| ウルトラセブン第3話「湖の秘密」
脚本 金城哲夫 監督 野長瀬三摩地 特殊技術 高野宏一
【マニアライター棺桶のジョー】
木曽谷の吾妻湖付近に不審物体がやってきた。ウルトラ警備隊は、フルハシ、ダンの二人を偵察に向かわせた。その頃、吾妻湖で釣り人がケッタイなものを釣り上げたが、謎の少女(高橋礼子)により逃がされた(エレキングの幼体である)。目的地に円盤のあるのを見て、フルハシとダンは入り調査すると、謎の少女が現れる。が、そのうちに催眠ガスが噴き出して、フルハシとダンは意識を失う。その間に、ダンはウルトラ・アイを奪われてしまう。気が付いて、ウルトラ・アイの奪われたことを知ったダンは、単身探索に出る。フルハシは、出会った少女を基地につれて帰った。
と、そのダンに、湖の中から怪獣が現れ襲い掛かった。エレキングである、巨大化したのである。操縦しているのは、さっきの少女と瓜二つ、双子の少女である。変身できないダンは、カプセル怪獣・ミクラスを放ち、エレキングと戦わせた。だが、ミクラスはエレキングの尻尾を巻かれて電撃を喰らってKO…止む無く、ダンはミクラスを撤退させる。このピンチに、ウルトラホーク1号が到着し、エレキングとバトルとなる。
基地に保護された謎の少女は、介抱してくれたアンヌに襲い掛かり、ホーク2号を奪って基地から脱走した。そして、ウルトラホーク1号は、エレキングに撃墜されてしまう。しかし、ダンは円盤に戻り、エレキングを操縦していた少女と格闘となり、ウルトラ・アイを奪い返す。そして、セブンに変身した。
セブンとエレキングのバトルである。セブンは力技でエレキングを圧倒し、エレキングはセブンに尻尾を巻きつけて電撃を与えるものの、セブンはびくともしない、セブンはエメリウム光線(胸に手を当てるB型)でエレキングの角を破壊し、アイスラッガーで尻尾、胴、首を切断、エレキングは爆発して敗退した。
謎の少女二人は、作戦に失敗して、円盤で逃げることにした。エレキングは負けたが、もっと強い怪物を育ててリベンジするつもりなのだ。「地球人はかわい子ちゃんに弱い」とうそぶいて…円盤の中で、二人はピット星人の正体を現す。が、逃げる円盤をセブンが飛んで追尾し、円盤の光線攻撃もセブンにはびくともせず、エメリウム光線(これもB型)が円盤を破壊し、セブンは勝利した。
マニア的突っ込み
(1) 「奪われる」ウルトラ・アイ、「落とす」ベータカプセル…
セブンの制作第1話で、ウルトラシリーズの中で、初代マンとセブンは第1話が後回しに制作されています。で、この話、と言うより、セブン全体に関しての昔からの突っ込みで、「ウルトラ・アイはよく盗まれる」というものです。実際、翌第4話でも盗まれて、さらに第37話はそのまま「盗まれたウルトラ・アイ」と、シリーズの中で3回も盗まれているのです。平成では、変身アイテムはティガ、コスモス、マックスで各1回盗まれているだけなのということを考えたら、セブンの盗難率はスバ抜けて高いのです(?)。しかも、盗まれたのは全て女性であり、そのため、ダンは女性に弱いと言われるのです(?)。セブンが女性への人気が高いのもこのためと言われます(??)。もっとも、昔ウルトラ・ファンダムで会った女性ファンは、ダンはウルトラ・アイを盗まれてばかりで格好悪いと言っていましたが…(???)。
一方、初代マンのベータカプセルは、盗まれたことはありませんが、よく落とします。こちらは、制作第1回のバルタンの話で早速?落として、その後、ゲスラ、レッドキングの回でも落とし、さらにゴモラとのバトル中に落とし、と落としまくっています。
このため、ウルトラ・アイは盗まれる、ベータカプセルは落とす、とよく言われます。この件、関西の情報誌、Lマガジンの突っ込みコーナーでも、読者の投書が載ったのを覚えています(このLマガジン、84年にウルトラQが深夜枠再放送になった時、新番組扱いで紹介していました!)。
この他、ウルトラ・アイは、第25話「零下140度の決闘」では雪の中に落としていますが、ファンの間では、こんなに盗まれるなら、ウルトラ・アイのセキュリティはどうなっているのか?とよく言われていました。平成に変身アイテムがあまり盗まれないのは、この時の教訓かも知れません。メビウスでは、変身アイテムを盗まれないようにくっついていたのも、おっちょこちょいのミライのことを考えたら・・・(笑)
ちなみに、こういう、ヒーローの基本的なことに突っ込むのは、ヒーローものでは一種タブーのところもあり、最近の平成ライダーは変身アイテムを使うものの、盗まれる話はないのです。変身アイテムを巡る展開は、円谷ヒーローの得意とするものです。
(2) カプセル怪獣の扱い
