[ リストに戻る ]
No.1137へ返信

all .hack//adjoin - わん仔 - 2007/11/10(Sat) 19:08:15 [No.975]
act.9 迸る 裏切りの 空涙 - わん仔 - 2008/04/21(Mon) 17:22:56 [No.1221]
act.8 糜爛する 少女の 行ひ - わん仔 - 2008/04/07(Mon) 23:18:06 [No.1208]
act.7 悩める 少女の 人間関係 - わん仔 - 2008/04/07(Mon) 23:08:47 [No.1207]
act.6 忍び寄る 災厄の 眼光 - わん仔 - 2008/04/05(Sat) 22:52:47 [No.1201]
act.5 疼き出す 少女の 影 - わん仔 - 2008/03/25(Tue) 21:03:18 [No.1180]
act.4 さんざめく 木漏れ日の 園 - わん仔 - 2008/03/10(Mon) 22:33:22 [No.1137]
act.3 視察する 我らが 観光大臣様 - わん仔 - 2007/12/01(Sat) 14:13:59 [No.986]
act.2 奥ゆかしき 古都の 案内所 - わん仔 - 2007/11/17(Sat) 23:05:09 [No.978]
act.1 気ままなる 天真爛漫の 店番 - わん仔 - 2007/11/10(Sat) 19:17:16 [No.976]


act.4 さんざめく 木漏れ日の 園 (No.975 への返信) - わん仔

――Θ蒼穹都市 ドル・ドナ ショップ《葉園》――
木漏れ日の真下で営業している《VIVID*Tourist》のドル・ドナ支部こと《葉園》
ここには常備3人のギルドメンバーが居る。

「撫子(ナデシコ)、この間のミッション報酬どうした?」
「んぁ? ……あ。ワリ、トレードしちまったわ」
軍服調の衣を身に纏っている青年が、「自分はお祭り男です!」と言わんばかりのエディットをした『撫子』という男に問う。
「通りでショップの商品が少ないはずだよ……」
「キャハハ^▽^ 撫子おバカさん万歳・万歳・万々歳だぁ〜いw」
独り万歳三唱をしているのは、肌の色が若干黒く、オレンジ色の呪衣を身につけた『ポピー』と言う
名の女の子。この《葉園》メンバーの中で唯一の女性である。
「だよな!? 俺は馬鹿。万歳―――って、ポピーッ!!?」
「ノリツッコミ万歳〜ww」
「モーブ、コイツをどうにかしてくれッ!!」
「(^^;)」

撫子にとっては天敵で、どうにも彼女のペースに巻き込まれてしまう。
というわけで、モーブにも、ただ苦笑するしかないのだ。

狭いショップの中で、ポピーを撫子が追いかけまわしていると、眼鏡を掛けた美青年が客として
やってきた。ネットゲームというのは、美男美女を演じることが多いものだ。
「ショップやってます?」
「あ。やってますよ〜? この人たちは義務そっちのけで遊んでますけどね〜ん‐ε‐」
それを聞いた途端、撫子は一気にポピーを襲おうとした。が、モーブも咄嗟に押さえつける。

「なら。訊きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
店の奥の出来事も笑顔で受け流し、尋ねる。

「エリアのことならお答えできますよ」
ようやく撫子を落ち着かせたモーブが、客の男性と同じような笑顔を浮かべて答える。
すると、客の目が鋭く一変した。……まるで、獲物を狩る獣のような視線で。
「それで結構です。――“とあるPKパーティ”の潜伏場所をご存じですか?」
『“とあるPKパーティ”?』
「有名なところでいうと、《ケストレル》とか?o?」
唸りながら、ポピーが顎に指をあてて訊く。しかし、青年はにこやかに微笑んで否定した。
「いえ。《花水仙(アマリリス)館》という小規模のギルドです」
「で、パーティっちゅうのは?」
すかさず撫子が返す。
「そこまではお答えしかねますね」
「ケチんぼ〜Θ皿Θ」
「すみません」
「ようは、PKが好むようなエリアを教えてほしいってことですよね?」
「ま。そういうことですね」
膨れっ面のポピーや撫子に苦笑しながら、客は素直に頷く。

