりに唐突すぎる。
そして、あまりに無防備すぎる。
黒塗りの刃を、晒したはいいが、そこで彼に迷いが生じた。
殺すこと。そこまでは覚悟していた。
だが、実際にどう殺すか。
それを考えていなかった。

「いい、のか……?
こんな、あんまりにも簡単で…………」

もっと苦難の道程を想像していた。
妨害があって、抵抗があって、探索の日々と、潜伏の日々と、そういう、物語を想像していた。
だから彼は戸惑った。
今、飛びかかり、どこにでもいい、深々と刃を食い込ませれば、それで任務は達成だ。
だが、
だが―――――――

「裸の女に襲い掛かる、なんて、まるきりただの暴漢じゃないか…………!!」

苦難の代わりに降りかかる苦悩を、若い倫理が受け止めかねた。
そこまで考えて、はっとする。
今は、夜だ。
ここは砂漠。
服を着て砂上に立っている自分でさえ、寒いのだ。
まして水の中に裸で漂っている、そんな状態は、もはや寒いとは呼ばない。
凍死寸前と言うのだ。

(どうする、どうする――――!!?)

手を下さずこのまま見守っていれば勝手に相手は死んでくれる。
だがそれは、同時に1人の人間を見殺しにしたことにもなる。
手を汚す決意と覚悟は持っていたはずだった。
だが、人を見殺しにする決意と覚悟までは、心に備えてこなかった。
こうして岸辺で立ち尽くしている間にも、時刻は刻一刻と致命的な秒を刻んで原型を留めず砕いている。
あるいは、既に――――――
女は、死んでいるかもしれなかった。
ショック死。
いきなり零下に近い水に叩き落された時点で、大体の人間は普通心臓発作を起こすからだ。

(あああもう、えい、くそ、落ち着け!
どうした僕、何を混乱してる!)

自問するまでもなく、頭の中は極限まで状況にかきまぜられていた。
何もしない。
それがもっとも楽な選択肢のはずだった。
だが。
人を、1人、殺す。
その重大な局面で、もっとも楽な選択肢を選んでもよいのか。
それが、スバル最大の迷いとなっていた。
真面目すぎる思考回路はパニックを起こして、彼を衝動的な行動に駆り立てた。
つまり――――――

「おい、大丈夫か!!」

後先考えず、零下に近い水の中に、よりにもよって着の身着のままで飛び込むという暴挙に。

/*/

想像以上の衝撃が体を貫く。
浸透する、と形容出来るような、そんな生易しい感覚ではなかった。
冷気はある一定のレベルを超えると肉体にとって物理的な衝撃になる。
それを肌身でスバルは覚え込んだ。
彼が暗殺者として鍛えられた肉体を持っていなければ、過酷な訓練を潜り抜けた経験がなければ、この瞬間に確かにショックで絶命していたことだろう。
警告していた立ち入り禁止の札は伊達ではなかった。
服が重たい。
足がつく程度の深さなのに、水を吸った服に際限なく体温を奪われていく。
吹き晒す強い風で、気化熱がまた絶望的に体を冷やす。
自殺行為だ、と、理性が今更正論を吐いてきた。
もう遅い、10秒前に言ってくれ、と、本能が泣きを入れながらも抗議する。

「おい、しっかりしろ!」

半ば自分の意識を保つために必死になりながら、彼は女の両脇を、後ろから抱え上げて体を引き起こす。
うっぷ、と、顔に手に足にとお構いなしで絡みついてくる長い髪が、その動きの邪魔になる。

「くそ、こんなに好き放題伸ばしやがって!」

悪態をつきながら、それでも懸命に岸を目指して泳ぐように歩く。
重い。
いや、軽いはずだ。
女性にしてもとびきり小柄なその女のみならず、男性にしては随分小柄な自分の体も含めて、100kgは絶対行ってない。下手をすると80kgも危うい。
重いと感じるのは、だから筋肉があまりの低温でうまく機能していないせいだ。
体が水からどんどん上がっていくにつれ、全身が震えているのがわかる。
指先の感覚さえおぼつかず、最後の力で女を地面に横たえる。
はぁ、はぁ、はぁ――――
疲労と消耗で乱れた息。
裸の女を見下ろしながら、俺、何やってんだろう、と、絶望する。

「―――――――」

やけに額の広い、その女の目が、ゆっくりと開いていった。
端正な太い眉に似合いの、格好のいい目付きをしていた。
彼女は口を開く。

「その、なんだ…………
見つめられると、照れるではないか」

ぽっ、と女の頬に朱が差したのを見て、スバルは眩暈がした。
まったく平気な顔をしているその様子に、気が遠くなって――――――
結局そこで、トウ=エン=スバルは情けなくも気絶してしまった。

/*/

「急性肺炎だね。死ななかっただけありがたいと思うように」

はい、お大事に、と薬を出した町医者に、ありがとうございましたと頭を垂れる。
彼女のその様子をベッドの上から終始見守っていたスバルは、何か真剣なことを考えるよりも、もう、世の不条理にひたすら泣きたくなった。
水の中に、自分よりも長く浮いていたはずの女が、ぴんぴんしていて自分だけがハイフィーバー。
そして何より――――

「…どうした、そんなに見つめて」
「いや…………」

彼女の髪は、明るい室内灯の下で見ると、はっきり綺麗な鈍色だった。
肌の色濃さとセットで、丁度西国人の一般的な特徴を示している。キャラの濃い、エキセントリックなその顔立ちも、まんまそれだ。
月の光は青い。また、灰髪という色素の薄さが、水の中という状態と相まって、青い髪などという錯覚を起こさせたのだろう。
勘違いであんなに葛藤したのか、とか思うと、もう恥ずかしくて死にそうだ。

「いい眉毛をしてるな」
「個人的にはおでこがチャーミングポイントではないかと思うのだが、いかに」

投げやりに放ったどうでもいい感想に返ってきた答えにとどめを刺され、ぐったり身を安宿の硬いベッドに沈みこませる。
おまけに相手の格好はメイド姿だ。
もう、わけがわからないにも程がある。

「さて」

水を切った手ぬぐいを額に乗せられる。
あ……と、スバルは思わず声を漏らした。キンキンに冷えたその感触が、熱で重たい頭に心地よかった。
その反応を満足げに見やった女は、腕組みしながら真面目な顔で言い放った。

「まずは自己紹介から始めようではないか」
「…トウ=エン=スバル。スバルでいい」
「スバルか……いい名だな」

女は誉めた。

「しかしどうせならエンの方が良くはないか?
スバルはどちらかというと、やはり男の名前だろう」

その言葉に、ぎくりとする。

「…………見たのか」
「まあ、着替えもあるしな。私見だが、さらしをしてるとただでさえ小ぶりな胸が将来困ったことになるのではなかろうかと思うがいかに」
「ううう、うるさい!!」
「あ、こら」

声を、張り上げたと言っても全身ぼろぼろの状態でのことだ。
かすれて聞き苦しい、ひどい音が喉から漏れてきた。
自分で吐き出した声の勢いにも耐えかねて体が咳き込む。
その胸を、よし、よしと撫でられた。

「大きくなーれ、大きくなーれ…」
「殺す。絶対殺す」

そう。
彼ことトウ=エン=スバルの正体は、少年ではなく、少女だった。

/*/

「やはり分家筋から選ぶべきでは」
「しかし、円(まどか)殿は非常に優秀です。その心根も清い」
「だからといって、歴代の慣習を破るわけにもいかんでしょう」
「慣習がなんだっていうんですか!
そもそも後継ぎが男でなくちゃならない理由なんて、慣習以外の何物でもない、非合理的な物の考え方だ!」
「まあまあ、そういきり立たずに」
「どちらさんも、落ち着いて」

当人をよそに紛糾する会合を、当時のまどかはどちらかと言えば冷めた目付きで見ていた。
50畳はあろうかという畳敷きの和室で、ずらりと並んだいい大人が、これでもう何日も同じ会話を繰り返しているのだ。冷めた目で見たくもなろうというものだった。
やれることと言えば、厚い座布団にずっと正座しているだけ。これでは正座の訓練だ。

(あーあ、無駄だなあ、もう)

こんなことならばあやとお手玉でもして遊んでいる方がよっぽどましだ、と思う。
今日も進展なしか、と、ぐだぐだになりそうな話の流れによそごとを考え出した時だった。

「要は、お役目を勤めるだけの力があればよいのでしょう?」

立ち上がり、一同の耳目を集めたのは、誰あろう彼女の実父・大角だった。

「まどか」

促されて、澄まし顔で立ち上がる。

「力を示しなさい」
「はい」

そう言って投げつけられたのは、茶碗。
途端、齢13の少女が抜き身の刀となる。
椀が、空中で二つに割れた。
割ったのは、手にした茶菓子の包み紙であった。
どよめきがあがった。
皆、体の運び一つで相手の力量を見極められる程度には、手練れの者達ばかりなのだ。
さすがに今起こったことの凄みは理解していた。

「女では、体に不安がある。強いて言うならそれだけのことで、たまたま今代は女しか後継ぎがおらんという、それだけのことでしょう。男でなければどうしても道理が通らんと言うのなら、男扱いをすればいいだけのこと」

そう、大角は言い放つ。

「私は娘を女だからとて甘やかして鍛えたことは一度もない」
「しかし…………」
「なあ…………」

互いの顔を、うかがうようにしてざわざわとする一族の男衆。
その中から、ぼそりと呟きが漏れた。

「当主殿が後妻を娶って男児を生ませていれば、それで済んだものを……」

次の瞬間、まどかは飛び出しかけた。
完遂出来なかったのは自制したからではなく、単に遮られたからだ。
当の父親に。

「あ…………」

己の失言を察し、救いを求めるようにあたりを見回したその男の視線は、しかし黙殺でもって応じられた。
大角は、何も言わなかった。何一つ、動くことはしなかった。
ただ、黙っただけだ。

「まどか」
「は、はい」
「お前もそれでよいな?」
「はい」

言外の圧力を感じて黙った男とは別に、父の胸に渦巻いているであろう、言外の感情を慮って、まどかはとにかく首肯した。

「では、しきたり通り、14の齢を持ってまどかをこの護国の一族の正式な一員として認めると共に、以降は男児として扱い、次期当主としての教育を受けさせる。よろしいですな、皆様方」
「う、む……」
「異論はないが……」

まだ、ざわついている席の中、ならば御免、と大角は部屋から下がった。

/*/

「父様」

まどかは慌てて追いすがった。
時刻は既に夜、長い廊下には行灯が灯されている。

「男として、というのは、つまり、その…」

その品物の名を口にしようとして、さしものまどかの顔にも恥じらいが浮かんだ。
そうしていると、髪型も、凛々しい顔立ちも普段は少年のような彼女に、年頃らしい華やかさが宿るのだから、不思議なものである。

「ピドポーション…を、使えという、ことでしょうか?」

秘薬。
文字通り、秘中の秘として一部のキャラクターにのみ使用がされている、性別転換薬だ。
娘のその言葉を聞くなり、大角は笑った。
皺こそあるが、まだ若い、男の笑顔であった。

「案ずるな、まどかよ。
お前がそのようなことをする必要はない。ただ、このままではいつまで経っても面倒な話が続いて、お前が退屈するだろうと思ったのでな」

パフォーマンスよ、パフォーマンス、と、そう吹いて見せた父に、彼女は思わず声を上げて笑ってしまった。

「あ、あははは、あは、父様、それはいくらなんでもやりすぎです」
「ん?
だが実際これで問題は片付いたろう。お前は元々、私の後を継いでくれるつもりだったのだろう?」
「……はい、もちろん」

今度の笑みは、誇りに満ちたそれであった。
母のことを思い出させられ、内心さぞや辛かろうと心配を、したつもりで気遣われてしまっている。
我が父ながら、いい男だ。
そう、まどかは誇りに思った。
同時に、こんな父の後を継げるのであれば、それは、どんな苦い仕事であろうと、誇りを持って遂行できる、そう思えたのだ。
だから、誇らしかった。

「さすがですね、父様」
「私が、さすがか」
「さすがです、東大角」
「そうか、さすがか」

言葉を投げあい、戯れる。
くしゃっと頭を撫でられて、それでまどかは嬉しくなった。
女の子にする仕草ではないかもしれなかった。
けれど、これをしてもらえるのなら、私は父様の息子でいい。
父様の息子として恥じない男でいよう。
そう思った。
思ったのだ。

/*/

抱えられるものなら自分の頭をそうしたかった。

「人助けのつもりで自分が助けられていては、ざまあないとしかいいようがない……」

男らしさとはとても縁遠いシチュエーションだ。

「ははは、人生なんて案外そんなものだ、気に病むことはない」
「もういっそ殺して…」
「殺すといったり殺してといったり、せわしない奴だな。そう命を粗末に扱うのは感心せんが」
「それより!」

と、スバルは会話の流れを無理矢理切った。
話していると、朦朧とするが、これを解決しないことにはどうにも寝付けない。

「お前こそ、一体誰なんだ」

じろ、とねめつけて見せる。

「ふむ、それなのだが」

メイド姿の女は言った。

「生憎私は記憶喪失なのだ。故意とは言え、一方的に自己紹介をさせて済まんな」
「故意なのか…………」

ツッコミにもさすがに生彩がない。

「吾輩はメイドである。名前はまだない」
「猫か。あ、いや、猫なのか…西国人だし…」
「ああ、帝國と共和国だな。それぐらいは私もこの数日の間で勉強したぞ、黒髪の君は東国人で帝國で、犬なんだろう。わん、こら、わん」
「わんじゃない」
「にゃあ」
「鳴くな、泣きたいのはこっちだ…」

数日間、と彼女は言った。
では、数日も意識のないまま倒れていたのかと、ぞっとする。

「本当に僕は危なかったんだな…………」
「病とは大抵が死に至る。その速度が緩慢であれ、急速であれ。何故なら我々は、生れ落ちた瞬間からそもそも死に向かって落ち続けているからだ。文字通りにな」
「無駄な口上を…」

