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all 国内作業ツリー2 - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/02/23(Tue) 00:53:55 [No.2496]
精霊医 - アポロ - 2010/12/08(Wed) 23:06:18 [No.2627]
お料理教室 - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/12/01(Wed) 03:14:52 [No.2620]
ページ完成(一応) - アポロ - 2010/12/07(Tue) 05:31:30 [No.2624]
おつかれさまです!&校正とかとか - イク - 2010/12/08(Wed) 02:09:08 [No.2625]
ページ(修正) - アポロ - 2010/12/08(Wed) 22:19:33 [No.2626]
校正のとこ - イク - 2010/12/09(Thu) 00:21:26 [No.2628]
ページ(修正2) - アポロ - 2010/12/09(Thu) 19:56:51 [No.2629]
イラスト追加 - イク - 2010/12/02(Thu) 03:17:57 [No.2623]
文章改訂版 - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/12/01(Wed) 03:25:49 [No.2621]
1ヶ所校正ー - イク - 2010/12/01(Wed) 11:53:03 [No.2622]
瞑想通信防御網 - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/02/23(Tue) 00:54:29 [No.2497]
瞑想通信のセキュリティ及び諸注意等 - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/02/27(Sat) 23:56:55 [No.2511]
ゴロネコからの協力声明 - YOT@ゴロネコ藩国 - 2010/02/28(Sun) 00:18:26 [No.2513]
設定とイラスト指定など - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/02/23(Tue) 00:54:51 [No.2498]
各国からの許可声明 - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/02/23(Tue) 01:36:41 [No.2499]
許可声明 - 是空とおる@FEG藩王&共和国大統領 - 2010/06/26(Sat) 22:10:39 [No.2574]
反映させていただきました - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/07/06(Tue) 22:07:32 [No.2576]
るしにゃん王国 許可 - クレール@るしにゃん王国 - 2010/04/24(Sat) 23:03:51 [No.2545]
反映させていただきました - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/04/25(Sun) 10:11:58 [No.2547]
涼州藩国許可声明 - よっきー@涼州藩国 - 2010/04/22(Thu) 23:12:21 [No.2544]
反映させていただきました - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/04/25(Sun) 10:10:21 [No.2546]
暁の円卓藩国 承認 - 風杜神奈@暁の円卓 - 2010/04/05(Mon) 01:02:18 [No.2539]
反映させていただきました - 玄霧弦耶@藩王 - 2010/04/05(Mon) 01:04:02 [No.2540]
たけきの藩国 承認 - 竹上木乃@たけきの藩国 - 2010/04/05(Mon) 00:50:37 [No.2537]
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愛鳴之藩国 許可 - 花井柾之@愛鳴之藩国 - 2010/03/25(Thu) 20:10:05 [No.2534]
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芥辺境藩国承認 - 海堂 玲@芥辺境藩国 - 2010/03/16(Tue) 21:52:33 [No.2530]
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紅葉国承認 - 神室想真@紅葉国 - 2010/03/14(Sun) 22:05:41 [No.2525]
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神聖巫連盟 承認 - 藻女@神聖巫連盟 - 2010/03/13(Sat) 23:40:13 [No.2524]
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レンジャー連邦許可 - 城 華一郎@レンジャー連邦 - 2010/03/13(Sat) 20:43:49 [No.2522]
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リワマヒ国許可 - 東 恭一郎 - 2010/03/13(Sat) 20:23:10 [No.2520]
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フィーブル藩国より許可声明 - 戯言屋@フィーブル藩国 - 2010/03/05(Fri) 23:19:38 [No.2518]
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になし藩国承認 - 瑠璃@になし藩国 - 2010/03/03(Wed) 02:02:53 [No.2516]
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満天星国より承認声明 - 都築つらね@満天星国 - 2010/02/28(Sun) 20:29:52 [No.2514]
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世界忍者国より許可声明 - 久堂尋軌@世界忍者国 - 2010/02/27(Sat) 23:36:46 [No.2510]
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文章改訂版 (No.2620 への返信) - 玄霧弦耶@藩王

