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アトガキモドキ(汗 - 宴六段 - 2007/06/28(Thu) 15:29:17 [No.804]
1:www.”world‐セカイ”. - 宴六段 - 2007/06/21(Thu) 17:34:43 [No.792]


8://www.discovery-ハッケン. (No.791 への返信) - 宴六段




 喪失の地。


 それは既に失われたはずの領域。


 古き戦場跡に男が佇む。 空は相も変わらず曇天。時折雷鳴が響き渡る。


 独特な雰囲気を持った男――彼の持つ雰囲気と鼻梁に掛けられた黄昏色の色眼鏡。 そして何よりも其の左腕の拘束具が異形さを物語っていた。


 「…………」


 どうして。


 彼はもうここまで辿りついたのか。 それともその途中なのか。


 道のりは長く険しい。それが『成長』ともなれば、事易しとは行く筈もない。


 それでも諦める訳にはいかない、否――いかなかった。


 自らを縛り付け、自らのココロを閉ざし、誰も信用せず、何人をも信頼せず、自らの力のみで立ち得る事それ難し。


 だが。


 それでも彼がやらなければ、この世界はどうなっていただろう?


 彼がやらなければ、この世界は混乱しなかったろう?


 ――何れにせよ、彼は待っている。


 恐怖が増幅される事を。


 恐怖という名を持つ、死神そのものを。


 「死よりも恐いモノ、か」


 赤色に言っていた事。


 それは的確すぎる。


 本当にあの≪請負人≫は上手く言い過ぎる。


 「――――強くなれ」


 呪文のように言い続ける。 それはただ『一人』に向けた言葉ではない。


 今の所、これは保険でしかない。


 だが、重要すぎた。


 余りにも歪で、余りにも同類。


 アノ二人ハドコマデユケルノカ?


 だからこそ彼は呟いた。


 ――――Welcome To The World=Aと――――






******





 「……これか、ハセヲ達が見つけたって奴は」


 翌日、再び『コシュタ・バウア戦場跡』に訪れた俺は、ハセヲ達から――正確には志乃からリークされた情報に従い、この円柱に囲まれた広場に刻まれた傷痕を見下ろしていた。


 最近あらゆるエリアで目撃されている、三角形の傷痕……。やはりここにも刻まれていた。


 主にロストグラウンドに刻まれたそれは、どれもどす黒い色で痛々しくも美しい。


 「…………」


 しばし、近くに寄って見つめる。


 というか、何なんだこれは。


 意味がよくわからない。


 意図がよくわからない。


 誰がこれを刻んだのか。 何がそうさせたのか。 意味はあるのか。 意図はあるのか。 意志はそこにあるのか。 意思はそこにあるのか。


 わからない。


 「……つか、何か関係でもあるのかって話だな」


 無いはずがないだろう、この時期に。


 【黄昏の旅団】と【TaN】の戦いは長引く一方、そろそろ決着を着けんと【TaN】が思っているのは確かだろう。


 ここで旅団が動けば、それを潰しにかかるはずだ。


 もはや最終戦争は近い。


 そんな状況下でこの傷痕。


 状況は、動く。 何人の意志などお構い無しに、時間だけは刻々と進む。


 それは残酷な事だろうか。


 と。


 傷痕が微かに輝いた、気がした。


 「……?」


 更に一歩近付いてみる。


 また光った。 どうやら気のせいではなかったらしい。


 更にまた光る。何度も連続して煌き、まるで心臓が鼓動を打っているかの様だ。


 なんだこれは。


 危険を感じ、離れようと足を動かした。


 瞬間。


 「――――!?」


 今まで以上に大きく輝いたと思った瞬間、赤い光に包まれて、俺は大地から浮いていた。




 ******





 …………。


 …………。


 幾分の時が去ったともわからぬうちに、地面に叩きつけられる。


 「……ってぇ……」


 尻餅を突いたため、右手で体を支えながら立ち上がる。


 「何なんだよ、一体……!」


 悪態を突きながら、目を瞑って腰の辺りを摩る。


 それにしても、今のは何だったのだろう。 一瞬のうちに浮遊感覚に襲われ、地面に叩きつけられて――


 「あ?」


 気付くと、周囲の景色が一変していた。


 まず、いつでも鳴り響いているような雷鳴がない。 どころか空は暗くもない。


 立っているのは地面ではなく、人口の建造物。 中世ヨーロッパのレンガみたいな様式で作られた、途中で朽ち果てた巨大な橋。


 そして、その周囲には現実にもそうそうないであろう、巨大な滝。


 「アルケ・ケルン大瀑布……?」


 『Δ隠されし 禁断の 飛瀑』、ロストグラウンドのひとつ、アルケ・ケルン大瀑布にいる様だ。


 何故?