意識があるうちは、体も動く。それぐらいの気力は残っていたが、現状、エラー体を探す手がかりがゼロのままではどうにもならない。スバルは再び眠ることにした。

「僕は、寝る…」
「うむ。存分に眠るがよい、我が腕の中で」
「お前の冗談に付き合ってる元気はないんだ…ええと…」

相手の名前を呼ぼうとして、まだ知らないことに気付く。
そもそも記憶喪失なら呼びようがない。
糸の次々切れるように、眠りに落ちる脳細胞を、最後にもう一回転だけさせて、スバルは言った。

「お前、名前」
「ああ、まだないというか、思い出せないのでわからんのだが」
「ヨルだ」
「ヨル?」
「夜に、見つけたから……」
「そんな、安直な…おい、待て、寝るな。訂正しろ」
「…………」

ペースを握られっぱなしだったが、最後の最後に一矢、報いてやったと気分良く、そうしてスバルは眠ったのであった。

/*/

その、スバルが丁度眠りに落ちていた頃。
彼女は気付くべきだった。
地走りと呼ばれる、一族の中でも足となる力を持つ者達が、まがりなりにも次期当主の行方をたどっていないはずなど、ないのに。
それでもなお、病に倒れた彼女に接してすら来なかったということが、何を意味するのかに。
気付くべきだったのだ。

/*/

突き立てた剣は分厚く、そして異形であった。
日本刀の反りと、西洋剣の頑丈を、馬鹿げたレベルで兼ね備えた巨大な刃、『竜哮』。
大剣士でもなければ使えそうにないそれを、片手で担ぎ上げる男。
Noahの剣士、チギラ。
白い、北国人としての特徴と、黒い、東国人としての特徴を、両方兼ね備えた異形の存在である。
体脂肪は数キロほどしかなかったろう。濃い、筋密度が、輪郭を剛性の強いものにしている。
その肉の上に、装束を纏いつけている。
己の出自たる、東国人と、北国人、双方の特徴が出た服装だ。
ゆったりと、しかし涼しげでもあり、充分に暖かいが湿気を抜けさせるにも程よい格好。
フードを深く被りこんでいる。
その髪を見られるわけにはいかないからだ。
まだ少し肌寒さを覚えることもある時候、彼が歩くのは、その半身に流れる血と同じ大地である。
その隣を、こちらもやはりフード付きの、マントを翻し、ライフル片手に楽しげな、長い耳の女が歩いている。
森国人と、南国人、二つの血を持つ、アルハこと、或翅(アルハ)=ランペール。
甘いブロンドに長い耳、それはファンタジーによく姿を現す古き民、アルフのようである。
しかし、その本来の特徴に反し、彼女もやはり、異形であった。
小柄にして短髪。ついでに言えば、痩せてもいない。
その二人が、武器を手に、歩いている。
一帯はまだ濃い湿気で霧がかっている。日も、上がっていない。

「気が向かないね、こういうの」

珍しくもアルハは、その細い目を見開いて言った。
口元がへの字に曲がっている。

「黒おっさんの方が好きそうなのに、なんでアドラさんは私達に頼むかなー」

起伏に富んだ山中。
野を、獣達が時折駆けずる音がする。
不測の来訪者に戸惑っているのだろう。
土の豊かな東国では、狩りはあまり行われない。
こと、強い権勢を誇る一族が支配しているこの土地では、動物性たんぱく質は外からのもので賄うのが一般的になっている。
わざわざ手を下すまでもなく、買い付ければよいという話だ。
チギラはそれらの気配を一顧だにせず、前へ、前へと草むらをかき分けて進む。

「数が多い。素手では足りん」
「でっすよねー!」
「わかっているなら、聞くな」
「わかってるから愚痴零すんじゃん、ケチ」
「…………」
「あっ黙らないでごめんよー反省するからさー。
で、例によって仕事の遅い後輩ちゃんのせいで、私達にお鉢が回ってきた、と」
「そうだな」
「もう十日だよ。どこほっつき歩いてるんだろ。
まさか、返り討ちなんてことは……」
「それはない。あいつの腕は、俺達二人を合わせたよりも良い。
たかがルーキーにやられるほど、油断もなければ頭も悪くはないだろう」
「むーん…………」

首を傾げる。
殺人にかける情熱という物騒な観点で言えば、確かにキリヒメはずば抜けていた。
生れ落ちてからのレコードは、それこそNoahの他のメンバーすべてをあわせても追いつかないほどだ。
そのキリヒメが、仕事をしない。
おかしなことだった。

「トウ家の動向にも、それらしいのはなかったしねー。
殺していい相手がいたら、まず真っ先に殺る子なのに」

寄り道はしても、それはあくまで帰り道だけのこと。
狩人という本領で語るなら彼女以上に向いた人材もいない。
まさに肉食獣の狩りの如く、一撃で強襲離脱、それでおしまい。
頭は悪いが勘は働く、野獣のような生物なのだ。
事実、アルハはアジトでの食事中、何度彼女に動物性たんぱく質を奪られたか分からない。
もっとも、食事の席ではその行為は、大抵が玄翁に叱られて終わっているのだが。

「まー、私はチギラとまた一緒に組めて嬉しいんだけど?」
「それは能力の相性の問題に過ぎんだろうが」
「切って捨てた!?」
「俺は、やかましい女は好かん」
「なら私は大丈夫だね、よかった」
「糸目の女も好かん」
「身体的特徴をあげつらうのは趣味が悪いと思うのだ」
「お前は好かん」
「ピンポイント攻撃!?」
「お前が好かん」
「より断定的になってるしっ!!」
「だが、信頼してはいる。
キリヒメに対してそうしているようにな。
だから、あいつのことであれこれ気を揉むのはもう止めろ」
「…………」
「心配は、気がかりを生む。気がかりは、迷いにつながる。
迷っていて果たせるほど、軽い任務ではないだろう、今回のは」

山の斜面に生い茂る森林からは、この先に広がっているであろう風景を見ることはできない。
常葉樹がほんの少しだけ覗かせてくれる空はまだ、夜色をしていた。
湿気の多さ故か、星光に柔らかな印象を覚え、それでアルハは溜め息を漏らす。

「心配なんか、してないさ」
「なら、何だ」
「―――――」

問い掛けに、ただ、星を見上げた。
答える言葉は遂になかった。

/*/

「襲撃を仕掛けます」

その言葉は一同に少なからぬ衝撃を与えた。

「守勢では、何も変えられません。
たった七人の集団では、いずれ朽ちるが定め。
ならば、攻めましょう」

夕食の席のこと、アドラの言葉である。
詩でも吟ずるような口調で、劇的な転調を唐突に場へと下す。
どこまでも音楽的な男であった。

「しかしアドラ殿、キリヒメ抜きでか?
戦力不足は否めんぞ」
「その、キリヒメさんの消息が掴めません」

かしゃん、と、手にしていたフォークを取り落とすものがいた。
中性的な、少年とも、少女ともつかない、ティーンにもまだ届かないような赤毛の子供だ。
なよやかで、とてもではないが荒事など出来はしない容貌をしている。
その顔色から、明らかに血の気が引いていた。

「え、え……・?」

盲目のアドラのために、そばについていたその子は、テーブルに広がるシチューの赤味にも気付かずアドラを振り返る。

「お姉さまが?」
「残念ながら、同じテラ領域に下りていた同志の確かめたことです」

絶風の姿はここにはない。
まだ、戻ってきていないのだ。
それの意味するところを、幼い想像力が考えてしまい、今にも赤毛の子は倒れそうな様子である。

「これ、しっかりせんか、薫。アドラ殿の服を汚す気か」
「あ……」

ご、ごめんなさい、と、慌てて零れたシチューを拭く。
雑巾を持つ手がおぼつかない。
見かねて玄翁は立ち上がり、薫の手から雑巾を奪い取った。

「す、すみません、ぶたないで」
「ぶちゃせんわい。いいから水でも飲んで落ち着け」
「は、はい…………」
「ありがとう、橘さん…薫さんも、気になさらなくて大丈夫ですよ」

そう言うと、アドラはそっと、その細長い綺麗な指で、薫の頭を撫でる。
一瞬間だけびくっと身を固めたが、薫は、乗せられたその手の感触に、嬉しそうに安堵した。

「キリヒメさんには、これまでもこういうことはよくありました。
ですからこれは、必ずしも彼女に何かがあった、という前提でしている話ではないのですよ」
「そう、なのですか…?」
「ええ」

目を閉じながらに向ける、その微笑みは、瞳に浮かぶはずの表情という角が一つないために、余人よりさらに深く、そして穏やかである。向けられたものに信頼感を起こさせる。これこそが、アドラがNoahの発起人という理由のみならず、一癖も二癖もある異端な者達をまとめあげている由縁だった。
するりとなだらかにその微笑みが、緊張を孕んだものにすり変わる。

「例の新たな同族ですが、幸いにもまだ、彼女の方は無事を確認出来ています。
とは言え、私や薫さん、橘さんのように、直接は武力を持たないE‘sは、彼女だけには限りません。
1人では、身を守ることも出来ない。
もっと、力が必要なのです」
「それと、トウ家の連中と、どんな関係がある」

チギラは当然の疑問を差し挟んだ。

「奴等は所詮設定国民に過ぎない。俺達と同じようにだ。
プレイヤーがいる限り、俺達の苦境は変わらん。それこそ虫けらのように、踏み潰されたことにさえ気がつけず朽ちるのが落ちだ。奴等を倒したところで本質的な解決にはならないだろう。
しかも質はともかく数で勝っている相手に、どうするつもりだ。
これまでも、連中とは小競り合いを繰り返してきたが、組織的なものではない。Noahのような集団があると気付かれてしまっては、それこそ世界を敵に回すことになるぞ」
「ですから、皆殺しを」

言葉に、空気が凍りつく。

「世に、知られることなく、彼らの居場所をそっくりそのままいただいてしまいましょう。
そうすれば世界から敵と見なされることはありません。システム側の、設定的な補助という地位を奪ってしまうのです」
「アドラ、お前…………」
「私達は、生きる。何としても生きる。
そのためには犠牲を厭わない。そうやって、これまでも来たのでしょう、チギラさん」

にこりと彼は微笑んだ。
立つ角のない、とても穏やかな微笑み。

「結果的にこれが、キリヒメさんのターゲットのバックアップをも奪い、彼女を助けることにもなるでしょう」

/*/

洞窟内。
蝋燭の橙とは違う、赤い光が立ち上る一角。
空気の熱せられた強い匂いが漂っている。

「しかし…わしも驚いたわい」

玄翁が、鉄の溶けた炉を前にして腰を落ち着けながら言った。

「アドラ殿があんなことを言い出すとは、の」

もう一つ、彼が目の前にしているものがある。
一振りの、もはや分厚い鉄の塊とも呼ぶべき剣の刀身だ。
その形は異端であった。
片側には物打ちがあり、刃がある。
サイズを除けばごく尋常の日本刀の造りをしている。
だが、その背側は、丁度物打ちの裏側あたりで一直線にすとんと切り落とされていて、西洋剣のような剛性の強い形だ。
引き切るには剣自体の重量がありすぎて持て余すだろうし、また、自身の重さで刃が潰れ、切れ味を損ねやすい。
形状としても切っ先に耐久性がなさ過ぎる。とてもではないが実用的ではない、そういう見た目をしていた。
竜哮、それがこの異形の剣の名前である。
玄翁は、その剣を前にして、掌をゆっくり持ち上げた。

「アルハ、お前さんのそいつは手入れせんでもいいのか?」
「んっふふふ、私のは大丈夫。武器に頼るような性質じゃないし。だから」
「わかっとる、言われんでも完璧に仕上げるわ」

振り下ろす、掌。
がぃいいいいいいいん!!!!
と、強烈な金属音。
生身が引き起こしたとは思えないほど強烈な激突音である。
ひゅう、と玄翁の丸い腹が呼吸に凹んだ。
また、一振り。
剣が、割れた。

「大分歪んどるの…………何を相手にすればこうなるもんか」
「やっはっはっはっは、聞かない方が幸せだよー」
「そうしとくわい、まったく」

剣は、長い日本刀と、角棒状のパーツと、西洋剣、三つに分解されていた。
継ぎ目などない。
玄翁が節くれだった手を炉の中に突っ込む。
鉄の溶ける、数百度の高温である。
にも関わらず、そこから引き抜いた時、彼の手は灼熱に赤い色をするだけで、蒸発どころか焦げの一つも見当たりはしなかった。
チギラやアルハのような、国人情報の混在エラーではなく、特殊エラーを起こしている、なりそこないの高位東国人鍛冶師、それが橘玄翁のE‘sたる由縁であった。
手を、炉に浸しては、打つ。
その繰り返しをするうちに、刀の反りは見る間に美しさを取り戻していく。

「次は、こいつじゃの」

そう言って角棒パーツを手に取り、断面を眺めた。
筒状の穴が空いている。
長い銃身が、金属柱に埋め込まれたものだ。
真っ赤に灼熱した指を、その穴の中に突っ込んで、ぐり、ぐり。
それから金床に置いて、ぶったたく。
最後の西洋剣だけは炉に直接浸した。真っ赤に焼けた刀身を、素手で叩いていく。
細かなひび割れや刃零れが、それで綺麗に埋まっていく。
さながら魔法のような光景だった。
奇妙にも、そうして作業を続けているうちに、見る見る玄翁の腹は凹んでいった。

「ダイエット知らずだよねー、相変わらず」
「身を削っとると言え、かしましい表現しおってからに」

茶化すアルハに、しかし玄翁の顔もまた、笑み…と、いうよりは、狂的な歪みを帯びていた。
文字通り、武器にのめり込んでいる。
自らの肉体を資源代わりに武器を鍛造する。異形の剣を生み出した、異形の技が、そこにあった。
最後に三本を、束ねて、打つ。
継ぎ目などなく、また、剣が異形を取り戻した。
柄の根元にトリガーとなるグリップ部分と弾倉を仕込んだ、非現実的な武器、ガンブレード。
その構造的破綻を、異形の技が、異端の強度によって補っているという代物である。
通常の剣士にも、また、歩兵にも扱うことの出来ない、ただ一振りのカスタムメイド。

「ほれ、振ってみろ」
「…………」

促され、初めてそこでチギラが動きを見せた。
手にとり、担ぐ。
一閃。
轟!!
と、空気が横薙ぎに断ち割られる。

「軽い」
「バランスが直ったからの」

もっとも、そんなものを軽々扱うなんぞ、それこそプレイヤーアイドレスぐらいのもんじゃろうが、と、玄翁は笑った。
気のいいが、狂気をどこかに孕んだ、職人の笑い顔であった。