こんなかんじでどうじゃろうか。
前に書いたやつを加筆修正したかんじ。
問題あったら突っ込みください。




○TOP&学校紹介


『藩国の食品加工技術は共和国でも高い水準を誇るでしょう』
『しかし、です。日々を生きるうえで、手料理というものは欠かせません』
『特に、子供達にはそう言ったものが重要です』
『興味がある方は、どうでしょう。私達と一緒に学びませんか?』

                            30110102 玄霧弦耶、料理教室完成の際の言葉。


/*/


T16も終わり、T17になる頃。玄霧藩国に、新たな施設が建造された。

『玄霧藩国料理教室』

その名の通り、料理について教える教室である。
ただ、この教室は普通の料理教室と違い、実技だけではなく、医食同源の考えから食事も予防医学の一環とし、食育を通じて

「食」に対する理解や知識を増やす場でもあった。

とはいうが、実はこの施設はそんなに大きくない。精々が『大きなの一軒家』程度である。
それというのも、藩国内でこういった分野に詳しい人間はそんなに多くない。
また、この教室の真の目的は、料理を通じての国民と藩王や摂政といったPL達との交流にあった。
そのため、数人のスタッフと、協力してくれる数少ない国民達で回る規模の大きさになった。と言うわけなのだ。

しかし、規模は小さいが、中身はなかなかに充実している。
教室が開くのは授業二回の実技二回で週に四回。
一週間で一つ〜二つの料理の作り方と、食材の旬や見分け方等が判るような授業内容になっている。
そうして、和食洋食中華を組みあわせ、学ぶほうも楽しく過ごせるように授業が進められていく。

このお料理教室は、出たい授業に申請をだす『事前登録制』となっている。
参加したい週と作ってみたい料理の確認をとった後、一週間分の料金(材料費込み)を支払い、登録したら後は当日に通うだけ、である。
機材や材料などは、全て教室側で準備してくれるというわけだ。

また、一月のうちに3週は『和・洋・中』でおおよそ決まっているが、それでは4週目が余ってしまう。
これはどうするかというと、作りたい料理がどうしてもかみ合わない人たちの為の週であり、授業と実技が一緒になった一日分の料金のコースに当てるのだ。
主にちょっとした料理や簡単なデザートなどを学ぶ人は、一日で終わるこちらのコースを選ぶことも多い。
むしろこちらのほうが人気で、抽選に外れる人も出ているようだ。



さて、このお料理教室。
授業で説明する事柄には様々な理念を参考にしている。


例えば、『身土不二』という言葉がある。
仏教用語で「身」(今までの行為の結果=正報)と、「土」(身がよりどころにしている環境=依報)は切り離せない、とい
う意味である。
これを転じて、食養運動のスローガンとして「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い。」という意味として使われている。

科学的根拠から言えば「旬の食材は栄養価が高い」などと言えるが、この場合はこう言いたい。
『気候、風土、土地。そこで育った人は、そこで育った食べ物と共に生きる』
同じ土地で生まれたものは、同じ成分でできてるから、より馴染むのだと。


例えば、『食育』という言葉がある。
「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること、とされている。
生きるための基本的な知識であり、単なる料理教育ではなく、食に対する心構えや栄養学、伝統的な食文化についての総合的な教育のことである。

だが、ここはもっともらしい言葉を用いて説明するより、こう説明したいと思う。
『美味しくて体にいいものを食べることができれば、人は健やかに育つ』
そういう、簡単なことでいいだろう。


例えば、『医食同源』という言葉がある。
元は薬食同源思想から作られた造語である。適切な食事を取ることによる予防医学の一種であり、薬膳による食の医療作用を表現している。
五行思想における「木 火 土 金 水」に対応した「酸 苦 甘 辛 鹹(塩辛さ)」の五味と「熱 温 平 涼 寒」の五気。
五味や五気にあわせた五畜(馬 羊 牛 鶏 豚)、五果(李※スモモ 杏 棗 桃 栗)、五穀(麻 麦 稲 黍※キビ 大豆)、五菜(韭※ニラ 薤※ラッキョウ 葵※オクラ等 葱 藿(カク)※豆の葉)。
さらにそれらを取ることで「肝 心 脾 肺 腎」の五臓が満たされると古くから言われている医学でもある。