「うみゅ〜……Θ懇願する 死凰の 遺灰 とかかなぁ〜? どういう訳かPKたちって、結構ダーティーなワード好むんだよにぇ゜Δ°;」
客はエリアワードを聞くと、ピクリと片眉を上げて反応した。
「『懇願する 死凰の 遺灰』……そうですね。彼らにはピッタリかも知れません。―――ところで、
あなた方のなかで呪療士はいらっしゃいますか?」
「呪療士なら、こいつが――」
ついでなので…と、訊いてみる。撫子は怪訝そうな表情で、その人物を右手親指で示した。
「ぃぇ〜いv^▽^v」
「僕と一緒にアリーナ、参加しませんか?」
客は一瞬キョトンとしたが、すぐに持ち直してさらに訊く。いきなりにもほどがあると思うのだが――

「……いいよ〜゜v ^b★」


―――案の定、アッサリOKのポピーであった。


「おいおい、女郎花の許可なくいいのかよ」

100人を超えるメンバーがいる《VIVID★Tourist》だが、ショップ担当は僅か10人程度。ひとつの
ルートタウンに3人の配分だ。残りのメンバーは全員、遊びながらのエリア散策担当なのだ。
そんな貴重なショップ担当が、あのギルマスに無断で遊びに行くと、何をされるかわからない。
それが当事者だけなら、無関係の撫子も黙っているのだが…連帯責任だったりする。イジメだよね。


「その心配は無いぞ」


不意に、声がした。いかにも男らしい、低い声。
「アンタは…?」
「オイラは濡烏(ヌレガラス)。ビリジアンのパーティメンバーだ」
名前の由来であろう、黒く艶のある髪をなびかせ、声の主は木漏れ日に映る。
そして、眼鏡の客はビリジアンというらしい。だが、その声に対して異常に反応した男が一人…。

「濡烏!?」

「んだよモーブ、お前知り合いなのか?」
「《VIVID*Tourist》初代ギルドマスターだよ。ちなみに女郎花は3代目」
「じゃ2代目はぁ?」
「さぁ?」
素早く2代目の存在を問うポピーであったが、モーブはしらばっくれる。

「そんなことより、ポピーがアリーナに出てもいいっつったのは本当に女郎花なんだろうな?」
話を戻した撫子は、なんだか怒っているようにも見えた。濡烏との顔の距離が、近い。
そんな撫子の気持ちを知ってか、濡烏は思わずニヤケながら答える。
「もちろん、本人に直接交渉してきたとも。……それとも何かい? 嫉妬ですかな?」
「なっ!? んなわけねーだろ!!?」
図星だったのであろうか、赤面して唾が飛ぶほどの大声で叫んだ。
「キャハハッ^▽^ 撫子はおバカさんだけど愛いヤツよのぉ〜ww」
「うるせぇッ!!」

撫子と濡烏のやり取りを面白がっていたポピーは、実に嬉しそうに撫子に飛びついた。当の本人はおもいっきり振り解こうとしているが、まんざらでもない様子である。

「で。協力して頂けるかな?」
「もっちろん^▽^/」
「じゃ、ポピーは借りますよ」
ビリジアンが諭すと、ポピーは子供のようにはしゃぎながら、行ってしまった。

3人が去った後も、落ち着かない様子だった撫子が、モーブに振り返り、真剣な表情で訊く。
「《花水仙館》……。なぁモーブ、そのギルドってアイツが――」
店の商品を整理していたモーブも手を止めて、頷く。
「ああ。多分、な」


今日は、いつもより木漏れ日が多い日だった。




―あとがき―
お、お久しぶりででです(ド緊張
わん仔、復活です<(`ω´)>

一週間に一回ペースの更新は難しくなるでしょうけど、何が何でもこのお話は完結させますので、
再び応援の程、よろしくです


[No.1137] 2008/03/10(Mon) 22:33:22

Name
E-Mail
URL
Subject
Color
Cookie / Pass

- HOME - お知らせ(3/8) - 新着記事 - 記事検索 - 携帯用URL - フィード - ヘルプ - 環境設定 -

Rocket Board Type-T (Free) Rocket BBS