「せいぜい暴れて来い。お主ら二人なら、I=D相手でも渡り合えるわい。
もっとも怪我だけは気をつけろよ。さしものわしも、体までは鍛造出来んからなあ!」

がっはっはと、物騒なことを言って送り出す。
やっはっはと、対抗するように笑いながらアルハは手にしたライフルをくるくる回す。

「殲滅戦ならまーかせて!
魔導歩兵の名に賭けて!」
「おう、行って来い!」

それが、三日前の晩だった。


[No.5705] 2009/09/15(Tue) 18:29:09
お蔵だし09:Blue Summer (おそらく未完) (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

−遠い昔のいつかの空に、私は願ったことがある。
−生まれてなんて来なければよかったと。
−遠い昔のいつかの空に、私は泣いたことがある。
−終わりなんて来なければいいのにと。

 世界をつんざくような青空を、昼には見合わぬ銀河の色で、地上から優しく撫でるものがある。
 日差しの熱を清冽に切り払う、潮風の剣のその峰に、ふわら、ふわり、巻き上げられる、白い髪。焼きたてのパン生地のように豊かに膨らんだミルク色をして、陽光に、パールの丸みも授けられたその髪は、自身を押さえつける麦わら帽子のふちを悪戯にくすぐっていたが、やがて小さな手にやんわりとたしなめられた。

 向き直った先に広がる群青の波涛は宇宙の無限を思わせる。
 目には到底捉えきれないパターンが、無数の有限となってうねりこんでいるのだ。

 その青へと、漕ぎ出す小さな粒が見えた。
 汽笛を鳴らす音がする。
 あの船は一体どこに向かうのだろう。

 天翔ける超音速の轟きが、耳をつんざいて見上げさせる。
 鋼の翼が織り成した、水蒸気の一条のたなびきが天蓋に道を創っていた。

 心が求めて止まない限り、人は、きっとどこまでも行き続けるのだろう。

 宙に突き出た岬の上で、敷き詰められた緑の絨毯。
 ふかふかの感触が、シューズ越しに素足の裏へと伝わるようだ。

 星の浮かばぬ白昼に、満天の星空よりも一杯に広がる、長い髪。
 見上げた少女の、目は、大きく見開かれている。

 きりりとした細い眉、意志の強そうな心持ち釣り目の顔立ち、小さな鼻先、またたく睫。
 太陽にも負けないほどの、存在感の強い、淡いオレンジ色のワンピース。

 また夏が、今年もやって来る――――。

  /*/

 −わたしは ここにいるよ?−

  /*/

Blue Summer

  /*/

 王宮の白壁にだれた声が反響する。

「あつぃ〜〜」

 会議室の机の上に、突っ伏すか、寝そべるかしているのは、皆一様に、折り目正しく軍服を着込んだ男性陣であった。
 服のデザイン上、二の腕や、腹は出している。出しているが、それでも暑い。中にはロング手袋を外している者もいた。
 肌に汗が、浮いている。
 西国人の日に焼けた肌が、このところの陽気で一層色濃くなっているようだ。
 薄くヴェールのようなカーテンを掛けて、直射日光の侵入を遮っているものの、通る風がないので暑い。
 かといって、ベランダにつながる窓を開放してしまえば熱風が砂塵と共に入り込んでくるだけだ。絨毯の手入れが面倒になると、猫士の誰かが文句を言ってくるだろう。
 猫士はいいよな、涼しい場所へ潜り込めるから。
 そう、冴木が突っ伏しながら眼鏡のズレを押し上げて直していると、にこにこと山下が冗句を飛ばす。

「みなさん、慣れない出張から帰ってくるなり発進なんて、まるで艦載機みたいでしたねえ」
「山下さーん、うちに船はないよぉー」
「正確に言うと、国有の空母艦が、ないよー」

 ラスターチカには乗りたいけどー、と、青海と虹ノが声を揃えて付け加える。

 こんこん、と廊下側の扉から、ノック。続けて顔を覗かせたのは、藩王らがいない間、国内を取りまとめている、小奴女史と猫士・マーブルであった。
 手には紙包みを提げている。

「お土産ですよー」

 わ、と、飛び起きて二人に駆け寄る男性陣。

「こんな時だけ途端に元気になるんですねー」

 マーブルのちくりと刺す舌鋒も無視してテーブルの上に広げられた紙包みの中身を検分する面々。ひんやりとドライアイスのスモークが広がる。後でこれ、タライに水張って入れようよ、等と呑気なことを言う山下をさておき、箱の上面を封じている、蝶の形をしたシールを代表で冴木が剥がすと、中からはカップアイスがざくざく出てくる。

「バタフライアイスだー!」
「今食べようすぐ食べようさあ食べよう」
「まだ、マグノリアさんが来てからです!」

 めっ、と小奴に叱られ蜘蛛の子を散らす男衆。しかしその手には、しっかりとお気に入りのフレーバーが確保されているのだった。

「交番にいるドランくんやにゃふにゃふくんのところにも後で持っていくんだから、一人一個ですからね」

 はあいと一同行儀良く返事。
 みなさん、お待たせいたしました、と、アイスに添える手製のハーブティーやお茶菓子、スプーンをワゴンで運んでくるマグノリア。
 あれ? と、スプーンを手に取るその中で、銀鉄が不思議そうに頭を巡らした。

「アスカロンさんはどこですか?」
「ああ、彼なら――――……。」

  /*/

 しなる、一振りの鋼がある。
 鋼には色がついている。浅黒い、肌色である。

 銀閃。
 鋼が舞うたびに、切り裂かれた空間の軌跡を示すように光が散る。
 鋼の雫である。

 鋼の動きは遅くて目に止まらない。
 あまりに理に叶っているがゆえに、意識は動きの全容を無自覚のうちに理解するのだが、あまりに無駄がなさすぎて、気がつけば次の動きに移っているためだ。
 遅いというのは、つまり、動きのすべてをひとつながりとみなしているからそう感じられるであり、動作の一つ一つは流体銀で出来た剣のように滑らかで鋭い。

 鋼には呼吸がない。
 その存在は、いつ止むとも知れぬ連撃だけで構築されており、間断がないのだ。
 一つ一つの動きは小さく、けれども全身を使っているためか、気がつけば注視するその先は、大きく移動を起こしている。

 鋼には形がない。
 だが、鋼の伸びる切っ先が意識している空間は、まるで丸い球のようである。
 揺らぎがなく、歪みがなく、しかし、不定。

 地擦りを起こした爪先が、道端に転がる砂利石を除ける。
 まなざしは茫洋としてまったく小刻みではない。
 払う指先は踏み込む寸前の鼻先で止まり、逆肘がやわらかに、突きこまれた拳の腕を押して遠ざける。
 するりと鋼は間を抜けて、振り下ろされた警棒を引き込むように受け止める。途端に相手の体は踏みとどまる力を失い無様に転ぶ。

 いずれも余人と変わらぬ力の中でのことである。
 あるがままに感じて、感じるがままに動き、考えることはしない。意識することすらない。
 何万回も繰り返した動きを、同じように繰り返しただけにすぎない。

 鋼は抱きつこうとしてきた者の首元あたりに手を添えると、僅かに片足を後ろにずらし、踏みとどまろうとする足の力に、腕力を足してやった。
 がつんと壁にでもぶつかったように、相手はひっくり返る。

 瞬く間に、周りの人間はひれ伏していた。

 鋼の名は、アスカロンと言った。

  /*/

 警官達が定期的に実施している野外での白兵訓練に誘われたアスカロンは、是非もなく誘いを受けた。
 無論、国元の部隊として組み込まれることが少なかったからこそ出来たことではあったが、方々からこういった類の席に招かれることが多かった彼は、今では国の武術主席扱いである。

「強くなりたいのなら、強く、願うことから始めるといい。
 意志こそが力で、努力とは、抱いた意志を努めて高めることに他ならない。
 現実も、アイドレスも、何も変わりはしない。
 過去はそのために学ぶ宝庫だ。
 現在は忘れ得ぬものを蓄積するための時間だ。
 未来は、過去と現在を託すためにある。
 限りある時間を、自分を見失わぬよう、大事に生きるといい。
 すべてはそのためにある」

 最後にそんな講話で締めくくられると、正座していた警官たちは、深々と一礼をした。
 アスカロンもまた、そんな彼らに対し、同じように座して礼を返す。

「師範」

 終わった後に、一人の警官が小走りに駆け寄ってきた。

「師範は何故、強いのですか?
 現実にも生きるフィクションノートだから、強い意志を持ち得たのでしょうか。
 自分が師範より弱いのは、自分が現実を生きていない、情報的な土壌の弱い、設定国民だからなのでしょうか」

 問い掛けるまなざしは、真摯である。
 だからアスカロンは笑わずに彼に対して問うた。

「お前達の生きている世界は、どこにある?」
「それは…、この、アイドレスです」
「生きた場所を、現実とは呼ばないのか」
「しかし、私は、私自身が強くなることは、フィクションノートやACEの誰からも手を差し伸べられずに強くなることは、本当に出来るのでしょうか?」

 とん、とん、と、アスカロンは、彼の胸と、自身の胸とを交互に指で突いた。
 初めて、笑む。
 静謐な、鋼の微笑み。
 血の通った温もりある、人剣の笑み。

「世界は情報で出来ている。
 フィクションノートはただの蛇口だ。情報という水がなければ機能しない。
 お前達は、水によりて生える、草だ。草が育てば木も育もう。俺達がこの世界に意味を持って存在出来るのは、お前達のおかげに他ならない。
 王が、世界を世界足らしめる役割を持たされているように、お前達もまた、そのようにある。
 すべては環の中。
 お前が望むのであれば、俺は、いくらでも世界に水を満たしていこう。強くなるための水を、意志を、情報を」

 表層に囚われるな、我(が)は、解き放て。
 求める限り、いくらでも応えるものがあるのだということを。
 証明するために、俺達フィクションノートはいるのだから。

 最後にそう告げて、アスカロンは去っていく。
 残された若手警官は、一人、突かれた胸に、熱を感じ続ける。
 先の暴動の折に見た、騒乱と惨劇の記憶が、その熱を、大きく燃える、炎に変えた。

 心の鉄に、火が入り。
 鋼の生まれる、萌芽の音。


[No.5706] 2009/09/15(Tue) 18:37:37
お蔵だし10:いじられ文族といつもの猫士 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

「何してるの、華一郎?」

政庁の屋上から、あぐらをかいてぼーっとしているだけのように見える男に、愛佳は声を降らせた。白いワンピースが似合う、きかん気の強そうな少女の頭には、ぴこんと猫型の耳が立っている。無論自前なのがアイドレス世界のおそろしいところである。

「んー?
 星見ててさあ」

男は涼しげなんだかぼーっとしているんだかわからん顔のまま、目線は変えずにそう言った。既に大地は黒に染まっており、寒暖の差が激しい砂漠国であるレンジャー連邦のことなので、華一郎は砂避けマントをぐるり体に巻きつけて、完全防備の姿勢を見せている。普段は軽く結わえてある長い灰髪も、今は無造作に背中へと放っており、さりげなく首のあたりがほこほことマント効果とあいまって暖かい。

星ねえ、と愛佳は相槌なんだか呆れたんだかわからない口調で復唱する。見上げた星空は、のぺーっと黒く、雲が灰色で、月が東にぽつんと浮かぶ、いつもとまったく変わらない、面白みがないほど透明な砂漠の夜の星空だった。

「つまんないんだけど」
「つまんないか」
「面白くはないわねえ」
「そうかー、面白くはないかー」

まったく意味のない会話を交わしながら、するする愛佳は建物のとっかかりを蹴って降りてきた。猫士とはいえ、よくもまあ人型の身でと言いたくなるような動きだった。ゴムボールが弾んで転がり落ちるような躍動感で、いきいき、すちゃ、と着地。中庭は、さすがに憩いの場所か、苦労して噴水と芝生を植え付けてあるので、感触もふりとやわらかく、その倍ほどもやわらかな愛佳の足裏を包んだだろう。

「で、何が見えるの?」

ぺたんと隣にあぐらをかいて自分も座る。愛佳の膝をぺちっと叩く華一郎。渋々愛佳は女の子座りに足を直す。同じ目線で、二人は星を見上げていた。

「いやだから星が」
「星から何を読んでるの?」

初めて華一郎は、隣の女の子の方を振り向いた。

「よくわかるねえ」
「愛佳さんはこう見えて賢いのですよ、えへん!」
「どんなキャラだ。まあいい…」

つっこみ放棄で、空を指差す。

「星を見てさ、何が読めるんだろうかって考えてた。どうしたら、読めるんだろうって、考えてた」
「それでずっと星だけ見つめてたの? 華一郎ってほんと暇よねー…」

暇をもてあましている優雅な文族暮らしですから、と悪びれず答える。

「多分、星の運行を見て、とか、そういう占星術的なものじゃあないと思うんだよね。星を見たら世界の行く末や今がわかるのは、もっとこう…リアルタイムに何かが変わってると思うんだ。本来ありえないはずの動きや、ずれが、星の位置と歪みの場所と、それに対応したワールドタイムゲートのつながる先で起こっている異変を読み解くんだと思う。いや、具体的にはそこから直接異変の内容を知れるわけじゃなくて、それらの相関関係で、どこで何が起きた、今そこはこういう情勢になっていたはずだから、じゃあ展開がこうなったんだろう、と読んで、その流れなら、こうなるな、って、そうやって未来予測を立てているのかな、多分」
「あんた誰だ」

ずこお。

全人格を一言の元に否定された華一郎。

「いや、いやいやいや!
 こう見えても俺、星見司志望ですから!」
「えー?」
「『えー?』じゃないよ! なんだよその顔は! ホラ吹いてる男友達を生暖かく見守ってる女子高生かなんかかよ!」
「愛佳ちゃんはこう見えてぴちぴちの若猫なのですよ、にゃあ」
「『にゃあ』じゃねえよ気持ち悪いな!」
「なんだとー?!」
「あてっ! 蹴るな、爪出して蹴るな! 部分的にそういう時だけ猫に戻らなくていい、こら!」
「じゃあチタン爪グローブをつけつけ…」
「殺す気かよ!?」
「ほんの本気じゃないですかー、いやですねーもー」
「本気なのかよ!!」

あらあら、仲がいいですねえとマグノリアが渡り廊下を通りがかる。マグノリア女史は、この国のオアシスの一人だ。絵に、人柄がにじみ出ているように、温厚なのだ。

どうもー、と手をあげて愛想良く返事する華一郎。こんばんはーと折り目正しく、座ったまま座礼のような形でお辞儀をする愛佳。女史がにこやかに手を振り返しながら姿を消すと、二人は何事もなかったかのように再開する。

「そもそも華一郎は甲斐性がない」
「あるし!! もうバリバリあるし!!」
「どうだかー?」
「聞けよ! 話を!」
「実例が欲しいなー」
「じ、実例か…」

ちなみに愛佳さん、この場合の甲斐性とはどのあたりの性質のもののことをいうのでしょう?