ただ、そんな小難しい理論より、こっちのほうがいいだろう。
『食べ合わせのいい物を使って料理をすれば、より美味しい』
料理は楽しく食べる事ができてこそ、美味しいのだ。難しい話はこの際二の次だ。


これらの考えや教えを基礎とし、玄霧以下のスタッフ一同は、難しくなりすぎない程度で「食の大切さ」と「料理の楽しさ」を生徒に教えている。
そして、料理実習を通じて共同作業を行なうことで、お互いの理解を深め、より良い藩国運営の参考にすると共に、国民同士の理解も深める事も狙いとしていた。

この試みが実を結ぶのは遠い先かもしれない。
だが、実を結んだとき、それはきっと、素晴らしいものになっているだろう。


○お料理教室の授業内容


完成してから暫くの間は、生徒となる皆に「どのような内容か」「どういった雰囲気か」等を簡単に説明する必要があるため、一日で終わる簡単な授業や、直ぐに出来る料理の説明と実習が多く設定されていた。
そのときは主に、授業なら「作物の旬について」等であり、実習ならば「クッキーの作り方や」「ケーキの作り方」などと言った、主に藩王が趣味でよく作っているものから教えていた。
そうしてから暫くたった後で、ようやく本来の時間割りで進むこととなる。

ちなみに、本来の時間割りでは、週の初めの二日分は座学の時間となる。
その後、中休みが一日あって、次の二日分が実技となり、週末には練習した料理を、各々が家で一人で作れるようになる事を目標としている。

座学の時間は、使う材料や調味料の扱いからはじめ、その週で作る料理によって詳細の異なる授業になる。
例えば作るものが和食なら出汁の取り方から学び、中華ならば中華鍋の扱い方、洋食では用途にあった道具の説明等で、それから更に煮物揚げ物炒め物で油の扱いや火力に下ごしらえなどを詳しく教えていく。


例えば、メジャーなところでエビフライを例にとってみよう。
料理は五感、即ち、見て楽しみ、香りを楽しみ、口にいれて食感と音を楽しみ、味を楽しむものである。
見て楽しむ為には綺麗な色で、香りを楽しむ為には油に拘り、食感と音を楽しむには適切な温度でカラリと揚げ、味を楽しむにはそれら全てに加えて下ごしらえが大事になる。
まずは、蝦の尻尾の先を少しきり、尻尾の中の水分を包丁でだし、蝦の背ワタ取る為に蝦の第二関節から第三関節の間に爪楊枝(竹串)を入れて引き上げることで抜き取り、腹のほうに斜めに切れ込みを入れることで、ピンと綺麗に揚がる。

 #背中のほうにも切れ込みを入れて叩いて伸ばす方法もあるが、個人的には蝦の食感が乏しくなるのでこうしたほうが美味しい、と、料理を始めたときに(親から)学びました。

実技の時間は、これらの実践だ。
とはいえ。このあたりのことを完璧にこなすのは、それこそプロの料理人か、それを目指す人達くらいだろう。

こういうことが出来たほうが勿論美味しくなるし、見た目もきれいだ。
が、だからといって失敗したことを責めることに意味は無いし、後で実際に家で作るときは、色々手を抜くこともあるだろう。
そのため、実技の時間は、危ないところを注意するくらいで、細かく手順を注意したりせず、過程を楽しんでもらうことを重視している。

料理は、まず挑戦する心が大事である。技術は二の次だ。
 『家庭で自分や家族の為に作る』 …そう思うことこそが第一歩であり、一番大事なことなのだ。
いかに技術的に優れていても、気持ちの入ってない料理は見た目だけ豪華なものと一緒で、なんだかガッカリしてしまうだろう。
とある有名な料理人の言葉に『花に水 人には愛 料理は心』というものがある。
その料理人は、この言葉を決め台詞のように使われていたが、必要なものを的確に表す名言ではないかと、思う。


○お料理教室の一日?


