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連作・高機動食卓 鍋(パン)パレード・マーチ 「鍋、たとえ砕けるとも」 気が付くと、祖国は瓦礫の山と化していた。 そこには城も無く、街も無く、行き交う人々の笑い声も、絶えることなく立ち上る鍋の炊煙も無い。 アイドレスというこの世界が人の見るゆめならば、その光景はまさに悪夢そのものだった。 各藩国に時ならぬ暴風を巻き起こした、根源種族のアラダによる同時多発攻撃(実際には偵察であったが)。 鍋の国に降り立った悪夢の使者は、金髪にして痩身、眼鏡に白衣を纏った男の姿をしていた。 それはまさしく、鍋に生きる舞踏子達が愛を捧げる“ただひとり”の姿。 王城を破壊して降り立ったそれは、舞踏子のひいき目を割り引いてもなお、ひとの悪意そのものの様に美しかった。 そしてそれは、その美しい顔のまま、鍋の国を蹂躙したのだった。 差し出された鍋を砕き、誇りたるI=Dを分解し、守るべき朋友を玩弄し、力の限りの抵抗を嘲い、あまつさえ客人を殺した。 (……手も足も出なかったなぁ…) 炊き出しの鍋を大きなお玉でかき混ぜながら、炊事担当は一人ごちた。 仲間…舞踏子・鍋嶋つづみは攫われ、無事かどうかすらわからない。 奪われた。奪われたのだ。 勝ったなどとはどこをどう見ても言えない。しかし、あろうことか負けてさえいない。 この国から、敗者の正当な権利たる敗北すらも奪って、あの金髪の使者は去った。 瓦礫だけが、残った。 差し出した鍋と共に砕かれた人々の心は、数刻、南国らしからぬ冷たい風になぶられた。 その音だけが、なぜか心の中に忘れられず残っている。 「?……いやはや、早いなぁ。もう城の側だけは形になってるなぁ… …はぁい、大盛りね、温かいうちにどうぞぉ」 炊き出しの傍らで、戦場跡地は急ピッチで復興が進んでいた。 人々は寝る間を惜しんで働き、在りし日の鍋城の、鍋城下の風景は取り戻されつつある。 人々は逞しいものだった。 その光景を見ている炊事担当の目に、幾許かの光が宿る。 (そうだ…な。ヤツは奪っていったが、俺たちは…まだ、なんにも失っちゃいない) 鍋が割れても、鍋はできる。 そういえば先日去った客人は、紙を鍋にしていた。皆で飽かずに眺めたものだ。 割れた鍋は、また作ったっていい。 王城は建て直す。街だって新しくなる。 I=Dは、もっともっと強くなって作られる。うちにはいい技術者がいる。 つづみさんだって、死んだわけじゃない。 箸を握るこの手があれば。そして、共につつく仲間がいれば。 (それを奪わなかったことを……) 必ず、後悔させてやろう。そんなことを考えている。 炊事担当は、舞踏子たちとは違う。 “ただひとり”に愛を捧げてはいないし、眼鏡好きだが黄ジャン好きとは呼べない。 鍋も王猫様も愛してはいるが、全てを投げ出すほどの対象を持ってはいなかった。 しかし、だからこそ、戦うつもりだった。 次は逃がさない。 I=Dが無くとも、銃弾が届かなくとも、彼我の力にいかほどの差があろうとも。 退かない、逃げない、必ず勝つ。 友誼だけだ。 そのために、戦う。 だから、周りの誰かが迷った時には、俺が前に出て引金を引こう。 それが、彼なりの覚悟だった。 ……と、つい怖い顔になっていたらしい。 お椀を持ったお子様3人が、なにやら不安げに待っていた。 「…あ、いや、なんだ、すまんすまん、考え事しててなぁ……たべるかぁ?」 「ん!」 「俺、大盛り!」 「わたし、フツーね!」 「はいよ! 〜〜〜〜♪」 「あ、その歌…!」 「知ってる!鍋(パン)・パレードマーチ!」 「お、よく知ってんなぁ、よしよし、少年よ、肉多めにしちゃろう」 「やっり!」 「わたし、キノコほしい〜!」 「俺も!お肉!」 「あいよっ」 「ありがとね!」 「ごちそーさま!」 「おっちゃんサンキュ!」 「おう、おかわりもあるからな〜(おっちゃんか…むぅ)」 子供たちは、ほくほくの顔で帰って行く。恐らくは、家族の下へと。 家を失った子もいるだろう。家族を失っていたとしても、不思議ではない。 それでも、ひとは食べる。鍋を囲む。再び立ち上がる。 炊事担当は再び鍋に向かい、歌いだす。 ほかほかで 熱々の 鍋から それは生まれ出る 具に希望を 汁に夢を 取り戻すために生まれ出る “あく”をすくう 銀のお玉を 持つ少年 それはこどものころ食べたお鍋 だれもが望む夢のお鍋 もう私は待ち切れない 私は鍋を作る みんなのまなざしを見ているから お楽しみ 鍋後の 雑炊を 待ち望む 貴方の瞳を 知っている お楽しみ 鍋後の 雑炊を 待ち望む 私は もうひとりじゃない 蓋を開けるぞ 箸を取れ(アールハンドゥ・パンパレード) お鍋を前に みんなで歌おう 鍋(パン)パレード・マーチ 鍋(パン)パレード・マーチ …そう、今は歌おう。 「戦士の最初にして最後の友」は、こんなときのためにあるのだと。 最後のその瞬間まで自分と共にあるはずだと。 それだけが、今、彼の持つ、ただひとつだけの確信だった。 (了) …じ、自分を出してしまった……(恥) というわけで、久しぶりの投下です。 key 1234 [No.612] 2007/03/22(Thu) 05:26:59 |