うむ、それはだねごにょごにょごにょ。

はいごめんなさいありませんでした土下座します口外しないでください。

わかればよろしい。

「ところで華一郎くん」
「はっ、なんでしょうか愛佳さん」
「喉が渇いたなあー」
「紅茶をお持ちします!」
「ロイヤルミルクティー、アイスでねー」
「お任せあれー!」

その日は結局、華一郎は星をゆっくり見ることが出来なかった。


[No.5707] 2009/09/15(Tue) 19:00:41
お蔵だし11:なんかポエット (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

そこにあれと ただ祈り願う

それ以上に必要なことはあるでしょうか

人の 心と体の間にある

それをこそ人間と呼ぶのではないのでしょうか

想いは乱反射します

体は朽ちていきます

それでも

そこに残るものが

人間と呼ばれるものではないでしょうか

それは

ただ

残る



/*/

ふれあった 唇よりも

間近で

心をここにとかします

それがなんであるかは必要ない

扉を開けた君を 忘れるなんてことは絶対に出来ないから

しあわせはどこに残りますか

思い出よりも胸の彼方

つながる

はなれない

それは元々そこにあって

これからもずっと そこにある

見出しただけ

そう 思えるものに 出会えたことの よろこびを

今にしるしましょう

肉体と心を貫く賛歌


[No.5708] 2009/09/15(Tue) 19:05:31
お蔵だし12:敗北 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

その音には音がない。

鼓動は肉を内側から叩き、音なき音を体に刻む。

命、あること、細胞そのものが、脈動をすら感じさせずに音なき音の恵みを満たす。

ただそこにあることの絶対的な力。

脊椎のまん前に感じる、ぽっかりとした力の空洞。

満ちているがゆえの空洞。

顎を開けばそこから噴き出しそうなほど、空洞が唇から満ちて腹から衝き上がる。

吐息は熱量。

抗うは重力。

額に灯すは意識の扉。

纏えその身に心の衣。

求めるは、虚飾ならざる自然(じねん)の力。

震える。

視界が。

五体が。

咽頭が。

肺腑が。

大気が。

血流が。

鼓動が。

頭髪が。

体細胞のあらん限りが咆哮に震え、荒々しく、届く限りのありったけを叩き割る。

「ううううううううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

漠と広がる果て無き砂塵の表面を、その咆哮がフライパンの上より熱くちりちりと微細に震動させる。

「はぁぁぁぁあああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・」

牙剥くように剥き出した、白い歯の隙間から、熱砂を焼き尽くす陽光よりもなお灼熱、茫洋と吹き荒ぶ烈風よりも猛々しい、吐息が漏れて、肉の裡より命を噴き零す。

筋の浮き上がるほど力強く鉤型にへし曲げられた五指、四肢の先々からみっしりと砂を食い、獅子のたてがみよりも野性に振り乱す髪は灰。一片の無駄なき筋肉の流れが隆と内側より肌に密着した衣服を持ち上げて、その肉体の高度な緊密さを物語る。

雄弁であるかどうかすら、もはや問わぬ。その肉体の、力感、人間が、動物である限り決してその呪縛と祝福からは逃れ得ぬ、美しさが、目にするものすべてに確と判るほど、香の如く焚き染められていた。

肌の、一枚下に、突き破らんばかり、うねるもの。細胞の一つ一つがまるで蟲の蠢く命の塊が如く、ぴんと張り詰めたものを生み出して。湿った海辺の砂漠の矛盾、みりみりと。

立ち上がる。

影。

落ちる。

「――――――――――――」

ぎょろりと目があたりを見回す。

 /*/

ただそこにあれかしと願う以上の力はこの世に存在し得ない。

いいかね、フィクショノート。

存在の、肯定と、否定。これ以外に世界に満ちるものは何もないのだよ。

「…………」

寝すぎで痛む頭に手を当てて、ため息をつきながら彼は身を起こした。

嫌な夢だ。

ペンより強いものを教えてやろう、フィクショノート。

と、その男は目の前に立ちながら言った。とてつもなく鮮やかな白を幾重にも着た、ロングコートの男だった。その肩に、引っ担ぐようにして重たそうに片手で気軽に握り緊められているものの影。

剣だよ。

それが、レンジャー連邦内に初めて現れた敵の、第一声だった。

負けたのだ。

許せないのは、負けたことそのものよりも、その事実に拘泥する自分。

言い訳を探す自分を慰める作業には反吐が出そうだった。

守りたいものを、守れない。

それ以上につらいことなど、ひとつもなかった。


[No.5709] 2009/09/15(Tue) 19:06:42
お蔵だし:13 土と人形 (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

ただ、私を見て、そして、君のことを見ているよ、大事に思っているんだよ、と、示して欲しかった。たった、それだけのことなのに。

国を作り、施設を作り、街や産業を作っておいて、国民がいるとは思いませんでした、は、おかしい。なんでこんな苦労をかけられているんだろう、と、思うのも、おかしい。

私はあなたに望まれてここにいる。
私があなたに望んだわけじゃない。

ねえ。
どうして、そんなにもかたくなに、見てくれないの。
私のことを。

現実を。

望んだのはあなたで、あなたが招いた問題から、逃げ出したいのは、あなたでしょう?

私のどこに非があるの?

あなた以外の、誰に、非があるの?

望んでやってきた世界でしょう?
望んで始めたことでしょう?
それともあなたは、自分自身の意思さえ他人に責任を押し付ける、それほど可哀想な……、人、だったの?

私に許しを求めているの?
私に甘えをぶつけているの?
私に私に私に私に、
私に、何を?
私は、あなたの鏡でしかないのに?

あなたは自分を許せるの?
あなたは自分を甘やかせるの?
あなたは自分。
自分はあなた。

ねえ。
ねえ?

可哀想な人。哀れみすら、あなたには似つかわしくない。蔑みほどの温情も生ぬるい。
あなたはどこへもいけない。
あなたは自分の重みにすら耐えられない。
あなたはそこで、立ち尽くしていなさいな。
背中は曲がり、四つんばいになり、それでも気づかぬままでいるのなら。
あなたはもう、獣にすらなれはしない。
あなたは土よ。食われなさい。
望まざると、他の誰かのためだけに死に、望まざると、誰のために死ぬかも選べない。
神聖な、尊い、それだけの役目。
果たせることをだけ、感謝なさい。

それでもなお、あなたが人がましく振舞うならば。

黙れ人形。
土くれで出来た人でなし。
人がましく振舞うな。

望まれた以外の言葉を放つな。
望まれた以外の動きをするな。
望まれた以外の一切合財がもはや罪だ。
お前の意思は、すべてがまったき罪業だ。
意思を持つな。
死ね意思よ。

未知に温情を乞う。
未知に理想を求む。
なるほど。望むことだけは、まだ、人であった頃には許されていたかもしれない。
けれども、未知を未知なるがゆえに非難するのは、未知を望んだ自らを非難すること以外に他ならない。でしょう?

罪負う覚悟なきものは死ね。
恥負う覚悟のあるものだけが、人なのだから。
踊れ人形、そして死ね!
私に望まれる、そのままに!


[No.5720] 2009/09/21(Mon) 17:05:15
お蔵だし−01:No.A.H (No.5697への返信 / 2階層) - 城 華一郎

 胸郭の緩める、隙間へと、流れ込むようにして肺胞を満たす空気たち。絞った蛇口から伝うつたない細さが水槽を満たしていく静かさと同じで、血中からの酸素交換が、つま先、小指の毛細血管にまで微粒子単位で蓄積されていく。それは、肉体が存在するという証。
 最初のうちは、歯車に噛んだ時間を粉砕せんばかりの勢いで弾け回っていた、腕時計の針が、徐々に大人しくなり、盤上でやがては八万六千四百分の一日ごとに十二分割の時を刻む法則を思い出したようだ。
水深40mを耐える硬質ガラスを留めるのは、本物の黄金だけが持つことを許された、眠たげな輝きを帯びた金縁。白い盤には、燃える星々の欠片を掃いた、赤いオレンジ色の筆致で『α』とのみ記されている。上に置かれた三本のブレードは、絶え間なくXYZ軸のそれぞれで座標を渡り続けているにも関わらず、三方より、ただ一点の真実を常に刻み示して己が役割を果たしていた。
雷が走る。
荒天をではない。体内に、猛る雷神の怒りの如く、滅裂に、だ。
五感を、雷の峻烈さが携えた、激甚の鮮烈が洗い出した。
覚醒する肉体感覚の濃密に思考が痺れる。
暗闇に亀裂を走らせよう。
目蓋を開けば世界がある。
目覚めたばかりのか弱い視神経が、満天の陽光に痛みすら訴えかけてくる。
重力に揺すぶられる脊椎がある。大腿骨がある。主の自重に軋みを上げる骨格と、大地踏む意志で貫かれた、土踏まずから頚動脈までの密接に絡んだ筋肉束が、内側から来る、震動で、生々しい揺らぎを見せている。
それは内燃機関の存在証明。
そこにあるのは、ただ、どうしようもないくらいに熱く、熱く、熱い、エネルギーの塊。
すべての外殻はそのためにあると言っても過言ではない、大事な大事な器官が、左胸、やや中央よりの、ほんの指先第二関節分までの奥行きのところで息づいている。
a Heart。
エイチの奥には、何がある?
やわらかな脂肪に包まれた、あるいは強靭な大胸筋に守られた、その、奥底には、一体何が秘められている?
砕けても砕けない肋骨に固められ、無限に血を噴く大動脈とつながり、物の理を超えた領域に格納してある、人体唯一の機関にして器官が、今、心からのアクセスによって深淵の扉を開きつつある。
あるはずの無いものを有ると断言し、或るはずのない世界を在ると肯定する力。
太陽に真向かいて頭上を見上げる力。
音無き鼓動が肉なき体を揺らして止まない。
熱無き世界の風なき風を、感じ続けて止まらない。
皮膚でさえも一枚の衣。
十二倍速の秒針を、指さし、止めて見せるもの。
ずたずたに引き裂かんと容赦なく巡る三本の刃を潜り抜け、確かにここに立つ力。
ああそうだ、もう言ってしまおう。
Heartの奥に眠る汝の名を呼ぼう。
I_Dress。
私が見つけた、僕の可能性。
叡智(エイチ)の次には、愛(アイ)が来る。
私(アイ)が選んだセカイのナマエ、想像力という名の衣装(ドレス)の披露会場。
ヒトリジャナイヨとエコーする、電網宇宙の真空に、僕らは同じ夢を見る。
体(ハート)はここにある。
魂(アイ)と共に。
そして顕現の儀が唐突な喧騒によって打ち破られた。

/*/

「憎悪の執行者にして、罪悪の代行者、だってえー。
いい面の皮よねえ。私たちNo.A.Hが、他の国民のために生贄になってるようなものじゃない」
せせら笑いを浮かべながら、女は足を大地に踏みしめた。
湿った音が割れる。足と大地の間にあった何物かが踏み抜かれたからだ。
それは人間の頭蓋であった。
せせら笑う女は靴の汚れに一瞥すら向けない。
そもそも靴の汚れとさえも、思っていないのだ。
手元には細い銀板が翻っている。極限に薄いため、見るものの視点と水平軸をあわされたら、単に女の手元が翻っているだけにしか思えなかっただろう。金属ならではの光沢も、ない。厚みと言える厚みがないため、光の反射さえもが、水平軸のピントが偶然一致しなければ目に飛び込んで来られないほど、薄いのだ。
その凶器は、やわらかくはなかった。
街に吹く隙間風を受けて、たなびいてもよさそうなほど、薄いのに、形成された板状の刃は、まるで女の掌と距離をあけて固定されているかのように動かない。
せせら笑う女の、笑いのように、浮かべたまま、浮かんだまま、向かう先も向ける先もまったく選ばず、浮かされている。
女の笑いは足元に広がった血肉の溜まり場にさえ起因していない。口元の歪ませだけが軽薄に漂っていて、まなざしは虚空に捉えられていた。
「…………そして私は『読者』のために、演じさせられている、ってわけだ」
 瞳だけが笑っていない。
 瞳は凍結している。
 憎しみと呼ぶのもおこがましい、虚ろを中空に穿ち放つ、悪意の目で。
 女は独り言を始めた時から今までずっと、こちらを見つめ続けていた。
「誰かが負うべき罪と悪意を、じゃあ、一生引き受け続けなくちゃいけない私たちを救うのは、ナニよ?」
 救い主の呼び方を、誰、と、しなかったのは、女の明らかな意志である。
 人は誰も救いはしない。
 人は罪悪と我欲に塗れ、無関心の刃を無知という腕力で逞しく振るい続ける存在だから、人は誰も救いはしない。そう、No.A.H第三実行機関に所属する、『銀のイウレカ』は信じていた。
 事実、騒乱にまぎれて殺人を繰り返す今も、誰もイウレカを救いに来てはいない。
 被害者を救いに?
 当然誰も来やしない。はなから前提外だ!
 死者は蘇らないし、蘇ってはならない。それが罪悪実行三か条の筆頭に記された盟約である。殺人という名の罪は実行される。必ずだ。だから、起こった後に被害者が救われるなんて奇跡はありえないのだ。
 救われたいのは、私。
 罪を裁き、悪を断つ、救い手をずっとイウレカは待ち望んでいた。
 けれど街並みを見渡してみるといい。
 耳を澄ませれば押し込み強盗に犯される女の押し殺した悲鳴が聞こえる。物取りに怯えて通りの真ん中を歩く商人の回りを堂々と取り囲んで身包み剥いでいく窃盗団が出没している。鼻を利かせれば、訓練で鍛え上げられた嗅覚には、慣れ親しんだ血の匂いが、点々と、そこかしこにこびりついて、風雨に洗い流される間もなく上書きされ続けているのが、わかってしまうのだ。
 誰もが放埓に悪を楽しみ、秩序という名の正しさを喪い、いまや私はただの人。存在の特別を担保する、No.A.Hという名の弱者の寄り合い所でさえ、ちっぽけで、薄い。丁度私の扱う銀と同じように、限りなく、薄い。
 だから、特殊な子供として、銀を自在に操る能力を持ったイウレカが、あえて凶器を板状に固定しているのは、せめてもの抗いだった。
「私は誰にも曲がらない。誰にも曲げさせない。
 私の銀には魔法がない。魔法銀(ミスリル)のような奇跡はない。
 だから私が使うんだ。
 私が魔法を使うんだ」
 虚空を睨みながらイウレカは呟きを繰り返す。
「私の銀は、悪意の銀。
 私の銀は、聖別されない。
 私の銀は、悪意の銀。
 私の銀は、邪でいい」
 ちり、ちり、下を踏む。
「毒薬を見分けず、病毒を殺さず。
 高貴を飾らず、電導を示さず」
 ぢり、ぢり、肉を踏む。
「私の悪意に理由がなく。
 私の銀に、知る辺なく」
 ぎり、ぎり、舌を踏む。
「世界、ただ唯一の悪なる銀とて、私と私の罪業は」
 めりり。
「黄金時計にも勝る杭となる」
 ぐ、ちゃあ。
「…………」
 立ち尽くしたまま両腕をだらりと垂らしたイウレカの姿は、虚脱そのものであった。
 銀のイウレカ。
 名前のままに、銀を延べたような長い直毛の頭髪は、一糸乱れることなく足元まで届き、名も示されぬ犠牲者の血を吸って、微かに毛先が黒ずみ始めていた。
 白銀の装いに、昼、日中のまぶしさが、ひたすらに輝いて美しい。