では、ある一日の風景を覗き見て、実際どのような感じで授業が進むのか見てみよう。

この日は丁度、藩王である玄霧がクッキーの作り方を教える日だったようだ。
…よくよく考えたら、色々おかしいのだが気にしてはいけない。

/*/

「えー、一口にクッキーといっても、いろんな作り方があります。恐らく、皆さんが直ぐに思い浮かべるのは型で様々な形にくりぬいたやつでしょう。他には、材料を混ぜたあとに棒状に伸ばして冷やして固め、切り分けてオーブンで焼く方法や、ホイップクリームを搾り出すように生地を搾り出して形作る方法もあります。ちなみに、冷やして固めて切り分けるのがアイスボックスクッキー、搾り出すのは搾り出しクッキーと言います。そのままですね。最終的にオーブンで焼き上げるのには変わりありませんので、余り気にすることは無いかもしれませんけどもー」

壇上で、玄霧が余り上手くもない絵を描いて、材料や手順などを説明しつつ、つらつらと語っている。
好きな分野の話だからか、妙に饒舌だ。
なお、アイスボックスクッキーと型抜きで作るクッキーの違いはそんなに無い。
精々が冷蔵庫で寝かせる時間程度である。あと、バターの量と、艶出しの卵黄を塗るかどうか。大体それくらい。

「で、今回は手軽に出来るアイスボックスクッキーのほうをしましょうか。大体の作り方は、バターを練る、砂糖を二回ぐらいに分けて加えて更にバターを練る、卵を溶いたものを三度くらいに分け入れながら混ぜつつ、バニラエッセンスを加える。その後、薄力粉を振るいいれてよく混ぜたら冷やして固めて切って焼けば出来上がり、ということです。あとは最後に冷やす前、お好みで隠し味を入れると色んな味のクッキーになります。チョコ味とか結構オススメですね」

と、説明しつつエプロンと三角巾を身に付けていく。
今まで聞いていた生徒達もそれぞれ身に付け、手を洗って準備万端である。

ざっと見回してみると、それなりに壮観だ。

藩王以外は殆ど女性ばかり。中には男性の姿もあるが、周囲の雰囲気もあり、どうにも居心地が悪そうではあった。
中にはそんなに参加しづらいのか、外から眺めている男性もいる。
そんな様子を少し苦笑しつつ眺めた後、玄霧が外に向かって呼びかける。

「そこで見てても判りにくいでしょうし、どうです?一緒にやってみませんか?参加費用は後でも構いませんので」

すると、一人だと思っていた男性が二人、三人と増えていく。
どうやらどこかに隠れていたようだ。増えた人影の中には女性もいる。
『FEGへと亡命した暗殺者達が様子でも探りに着たのだろうか?』と一瞬思ったが、まあ、気にしないことにした。
それならそれで、料理教室を開いた意味も、ある。

「じゃ、後から参加した人も三角巾とエプロンを付けてくださいね。手もちゃんと洗って。・・・はい、では皆さん。黒板の手順の通りに始めましょう。まずはバターを泡だて器で練ってくださーい。判らなかったらなんでも聞いてくださいねー」


そして、十数分後。


「すいませーん!バターが全然練れないんですけどー」
「あー、こりゃ手の熱で解けてきてるね。一旦冷やして途中までやってあげるので、その後は自分で頑張ってみてね」

「あの、なんか砂糖入れたら塊が・・・」
「あぁ、これはちょっと面倒だな。砂糖を入れるときは一気にいれずに2・3回に分けなきゃ」
「どうしましょー・・・」
「大丈夫大丈夫。泡だて器で潰すようにして内側から外に伸ばすようにしたらある程度はなんとかなるよ」

「た、卵混ぜてたら分離してきたんだけどどうしたらいいですか!」
「うむ、まだ慌てるような時間じゃない。落ちついて混ぜ続けるのだ。バニラエッセンスも忘れずに」

楽々と作っていく者もいるが、何人かはなかなかに悪戦苦闘しているようだ。
先ほどの途中参加の面々はといえば、黙って黙々と作業を続けている。
まさに機械のような手つきでこなしていく……と思いきや、卵が上手く割れなかったりもしていて、中々に面白い。

