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.hack//pain 初回必読
- 宴六段 -
2007/06/21(Thu) 17:28:48
[No.791]
└
17://www.ruin-ハメツ.
- 宴六段 -
2009/05/03(Sun) 11:59:23
[No.1291]
└
16://www.reason-リユウ.
- 宴六段 -
2008/07/11(Fri) 16:33:35
[No.1259]
└
15://www.revenger-フクシュウシャ.
- 宴六段 -
2008/06/05(Thu) 19:02:48
[No.1250]
└
14://www.depravity-ダラク.
- 宴六段 -
2008/04/03(Thu) 16:03:39
[No.1196]
└
13://www.tragedy-ヒゲキ. 後章
- 宴六段 -
2008/03/28(Fri) 15:09:35
[No.1188]
└
13://www.tragedy-ヒゲキ. 前章
- 宴六段 -
2008/03/28(Fri) 14:59:53
[No.1187]
└
12://www.past-カコ.
- 宴六段 -
2008/03/12(Wed) 19:15:47
[No.1143]
└
11://www.despair-ゼツボウ.
- 宴六段 -
2008/02/18(Mon) 15:27:56
[No.1048]
└
10://www.lost-ソウシツ.
- 宴六段 -
2008/01/18(Fri) 19:23:19
[No.1023]
└
9://www.expectation-キタイ.
- 宴六段 -
2007/12/21(Fri) 18:51:14
[No.1008]
└
8://www.discovery-ハッケン.
- 宴六段 -
2007/12/17(Mon) 17:38:26
[No.1004]
└
7://www.moontree-ツキノキ.
- 宴六段 -
2007/12/17(Mon) 17:36:35
[No.1003]
└
6://www.rade-キシュウ.(11/30更新)
- 宴六段 -
2007/11/01(Thu) 18:52:10
[No.971]
└
5://www.guard-ボウギョ. 後編
- 宴六段 -
2007/09/24(Mon) 16:04:32
[No.938]
└
5://www.guard-ボウギョ. 前編
- 宴六段 -
2007/09/24(Mon) 13:55:24
[No.936]
└
4://www.reserch-チョウサ.
- 宴六段 -
2007/08/28(Tue) 16:58:24
[No.903]
└
3://www.contact-ソウグウ.
- 宴六段 -
2007/08/17(Fri) 17:29:54
[No.891]
└
偽アトガキ
- 宴六段 -
2007/08/17(Fri) 17:33:16
[No.892]
└
2://www."riquest‐イライ.
- 宴六段 -
2007/06/28(Thu) 15:19:38
[No.803]
└
アトガキモドキ(汗
- 宴六段 -
2007/06/28(Thu) 15:29:17
[No.804]
└
1:www.”world‐セカイ”.
- 宴六段 -
2007/06/21(Thu) 17:34:43
[No.792]
12://www.past-カコ.
(No.791 への返信) - 宴六段
誰彼にも過去はあり
現在と未来の根幹となる
隠匿したいのか
秘匿したいのか
汝が選ぶは如何なるか
******
「……ここにいないってんなら、どこにいるんだよ……」
畜生、と嘆息を一つ。志乃から受注した依頼を実行しようとしてはいるのだが、なかなかどうして見つからない。
竜骨山脈ブリューナ・ギデオン。雲海が目下に広がるこの喪失の地にも目標――オーヴァンはいなかった。
奴が移動し続けている可能性も否めないが、それならば何故、タウンにすら戻ってこないのだろうか。
タウンに戻って来さえすれば、すぐにわかるというのに。
……オーヴァンが失踪、というのはThe World≠フプレイヤー達には有名な噂となりつつあった。その最中、彼がタウンで目撃されたとなると大騒ぎとなるのは目に見えずともわかりきっていた。
「だのに、ねえ?」
誰彼ともなく訊いてみた。特に意味は無い。ただの嘆息と同義だ。
つーか段々面倒になって来たぞ……?
面倒というか、もう息災で。
呆言だけど。
「離れるか」
この鬱蒼というか、ずっと先まで見渡せない様に渡った霧に心中を侵されつつあった。
要するに、風景に滅入って来ただけである。
背後の朽ち果てかけた建物の中まで戻り、青色の球体が回転しているような『プラットホーム』を操作。タウンにまで戻る。
戻った先で更にカオスゲートのコマンドを実行し、ブックマークから適当なワードを選び転送。
行き着いた先に広がった景色は先程の雲海とは打って変わって、夜の帳。遠くには雷鳴が轟き空には竜を象った浮遊物体。
コシュタ・バウア戦場跡――。
ここから始まった戦いは遥か彼方の浮遊遺跡、マグニ・フィまでに及んだ、旅団と【TaN】の古戦場。
遥か昔にも戦いがあったという戦場跡は、そうは見えないほどに沈み渡っていた。
ここに来たのに意味も恣意もないが、ランダムで選んだとは言っても何か『運命』的なものを感じずにいられなかった。
「これも……呆言だけどな」
無駄な思考を破棄。
ちなみにここに来た意味は何もない。
何となく鬱屈としそうだった気分を変えるためにここに来たわけだったが、大して変わらない。
またマク・アヌに戻って移動するのも面倒なので、少し進んだ先――ちょうど円形の祭壇のような広場の床石と地面の境目、小さな段差に腰掛けた。
膝に肘を立て、頬杖をついた。
……全く、仕事の進展の無さに苛立ちを覚える。
不毛な作業だし、フィロの爺さんに言われた通りに損な役回りだと自覚してはいたが、ここまでだったとは。
冬になったからか、最近のぼぉっとした思考のせいで、上手く思考も回らない。
というか、匂宮さえいてくれれば万事解決なわけだが。
本人がいないのだから仕方ない。彼も彼でリアルだったり仕事だったり知りたくもないプライベートな事情があるのだから。
こういう時にこそ奴が一番苛つく。
苛つく上に思考を苛む。
二重の相乗効果、とか言ってみたりして。
「さっきから横道に逸れてばっかだな」
独白に自嘲の意を込めた。そして吐き出されるのは溜め息。
……そういえば、何で請負人になったんだっけ?