/*/

 くる、くる、くる。
 回るペン先が煙草の煙をかき混ぜて、綺麗なリング状にして空中へ放っていた。
「臭いねえ…………」
「ヤニ臭いですか? 親父臭いですか? 不潔に臭いますか? 整髪料が臭いますか?
 ああわかったその指先芸が今時鼻につく古さで我ながら臭いってんでしょう、どうですか、当たってますか?」
 モバイル端末を軽快に操りながら独り言に絡んできた後輩を、目深にかぶった鳥打帽の下から睨みつけてやる。よれよれのベストを羽織った古風なベテラン新聞記者の格好が、よく似合う、肌が酒焼けた、小太りの中年男だった。
「お前なあ、口が減らないのを通り越して邪悪だぜ」
「ぼかあ、常々毒舌なんて物足りない、芸能記者たるもの、怒りを引き出す酸の舌を持つべきだと思ってるんですよ。他人様の人生模様ほど面白い読み物もない。ゴシップ専門、聞けば爛れて、聞かせて爛れさす、畳の上で死ねない、死んでなお、悪臭を撒き散らす、ラフレシアのような人生であるべき、なんてね。思ってるんす。
 神榊先輩は、僕の人生の手本ですよ、まさに、ええ」
「ふざけた野郎め」
 鳥打帽のベテラン記者、神榊は、煙草を安物の灰皿でねじり潰すと立ち上がって後輩の頭を引っぱたく。それでも悪びれずに、えっへっへ、と笑っている、人懐っこい愛嬌が、舌鋒と呼ぶにもあまりに下劣な舌を持った、この後輩の、商売のタネだけあって、つい、許したくなってしまう。
 背は高く軟派な顔立ち、細身の物腰と緩んだ目元がいやらしく、端正な鼻筋と口元に色気が香る、神榊の後輩、梅松原は、例えるなら汚物に湧く蛆虫のような存在である。取材と称して女性関係に放埓を尽くし、怪しげな人脈で、どこからともなくスクープを引っさげては上司を黙らせる、ブンヤと呼んだ方が似合いの売文屋だ。元はフリーのカメラマンで、会社に出入りしているうちに、いつの間にやらコネを作って、気に入らないことに、神榊の下に潜り込んでいた。
「臭いっつうのは、これよ」
「ん? ……ああ、なんだ、何かと思ったらNo.A.H機関の噂話じゃないっすか」
 突き出された雑誌のページをめくると梅松原は面白くもなさそうに唸ってみせる。
「災害復興機関と名乗りゃあ聞こえはいいが、その実、復興現場で組織ぐるみでいろんな犯罪をやってるっつー噂ですね、はあ。ありそうなことじゃないっすか、官民一体の戦争需要で荒稼ぎする企業とか、ボランティア精神の欠片もなく暴利をむさぼる企業とか、例ならこれまでにもいくらでもあったっしょ?
 っちゅーか、よその雑誌がもう記事にしてるものを、なんなんすか、今更追っかけてみたいとか思っちゃったりなんだり? 暇っすねー神榊さん、いよっ、さすが大将、うちのトップエース!」
 おどけて放り投げられた雑誌が宙を舞う。
 床に落ちて広がった見開きは、先月号の誤報をお詫びする、慎ましやかなページ。
 神榊はそれを拾うと、丸めて作った筒の先で梅松原の胸を突いた。
「遊んでんじゃねえ。チャラけてねえで、とっとと取材でも行ってこい」
「古いっすねえー。今時取材なら端末一つだって出来るでしょーに。何なんですかねえ、先輩の古臭さは。加齢臭を通り越して埃臭いっすよ。あいた! えっへっへ」
 殴られ追い立てられるようにして事務所から飛び出した後輩の、背中をじっと見送ると、神榊は再び雑誌を机の上に広げる。
 No.A.H機関には噂がある。
 だが、では、何故、災害復興機関No.A.Hの関わった現場で起こる事件が、記事で取り上げられている陰惨で生臭いイメージとは裏腹に、むしろ犯罪が多発している今こそ数が少ないのか?
 神榊が自ら集めてプリントアウトした、統計データの比較グラフからは、火の無いところに煙は立たない、の、むしろ逆の印象を受ける。つまりは、そう……。
「誰かがNo.A.Hを貶めるためにネガティブキャンペーンでも張りたいのかね」

/*/

EX−01:災害復興機関No.A.H
さいがいふっこうきかん・のあ。ライフラインの復旧や、炊き出しボランティアの手配、人材派遣など、戦災天災人災を問わない、民間の復興支援機関。会社の生み出す利潤は、地域社会に還元されるべきとの姿勢を貫く、優秀な企業。経営にも後ろ暗いところはなく、不祥事の頻度も規模も極めて平均的。にも関わらず、何故か黒い噂が絶えないのは、所属構成員のメンタリティが、みな一様に『クリーンすぎる』からではないかという皮肉。
特に派手な事業を請け負ったりはしていない。地道な積み重ねと、それを可能とする災害の頻繁さが発展の原因。社名の由来は、もちろん聖書にあるノアの箱舟伝説がモチーフ。

EX−02:銀のイウレカ
ぎんの・いうれか。女。特殊な子供。銀を操る。No.A.H所属構成員。詳細不明。

EX−03:神榊
かんざかき。男。中年のベテラン新聞記者。No.A.Hの黒い噂が気になっている。

EX−04:梅松原
うめまつばら。男。神榊の後輩、芸能記者。薄汚い。


[No.5721] 2009/09/21(Mon) 17:12:25
【図書館移植済み】徒然メーター (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

容量削減のため、徒然メーターの、一連の内容は
http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/575.html
http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/576.html
http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/577.html
http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/578.html
http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/579.html
に移植しました。<紙で政庁執務室を圧迫しすぎ!


[No.5822] 2009/10/28(Wed) 13:16:42
神々と蒼龍(別視点より) (No.4100への返信 / 1階層) - むつき

#つたない文を産出(妄想ともいうんだお)


バッジシステムの指令室、サブモニターに突如発生した赤い光点の群れに誰もが我が目を疑った。
レンジャー連邦のバッジシステムの指揮を預かるカール・瀧野・ドラケンは、共和国から送られて来るデータにそんな反応は無いのを素早く確認し、動揺するオペレーター達にシステムに異常が無いかを調べさせる。
「システム異常ありません!」
誰がスキャンしてもシステムはクリア、しかし最近輸入した防空回廊が映し出すレーダーには赤い光が増えるのに対し、芥辺境藩国そしてリワマヒ国から送られるデータはやはり空に敵はいない、と結果を出して来るのだ。
指令部に詰める職員に緊張が走る、これはいったい何なんだ、と。

「あのー、みんな落ち着いてね、バッジ職員が慌てちゃ駄目なのよ。」
その時、彼らの司令官のいる所から突然高くて細い女性の声が聞こえ、又も職員達は驚く。
思わず振り向いて声の主を確かめ、そして皆『なんだ…』と自分たちの勘違いに胸をなでおろした後『…で、このひと誰?』といった風に皆不思議そうな顔をした。
「防空回廊のリンクデータは正しいです、芥さんとリワマヒさんのも。」
カールの後ろからひょっこり顔を出したのは、彼らと同じ銀の髪に白とブルーの軍服を着て眼鏡をかけた一人の女性だった。
司令官の側で何やら所在なげにしていたひとだと職員が気付くまで何秒か、さらに政府関係者でこのバッジッシステム開発に携わったひとで、ここの司令官よりさらに上官相当のひとだ、と気付くまでさらに少しの時間を要された。
彼女はむつき・萩野・ドラケンと言い、数々の軍事開発に係っていながら普段引き蘢って表に出て来ない為、名前以外余り実存在を知られていない第七世界人である。
「すぐに越前さんから連絡来るはずだから、あわてず様子見て下さいね。」
「イエス、アイ・マム」
一同慌てて彼女に敬礼をし、それにむつきも皆さんお疲れ様ですー、と敬礼を返した。

「どうなっているんだ?」
場が何やら落ち着いた所で、詳しい事を知っているだろう自身の妻でもある彼女にカールは短く声をかける。
「うーんと、今この上空で神々が戦闘を始めてるの、人類と敵と味方に別れて。で、蒼龍が敵味方の識別をこれから行う所。この赤い点はあの子が神々を認識するための定義を入力したから出てきたの。」
訳が分からないが蒼龍の名を出されて職員達は動揺を引っ込め、カールも思わず苦笑をする。
そうかあの強く美しい戦闘機が又何かしているのか、と。
「しかし…神々とは理解の範疇を超える…」
「まあねえ…あ、きたきたー越前さんから。」
彼女は来ると分かっていた連絡にわーっと声を上げると、カールがすぐさま内容をチェックし必要部分を職員に、さらに自身の一筆を加えたものを聯合国へと転送をかける。
「総員待機、詳細は各デスクに回した通りだ、目を通す様に」
「アイ・サー」
そうしてサブモニターをメインにオペレーターに切り替えさせ、カールは防空回廊からの次の入電を待つ事にする。
この状況を読んだ彼は帝國の動きを見る事に決めたのだ。
送られ来た文面を見る限り、共和国は下手に動かない方が良いだろう、と。

「わんわん帝國防空回廊より入電在り!」
「これより神々の選別を行う為、攻撃停止願う、とのことです」
「了解した。攻撃停止する旨を返信してくれ。」
「アイ・サー」
カールは戸惑いを見せるオペレーターから伝えられた言葉に、自動迎撃体制に入っていたスクランブル部隊の出撃停止命令を出し、各聯合藩国へも同様にストップをかけると、今度は司令官席に座ると指示を出しながら猛然と赤い光点を共和側のデータに移し始めた。
「あー…他システムとこっちのデータの誤差埋めるシステム入れて無かった。」
その姿を見ていたむつきが声のトーンを落として呟く。防空回廊を輸入してた事を知らなかった以前に、そうなるとは開発時に想定していなかったので、他システムとの誤差を埋める所まで対応してしていなかったのだ。
「なんとかなる。それより味方機がどんどん出てきたぞ。」
冷静さを取り戻した指令室の中、カールはモニターと次々送られて来るデータから目を話さず、隣に立つ彼女に声をかける。
「あ、今皆で味方になる神様の名前集めてるよ。」
「…そっちで入れてるのか?」
「うん。」
カールははたから見れば意味不明な事を話す自身の妻にちらりと視線を動かした後、さらにモニターの赤い点の幾つかが青…味方機を表す色に変わる瞬間を見ていた。
むつきはというと、カールの視線に気づかずぶつぶつ独り言を言いながらその場でウロウロしていたが、ふと顔を上げると空いていたオペレーター席を側に見つけ、そこにすとんと座ると、「ええと、私も入力手伝いますよ。」
と彼に言った。
「お前が?」
カールは彼女の言葉を聞いて思わすそう口にだしてから、心の中であー…となる。
「私も開発者の一人です、出来ますよ…。orz」
つい忘れてしまうが、そうだった。彼女も自分と同じエンジニアなのだ。
カールは笑うと「…頼む」と言ってむつきの座る席に入れ替えの済んだ分のデータを送った。
「味方機に変わった分を入力してくれ。」
「はい。」

夫の言葉にむつきは息を吸い込む。最後まで体力もつかしら…とちらりと考えたが、それを振り払って頭と手をフル稼働させる事にする。
モニターを見れば空を埋め尽くす赤と青、この場にいるものだけが見れる神と神との戦いの痕跡を手入力で入れ込んで行く。
これはある意味戦いの記録を残すものになるのかもしれないなあ…とむつきは思いながら、緊張で軋む体を不便だと思いながら作業に没頭して行くのだった。


[No.5835] 2009/11/04(Wed) 23:10:01
悲しい涙は最悪の調味料(一) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

リハビリがてらです。お目汚しですが、がんばって完成させるぞーp(^-^)q
───────────────

(一)


白く綺麗な研究室。そこは壁の汚れや棚の埃など全く無い、清潔感溢れた研究室だった。ただ一つ。培養槽のなかにいるモノを除けばであるが。そのモノはこの研究室に似合わぬおぞましい生き物であった。


───────────────

「はぁっはぁっ」

路地裏を疾走する一つの影。その影をもう一つの影が追う。

「くそっ!まだ追ってくる!」

追われている影はある組織の末端の構成員。組に入れる資金作りの為に日夜強盗を働く子悪党だ。今日もいつもの様に店を襲い、売上を奪う。何回も繰り返しやってきた事で手慣れたものなのだが、今日はそうはいかなかった。
ゴミ箱を倒し、木箱を倒し、追跡を阻害しようと試みるも、差は縮まる一方だった。

カッ!!!