そんな様子ではあったが、玄霧自身がなにかあれば作っているものだからか、単純に料理好きなのが効いたか、定期的に見回り、聞かれたところを教えて回ったお陰で大きな失敗をするものもなく、のんびりと楽しく時間が過ぎていった。

そうして、数人が卵を混ぜ終わり、薄力粉を計りだした頃に玄霧が再度声をあげた。

「はーい、じゃー、薄力粉とかを入れる前に注目して下さーい。このまま粉だけを入れるとプレーンクッキーになりまーす。んで、ここでココアとかお茶とかハーブとかを少量練りこむと、それぞれ好みの味付けにすることが出来ます。練乳とかを混ぜてミルク味にもできますねー。基本、甘みか少し苦味のあるものだったら失敗はしないので、挑戦してみたい人は挑戦して見ましょう。但し、自分でも食べれないものは混ぜないようにー。あと、肉とかはきっと後悔すると言っておきます」

はーい、という声がぱらぱらと聞こえ、それぞれが思い思いの材料を混ぜている。
何も混ぜないものもいれば、ココアの粉末を混ぜるもの、牛乳と粉ミルクを多く混ぜるもの、中には摩り下ろしたニンジンを混ぜているものもいる。
あからさまに失敗しそうなものを入れようとしている人は止めたりしつつ、比較的穏やかな時間は進んでいった。



混ぜ終わって冷やし、固まるのを待つこと暫く。
その間は、質問に答えたり、ちょっとしたウンチクを語ってみたり、用意しておいた軽食をつまんでみたり、オーブンの準備
をしつつ世間話に花を咲かせる皆を見たりと、先ほどと変わらず、のんびりと時間は過ぎていった。
とはいえ、時間が過ぎるにつれ、「どういう風になるか」や「上手く焼けるか」といった話で盛り上がるようになり、皆一様にワクワクしてきたようだった。

初めて作るものでも何度も作るものでも、やはり皆で料理を作ってる間の話というのはどんなときも楽しいものだ。
そうしておおよそ1時間半ほどたった頃、懐中時計をみて玄霧が言う。

「よし、じゃあそろそろ見てみようか。掌で押してへこまないくらいに固まってたら、包丁かナイフで切り分けて、オーブンで焼きまーす。硬いので気を着けてねー。オーブンの温度は170℃にあわせて下さい。ま、今回はこっちで設定しておいたので、そのままいれてOK。大体20分くらいで焼きあがるので、表面がいい色になってきたら取り出してねー。あと、火傷にだけは十分注意するようにー」

やろうと思えば、冷やす時の形次第で色んな形で作れるが、今回は簡単に棒状にかため、輪切りの要領で形作っていく。
厚さは、大体4mm程。まぁ、そんなに気にせずとも、薄すぎず厚すぎずなら問題は無い。

「焼いてる最中はじっとオーブンを見るのもよし、本でも読んで時間を潰すもよし。他のことで時間を潰す人はそっちに夢中になって焦げないように。白状すると、自分が既に何度もやってるが、そのときのガッカリ感は洒落になりません」

などと言いつつ、玄霧もオーブンに自分の作品を入れる。
今回はプレーンとチョコの二層の渦巻きクッキーだ。二つの生地を用意し、薄く延ばして重ねて丸めて形を整えれば出来る。
あとは、20分程度のんびりしながら香ばしい匂いがするのを待つだけだ。

「あ、そうそう。いい匂いがしてきても、表面がなんかやわらかそうなときがあります。そういう時も一旦取り出して冷ますように。冷えればいい感じに固まってくるので、失敗じゃありませんよー」

……体験談である。
一番最初に作ったとき、バターが多かったのかオーブンの火力が弱かったのか、なかなか表面が固まらず何度も焼きなおしたお陰で岩のように硬いクッキーが出来たことがあった。
オーブンの中では、なんとなーく表面がやわらかそうに見えるもんですが、冷めれば十分固まるものです。これほんと。
岩のようなクッキーはもちろん自分で消費しました。