 それはこっちが訊きたい。


 周囲をもう一度確認してみると、橋の途中に設けられた円形の広場にあの傷痕≠ェ刻まれているのを発見した。


 まさか。


 「転送、された?」


 傷痕から、傷痕へ。


 傷痕から傷痕へ? 正規のプラットホームでもないのに?


 なんだそれは。 意味がわからない。


 たとえこの世界に有り得ない事が起こる状況だとしても、イリーガルすぎるぞ……?


 仕様を逸脱、してるじゃないか。


 「…………」


 そういえば。


 とあるエリアに、隕石が落ちたとかいう噂を耳にした。


 ガセネタかとも思っていたが……


 「…………」


 だとしたら、今のこの現象に関係性があるのだろうか。


 彩音の報告では、旅団のメンバーにも様々なバグ現象が起こったという。 全く関係のない場所に飛ばされたり、仕様の内とも思えぬ場所でフリーズしたり、など。


 まさか、あの傷痕が原因なのか? 俺がついさっき転送されてここに来たみたいに。


 「…………」


 深く思考を巡らせるために、橋が切れている場所で座った。 見下ろすと落ちてしまいそうな高さがあるが、足を投げ出す。


 まず、ロストグラウンドには大きな意味がある。


 大した意味でもないが、決して小さな意味でもない。


 ただそこに在る。 ただそこに居る。


 在るだけで意味がある。


 特殊な場所だけあって、一般PCとは違うモノ達も多く集まる。


 ……昨日の『禍つ式遣い』二人も、そうだ。


 「全く、昨日の奴らは……」


 あの時起こったことは、よく覚えていない。 というか、思い出したくもない。


 力が爆ぜ。


 ……おっと。


 思考がずれてきていた。


 この話をまとめるのはまた今度、だ。


 ともかく。


 もしかすると、あの傷痕を刻んだのは禍つ式≠ネのかもしれない。


 ――否。


 すぐに考えを否定。


 例えデータドレインと同等の力を持っていたとして、グラフィックを傷つけるまでの力は保有していないし、転送など以ての外。


 「……、行き詰った」


 思考に。


 くそ、結局わからず仕舞いじゃねえか。


 思考の乏しさと冴えなさに反吐が出る。


 「所詮呆言、か」


 「自虐ネタか?」


 唐突に声。


 「神出鬼没の匂宮、ただいま参上ッ!!」


 「私はそんな事は口が裂けても言えないな」


 何だよ、俺が決め台詞決めてやってんのに。


 「ノリが悪いぞ」


 言って首だけを動かして背後を見遣る。 そこにはやはり、あの反吐が出るシステム管理者が立っていた。


 「貴様ほどではあるまい」


 見ていたくもないので、また前方の瀑布を見つめた。 だが構わずに彼は喋り続ける。


 「報告、聞くか?」


 「……頼む」


 匂宮を見ずに頷く。


 「昨日の貴様の報告だが――」


 昨日。 あの二人の禍つ式遣い。


 「貴様の予想通りだった」


 「禍つ神化していなかった≠ニいうことか」


 「そうだ。 やはり【陰華】が一枚噛んでいるようだな」


 これは俺も予想済み。


 「あの状況をモニタリングしていたのだが……」


 言い澱む匂宮。


 「どうした?」


 「どうも、よくわからなかった」


 「……は?」


 よくわからない、だって? あの匂宮が?


 自分が天才で自分がわからない事があるのが許せない、あの匂宮が?


 「モニタリングしていたPCの画面に原因不明のノイズが走った後、使い物にならなくなったのだ。 そう、貴様の禍つ式に異変が起こったときにな」


 「……? ……!」


 一瞬意図がつかめず、一瞬で理解した。


 "あのときに異常な量の過負荷がサーバーに掛かったと言うのか?