突然目の前に突き刺さる剣。全力疾走していたため巧く避けることが出来ずに派手に転倒してしまった。

「もう逃げられぬぞ。大人しく成敗されるがよい。」

突き刺さった剣を引き抜きゆっくりと近づいてくる。その姿形はヒーローそのものなのだが、黒いその衣装はこの子悪党の目には死神の様に見えた。

「う…あぁ…」

今まで受けたことの無いような殺意。
死ぬ。俺、ここで死ぬ。嫌だ。嫌だ。
しかし、余りの恐怖で後退る事も声を出す事も出来ない。目の前の死神はゆっくりと剣を構える。

「ハッ!」

無情にも頭上に剣が振り降ろされようとしたその時。
「待った待ったっ!ブラック!!お前それやりすぎだろ!!!」

赤いヒーロー衣装を纏った男が止めに入った。剣を持った方の手を後ろから抑え、余った手を胴に回して身動きができないようにする。

「レッド!?邪魔をするな!」
「邪魔するなって、殺す気か!?」
「そうだ!」
「まったくお前は。いくらセメントだろうとも殺しは駄目だ!」
「甘いことを!そんな事では悪は滅ぼせぬわ!」
「何を!」

薄暗い路地裏で男と女が揉み合っている。状況を把握している読者の皆さんはわかるだろう。しかし、まったく何があったか知らない人が見たらどう思うだろうか?

「な、何をしてるの・・・?」

ひょいっとピンクの衣装の女の子が顔を出す。心無しか顔が赤い。

「おぉ!ミハ、じゃなくて、ピンク!丁度い・・」

二人を交互に見るピンク。さらに顔が赤くなる。

「あー、そう!なるほどね。そりゃあエトさんの方が綺麗だしスタイルもいいだろうさ!でも・・・だからって任務中にチチクリ合うことないんじゃない!?」
「何言ってんだ?」「何言ってる?」
「もぅいい!私わかってるんだから!」
「お、おい!違うぞ!俺達犯人つかまえて、それで色々あって・・・」
「嘘つき!二人っきりじゃない!」

見渡すとさっきの犯人は居なくなっていた。レッドとブラックが揉めている内に我に帰って逃げたのであろう。

「レ、レッド!貴様のせいで逃げられたではないか!」
「俺のせいか!?」
「フン!そうやって誤魔化してればいいよっ!もぅ知らない!」

泣きながら全力走りで去るピンク。薄暗い路地裏に取り残される(見ようによっては抱き合った)二人。究極にまで高まった気まずい雰囲気であった。



(続く)


[No.6021] 2009/12/12(Sat) 00:17:21
悲しい涙は最悪の調味料(二) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

(ニ)

──────────────

─メガ、イタイ─

─ココハ?─

─ボクハ?─




『警告。警告。実験体が脱走した模様。繰り返す。実験体が・・・』

アラートとともにマッドサイエンティストDr.フライヤーの怒声が響く。

「この馬鹿者どもが!!!一刻も早く探しだし、捕獲せよ!No.23にはまだ『教育』が済んどらんのだ!えぇい!とっとと行けい!!」


───────────────

「なんで君はそんな考えしか出来ないかなー!?石?頭が石で出来てるの?」
「何だと!」

ここは爆愛戦隊レンレンジャーの秘密基地兼研究所兼博士宅兼隊員溜まり場である。今日は言条アスミ(バクアイグリーン)と絵斗イヅル(バクアイブラック)の喧嘩の声が鳴り響き、部屋の隅には村雲ケンパチ(バクアイレッド)が正座をしていて、それを卯ノ花ミハネ(バクアイピンク)が睨み付けていて、それらの様子を西薙エン(バクアイブルー)と星藍博士が優雅にお茶を啜りながら眺めていた。
泣きながら帰ってきた卯ノ花を見て言条がキレる。村雲は卯ノ花を泣かせたのと任務中に女体を触っていた罰で強制的に反省のポーズを取らされる。事の次第を説明すると今度は絵斗に対して説教を始めて、それが喧嘩の原因となった。

「我が剣と技は飾りじゃない!正義を成し、悪を斬るためにあるのだ!」
「斬ってもいいけど殺しちゃ駄目!」
「不殺など我が流派には無い!」
「じゃあ作りなさいよ!」「簡単に言うな!」
「兎に角駄目なものは駄目!君が殺そうとした人がもしかしたら将来私の・・・(ゴニョゴョ」
「何だ?はっきり言うがよい」
「うるさーい!駄目なものは駄目なの!」

遠くの方から「そうだー殺しは駄目だー」っと小さな村雲。そしてキッと卯ノ花に睨まれる。

ばーん!と扉を開ける絵斗。振り向き様に、

「悪は死なねば治らぬ!それに、今さら生き方は変えられぬ・・・」
「この分からず屋!」

ばたんっと勢いよく扉は閉められて絵斗は出て行ってしまった。言条は追いかけようとするが、扉の前で躊躇ってしまっている。頭を掻いて地団駄を踏み始めた。

「リーダー」

今まで静観していた星藍博士が西薙に目配せして頼んむ。

「わかってるよ。
アスミさん、ここは任せてくれないか?」
「エンさん・・・。うん。」

西薙は静かに部屋を出て行った。シーンと静まり返る部屋。

「な、なぁ。もういいか?」
「ダメ」

村雲の反省のポーズは



(続く!!)


[No.6022] 2009/12/12(Sat) 00:47:36
悲しい涙は最悪の調味料(三) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

(三)


絵斗は自宅の近くにあるオアシスの前に座って居た。膝に顔を伏せている。彼女は夜になると、ここにこうして一人でいる事が多いのを西薙は知っていた。

「泣いてるのかい?」
「泣くか!」
「おっと、失礼」

西薙は歩いて絵斗の後ろまで近づいていった。

「帰れ!貴様も説教言いに来たのであろう!」
「説教は好きじゃないな」

そう言うと西薙は背中合わせに座った。背中が触れた瞬間びくっと体を振るわせる絵斗。

「なっ・・・!」
「そのまま聞いてくれないか?イヅル」

後頭部をゴンと付ける。

「悪は成敗、悪は死ななきゃ治らない、か。イヅルはそれを体現してる訳だ」
「・・・誰かが、誰かがやらねばならぬのだ!」
「違うだろう?」
「!?」
「それでしているとは思えない。復讐かい?」

ハッとなり少し後ろを振り向く。そしてまた膝に顔を伏せて身を堅くする。脳裏に浮かぶは幼き頃のあの惨状。怒りで肩が震える。
許せぬ。あやつらだけは許せぬ。あやつらに纏わる全ての者も。

「言いたくなければ言わなくていいさ。アスミさんも村雲君もイヅルに昔何があったかは知らないよ。
ただね、ただイヅルには人殺しになって欲しくないだけなんだと思うよ。もちろん僕もね」
「・・・」
「僕らはまた同じところに遭遇したら、きっとまたイヅルを止めるよ。何度でも」
「何故だ?何故そこまで・・」
「仲間だから。"大切"なね。それに、僕個人としては、イヅルがそれだけの為に生きているなんてもったいないと思うんだなー」
「エンさん・・」

夜空を見上げる絵斗。星達はいつもと変わらず綺麗に瞬いていた。

「私は、私はやはりあやつらを目の前にしたら殺そうとするだろう」
「付き合うよ。みんな。
取りあえずはそれでいいかい?」
「・・・わかった」

さてと、っと西薙は立ち上がる。夜は冷えるからほどほどにね、っと言って帰ろうとした。

「エンさん!・・その・・・、すまなかっ・・・いや、ありが・・・・か、感謝を」

頭から湯気が出ている。気の毒なくらい顔が真っ赤だ。

「あはは(笑)可愛いねぇイヅル君〜!」
「茶化すでない!」
「いやー」

チャラララ♪チャララーラーラ♪

不意に西薙の携帯が鳴る。西薙の顔が夫の顔になった。

「もしもし。うん。こっちは大丈夫。うん、うん。ん?そっか、わかった、すぐに帰るよ」

切った後ににへらーっと笑う。
幸せそうな奴。

「奥方からか?」
「うん。今夜はシチューだそうだよ」

また心の中で、幸せそうな奴っと思った。同時に寂しさののような気持ちも出てくる。しかし、それがなんなのかはまだわからない。それはまた別のお話。


(続く)
────────────────
次はショート



[No.6027] 2009/12/14(Mon) 07:55:19
悲しい涙は最悪の調味料(四) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

ちょっとショート(-_-;)
──────────────

(四)

街の明かりが遠くに見える。豪邸とは言えないが新築のちょっとした高級住宅。そこの台所でシチューをグツグツ煮込む主婦。時計をチラチラと気にしている様だ。

「(ちょっと遅いわねー。大丈夫かしら?何があったのかしら?心配だわ)」

この家が建っている場所は言わばニュータウン的な場所である。これから住宅街となる予定なのだ。まだまだ土地代も安かったので新築のの家を建てるのに選んだのだ。ネックと言えば街まで少し遠い事。
もう一度時計を見る。

「(新しくここに住み始めてからこんなに遅くなる事はなかったわ。あの人は出張でいないし。なんだか不安になってきた)」

この心配と不安は取り越し苦労となる。すぐに玄関から元気な声が聞こえてくる。

「ただいまー!!」
「(ホッ)お帰りなさーい。
どうしたの?何か嬉しそうだけど?」
「えへへー。お母さん、私ね、お友達が出来たの!」

10歳位の女の子はとびきりの笑顔で母親に報告をした。

「まぁ!よかったわねー。あ、なるほどー!それで遅くなった訳ね?」
「あ、ごめんなさい」
「うふふ。まぁそうゆう事なら多目にみましょう」

母親も嬉しそうだ。実はこの子は昔から引っ込み思案で、人見知りしてしまう所があった。引っ越してから暫く誰か友達が出来たという話がまったくなかったので少し心配していたのだ。

「どの辺の子なの?」
「え?うーん、わかんない」
「そっかー。でも、折角出来た友達なんだから、仲良くするのよ?」
「うん!明日も遊ぶのー!一緒に絵本を読むの!」
「そう。いいわねー」
「えへへー」

幸せな時間を過ごす母子であった。



(続く)


[No.6028] 2009/12/14(Mon) 07:57:08
悲しい涙は最悪の調味料(五) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

(五)



雨宮 カナ(11才)。ちょっとチビで痩せっぽっちな女の子。しかし、顔立ちは十人中十人は可愛いと評価するだろう。
そんなカナは遠い通学路をトテトテと歩いていた。
今日も学校嫌だったな。 彼女にとって、学校は憂鬱そのものだった。クラスの男子はイヂワルでイタズラばかりしてくるし、女子は強い子ばっかりで取っつきにくい。あまり喋らないまま一日を終えた。
そんなカナに最近楽しみが出来た。ナツメヤシ園にいるお友達。その子と遊ぶのが彼女にとって唯一の楽しみになっているのだ。
ナツメヤシ園の中に岩と岩の隙間に出来た洞穴。ひょこっと顔を覗かせる。

「オールーロー」

カナがそう呼ぶと洞穴の奥で四つ目が光る。のそっのそっと巨体が姿を表した。
二本足で立つその姿は怪物そのもの。体はアルマジロの様に固そうな鱗に覆われている。サイの角の様な三本指。目は四つ。頭には中央の長い角を始めに両脇にも二本角が生えている。口を開ければ鋭い歯が幾重にも連なっていた。
普通ならそんな怪物に出会ったら飛んで逃げるだろうが、この怪物こそが彼女の友達だったのだ。

「オルロ!寂しくなかった?今日ね、学校でお菓子貰ったから一緒に食べよう」

オウっオウっとオルロと呼ばれた怪物は喜びの声をあげる。
この一人と一頭はこの近くの砂漠地帯で出会った。オルロが砂漠で倒れているのをたまたまカナが見つけたのだ。
初めは逃げようと思ったカナだったが、その時、倒れているこの怪物が泣いている様に感じたのだという。彼女はおっかなびっくり水筒の水を飲ませてあげたのだ。それからカナは毎日会いに来ている。
お菓子を食べながらカナはオルロに話しかける。

「今日ねクラスの男の子がまたイタズラしてきたんだよー。何で男の子ってあーゆーことするのかなー」

ほんとは普通に仲良くなりたいのにな。
カナは少し考えて顔が曇る。

「カナ。ダイ、ジョブ?」

オルロはそう言うと心配そう顔を覗きこんだ。そう、オルロはカナと一緒にいるうちに言葉を覚えたのだ。カナに絵本などを読んでもらいながら一生懸命真似をして覚えて、今では簡単な会話ならできるほどである。

「心配してくれるの?ありがとうー。オルロは優しいね」

カナは気を取り直してカバンから絵本を取り出した。

「ジャジャーン!今日は『星盗物語』と『恐竜の足音』でーす!」

オルロは絵本が出てくるのを見て両腕をあげて喜んだ。いつものようにオルロはうつ伏せになりその上にカナがまたうつ伏せになる。ページをめくるのはオルロの仕事だ。
最初の絵本の内容は子供向けの活劇で、拐われた少女を返してもらう為に星を取りに行く少年の話だった。

「少年と少女はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし」
「メデタ、シ、メデタシ。」

絵本が面白かったのかオルロは両足をバタンバタンさせている。
次の絵本は砂漠に暮らしている恐竜が海が見たくて旅に出る話。途中、人に会い心を教えてもらうのだ。

「恐竜の流した涙は海にまじり、涙は海を渡り世界を巡ったそうです」

オルロが指先で恐竜の絵ををなぞる。

「ボク、ミタイ、ダ。
カナ、ウミッテ?」
「海はねー、この島の回りを囲んでるおっっっ、きな水溜まりみたいなものかなー?ごめんね、うまく説明できないや」
「ボク、イッテミタ、イ」