憧憬、だったか。
あの人≠ノ憧れてというのは格好悪いから言わないけれど。
それでも無意識のうちにああいう風になりたかったんだろう。
ただ――『真似』はできても『完成』はできなかった。むしろ、なり損なって名誉を毀損した気がする。
憧憬はしても同型にはなれなかったわけだ。
請け負う人。請負人。人の業を全て背負い、依頼を全うする。
無茶だったかな。
自分自身の過去も背負えてないくせに。
俺の過去なんて誰も興味ないし、聞きたくも無いだろうがこれは自分の思考。少しだけ懐かしい疼痛に浸ってみようか。
疼痛。
そう、疼痛だ。
それは以上でも以下でもない。
それは異常でも異化でもない。
思考を回す。
思考を舞わす。
昔の『キヲク』を乱舞させる。
――きっかけはやはり、七年前。
あの頃の俺は人生全ては同じくして『幸福』なのだと信じていた。自分の事ながら、無垢過ぎて吐き気がする。
『彼ら』も『俺』になど出会わない方が良かっただろうに。
目的を同じくとしつつも、出会わない方が身のためだった――お互いに。
……思考が腐ってきたな。他の思考まで腐食されないようにゴミ箱へポイ。
ともあれ――――。
「はい、どーん!」
何だか妙に漫画チックな擬音とともに背中に衝撃。余波で前転の感じで転がった。
「……痛ぇ……」
うつ伏せるように倒れている体勢からゆっくり立ち上がった。声から攻撃の主を予測。
「神出鬼没キャラが板について来たじゃねぇか……彩音」
「えへへーw」
全く、笑い事ではない。キャラ被りは中々辛いんだぞ。
「何してたのかな?」
「別に。腐った思考」
「腐った、ねえ?」
なにやら意味ありげに口を歪めやがった。
「特に意味は無いし、「呆言だよ、かな?」
…………。
何だろう、この感覚。
相手に思考と台詞を先読みされるのが、こんなにも嫌なことだなんて思いもしなかった。彩音だからいいけど。
「ともかく、見つかった?」
「見つかってたらこんなとこにはいないだろうが」
「それもそうだね(>ω<)」
うん、それもそうだけどさ……。
顔文字の使いどころ間違ってないだろうか。
面倒だから指摘しないけど。
「っていうか――」
言いかけたところで、身構えた。
「ぬぬ?どしたー?」
「――――、」
空気が、違う。
何の警戒も抱かない彩音を守るようにして周囲を見渡した。得物の大太刀、壱式を抜刀。
何だこの空気は。目に見えておかしいところは何も無いが、とにかく
気持ちが悪い。
見た所、彩音にはわからないらしいが、この空気はやばい=B
勘――とか不確定的なものではなく、ただ単純に気分が悪い。
まるで自分が建っている場所が狭まり、どろどろとした汚泥に身を沈めるような――。
そんな不快感。
しかも迫ってくる壁すらも、汚泥と変化するような足掻いても足掻いても脱出し得ない、大きな沼に嵌ってしまったような――。
不快感。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッッッッ!!!
吐き気が喉を駆け上がり嘔吐を催すような不快感に身体が堪えられない。
「ちょ……ルナぁ!?」
頭を抱えて地面に倒れこんだ俺を見、彩音が駆け寄ってきた。
――俺 の視界 が 端か ら消え――ゆ――
――――、
――――――――暗、。%&"$ 転して %"%$&$'!= い ~|&$"%'――――――――
――――――――――――――――――、
******
……
…………
………………………
………………………………………………、
………………………………………………………………………………………………。
「……あ」
声が出た。
周りは暗闇。横たわっているようで、不思議と身体は安定している。
何も見えない深淵。
暗闇だけが支配しているような感覚。
昏々と眠り続ける空間。
意識が遠のいていくような、安寧の感。
このまま眠り続けても前へは進めまい。
気怠るい身体を無視して瞼を開いた。
「…………」
確かに横たわっていたものの、周囲には先程までの光景が一変していた。
全体的に白い=B
目が霞んでいるわけでもなく、眩しいくらいに白かった。
だが、その白さは病院などで見かける病的で清潔なものでなく、禁忌的などこか危うさを伴った白光だった。
「ここは……」
呟いた俺の周りで、何かが動いた=B
「…………!?」
一瞬で風景が変わる。
白さはそのままに、右手の方に四角い図形を象った物体がいくつも並んだ。
それはまるで――。
さらに左手の方でも変化。
こちらは等間隔に並び、長方形と正四角形の組み合わせで構成された物体。
まるでこの光景は――
「……学校……」
朧げながらにを再現したそれは、七年前に俺の通っていた中学校に酷似していた。
白い背景に廊下を再現しただけの空間だったが、俺に与えた驚愕は大きい。
すく、と立ち上がる。
こうして立ち上がってみても、白い背景にただ物体らしきものを浮かべただけの空間であるのに、学校の廊下――それも七年前の記憶を強いイメージとして訴える場所に仕上がっていた。
ふと自らの体を見遣る。
服装は、上下黒のインナーとジーンズの様な物に灰色のコートを羽織った『ルナ』の姿。
リアルに近い世界でゲーム内の姿をしている矛盾に、違和感を感じる。
「つーことは、これはThe World≠フ中なのか……?」
独白しつつ、手前のドアを開いた。
横開きのそれは、がらがらと小気味良い音を立てた。
どうも、教室の後方の扉だったらしい。右手の方に空間が大きく広がる。
入ってすぐ、衝撃を受けずにいられなかった。
先程までの白い風景と打って変わって、この空間は教室そのもの≠セったのだ。
日に当たって黄色く変色した木張りの床。
個人用に高さを調節された生徒用の机と椅子。
窓の近くには手摺り。
飴色にまで使い込まれた教卓。
黒板は綺麗に消されずに曇っている。
まさに俺が過ごした学び舎だった。
それでも、ここがそう≠セと信じられない――否、信じたくない俺はひとつの目的のために歩く。
まさかと思いながら教室の一番端、窓際の席に向かった。
恐る恐る、机の表面を覗き込む。
……果たして。
表面には、文字が刻まれていた。
刃物か何かで木を彫って、刻んだ短い文章。
――――忘れるな、この想い――――
「く、はは……」
七年前――。
未熟だった少年が刻んだ、精一杯の決意表明。
彼らと歩むと決定した、決定事項。
十三歳だった、≪赤色≫の未熟すぎる決意だった。
******
「――――、」
駄目だ。
恐慌を起こしてはならない。
頭を抑え、掻き毟った。
七年前の『キヲク』が喚起されようとしている。
目を硬く瞑り、深淵の闇へ瞳を誘う。
一切合切の思考を破棄。今までの記憶全てを廃棄ッッ!!!
忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろッッ!!!
思い出すな思い出すな思い出すな無かった事にしろ全ては皆無何も起きず何も起こらず何も起こさせなかったあの七年前のことなど悪夢以外の何者でもないのだろうが全てを忘却しろ忘却して忘却して永遠に永久に思い出すことなどない様に蓋をしろむしろ密閉して一生涯思い出すな絶対に絶対的にぃぃぃ!!永久に思い出すことなどないようにッッ!!!
肩が震えるほどに大きく息を吐いた。
いやむしろ息などしていただろうか?
息は どうや っ て する ん だっ け ?
呼吸が止まる。
視界が狭まり、危険を知らせる赤色が端から迫ってくる。
記憶を喚起させようと、迫る。
ふと、視界に先程までの机が、再び映った。
――――忘れるな、この想い――――
忘れ る な 忘れて はな らない こ の事を 無かっ た事になど するも のか ―――
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ亞あああぁぁぁぁァぁぁぁああァァァああああぁぁぁぁァァァァァァっっっッッ!!!!!
「やめろぉぉぉぉぉォォォっ!!」
ぷつん。
ああ……
俺――
意識が――
遠のい て黒ずみ。
このままじゃ黒霧。
喪失してしま暗闇。
暗闇。
******
記憶――追憶。
あなたは……?あたしの名前なんて訊くなよ 誰でも知ってるさ 赤色 目の前が真っ赤に燃えて 美也禰さん そんな名前で呼ばないで わたしのことはお姉ちゃんって呼びなさ これからあなたはこの家の家族なんだから いつでも帰ってきて良いんだよ? 犬なんて欲しいの? 別に お姉ちゃんに言ってみなさいっ♪ カイト……? 普通の名前だね 流奈、何泣いてるの? 初めまして、カイト。 俺はルナ 請負人のルナだ 目的はお前と同じ ただいま 鍵……開いて……? 異臭 死臭 鉄の臭い 錆の臭い 予感 悪寒 姉さん……!? 母さんっ、父さんっ 何で……なんで……
何でみんな死んでるの?
泣いちゃ駄目でしょ、流奈…… 姉さんっ! 今救急車…… 助からないかもしれない 助けるっ! 無理、なことは言わないの 誰だよ 誰だよ誰だよ誰だよ 一体誰がこんな事をっ!? 息、止まって……!? 死ぬな、おい、死ぬなって――――
警察 通り魔 強盗 狂った殺人鬼 犯人はわからない 殺してやる復讐 憎悪 いつもこうなる この家に来る前も また同じような事で 死にたい 殺してくれ いっそのこと一思いに死んでやる あなたの名前は?
誰だよ
わたしは彩音
知るか
冷たいな 見ず知らずの奴に名前なんか教えるかよ 怖いの? 何が
君は君自身を怖がってる
うるさい
俺に近寄れば死ぬ そうだね
なんだって? 同意したんだけれど?
わかってるよ、君は
死のうとしてるんだよね?
……。
大丈夫。 何も怖くない。
安寧。
眠り
穏やかに。
わたしが傍にいるよ
わたしは死なないから――――
******
目が、覚めた。
うつ伏せに倒れた俺は、顔を横に向けて地面とこんにちは。
「…………」
手を突いて立ち上がる動作の最中、頭を強く振って鈍った思考を取り戻した。
極力思い出さないように心がけ、立ち上がる。
広がっているのは先程と全く変わらない教室。
机には一瞥もくれず、入ってきたのと同じ扉から外に出た。
まずはここから脱出する。どう考えてもここは異常≠セ。
ここがThe World≠セというのなら、こういうことも――、
ぶ、ん。
一瞬の音と共に、禍つ式を出現させた。
両手に握ったそれを見つめる。
――ここがThe World=Aゲームの世界であればこの空間もまたデータである可能性が高い。
そもそも、この空間の正体がわからないのだが、それはまあいい。
七年前にだってこういった空間は――っと、また思い出す所だった。
廊下の窓枠に向かって一閃。
がき、と壁が崩れるような音を立ててひびが入った。
もう一発……。
思考して、黒刀を大きく振り上げた刹那――
ごぅん。
どこか鈍い音が空間全体に響き渡った。
慌てて音の発信源を探すと、どうやら背後の方からのようだ。
背筋が寒くなるような雰囲気に呑まれながらも、振り返り、確認。
遠方だが大きく写る。
音の主、それは
「……魚?」
どこか魚介類を彷彿とさせる、透明な身体を持ったそれは、巨躯を揺らしながらこちらを見つめていた。
無機質な瞳で一瞥され、身が竦んだ。
感じた刹那に巨体がぬるり、と動き出す。
「――――!?」
生理的な嫌悪感と恐怖感が同時に俺の内心を抉った。
そいつは、こちらを凝視したまま――加速。
空中を器用に泳ぐ黒い魚≠ェ突進して来た。
一気に俺まで到達した異物≠ノ対し、禍つ式で一閃しつつ床蹴る。横方向へ跳躍し、魚の側面を抜ける形になる。
「…………!」
そこで俺は目にしてしまった。背筋全てが粟立ち、嘔吐を催しそうなそれ=B
魚類によくある、鱗――。
やけに黒いと思っていたが、魚≠フ体には鱗が存在していなかった。
あるはずの場所には、黒く染まった人間の腕がびっしりと――――
と、魚が反転。
このような狭い場所で――と考えた傍から空間が変化しており、もはや廊下を模した空間ではなく、ただただ白いだけの場所と変わっていた。
幸いにも、先程傷付けた場所が近くだったので、目で探して走った。
現実世界の距離に直して数メートルを一気に駆ける。
そこで魚がまた肉迫。
避けられない――!