/*/

「じゃ、出来上がったようなので試食の時間でーす。皆さん、出来たクッキーをもって向こうのテーブルに移動しましょー」
『はーい!』

さて、実習の一番のお楽しみ。試食の時間である。
講師役である玄霧が参加者の作品を一つずつ味見し、感想を言う。
その後で、皆で食べあって参考にしたり、話の種にしたりする。
ルールは一つ。他人の料理に関して文句はつけないこと。

「では失礼して。お、これはチョコ味かな・・・と、ありゃ、チョットだけ焦げちゃったみたいだね。ココア混ぜると焼き色わかりにくいから。でも、ソレくらいのほうが手作り感があって良いと思うよ、うん。美味しい美味しい」
「はぁ・・・次は色の薄いもの混ぜてみます」

「お、コッチは・・・あ、ニンジンクッキーか。これならニンジンが嫌いな子も食べれるね、うん。後でドレくらいニンジン入れたか教えてくれる?」
「はい。結構多く入れたけど、ちゃんと甘くて美味しく出来たと思います」

「んー、これは・・・えーとネ、何を混ぜたんだろうカナ。舌がピリピリするんだけドネ?」
「はい、唐辛子です!」
「そうかー。味はともかく長靴一杯食べたいな!」

なんというか、個性的な物が多い気がするのは、国柄なんだろうか。
などと思いつつ、試食して回る。

「で、これは・・・ハーブかな・・・んー・・・ん?」

クッキーをつまんだ玄霧の動きが、ピタリと止まる。
作ったのは、後から参加した面々のようだ。とりあえず、皆に少し待つように言い、その面々を部屋の隅に連れて行く。

「その、なんだ。こんなこと聞くのも野暮なんだが、これ、お酒入れた?」
「……ええ、良くお分かりで。ほんの少量しか入れてないので、わからないと思ったのですが」
「あー、うん。これ、アレだろ。かなり古い『生命の水』だろう」
「……はい。我々の中の一人が、昔、持ち出したものです」
「……そうか、いや、すまない。変なことをきいたね」
「いえ、お気になさらず」
「んー……うん、今回は未成年も居ないし、いいか。皆で食べよう」

#『生命の水』:その昔、EV124の博覧会で玄霧藩国が出品した度数70を超える薬酒。濃厚なハーブ香が特徴。お値段は100mlで20にゃんにゃん(博覧会価格)

と、意味があるのかないのか、ちょっとした密談を終えた後、皆の輪に戻り、クッキーを摘まみながら紅茶を飲む。
これが和食や中華などを作るときは流石に紅茶は出ないが、同じように皆で囲んで食べるのが基本だ。

「座学でも軽く説明したけど、五行説の考えでは『相生』というのがあってね。例えば、クッキーの原料である麦は五行の火。砂糖で味付けしたことによる甘みは五行の土でね。火は物を燃やし、灰になったものは土にかえるという『火生土』の関係なんだね。で、昔からこういうレシピが残ってるって事は、皆なんとなく感じてたんだろうね。あとはまぁ、やっぱり自分の国で取れた物を料理するのはいいね。ウン」

楽しさと美味しさで気分が良くなったか、座学の続きを玄霧が語る。
真剣に聞いてる者もいれば、適当に流して聞いてるものもいるが、特に気にすることも無く聞いてくれるものに話をしている。
と、その時。

「まーた女の子に囲まれて楽しそうに話しちゃって。なに?浮気してるの?」
「げぇっ!火焔!!」

こつん、と玄霧の頭を叩きながら火焔が声をかけてきた。
どうやら様子を見に来たらしい。政治面の細かい部分を摂政たちに任せたことを怒ってるのかも、しれない。
なお、ジャーンジャーンという銅鑼の音が聞こえた人は耳か脳の検査に行くことをオススメする。

「なにが『げぇっ!』よ。……ふーん。そんなに嫌だった?」
「いや、違う、断じて違います。ようこそいらっしゃいました火焔様!ささ、お席にどうぞ」
「…ま、いいけど」