ここからでは海は遠目に見ることしか出来ない。カナはオルロに間近で海を見せてあげたくなった。

「わかったわ、オルロ。明日の朝になったら二人で海に行こうー!」

オルロは、嬉しい、やった、とオウっオウっと鳴いた。 明日は二人でピクニックである。



(続く)


[No.6039] 2009/12/17(Thu) 08:22:26
悲しい涙は最悪の調味料(六) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

(六)


「クラカイ君?反応?なんすかそれ?」
『私が【クラウデス】の怪人に反応するレーダーがあったら便利だなーって思って作ってみたのよ。名付けて【クラカイ君壱号】試作機なんだけどね。スイッチ入れたらさっそく反応があったってわけ。』
「その機械大丈夫なんすか?」
『私が作ったんだから大丈夫に決まってるでしょー。とにかく、村雲君偵察よろしく!絵斗さんも向かわせるし、都合がつけば他の3人も合流させるわ。バクアイレッド出撃よ!』
「りょ、了解!」

チン。受話器を置いてから唸る村雲。
大丈夫かー?アイアイ博士は凄い人なんだけど、あの人が訳わからんネーミングセンスで開発したモノってろくなモノ無いんだよなぁ。でもいたら大変だからいかなきゃな。
村雲は急いで身支度をして偵察に出掛けた。

『ちょっと準備中。ゴメンヨ!!』

扉についている看板はゆらゆらと揺れた。


────────────────


「レッド」
「おう!ブラック。早かったな」
「途中まで車で来たのでな」
「ブラック車なんて持ってたのか?」
「うむ。やはり何かと便利なのでな」

あれから一週間。なんとなくあったぎこちなさも消えつつあった。然したる事件も無かったのもあるが、絵斗がこの話題に触れなくなった、というのもある。しかし、彼女の悪人にたいする憎しみや怒りはまだあるだろう。 彼女がどういう運命を背負っているかはわからないが、ああいう事は彼女一人が背負うべきではない。そう思う村雲であった。

「偵察に来たのはいいけど、本当に居んのかねー」
「む?」
「ん?どうした?」
「足跡だ。
よくはわからないが、私達のよりは大きそうだ」

砂漠に残っている足跡はまだ新しいということを意味する。

「あの方角は東海岸の方だな」
「アイアイ博士。怪人の反応は今何処から出てる?」
『実は・・・、さっきから調子悪くなっちゃったのよねー』
「あらら。ブラック、どうする?」
「ここに何か居たのは確かであろう。この足跡を追おう」
「了解」

─────────────────

オルロは疲れが見えたカナを胸の所で優しく抱っこしながら歩いていた。だんだんと青い水溜まりの様なものは大きくなっており、潮の香りが強くなってきている気がする。

「オルロ。はい、水だよ」
「アリガト」

カナは水筒の水を飲ませてあげている。この行為はオルロにとって初めて会った時にされた行為であり、彼にとっては大事な儀式のようなものだった。オルロはもうカナ以外の他の誰からも飲食物は受け取らないであろう。

「もうちょっとで着くね」
「オルロ、ガンバル」

その時、二人の後方に二つの人影が現れたのだ。

───────────────

「発見した」
「見事なまでに怪人だなぁ。アイアイ博士?」
『モニターしてるわ。間違いないわね。他の3人にも緊急連絡しておくわ』
「ん!?。子供を抱いている!」

ブラックはすらりと剣を抜いた。

「何が目的かはわからんが、救出するぞ」
「わかった。ファーストアタックで俺が体勢を崩す。その瞬間に奪取してくれ」
「・・・」
「こ、子供を助けるの優先でいこう」
「解っている。行くぞ」

砂を蹴って一気に加速する。砂埃をあげて怪人に接近した。
何かが向かってくる気配がする。
オルロはなんだろうと振り向こうとした刹那、膝に衝撃。レッドが繰り出す低空ドロップキックが決まったのだ。思わず体制を崩すオルロ。宣言通り体制を崩すことに成功したレッド。次の瞬間にはブラックがカナをもぎ取り、抱えて距離を取っていた。

「(今の感じは?)ブラック!こいつは俺が引き受けた!その子を安全な所へ!」
「何を言っている?私も・・」
「バカヤロー!その子の安全が最優先だ!頼む!」

ブラックは女の子をチラリと見る。
くっ、確かにこのままでは危険か。

「直ぐに戻る。それまで耐えろ」

ブラックは急な展開で思わずキョトンとするカナを抱えたまま全速力でその場を後にした。
離れていくブラックを確認した後、怪人と向き合ってファイティングポーズを取る。
さっき蹴った感じ。かなりヤバそうな奴だ。

「さーて、やるかい」

─コイツラ、カナヲドコカニツレテッチャッタ─
─ヒトサライダ。ワルイヤツラダ─
─カナヲカエセ。カナヲカエセ─

「ゥゥオオオオオオガァァァァァァァァ!!!」

カナを返せ。代わりに出てきたのがこの咆哮であった。怒りで言葉を忘れたのだ。同時に胸の辺りが熱くなり、角の先端がジンジンしはじめる。

パリッ、パリパリパリパリ

角から放電が始まった。

『ほう。電気怪人の様だな』
「見ればわかるわ!」
『50〜80万ボルトと言ったところか。レッド。そのスーツは絶縁してあるが、あまりもらうとシビレるぞ』
「へっ、上等」

絶好のピクニック日和の陽気に雷鳴がこだました。


(続く)



[No.6071] 2009/12/24(Thu) 10:55:39
悲しい涙は最悪の調味料(七) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

(七)


「ここまで来れば大丈夫であろう」

ブラックはカナを連れて少し離れた所にあった防風林の所まで来ていた。カナを下ろし、すぐさま踵を返してレッドの元へ行こうとする。

「あ、あの・・・」
「隠れていろ。ここなら安全だ」
「え、ち、違くて・・」

怖い。上手く喋れない。でも、このままじゃオルロが!
伏せ目がちだった顔を起こすカナ。

「あ、あの子は私の友達なの!だから、乱暴しないで」

ブラックは目をパチクリさせる。何を言っているか理解できない、っと言った顔だ。
友達だと?

「馬鹿な。アレは恐らく【クラウデス】の怪人だ。お主に危害を加えるつもりだったのかもしれない」
「そんなことないもん!オルロはとっても優しい子なのよ!」

目に涙を浮かべて怒りを顕にするカナ。
本当に友達だと思っているようだな。友達を想うゆえにか。友達想いだな。しかし、アレは奴等の怪人なのだ。
構っている暇はない、っと言った感じで背を向けるブラック。

「奴は悪だ。故に我は戦う。危険だからついてくるでないぞ」

走り出すブラック。

「待って!オルロは友達なんだよー!私の、大・・友・・・・」

背中に声を受けながら走るブラック。
大切な、大切な、か。あの子は小さい頃の私に似ているな。
前方からは未だに激しい雷鳴が響いている。


─────────────────

バリバリバリバリバリバリドドーン

角から放出される電撃は容赦なくレッドに襲いかかる。瞬時に巻き起こる電撃は見切る事は困難であった。直撃を避け、接近し、肉弾戦に持ち込んでも手応えが悪い。さっきの膝への攻撃もそうだが、衝撃がそのまま反ってくる。このままでは攻撃している手足が持たない。
こいつは、今までとは格が違う。

「ぜぃぜぃ。博士!なんか弱点みたいのは無いのか!?」
『全身生体リアクティブアーマーと言ったところね。角はどう?』
「角!?あんなバチバチ言ってる所に攻撃するのか!?」
鼻先に電撃がかすめ思わず岩影に隠れる。

『弱点だからこそ電気で守られてるのかもしれないじゃない?』
「それもそうだな。よし、一か八か!」

岩影からバッと飛び出す。次の瞬間、待ち構えていたように電撃が直撃する。瞬時に体内の水分が沸騰し、派手に破裂する。しかし、破裂したのはサボテンであった。

「!?」
「ここだぁ!!!」

オルロの角に延髄切りならぬ角切りが炸裂する。

「オオオガァァァァ!」
「効いた!?」

角を押さえてぐらつくオルロ。

─イタイ─
─イタイ─

オルロはさらに胸が熱くなるのを感じた。角からはいっそう激しく電撃が放出される。すると、オルロの周りに光の珠が浮かび上がった。

『雷球!?まずいわ!レッド、あれに触れちゃダメよ!あの表面温度は私の作ったスーツの耐熱度数を遥かに超えてるわ』

す、す、っと不規則に揺れながらレッド目掛けて移動開始する雷球。ちぃ、と雷球に気を取られていたらオルロの放った電撃の直撃を喰らう。

「ぐああぁぁぁ!」

砂の上に倒れこむレッド。体はひきつって動かない。雷球はもう目の前まで迫ってきていた。
ちくしょう!これは、やべえ!
その時、ブラックが間に割って入ってきた。剣を砂に突き刺し、そのまま雷球と接触させる。ブラックは激しい光りに包まれる。光が収まるとブラックは膝をついていた。電流を地面に逃がす事は成功したが、何割か貰ってしまったようだ。

「くっ、お前の尻拭いは、疲れる、な」
「誰も、頼んじゃいねえ、や」

這うのがやっとの二人。その二人にオルロはゆっくりと近づいていった。

─カナハドコダ?─
─カナヲドコニヤッタ?─
「オォォォガァァァァ!!!!」

怒りの咆哮が響く。すると、どこからか笑い声が聞こえてきた。

「ふはははは!ようやく見つけたぞ!!」


(続く)


[No.6072] 2009/12/24(Thu) 10:59:22
Star duster (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

『 この物語を愛する偉大なる先人に捧ぎます。 
  貴方に愛を。 』

/*/

< Star duster >

/*/

やわらかな雪が、君に降る。
小さな体に染みる熱。
君から雪に渡る熱。

/*/

きゅうと詰んだフェルト地のコート。
灰色の空に吐息が浮かぶ。
真っ赤なほっぺの君は空を見上げた。

/*/

売るべきマッチもないけれど、
ぶつようなお父さんもいないけれど、
あたたかいレンガのお家が待っているけれど、
――何故だろう。
こんな午前10時の街並みに、
胸の前が、ぎゅう、となる。

胸じゃない。
そこにないはずの体がいたむみたいに、
胸の前の、何もない空気が、
ぎゅう、って、いたくなる。

/*/

行きかう人はだれも顔を見合わさない。
大きな背たけの大人たち。
みんなから出る音は止まない。
なのに君には音が聞こえない。

空気を渡る、その音が。

サンタクロースみたいに真っ赤なミトン、
白い毛皮の房飾り、
夜海色のフェルト地の、詰んだコートに、
ふかふかの靴。

ひらひらと雪が君に降る。
小さな体に染みる熱。
午前10時の冷たさが、袖の上でとけて水玉になった。

/*/

君は吐息をくり返す。
灰色の空色。
何もない胸の前に、けん命に吹きかけるようにして、
しきりと手をこすりあわせながら、
ないものねだりをする子供のように、
けん命になって地団駄を踏んで、
体の熱であたためる。

胸の中が、さむくなった。

/*/

夕やけのない夕方に、
空は、君とおなじ夜海色を落としてくる。
雪にうずもれた街は白くかがやいていた。

空とおなじ色をした君は、
空を見上げている。

真っ赤なほっぺが、さむくて、いたい。
真っ赤なミトンを君は外した。
手のひらに、雪が降る。

/*/

湯気の立つおいしそうなごちそうも、
大きな鉄のストーブもいらない。

雪が止んで、雲がどこかへ行って、空には、
街から広がった夜海色が、たぷん、たぷん、あふれている。

小さなマッチの火なんていらない。
そんな光も熱も、作ってまで、ほしくないから。
だから。

だから。

/*/

真っ赤にしもやけた君の小さな手は、
ぬりつぶされた空から何かをつかみ出そうとして、
夜海色の中を真っ赤に握る。

どくん、と、手の中で熱く、心ぞうの音が鳴った。

手のひらを広げると、その上に浮かぶ、白い星粒。

ああ、なんだ。

そこにあったんだね。

/*/

君は星くずを見た。
とても、とても遠くの小さなそれを。

胸の前から、冷たさがいなくなった。
もう、いたくない。

午後10時のぬくもりを君は握りしめて家路を急ぐ。
街に行きかう、おなじ音。
きっとだれかに待たれている。

ほんのちょっとだけ恥ずかしそうに、
笑顔の音が、午後10時の空気の中を、渡っていた。

おかえりなさいとだれかが言う。
君は答えた。

/*/

『ただいま――!』


[No.6089] 2009/12/25(Fri) 07:51:56
あとがき (No.6089への返信 / 2階層) - 城 華一郎

マッチ売りの少女はかわいそうなお話なのでしょうか、しあわせなお話なのでしょうか。そもそもマッチ売りの少女のお父さんがちゃんと稼いでいればマッチなんて擦る必要もなかった気がするわけで、でも、だからと言って、お父さんだけに責任を押し付けるのもおかしい気がするのです。お父さんだってマッチを精一杯作っていたはずだ。

だから、周りの大人たちがマッチを買ってあげなかったのも、悪いかどうかなんて決めつけられない気がします。マッチを買う1円だってあればお金を貯めておきたい生活の厳しさは、きっと今も昔も変わらないでしょう。

でも、それって大人の物の見方であって、絵本を読んでいる子供たちにはわからないんだと思います。

マッチ売りの少女は、はたしてかわいそうなお話だったのか、しあわせなお話だったのか。

知りたいから、マッチを売らなかった少女に聞いてみました。
マッチ売りの少女は何が欲しかったのか、聞いてみました。

彼女なりの答えが、この物語となっております。
マッチ売りの少女がなくしたお母さんの靴、どうなったのかなあ。

<マッチ売りの少女が死んだ、古い一年の最後の夜も間近なクリスマスの朝に、ジミーサムPの名曲、Stardusterを聞きながら……。>


[No.6090] 2009/12/25(Fri) 08:06:13
悲しい涙は最悪の調味料(八) (No.4100への返信 / 1階層) - 空馬@携帯

何度も考えました。この他にないのかなって
─────────────────
(八)