制作第1回のこの話で、カプセル怪獣のミクラスが早速出ます。しかし、この回での使用は、ダンが変身できない時に戦うものの、あっさりやられてオシマイ、と言うもので、これは桑田次郎版のコミックも同じであり、これなら、何のためのカプセル怪獣か、という論議が昔からありました。
カプセル怪獣はシリーズで何度か使用されているものの、その設定的に、簡単にやられておしまいではどうかという論議は制作サイドでもあったようで、実相寺監督は、カプセル怪獣の設定に疑問があり、自分の話では使わなかったとコメントしていました。もちろん、カプセル怪獣が強かったらセブンの出番はないわけですが、この点は昔から、マニアの論議になっています。メビウスのマケット怪獣は、この点を考慮して設定されているのはさすがです。
(3) 野長瀬監督の演出
この回を演出した野長瀬三摩地監督は、第1次ウルトラシリーズで合計22本の演出を行い、最多演出監督です(2位は円谷一監督の21本)。東宝出身で、ゴジラなどの現場にいた、円谷英二直系の人であり、第2次シリーズでは出番はなかったものの、80では3本演出しています。
その野長瀬監督、ホラータッチの演出が得意で、ウルトラQ、ラゴンが突然現れる場面や、ウルトラマンでの、ダダの恐怖など、こういう絵を撮らせたら最高の人です。一方で正統派の話も上手くやり、セブンでのパイロットを担当したのもその手腕ゆえです。
(4) NG編集版の話
かつて、レーザーディスクでウルトラセブンのセットが出たときに、特典版として、制作第1,2回(放映第3,2話)のNG編集版がありました。このNG編集版、オープニングに影絵がない、そして、全体で30秒ほど長く、などの違いがあり、エレキングとミクラスのバトルで、エレキングがミクラスに尻尾を巻き付けるシーンで、エレキングが自分の体に巻きつけてから、ミクラスに巻き付けるシーンがありました。この作品、DVDにはなっていないので、貴重です。
(5) セブンの強さ
この制作第1回で、セブンの圧倒的な強さが早くも描かれます。ミクラスを倒したエレキングの電撃を受けても、セブンはびくともしない、こういう、ヒーローの圧倒的な強さが、初代マンに続いて描かれています(初代マンではネロンガの電撃を受けても平気なシーンがあり、これはメビウスで、メフィラスとのバトルで再現されます)。こういう、ヒーローとしての圧倒的な強さを見せるのが第1次シリーズの特徴で、第2次シリーズでは、帰マンを弱くしてしまったため、ブレスレットでの強化を必要としました。
こういう、圧倒的な強さは、第2次シリーズ以降薄れてしまい、データ的には強いものの、画面の描写を見たら強くない、という形がその後続きました。しかし、ヒーローの圧倒的な強さは、平成ではマックスで描かれ、またメビウスもルーキーながら相当強く描かれることになりましたが、ヒーローの強さを見せるのはなかなか難しいのです。マニアに、初代マンの圧倒的な強さが神格化されているのもそのためです。
ただし、最終回、弱体化したセブンの描写では、この回もダメージを受けた旨のシーンがあり、後々堪えている模様です。
(6) シナリオは「美しき侵略者」、しかし・・・
この話、シナリオの段階では、「美しき侵略者」というタイトルでした。が…実態は「ブサイク」、「ブスだ」という批判が昔からありました(?)、「地球人はかわい子ちゃんに弱い」と言うシーンをして、非難ごうごうでした(笑)。そのためか、マックスに出てきたピット星人人間体は、美人でした(笑)。
(7) アイスラッガーのこと
制作第1回では、パイロットであり、以後の作品とは異なる描写があります。この回、セブンがアイスラッガーを投げるシーン、明らかにアイスラッガーに触っておらず、勢いみたいなものでアイスラッガーが飛んでいく描写があります。アイスラッガーはそれ自身が刃物ではなく、セブンのエネルギーを受けて切断力を持つと言うマニアの描写がかってありました。アイスラッガーは切断兵器だけではなく、万能武器として描写されています。
なお、アイスラッガーの設定は、当時光学合成が大変で、それの必要ない飛び道具が欲しかったと、満田監督がビデオで証言していました。
なお、「アイスラッガー」の命名は「アイ・スラッガー」、セブンのタイトル候補として「ウルトラ・アイ」があり、そのアイ+強打者を示すスラッガーをくっつけたものが命名の元です。しかし、これを「アイス・ラッガー」と間違えている例も多いのです。キン肉マンでキン肉ラッガーというのが会ったそうです…そういう私も、昔は、セブンは寒いのが苦手なのになぜ「アイス」と思っていました(?)。
|
No.16760 - 2007/10/07(Sun) 19:52:58
|