そんな二人の様子に周囲もなれてるのか、お茶とクッキーの用意をして、火焔をもてなす体制に入る。
まったく、適応力の高いことだ。
その後、まあ、それなりに色々あったりはしたが、お料理教室の一日とはまた別の話である。

/*/

以上が、ある日の風景である。
どうにも特別な一日のようにも見えるが、特にそういったことは無い。
むしろ、他の日のほうがすごいこともある。
和食で煮物を作って鍋が吹き零れて大騒動や、中華で中華鍋の扱いで大騒動や、洋食のオムレツをひっくり返すときに勢いを付けすぎて大騒動など、大抵何かがあるものだ。
だが、それもまた、過ぎれば楽しいものである。食材も生き物であり、それなりにお値段もするわけで、料理が台無しになるのは、なるべく避けたいのも本音ではあるが。
まぁ、大怪我をしない限りは概ね問題ない。道具や機材の修理は出来ても、命の修理は出来ないものだから。


○その後


「人を良くすると書いて食。食というものは生きるうえで重要であると共に、精神的成長にも必要なものである。と・・・」

政庁内にある寝室で、そこまで書いて、玄霧がペンを止める。
どうやら、料理教室での出来事を日誌に書いていたようだ。

「で、なにやってんの?」

後ろで髪を梳いていた火焔が声をかける。

「あぁ、せっかくなので日誌をつけようかなと思って。何の料理作ったとか判ると被りも少ないし」
「へぇ。暇人ねー」
「・・・いや、まぁ、うん。そうかも。日誌の最後の部分書いたらお相手いたします」

いずれ、この料理教室で学んだことを何かに生かす人も出てくるだろう。
それは家族へのちょっとしたお返しだったり、愛する人へのプレゼントだったり、中には医食同源や食育の考えから医療法の一つとして研究する人も居るかもしれない。
その昔、中国には食医という職業があった。医者の中でも特に優れたものが古代の王たちの食事の調理や管理を任されていたのである。
医者と料理人は、昔は一つだった。ならば、医療国家である玄霧藩国でも、そういった人が出てくるかも、知れない。
それは今の段階ではただの夢物語だが、きっといつかは現れるだろう。
そのときこそ、新しい段階に進めるのではなかろうか。解決策が一つの方向性だけなのではなく、様々な方法から好みの手段を選べるような段階へ。
今を乗り越えれば、きっと。そう願っている。


                                     玄霧弦耶の日誌より抜粋。






この後は、手記には記されていない出来事である。






「あ、そうそう。はいこれ」

日誌を書き終えて振り向いた玄霧の目の前に、火焔が小さな袋を差し出した。
目で『あけていいか?』と確認し、中を確認すると、クッキーがつまっている。

「これ、火焔が?」
「そ。今日、様子見に行ったらもう終わってたから。あの後でね」

『なれないことしてつかれたー』といいながらベットに倒れた火焔が、玄霧を見る。
玄霧が、そんな火焔をみながら、一口食べて感想を言う。
感想に満足したのかしてないのか、ごろり、とベットの上を転がった。
そして、玄霧は少し考え、火焔にとある提案をした。





それから、数日後。
所変わって、NWのどこか。
薄暗い空間の中に、数人の人の気配だけが、ある。





「長老。手紙と、小包が」
「……そうか」

闇の中で、なにかを受け渡すような気配と、紙の刷れる音だけが響く。
それは暫くの間続き、続いて、小包をあけるような音がする。

「……中は、一体?」

そう問いかける若い声に、長老と呼ばれた影が、手紙を投げる。
音もなく受け取り、若い声の影が、中を見る……


『クッキー作り途中参加の皆様へ。

 お手紙で失礼します。藩王件講師の玄霧弦耶です。
 先日はお料理教室への参加、有難うございました。
 参加してみた感想は如何でしたでしょうか?
 楽しんでいただけたなら、教室を開いた甲斐があったというものです。