余裕のない俺は、両黒刀を交差して突進を受け止めた。
四肢が全てバラバラになりそうな大きな衝撃が襲う。
空中に浮かせられ、重力を無視して宙でそのまま押され続ける。
「ぐぅう……っ!」
唸り、化け物の鼻先で交差したままの両刀を十字に斬り払う。
刻まれた頭を捩り、反動で俺が吹き飛んだ。
叩きつけられるべき地面もないのでなされるがまま地面に着地、同時に転がって衝撃を受け流す。
身を捩っていた魚がこちらを睨んだ。
刹那、鱗の代わりであった黒い腕が展開される。だらしなく垂れ下がっていただけの腕は、数え切れない無数の闇と化し、俺を襲わんと肉薄する。
腕の展開された本体であるはずの魚は紐解かれるように、体が瓦解していった。
気がつけば、上方の空中を全て覆うほどに腕が増殖していた。もはや先程傷付けた場所など見つからない。
中空すべてを覆うように展開されたそれらに、冷たい悪寒を覚えた。
次の瞬間には数本の腕が絡まりあったグロテスクな『腕』が迫る。
右の刀でそれを斬り伏せ、更に上から迫る同物体を斬り払って軌道を逸らした。
間を置かずに更なる急襲。横から振り上げるように襲い掛かってきた腕を左の刀で叩き斬る。間髪入れずに腕が迫る。今度は二方向、左右対称に斜めから。
「少しは休ませろ、って!」
解き放つようにして両刀を展開し、強襲を防いだ。
が、連携するようにまた腕が――
認識を超えそうになる程の量を携えて、幾方向からも手が見えた。
前方から迫るそれを、体を捻って回避。
捻り様に二刀を振るって先程の二つを払い、下方向から迫ってきていたものを右の得物で逸らす。
逸らした次の瞬間にはそれを反転、しつつ左の凶器で上からの手を防ぎ、反転し終わった刀で払った。
――きりが、ない。
肩を揺らし、止めていた呼吸を一気に吐き出した。
そもそも、何故こんなことをやっているのか。また迫った黒手を防ぎながら、思った。
違方向から向かってきたいくつかを、防ぎきれないものとして判断。後方――と言ってもすでに方向感覚は無くなって来ている――に跳躍して、反転して追いついて来た物を打ち落とした。
段々身体がおかしくなって来たようだ、手足が冷えてきた感覚を覚える。
そう――まるで凍傷のような。
思考させる暇も持たせてくれないらしい、また腕が――
「っぜぇ!」
空気と言葉を吐き出しつつ一閃。本当にキリが無い。
――俺は、帰るんだよ!
心中で毒吐きながら体を捻らせる。そのすぐ傍を、新しく発生した腕が薙いで行った。
帰る。
この悪夢の様な場所からあいつの元へ。
帰る。
疼痛疼くこの場所から――彩音の所へ!
意志とは裏腹に、身体は疲弊して来ていた。
意志薄弱でも、帰る。
意志は力。
意識は地から。
右の黒刀を振るい、力の固まりを吐き出した。
それは疾風の如き衝撃。
真空を圧縮して撃ち出した様な一陣の風が、手を薙ぎ払いながら疾駆する。
――これも、禍つ式の力なのか。
もう驚きもしない。
むしろ、新しい力は好都合。
力の湧きあがる様な実感に、不敵ににやり、と口の端を歪めた。
「あああぁぁぁああぁぁァァあアぁぁぁぁあああああぁああッッ!」
交差させて空を切り裂き、クロスさせた『衝撃波』を撃ち出す。駆ける『黒』は多くの手を巻き込み、嵐の如く吹き荒れた。
地をも抉るその勢いから目を離し、残っている力を振り絞って走る。
自分が意図的に付けたひび割れが、地面に移行していたのだ。恐らく先程の世界が改変されたときに、だろう。
赤く光るそれは、何か≠ノ似ていた。
どこかで見覚えのある――
無駄思考に割って入ってくるように手が横手から迫る。
右の刀で払い、体勢をそのままに駆けた。
地面に移行した『それ』に跳躍して到達、刹那に二刀を突き刺した。
手には硬く、しかし薄く張られた膜を貫く手応え=B
割られた膜の内から光が漏れ出した。
――やった――――!
これで、帰ることができる……!
安堵感に包まれ、ほっと胸を撫で下ろす。
脳裏には『彼女』の姿。
束の間――
今までずっと追跡されていた腕が、俺の腕に絡みついた=B
「――――!!!」
声にならない悲鳴が、漏れた気がした=B
瞬間、いくつもの黒い泡を伴った黒手が俺の右手に集中して突き刺さった=B
痛覚。
激痛。
痛い―――!
「――、」
大声を上げて叫ぶ。
声が、聞こえない。
聞こえる云々ではなく、聞くだけの余裕が、無かった。
脳の末端神経が焼き切れそうに灼熱する。
激痛なんてものじゃない、これは――
狂った様に、痛い
むしろ痛いではなく、熱い=B
身体全体が灼熱している。
体にそのまま火を放たれたような感覚。
皮膚が焼け神経が焦がされる。
「嫌だぁぁぁぁあぁぁぁぁああああぁぁあぁぁあぁああああぁぁぁああああああああァあァァァあああァあァァァアァァアアアアアアアアッッッ!!!」
意識が、遠く――――
12://www.past-カコ.……了。
******
アトガキる―後が斬る
******
おはこんばんちわ……ううん、いいんじゃなかろうか、宴です、おはこんばんちわ(ぁ
とりあえず、遅れてましたねorz
そして今回も長いぃ……(涙)
少しでも短くするために、今回は改行を一行ずつ少なくしてみましたw
気になる方はご確認ください(笑)
えと、こんな終わり方でいいんでしょうかね?
次回に続く!みたいな。
ちなみに黒い手はあれです。
え、あれですよ?