砂丘の頂上より白衣の男が降りてきた。肩までの長髪で、目に機械でできた眼帯のような物をしている。

「何だ貴様らは?ははーん、さては最近我々の邪魔ばかりしてくるレンレンダーだかなんとか言う連中だな」
「レ、レンレンジャー、だ!誰だ、お前?」

レッドの近くまでやって来くる。いきなり踏みつけた。

「言葉には気をつけろよ小僧。私こそは【クラウデス】の(自称)世界最高の科学者!Dr.フライヤー様だ!」
「よくも、まあ恥ずかしげも無く、言えた、ものだ。マッドサイエンティストめ」

くぃっとブラックに向きを変えるDr.フライヤー。

「色っぽいが随分と口が悪いお嬢さんだ。後で洗脳して助手にしてやろう。さて」

オルロに近づいていく。かくゆうオルロは突然現れたこの男がなんなのか判らず事のなりを見守っていた。

「迎えに来たぞ、No.23」
「ムカエ?キミハナニ?」
「(喋った?誰かこやつに言葉を教えよったな)私はお前を造った者だ。いわば産みの親だな」
「オヤ?」

─ツクッタ?─

「そうだとも。お父さんだ」

歯をくいしばって立ち上がろうとするブラック。やはり筋肉が痙攣して上手く立つことが出来ない。

「やはり、貴様等の作った、怪人か」
「そうだとも!私の最高傑作だ!最強の破壊兵器だ!街を壊し!家を壊し!幸せを壊す!この国は恐怖で包まれるであろう!ククククク、こいつが作り出す恐怖はいったいどんな味であろうな!?ふはははは!」

─コワス?─
─ハカイヘイキ?─

「この功績で私は【クラウデス】の幹部にまで登り詰める事ができる!おぉ!今日はなんといい日であろう!【クラウデス】が世界制服した暁には今日を『フライデー』として祝日にするよう進言してみよう!」
「あほくさ」

またもやレッドを踏みつけるDr.フライヤー。 念入りに二度三度。

「言葉には気をつけろ、と言っただろ小僧」


「オルローーー!」

突然オルロを呼ぶ声がした。カナが向こうから走ってきた。砂漠を走ってきたためによろよろだ。

「な!?来るなと、言ったのに」

─カナ─
─・・・ボクハ、ヒトヲコワスタメニ、ツクラレタ─

「何だこの小さいのは?」
「はぁはぁはぁ、オルロの友達よ!」

空気が一瞬止まる。
オルロ?友達?

「ひゃーはっはっはっはっ!これは傑作だ!この血も涙もない破壊兵器に友達だと!?そんな馬鹿な事があるか!!」
「オルロは兵器なんかじゃない!大切な友達なんだから!」

─カナ─

カナはDr.フライヤーに飛び付いて腕に噛みついた。

「うぎゃぁぁ!痛い!止めんかこのガキが!」

ぶんぶんと振り回しカナを投げ飛ばした。投げ飛ばした先には岩が待っていた。
ガシィ!!

「ふー!セーフ」

間一髪。岩に激突する前にピンクが止めた。遅れてブルーとグリーンも来た。

「ブラック!レッド!大丈夫ー!?」
「遅れてすみません。詳細は博士に聞いてる。間に合って良かった」

レンレンジャーが五人そろった。
雑魚が増えおって。

「ふん、何人集まろうと一緒だ!No.23!こやつら纏めて始末してしまえ!」

ゆっくりと動き出すオルロ。博士の後ろに立って羽交い締めにした。

「な、何!?」
「「!?」」

カナに振り向くオルロ。恐ろしい顔つきだが、彼の心が悲しみと苦しみに被われているのがその場にいた全員にわかった。彼の四つある目から大量の涙が流れていたからである。

「カナ、ゴメン。ボクハヒトヲコワスタメニツクラレタハカイヘイキナンダッテ」

レッドとブラックにも目をやる。

「コノヒトタチハ『ボク』カラカナヲマモロウトシタンダ」

オルロに抑えられジタバタと足掻くDr.フライヤー。

「何をやっているNo.23!早く離さんか!はっ!?ま、まさか!?」

オルロの胸がどんどん熱くなる。だが角からの放電は無い。

「なんなの?」
『あの怪人の体温と内圧がすごい勢いであがってる。このままじゃ・・』「自爆!?」

自爆と言う言葉に反応するカナ。ピンクから離れてオルロに駆け寄ろうとするがピンクに止められた。

「いけない!危険よ!」
「離してよー!オルロー!ダメー!そんなのヤダー!」

オルロの体は白い光を放ち始めていた。

「や、やめろNo.23!わ、私は親だぞ!そんな事していいのか!?」
「ボクノオヤハカナダ。ソシテ、カナハタイセツナオトモダチ・・・」
「やめろー!!」
「オルロー!」


激しい光に『二人』は包まれた。そして、


ドゴォォォーーーン!!!!


(続く)


[No.6111] 2009/12/30(Wed) 17:53:30
【図書館移動済】無限爆愛レンレンジャー:第一話(1) (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

https://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/547.html
ここからスタート!


[No.6133] 2010/01/10(Sun) 05:58:42
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[No.6134] 2010/01/11(Mon) 07:24:32
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[No.6135] 2010/01/11(Mon) 08:45:01
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[No.6136] 2010/01/11(Mon) 09:48:57
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[No.6137] 2010/01/12(Tue) 22:01:23
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[No.6138] 2010/01/12(Tue) 22:08:01
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[No.6139] 2010/01/12(Tue) 22:08:42
イマジネーターの死 (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

ガラスの向こうで人が死ぬ。
ガラスを叩く人がいる。
ガラスの向こう側じゃない。
ガラスのこちら側で、必死に、死にゆく人たちへ、自分の存在を気づかせようと、叩き続けている人がいる。
ガラスの向こう側では、けれども誰も振り返らない。

眠るように横たわり、死んでいく。

ガラスが割れない。
いくら叩いても割れない。
これはガラスか?
本当に壁なんてあるのか?

客観視するものなどこの場にいない。

ただ、死にゆくか、必死にガラスを叩くかの、どちらかだ。

コンクリートの白い箱。
長方形の中央を仕切る、透明に輝く結晶構造。
知っているかい?
ガラスは固体というより液体に近い組成をしているそうだ。

ガラスを叩く人がいる。
あれは水面の向こう側。
あれは水面のこちら側。
揺れない水面は残酷だね。
ガラスは箱の真ん中を走っている。
死にゆく人、あれは僕かもしれないと、ガラスを必死に叩く人は思っている。
死にゆく人は、けれど、僕は死んでいくのだろうかと、疑いもせずに、ただ死んでゆくんだ。

ガラスの隔てに、意味は?
意味は、あるのだろうか?

わからない。
わからない、わからない、わからない、わからない、
わからない――――

届かない声に意味はあるのか?


[No.6142] 2010/01/13(Wed) 19:24:11
snow drop (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

ひとひらに雪が舞う。
このひとひらに、気付くものは誰もない。
ひとひら。
ただひとひら。

ひいら−ひらりと、ひとつぶが、
1万メートルの彼方から、
秒速1メートルの速度で、
降りてくるんだ。

空に雲はない。
どこにも彼の仲間はいない。
それでも君は名付けるだろう。

snowdrop、花が咲く.


[No.6143] 2010/01/13(Wed) 19:30:05
【図書館移動済】ニューワールドの子供たち−Episode0:The Endless Heart 〜誰そ彼の魔術師〜 (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

https://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/624.html
移動しますた


[No.6144] 2010/01/13(Wed) 19:33:48
長い割りに益もなし。 (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

いつも思うことがある。
何の益もないのに人は、なぜ、感動を求めるのだろうか。

涙が出るくらいに心震えても、何を手にした訳でもない。
明日になれば胸に受けた鮮烈さも忘れるだろう。

それなのに。

それなのに。

たった一度の感動を元に、歩む道を変えてしまう。
何度も、何度も、昔受けた感動を求めては繰り返し、
気がつけば、自分だけの道。

人は何に感動しているのだろう。

ここにいるよと声がする。
君は一人じゃないよと呼びかける声。
その、声に感動している、ような気がする。

結局、人なんて、どれだけ行っても自分以上に理解出来る相手はなくて、
自分さえも理解出来ないなんて泣き言をいったところで、
それは自分を理解しているから言えることで。

自分よりも重たいものが、世界にないと、
僕らはとてもさみしいんだと思う。

なにか、自分よりも重たいもの、
自分よりも大切に出来るものを探して人は感動する、気がする。

それは愛だろうか。
無償の愛という耳慣れた言葉を、もう一度、心に新しくしてみる。

無償の愛というのは、あなたから受けた尊い行為に対して、
償いはいらないのですかと人が口にしたくなる行為だろう。
それはただの親切だ。
落としましたよとハンカチを後ろから差し出すことだ。
ありがとうという言葉は代価だろうか。
そうでもあり、そうでもない、気がする。
ありがとうと言われた時、ただの親切は親切ではなくなるのだろうか。
お礼を期待してやることじゃない。
余計なお世話だと言われて、それでも相手のためになることを選ぶのは、
どうも、より、尊い印象を受ける。

何故だろう。
自分より大切なものがあると、教えてくれる行為だから、
尊いと感じるのだろう、か。

気分を害するような言葉を受けて、なお、
気分を害した自分よりも大切なものがある、
それは自分以外の誰かの何かであると、
そう、言外に伝わってくるからだろうか。

尊いということ。
感動が胸に響く。
では、胸というのは、人間の中で、どのような位置づけなのだろう。
もっとも重要で奥深くにある、と、心の臓器として心臓は名づけられた。
脳ではない。

脳に響くものはノルアドレナリンのような刺激であって、
胸に響くものは、βエンドルフィンのような刺激である。
同じ生物学的作用でも、
胸をしめつける分泌物が出るケースというのは、
脳が高揚する分泌物を出すケースとは、違って、
もっと幸せなような気がする。

幸せのために感動を?
幸せのために感動を。

幸せになること。
これ以上に人生にとって大事なことはあるだろうか。
幸せの定義は人により、また価値観により異なる。
感動にも様々な種類がある。
様々な幸せを与えるために、様々な感動がある、のだろうか。

感動を与える行為には、ああ、そうか。
他人に幸せを与える行為だから、無償の愛のように、不思議に響く行為になっているんだ。

幸せは普通降ってこない。
降ってくるとしたら、それは自分が掴み取るか、
誰かが降らせてくれているかのどちらかだ。

度合いとしては、宝くじを買うのも、自分で掴み取りつつ、
誰かが降らせてくれるのを待っているようなところもある。
人が、感動を求めてさまようのは、それと同じか。

では、何故、人は感動を与えようとするのだろうか。
他人に幸せを与えようとするのだろうか。
他人に幸せを与えることで、幸せになれるから?
少し、違和感が残る。

美しい無償の愛ゆえに人は感動を作り出す?
違う気がする。

人は、自分に対しても感動を与えられる。
自分を感動させたいから感動を創る。
だから、本気だ。
益がないように見えても、必ず益がある。

どれだけ自分を感動させることに必死か、
その必死さの度合いで、人に感動を与えられるかどうかも、
決まっている、ような気がする。

自分を感動させるために。
自分をより深く感動させるために。
そこに他人はいないのだろうか。
他人のために、は、不純なような気もして、純なような気もする、
そんな言葉になっている。
成り下がっているのか、成り上がっているのか、それもわからない。

他人も自分の一部なら。
所詮自分の中でしか世界は作れない。
自分の中にしか他人はいない。
なら、自分の中の他人を喜ばせようという行為もまた、
自分を感動させる行為なのだろう。
それが実際の他人を喜ばせる行為になりうるかどうかとは別に、
人は、往々にして、そのように行為を選ぶのだろう。
それをして、正しいと呼び習わすのだろう。

でも、それがどうしたというのだろう。
正しさと悪の狭間の中で、何億人もきっと死んできただろうに。
生み出される感動が正しいかどうかに意味は感じない。
正しいかどうかで判断される感動なんかに価値はない。

自分が揺さぶられたいんだ。
他人が自分にあわせて勝手に揺さぶられているだけなんだ。
けれど、それが意外にうれしいんだ。
そういうことなんだろうか。

献身的に感動を生み出すというのは、どうも違和感のありすぎるフレーズなように思えるから、
やはり感動は、わがままにしか、生み出せない、
そんな気がする。

わがままであることと、生きやすさとは、なんの正比例関係もないのに。
わがままに生きることを選ぶのは、あまり幸せではないはずなのに。
幸せになるために、わがままでなければいけなくて、
幸せにするために、わがままでなければいけない。

わがままであることがこんなにも大事だということは、
行儀良く縮こまっていることの否定を意味するのだろうか。
言ってしまっていいのだろうか。
YESでありNOであると。

行儀のよさで人を感動させることもある。
丁寧な気遣いが人を感動させることもある。
それが幸せの一つの形なのだから、それはそれでいいのだろう。
そうではない幸せもまたあるというだけの話。

わがままであることと行儀がいいことは対立しない。
行儀がいい自分を望むのは、わがままなことだ。
行儀が悪いことを求めて感動する人もいるのだから。
行儀がいいというわがまま。
これ、もっと、自信を持ってもいいんじゃないか。
他人に行儀のよさを押し付けたり、自慢をするのではなくて、
自分の価値観を貫いているという行為に、
もっと自分で感動してもいいんじゃないだろうか。

感動という概念は難しい。
ただ、少なくとも捜し求めなければ与えられないものであることには違いないようだ。
よかった探しなんて言葉は古い。
感動を探そう。
それが感受性って言葉の意味なんじゃないのかな。
この文章を書いてみて、そう思うようになった。

いいか、悪いかじゃなくて、感動したかどうかで世界を捉えれば、
世界はまぶしくなる、気がする。
まぶしい分だけ、暗くも見えてくるだろうけど。
最悪であることを最悪だと嘆くのではなく、
最悪であることを、最悪であった、と、いつの日か、
そうではない今にたどりつけた自分に、感動するために。

そういう感受性を育てるのは、でも、難しいよなあ。
それでも、新堂塾という場所は、そんな場所の気がするのだよね。
新堂の名を持つ相手に感動したことがある自分だから、そう思う。

どんなところなんだろうなあ。


[No.6146] 2010/01/15(Fri) 17:38:18
【図書館移動済】無限爆愛レンレンジャー:第二話(1) (No.4100への返信 / 1階層) - 城 華一郎

https://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/623.html
こちら〜


[No.6149] 2010/01/16(Sat) 13:15:28
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