 確かにあのときにノイズが走ったのは俺の画面でも確認していた。


 だが、そこまで酷いものだったのだろうか。


 「それについて、訊きたい。 あの時、何があった?」


 ……。


 沈黙。


 「別に」


 「つまらんいいわけをするな」


 別にいいわけじゃないんだが。


 「いやまあ。 真の俺に近付いた、みたいな?」


 「何故疑問系なんだ……」


 気にするなよ、そういうこと……。


 「なんとなくはぐらかされた様な気がするが、まあ良しとしてやろう」


 あん?


 良しとしてやろう=Aだと……?


 「訊いていい?ねえ、何様?一体何様?」


 「俺様w」


 「キモっ」


 「貴様がな」


 ……というか、いい加減不毛な言いあいだと思う……。


 「もういいさ。 俺はちょっと移動するぞ」


 「依頼人か?」


 「……ああ……」


 これから会う澪の事を思い出し、憂鬱になる。 あの人は何か苦手だ。


 報告はメールだけでいいだろうに、あの人は。


 匂宮に「じゃあな」と飾り気のない言葉だけ言って、その場から離れた。




******





 「もういい加減にしません?」


 「ふぇ? 何をですか?」


 「メールにしたいんですよ、報告とか……」


 「どうしてです?」


 「いや……」


 もうこのやり取りも何度目だかわからない。 それほどまでに拒まれ続け、これほどまでに申請し続けているのに……。


 「このやり取りも何度目でしょうかね……」


 「あれ、15回目ですよ♪」


 「…………」


 なんで正確に覚えてるんだよ。


 「そもそも、あなたは何で旅団の監視なんて依頼したんですか?」


 「企業秘密、と言いたい所ですがさすがにずっと黙っているわけにも行きませんよね?」


 いや、別に行ってもいいんだが。


 「端的に言ってしまえば興味=Aですね」


 「興味……」


 「ええ、それこそ本当に、興味だけ」


 興味。


 それは好奇心ではないのか。


 ……同じようなものか。


 「興味、ですか」


 「そう。 あのギルド――【黄昏の旅団】はとてもとても興味深いんですよ、わたしにとって。 できるならずっと見ていたい……」


 何か思い入れでもあるのだろうか、旅団に対して。


 「それでも、人には制約がある。 時間≠ニいう絶対的かつ相対的な、制限が」


 制約。


 残酷な残刻。


 ただ過ぎ去る事だけが目的の様に、時間だけは何人にも妨げられない。


 ああ、そういうこと≠ゥ。


 リアルは誰にも大切なものだ。


 現実が無ければ、虚ろのこの世界は存在できない。


 実像がなければ虚像が存在できないように。


 「だから、あなた方にお頼みした」


 「……成程」


 「だから、メールなど使いたくないのですよ」


 うん?


 「冷たい云々ではなかったのですか?」


 「それが第一ではあります。でも、この世界にあって報告を聞きたい。 わかりますか?」


 正直、度し難い。


 でも、何となくはわかる。


 旅団と同じ世界にあって、旅団の話をしたい。


 「……駄目、ですか?」


 「いえ。 むしろ、良い……」


 ああ、全然いいよ、澪。


 良すぎて奥ゆかしいくらいだ。


 「でも、まあ。雑談はこれくらいにしておきますか♪」


 「はあ」


 これ以上話したくない、みたいな。


 別にいいけど。 俺もそろそろ落ちなきゃいけない時間だったし。


 「じゃ、始めますか」


 「お願いします^^*」


 報告を、開始した。





8://www.discovery-ハッケン.…………了。


____________
アトゥガキ
____________

なんなんでしょうね。
挨拶って(何)
こんなにも迷うものだとは思いませんでした、こんにちは(←)

さあ、次回から怒涛の展開が待っている!(はず)
とうとう9話まで来ました。
少し前から書き始めて、遅筆で有名になり(ぇ)ここまで。
Rootsを見ていた方はわかると思います。
9話からが、正念場。
恐らくRoots最高の盛り上がりになりますよね?

プレッシャーです……;
が、頑張りますので、何卒よろしくお願いします^^*


[No.1004] 2007/12/17(Mon) 17:38:26

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