わざと黒い泡という表現は避けましたけど、一つだけ入れました(ぇ
勘のいい方、恐らく正解です^^*
それでは今日はこの辺で。
……宴。
[No.1143]
2008/03/12(Wed) 19:15:47
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> 誰彼にも過去はあり > > > > 現在と未来の根幹となる > > > > 隠匿したいのか > > > > 秘匿したいのか > > > > 汝が選ぶは如何なるか > > ****** > > > > 「……ここにいないってんなら、どこにいるんだよ……」 > > 畜生、と嘆息を一つ。志乃から受注した依頼を実行しようとしてはいるのだが、なかなかどうして見つからない。 > > 竜骨山脈ブリューナ・ギデオン。雲海が目下に広がるこの喪失の地にも目標――オーヴァンはいなかった。 > > 奴が移動し続けている可能性も否めないが、それならば何故、タウンにすら戻ってこないのだろうか。 > > タウンに戻って来さえすれば、すぐにわかるというのに。 > > ……オーヴァンが失踪、というのはThe World≠フプレイヤー達には有名な噂となりつつあった。その最中、彼がタウンで目撃されたとなると大騒ぎとなるのは目に見えずともわかりきっていた。 > > 「だのに、ねえ?」 > > 誰彼ともなく訊いてみた。特に意味は無い。ただの嘆息と同義だ。 > > つーか段々面倒になって来たぞ……? > > 面倒というか、もう息災で。 > > 呆言だけど。 > > 「離れるか」 > > この鬱蒼というか、ずっと先まで見渡せない様に渡った霧に心中を侵されつつあった。 > > 要するに、風景に滅入って来ただけである。 > > 背後の朽ち果てかけた建物の中まで戻り、青色の球体が回転しているような『プラットホーム』を操作。タウンにまで戻る。 > > 戻った先で更にカオスゲートのコマンドを実行し、ブックマークから適当なワードを選び転送。 > > 行き着いた先に広がった景色は先程の雲海とは打って変わって、夜の帳。遠くには雷鳴が轟き空には竜を象った浮遊物体。 > > コシュタ・バウア戦場跡――。 > > ここから始まった戦いは遥か彼方の浮遊遺跡、マグニ・フィまでに及んだ、旅団と【TaN】の古戦場。 > > 遥か昔にも戦いがあったという戦場跡は、そうは見えないほどに沈み渡っていた。 > > ここに来たのに意味も恣意もないが、ランダムで選んだとは言っても何か『運命』的なものを感じずにいられなかった。 > > 「これも……呆言だけどな」 > > 無駄な思考を破棄。 > > ちなみにここに来た意味は何もない。 > > 何となく鬱屈としそうだった気分を変えるためにここに来たわけだったが、大して変わらない。 > > またマク・アヌに戻って移動するのも面倒なので、少し進んだ先――ちょうど円形の祭壇のような広場の床石と地面の境目、小さな段差に腰掛けた。 > > 膝に肘を立て、頬杖をついた。 > > ……全く、仕事の進展の無さに苛立ちを覚える。 > > 不毛な作業だし、フィロの爺さんに言われた通りに損な役回りだと自覚してはいたが、ここまでだったとは。 > > 冬になったからか、最近のぼぉっとした思考のせいで、上手く思考も回らない。 > > というか、匂宮さえいてくれれば万事解決なわけだが。 > > 本人がいないのだから仕方ない。彼も彼でリアルだったり仕事だったり知りたくもないプライベートな事情があるのだから。 > > こういう時にこそ奴が一番苛つく。 > > 苛つく上に思考を苛む。 > > 二重の相乗効果、とか言ってみたりして。 > > 「さっきから横道に逸れてばっかだな」 > > 独白に自嘲の意を込めた。そして吐き出されるのは溜め息。 > > ……そういえば、何で請負人になったんだっけ? > > 憧憬、だったか。 > > あの人≠ノ憧れてというのは格好悪いから言わないけれど。 > > それでも無意識のうちにああいう風になりたかったんだろう。 > > ただ――『真似』はできても『完成』はできなかった。むしろ、なり損なって名誉を毀損した気がする。 > > 憧憬はしても同型にはなれなかったわけだ。 > > 請け負う人。請負人。人の業を全て背負い、依頼を全うする。 > > 無茶だったかな。 > > 自分自身の過去も背負えてないくせに。 > > 俺の過去なんて誰も興味ないし、聞きたくも無いだろうがこれは自分の思考。少しだけ懐かしい疼痛に浸ってみようか。 > > 疼痛。 > > そう、疼痛だ。 > > それは以上でも以下でもない。 > > それは異常でも異化でもない。 > > 思考を回す。 > > 思考を舞わす。 > > 昔の『キヲク』を乱舞させる。 > > ――きっかけはやはり、七年前。 > > あの頃の俺は人生全ては同じくして『幸福』なのだと信じていた。自分の事ながら、無垢過ぎて吐き気がする。 > > 『彼ら』も『俺』になど出会わない方が良かっただろうに。 > > 目的を同じくとしつつも、出会わない方が身のためだった――お互いに。 > > ……思考が腐ってきたな。他の思考まで腐食されないようにゴミ箱へポイ。 > > ともあれ――――。 > > 「はい、どーん!」 > > 何だか妙に漫画チックな擬音とともに背中に衝撃。余波で前転の感じで転がった。 > > 「……痛ぇ……」 > > うつ伏せるように倒れている体勢からゆっくり立ち上がった。声から攻撃の主を予測。 > > 「神出鬼没キャラが板について来たじゃねぇか……彩音」 > > 「えへへーw」 > > 全く、笑い事ではない。キャラ被りは中々辛いんだぞ。 > > 「何してたのかな?」 > > 「別に。腐った思考」 > > 「腐った、ねえ?」 > > なにやら意味ありげに口を歪めやがった。 > > 「特に意味は無いし、「呆言だよ、かな?」 > > …………。 > > 何だろう、この感覚。 > > 相手に思考と台詞を先読みされるのが、こんなにも嫌なことだなんて思いもしなかった。彩音だからいいけど。 > > 「ともかく、見つかった?」 > > 「見つかってたらこんなとこにはいないだろうが」 > > 「それもそうだね(>ω<)」 > > うん、それもそうだけどさ……。 > > 顔文字の使いどころ間違ってないだろうか。 > > 面倒だから指摘しないけど。 > > 「っていうか――」 > > 言いかけたところで、身構えた。 > > 「ぬぬ?どしたー?」 > > 「――――、」 > > 空気が、違う。 > > 何の警戒も抱かない彩音を守るようにして周囲を見渡した。得物の大太刀、壱式を抜刀。 > > 何だこの空気は。目に見えておかしいところは何も無いが、とにかく > > > > > 気持ちが悪い。 > > > > 見た所、彩音にはわからないらしいが、この空気はやばい=B > > 勘――とか不確定的なものではなく、ただ単純に気分が悪い。 > > まるで自分が建っている場所が狭まり、どろどろとした汚泥に身を沈めるような――。 > > そんな不快感。 > > しかも迫ってくる壁すらも、汚泥と変化するような足掻いても足掻いても脱出し得ない、大きな沼に嵌ってしまったような――。 > > 不快感。 > > 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッッッッ!!! > > 吐き気が喉を駆け上がり嘔吐を催すような不快感に身体が堪えられない。 > > 「ちょ……ルナぁ!?」 > > 頭を抱えて地面に倒れこんだ俺を見、彩音が駆け寄ってきた。 > > ――俺 の視界 が 端か ら消え――ゆ―― > > ――――、 > > ――――――――暗、。%&"$ 転して %"%$&$'!= い ~|&$"%'―――――――― > > ――――――――――――――――――、 > > > > ****** > > > > …… > > ………… > > ……………………… > > ………………………………………………、 > > ………………………………………………………………………………………………。 > > 「……あ」 > > 声が出た。 > > 周りは暗闇。横たわっているようで、不思議と身体は安定している。 > > 何も見えない深淵。 > > 暗闇だけが支配しているような感覚。 > > 昏々と眠り続ける空間。 > > 意識が遠のいていくような、安寧の感。 > > このまま眠り続けても前へは進めまい。 > > 気怠るい身体を無視して瞼を開いた。 > > 「…………」 > > 確かに横たわっていたものの、周囲には先程までの光景が一変していた。 > > 全体的に白い=B > > 目が霞んでいるわけでもなく、眩しいくらいに白かった。 > > だが、その白さは病院などで見かける病的で清潔なものでなく、禁忌的などこか危うさを伴った白光だった。 > > 「ここは……」 > > 呟いた俺の周りで、何かが動いた=B > > 「…………!?」 > > 一瞬で風景が変わる。 > > 白さはそのままに、右手の方に四角い図形を象った物体がいくつも並んだ。 > > それはまるで――。 > > さらに左手の方でも変化。 > > こちらは等間隔に並び、長方形と正四角形の組み合わせで構成された物体。 > > まるでこの光景は―― > > 「……学校……」 > > 朧げながらにを再現したそれは、七年前に俺の通っていた中学校に酷似していた。 > > 白い背景に廊下を再現しただけの空間だったが、俺に与えた驚愕は大きい。 > > すく、と立ち上がる。 > > こうして立ち上がってみても、白い背景にただ物体らしきものを浮かべただけの空間であるのに、学校の廊下――それも七年前の記憶を強いイメージとして訴える場所に仕上がっていた。 > > ふと自らの体を見遣る。 > > 服装は、上下黒のインナーとジーンズの様な物に灰色のコートを羽織った『ルナ』の姿。 > > リアルに近い世界でゲーム内の姿をしている矛盾に、違和感を感じる。 > > 「つーことは、これはThe World≠フ中なのか……?」 > > 独白しつつ、手前のドアを開いた。 > > 横開きのそれは、がらがらと小気味良い音を立てた。 > > どうも、教室の後方の扉だったらしい。右手の方に空間が大きく広がる。 > > 入ってすぐ、衝撃を受けずにいられなかった。 > > 先程までの白い風景と打って変わって、この空間は教室そのもの≠セったのだ。 > > 日に当たって黄色く変色した木張りの床。 > > 個人用に高さを調節された生徒用の机と椅子。 > > 窓の近くには手摺り。 > > 飴色にまで使い込まれた教卓。 > > 黒板は綺麗に消されずに曇っている。 > > まさに俺が過ごした学び舎だった。 > > それでも、ここがそう≠セと信じられない――否、信じたくない俺はひとつの目的のために歩く。 > > まさかと思いながら教室の一番端、窓際の席に向かった。 > > 恐る恐る、机の表面を覗き込む。 > > ……果たして。 > > 表面には、文字が刻まれていた。 > > 刃物か何かで木を彫って、刻んだ短い文章。 > > ――――忘れるな、この想い―――― > > 「く、はは……」 > > 七年前――。 > > 未熟だった少年が刻んだ、精一杯の決意表明。 > > 彼らと歩むと決定した、決定事項。 > > 十三歳だった、≪赤色≫の未熟すぎる決意だった。 > > > > > ****** > > > > > 「――――、」 > > 駄目だ。 > > 恐慌を起こしてはならない。 > > 頭を抑え、掻き毟った。 > > 七年前の『キヲク』が喚起されようとしている。 > > 目を硬く瞑り、深淵の闇へ瞳を誘う。 > > 一切合切の思考を破棄。今までの記憶全てを廃棄ッッ!!! > > 忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろッッ!!! > > 思い出すな思い出すな思い出すな無かった事にしろ全ては皆無何も起きず何も起こらず何も起こさせなかったあの七年前のことなど悪夢以外の何者でもないのだろうが全てを忘却しろ忘却して忘却して永遠に永久に思い出すことなどない様に蓋をしろむしろ密閉して一生涯思い出すな絶対に絶対的にぃぃぃ!!永久に思い出すことなどないようにッッ!!! > > 肩が震えるほどに大きく息を吐いた。 > > いやむしろ息などしていただろうか? > > 息は どうや っ て する ん だっ け ? > > 呼吸が止まる。 > > 視界が狭まり、危険を知らせる赤色が端から迫ってくる。 > > 記憶を喚起させようと、迫る。 > > ふと、視界に先程までの机が、再び映った。 > > ――――忘れるな、この想い―――― > > 忘れ る な 忘れて はな らない こ の事を 無かっ た事になど するも のか ――― > > 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ亞あああぁぁぁぁァぁぁぁああァァァああああぁぁぁぁァァァァァァっっっッッ!!!!! > > 「やめろぉぉぉぉぉォォォっ!!」 > > ぷつん。 > > ああ…… > > 俺―― > > 意識が―― > > 遠のい て黒ずみ。 > > このままじゃ黒霧。 > > 喪失してしま暗闇。 > > 暗闇。 > > > > > > > > > ****** > > > > 記憶――追憶。 > > > > > > あなたは……?あたしの名前なんて訊くなよ 誰でも知ってるさ 赤色 目の前が真っ赤に燃えて 美也禰さん そんな名前で呼ばないで わたしのことはお姉ちゃんって呼びなさ これからあなたはこの家の家族なんだから いつでも帰ってきて良いんだよ? 犬なんて欲しいの? 別に お姉ちゃんに言ってみなさいっ♪ カイト……? 普通の名前だね 流奈、何泣いてるの? 初めまして、カイト。 俺はルナ 請負人のルナだ 目的はお前と同じ ただいま 鍵……開いて……? 異臭 死臭 鉄の臭い 錆の臭い 予感 悪寒 姉さん……!? 母さんっ、父さんっ 何で……なんで…… > > > > > > > > > 何でみんな死んでるの? > > > > > > > > > > > 泣いちゃ駄目でしょ、流奈…… 姉さんっ! 今救急車…… 助からないかもしれない 助けるっ! 無理、なことは言わないの 誰だよ 誰だよ誰だよ誰だよ 一体誰がこんな事をっ!? 息、止まって……!? 死ぬな、おい、死ぬなって―――― > > > > 警察 通り魔 強盗 狂った殺人鬼 犯人はわからない 殺してやる復讐 憎悪 いつもこうなる この家に来る前も また同じような事で 死にたい 殺してくれ いっそのこと一思いに死んでやる あなたの名前は? > > 誰だよ > > わたしは彩音 > > > 知るか > > > 冷たいな 見ず知らずの奴に名前なんか教えるかよ 怖いの? 何が > > > 君は君自身を怖がってる > > うるさい > > > 俺に近寄れば死ぬ そうだね > > > > なんだって? 同意したんだけれど? > > > わかってるよ、君は > > > > 死のうとしてるんだよね? > > > > ……。 > > > 大丈夫。 何も怖くない。 > > 安寧。 > > 眠り > > 穏やかに。 > > > わたしが傍にいるよ > > > > > わたしは死なないから―――― > > > > > > > > > > > > ****** > > > > > > 目が、覚めた。 > > うつ伏せに倒れた俺は、顔を横に向けて地面とこんにちは。 > > 「…………」 > > 手を突いて立ち上がる動作の最中、頭を強く振って鈍った思考を取り戻した。 > > 極力思い出さないように心がけ、立ち上がる。 > > 広がっているのは先程と全く変わらない教室。 > > 机には一瞥もくれず、入ってきたのと同じ扉から外に出た。 > > まずはここから脱出する。どう考えてもここは異常≠セ。 > > ここがThe World≠セというのなら、こういうことも――、 > > ぶ、ん。 > > 一瞬の音と共に、禍つ式を出現させた。 > > 両手に握ったそれを見つめる。 > > ――ここがThe World=Aゲームの世界であればこの空間もまたデータである可能性が高い。 > > そもそも、この空間の正体がわからないのだが、それはまあいい。 > > 七年前にだってこういった空間は――っと、また思い出す所だった。 > > 廊下の窓枠に向かって一閃。 > > がき、と壁が崩れるような音を立ててひびが入った。 > > もう一発……。 > > 思考して、黒刀を大きく振り上げた刹那―― > > > ごぅん。 > > > どこか鈍い音が空間全体に響き渡った。 > > 慌てて音の発信源を探すと、どうやら背後の方からのようだ。 > > 背筋が寒くなるような雰囲気に呑まれながらも、振り返り、確認。 > > 遠方だが大きく写る。 > > 音の主、それは > > 「……魚?」 > > どこか魚介類を彷彿とさせる、透明な身体を持ったそれは、巨躯を揺らしながらこちらを見つめていた。 > > 無機質な瞳で一瞥され、身が竦んだ。 > > 感じた刹那に巨体がぬるり、と動き出す。 > > 「――――!?」 > > 生理的な嫌悪感と恐怖感が同時に俺の内心を抉った。 > > そいつは、こちらを凝視したまま――加速。 > > 空中を器用に泳ぐ黒い魚≠ェ突進して来た。 > > 一気に俺まで到達した異物≠ノ対し、禍つ式で一閃しつつ床蹴る。横方向へ跳躍し、魚の側面を抜ける形になる。 > > 「…………!」 > > そこで俺は目にしてしまった。背筋全てが粟立ち、嘔吐を催しそうなそれ=B > > 魚類によくある、鱗――。 > > やけに黒いと思っていたが、魚≠フ体には鱗が存在していなかった。 > > あるはずの場所には、黒く染まった人間の腕がびっしりと―――― > > と、魚が反転。 > > このような狭い場所で――と考えた傍から空間が変化しており、もはや廊下を模した空間ではなく、ただただ白いだけの場所と変わっていた。 > > 幸いにも、先程傷付けた場所が近くだったので、目で探して走った。 > > 現実世界の距離に直して数メートルを一気に駆ける。 > > そこで魚がまた肉迫。 > > 避けられない――! > > 余裕のない俺は、両黒刀を交差して突進を受け止めた。 > > 四肢が全てバラバラになりそうな大きな衝撃が襲う。 > > 空中に浮かせられ、重力を無視して宙でそのまま押され続ける。 > > 「ぐぅう……っ!」 > > 唸り、化け物の鼻先で交差したままの両刀を十字に斬り払う。 > > 刻まれた頭を捩り、反動で俺が吹き飛んだ。 > > 叩きつけられるべき地面もないのでなされるがまま地面に着地、同時に転がって衝撃を受け流す。 > > 身を捩っていた魚がこちらを睨んだ。 > > 刹那、鱗の代わりであった黒い腕が展開される。だらしなく垂れ下がっていただけの腕は、数え切れない無数の闇と化し、俺を襲わんと肉薄する。 > > 腕の展開された本体であるはずの魚は紐解かれるように、体が瓦解していった。 > > 気がつけば、上方の空中を全て覆うほどに腕が増殖していた。もはや先程傷付けた場所など見つからない。 > > 中空すべてを覆うように展開されたそれらに、冷たい悪寒を覚えた。 > > 次の瞬間には数本の腕が絡まりあったグロテスクな『腕』が迫る。 > > 右の刀でそれを斬り伏せ、更に上から迫る同物体を斬り払って軌道を逸らした。 > > 間を置かずに更なる急襲。横から振り上げるように襲い掛かってきた腕を左の刀で叩き斬る。間髪入れずに腕が迫る。今度は二方向、左右対称に斜めから。 > > 「少しは休ませろ、って!」 > > 解き放つようにして両刀を展開し、強襲を防いだ。 > > が、連携するようにまた腕が―― > > 認識を超えそうになる程の量を携えて、幾方向からも手が見えた。 > > 前方から迫るそれを、体を捻って回避。 > > 捻り様に二刀を振るって先程の二つを払い、下方向から迫ってきていたものを右の得物で逸らす。 > > 逸らした次の瞬間にはそれを反転、しつつ左の凶器で上からの手を防ぎ、反転し終わった刀で払った。 > > ――きりが、ない。 > > 肩を揺らし、止めていた呼吸を一気に吐き出した。 > > そもそも、何故こんなことをやっているのか。また迫った黒手を防ぎながら、思った。 > > 違方向から向かってきたいくつかを、防ぎきれないものとして判断。後方――と言ってもすでに方向感覚は無くなって来ている――に跳躍して、反転して追いついて来た物を打ち落とした。 > > 段々身体がおかしくなって来たようだ、手足が冷えてきた感覚を覚える。 > > そう――まるで凍傷のような。 > > 思考させる暇も持たせてくれないらしい、また腕が―― > > 「っぜぇ!」 > > 空気と言葉を吐き出しつつ一閃。本当にキリが無い。 > > ――俺は、帰るんだよ! > > 心中で毒吐きながら体を捻らせる。そのすぐ傍を、新しく発生した腕が薙いで行った。 > > 帰る。 > > この悪夢の様な場所からあいつの元へ。 > > 帰る。 > > 疼痛疼くこの場所から――彩音の所へ! > > 意志とは裏腹に、身体は疲弊して来ていた。 > > 意志薄弱でも、帰る。 > > 意志は力。 > > 意識は地から。 > > 右の黒刀を振るい、力の固まりを吐き出した。 > > それは疾風の如き衝撃。 > > 真空を圧縮して撃ち出した様な一陣の風が、手を薙ぎ払いながら疾駆する。 > > ――これも、禍つ式の力なのか。 > > もう驚きもしない。 > > むしろ、新しい力は好都合。 > > 力の湧きあがる様な実感に、不敵ににやり、と口の端を歪めた。 > > 「あああぁぁぁああぁぁァァあアぁぁぁぁあああああぁああッッ!」 > > 交差させて空を切り裂き、クロスさせた『衝撃波』を撃ち出す。駆ける『黒』は多くの手を巻き込み、嵐の如く吹き荒れた。 > > 地をも抉るその勢いから目を離し、残っている力を振り絞って走る。 > > 自分が意図的に付けたひび割れが、地面に移行していたのだ。恐らく先程の世界が改変されたときに、だろう。 > > 赤く光るそれは、何か≠ノ似ていた。 > > どこかで見覚えのある―― > > 無駄思考に割って入ってくるように手が横手から迫る。 > > 右の刀で払い、体勢をそのままに駆けた。 > > 地面に移行した『それ』に跳躍して到達、刹那に二刀を突き刺した。 > > 手には硬く、しかし薄く張られた膜を貫く手応え=B > > 割られた膜の内から光が漏れ出した。 > > ――やった――――! > > これで、帰ることができる……! > > 安堵感に包まれ、ほっと胸を撫で下ろす。 > > 脳裏には『彼女』の姿。 > > 束の間―― > > 今までずっと追跡されていた腕が、俺の腕に絡みついた=B > > 「――――!!!」 > > 声にならない悲鳴が、漏れた気がした=B > > 瞬間、いくつもの黒い泡を伴った黒手が俺の右手に集中して突き刺さった=B > > 痛覚。 > > 激痛。 > > 痛い―――! > > 「――、」 > > 大声を上げて叫ぶ。 > > 声が、聞こえない。 > > 聞こえる云々ではなく、聞くだけの余裕が、無かった。 > > 脳の末端神経が焼き切れそうに灼熱する。 > > 激痛なんてものじゃない、これは―― > > > > > > 狂った様に、痛い > > > > > むしろ痛いではなく、熱い=B > > 身体全体が灼熱している。 > > 体にそのまま火を放たれたような感覚。 > > 皮膚が焼け神経が焦がされる。 > > 「嫌だぁぁぁぁあぁぁぁぁああああぁぁあぁぁあぁああああぁぁぁああああああああァあァァァあああァあァァァアァァアアアアアアアアッッッ!!!」 > > > > > > 意識が、遠く―――― > > > > > > > > > > > 12://www.past-カコ.……了。 > > > > ****** > アトガキる―後が斬る > ****** > > おはこんばんちわ……ううん、いいんじゃなかろうか、宴です、おはこんばんちわ(ぁ > > とりあえず、遅れてましたねorz > そして今回も長いぃ……(涙) > 少しでも短くするために、今回は改行を一行ずつ少なくしてみましたw > 気になる方はご確認ください(笑) > > えと、こんな終わり方でいいんでしょうかね? > 次回に続く!みたいな。 > ちなみに黒い手はあれです。 > え、あれですよ? > わざと黒い泡という表現は避けましたけど、一つだけ入れました(ぇ > 勘のいい方、恐らく正解です^^* > > それでは今日はこの辺で。 > > ……宴。
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