 さて、そのお料理教室でのクッキー試食の際、皆様は余り手をつけられなかった様に見えました。
 私は、料理は楽しんでこそだと、思っております。
 お口に合わないかもしれませんが、私と火焔とでもう一度クッキーを焼きました。
 試食の際にとっておいたクッキーも、一緒に詰めております。
 参加したときを思い出しつつ、皆様で食べていただけると幸いです。
 宜しければ、感想をお聞かせください。

 また参加していただけることを期待して、我々一同、お待ちしております。


                                      玄霧弦耶   』

「……意図が見えませんね」

若い声の影が、言う。

「本当に手紙の内容通りなのかも、知れん」

長老と呼ばれた影が、手でクッキーの小包をもてあそびながら答えた。
中を開け、ひとつ、摘む。

「長老。毒入りという可能性は?」
「いまさら毒入りクッキーのような手段はとるまいよ」

答えながら、長老と呼ばれた影が摘んでいたクッキーを、食べた。
相変わらずの薄暗さで、表情は見えない。
が、なぜか、若い声の影には……
長老が、うっすらと笑みを浮かべているように、見えた。



/*/


○おまけ

今回作ったアイスボックスクッキーのレシピをおまけということで乗っけます。
皆も是非作ってみてください。

・材料(およそ20枚分)

バター:80g
砂糖:40g
卵黄:1個
バニラエッセンス:少量
薄力粉:150g

以下、作りたいものによって追加してください。

●ニンジンクッキー
にんじん:50g
りんご:20g
#両方摩り下ろしたものを用意すること

●カカオクッキー
ココア:20g
#薄力粉をその分減らすと粉っぽくなりにくいです。

●ミルククッキー
生クリーム:50g
コンデンスミルク:大匙1〜2杯
#砂糖の量を調節すると甘すぎないものが出来ます。

●レーズンクッキー
レーズン:5〜10g(お好みで)

●ナッツクッキー
好みのナッツ類を砕いたもの:約10g


・下準備

1.バターと卵とを室温に戻す(冷蔵庫から出して30〜1時間放置。冬場の温かい室内だと、バターは様子を見ながら、指で押すと軽く凹む程度)塩が入ってなければいいので、無塩マーガリンでもOK。
2.薄力粉をふるっておく。2、3度やるのが一番良いが、1度でもOK。ココアを入れる人は、他のボウルについでにふるっておこう。
4.レーズンやナッツを入れる場合、刻んでおく。(1個ずつ刻まなくても適当でOK)
5.天板にクッキングシートを敷き、オーブンを180度に温めておく。


・作り方

1.ボールにバターを入れ、泡だて器でクリーム状になるまで練る。

2.クリーム状になったら砂糖を2度くらいに分けて入れ、さらに白っぽくなるまで混ぜる。

3.解きほぐした卵を3度くらいに分けて少しずつ入れる。加える度にしっかりと混ぜること。分離しそうになっても慌てずに掻き回し続けること。バニラエッセンスもこのとき加える。
#分離しかけるのは結構良くあるので、落ちついて対処しましょう。

4.泡立て器からヘラに持ち替えて、ふるった粉類を混ぜる。このとき、切るようにして混ぜると良い。
#このまま焼けばプレーンなクッキーです。

5.他の材料を加える人は、それぞれにボウルに入れて再度混ぜ合わせ、3センチくらいの筒状にしてラップで包み、冷凍庫で1〜2時間固める。

6.固まったら4〜5ミリ程度の厚さに切り、170度のオーブンで17〜20分焼く。オーブンによって時間は数分程度前後するので、中の様子を見ながらがお勧めです。焼き色がついてきたらOKくらいで。

7.焼けたらオーブンから出し、荒熱を取ってからヘラなどで掬うようにして取り、キッチンペーパーの上などで冷ます。

8.完全に冷めたら、美味しく食べれます。余った分は、別のキッチンペーパーをしいたタッパーなどに保存しましょう。


チョットくらい焦げても、それはそれで美味しいものです。
是非、挑戦してみてください。


[No.2621] 2010/12/01(Wed) 03:25:49

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