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アトガキモドキ(汗 - 宴六段 - 2007/06/28(Thu) 15:29:17 [No.804]
1:www.”world‐セカイ”. - 宴六段 - 2007/06/21(Thu) 17:34:43 [No.792]


13://www.tragedy-ヒゲキ. 後章 (No.791 への返信) - 宴六段

******



 PCを起動、デスクトップのThe World≠起動する。

 特に然したるソフトも入れていないため、快適な状況でIDとパスワードを入力し、PC選択画面に移行。

 迷わずに『ルナ』を選び、ログインする。

 しばしの間『Now Loading』の読み込み画面が続く。

 しかし、すぐに悠久の古都マク・アヌのドームに身体が降り立った。

「……さて」

 マク・アヌは今夕刻の様で、ドームのステンドグラスに燦々と黄昏色が差し込んでいた。リアルも夕方だが、ゲーム内では時間の進みが違うため、すぐに夜となるだろう。

 とりあえず、ワープポイントを使って錬金地区へ移動。しばしの徒歩の後、請負人事務所に入室した。

 暗転してすぐに夕日に照らされる長椅子と長机が目に入った。

 ……長椅子に座る人物も。

「あー、ルナ!」

「……よう、憐」

 どうもこんにちわ、そしてさようなら。

 とお別れしたくなるくらい苦手だ。

「彩音ちゃんなら今でかけてるよ」

「あ?」

 というか、何で俺の思考が読めた!?

「えへへ、ルナの思考なんて簡単だね。彩音ちゃんのことしか考えてない」

「それは誤解だ。俺はそんなに変態じゃない」

「そんなに、ってw」

 笑われた。

 今まではずっと俺が上手だったはずなのに、彩音に感化されたらしく最近は言い負かすようになって来ていた。

 そこが気に入らないわけだけど!

「ま、いいや。何か旅団の奴が訪ねてこなかったか?」

「うん、来たよ。黒い錬装士の……えぇと、ハセヲ君だっけ」

 ……?

 ハセヲが?

「何て?」

「いや、ルナがいないなら別にいい、だって。無愛想だよね;」

 ハセヲが、ねえ。

 何か嫌な予感がするな。ショートメールでも送って、連絡とってみるか。

 そのまま喋り続ける憐を他所にウィンドウを展開し、ハセヲのアドレスを呼び出した。

 文面を工夫せず、今話せるか、とだけ送ると、即返答が来た。

「……アルケ・ケルンに来い……?」

「どうしたの?」

「ちょっと今から出かけてくるわ」

「え、ああ、依頼が来てるんだけど――!?」

「後で!」

 半ば飛び出すようにして事務所を出た。

 文面が――

 ハセヲの文面からはどこか、悲壮感の様な……とにかく切羽詰まったような感じを受けたのだ。

 くそ、何もなければそれでいいんだが……。

 ドームに向かい、すぐに転送を開始した。


******





「……嘘、だろ」

「いや……」

 初めには驚愕。その直後には否定していた。

「だって、志乃さんが……?」

 いまだ信じることの出来ない俺が、声を絞り出す。

「――確かにこの目で見たんだ……。あれは、ただの『死亡表示』なんかじゃなかった……!」

 アルケ・ケルン大瀑布。

 止め処もなく流れ続ける滝を眺めながら、彼――ハセヲは語った。

 その瞳はどこか、虚ろ。

 瞳に光が存在していない。

 対する俺は、目を見開いていただろう。

「リアルに連絡とって、病院教えてもらった。はは……ここまで来たら信じないわけには……」

「おい、その病院の名前って……」

「駅前ちょっと行った所の、**だけど」

 駅前という単語が出てきたのは以前に俺が、同じ地域に住んでいると言ったからであろう。

 しかし、帰って来たのは先程まで俺が眠ってた病院の名前だ。

 ということは、突然搬送されてきた『七尾 志乃』ってのは……。

「…………」

 重たい沈黙が流れる。

 ――――嫌な予感のしたハセヲが駆けつけたとき、既に志乃はPKされていたらしい。

 ただのPKであれば、『黄泉がえりの薬』や回復スキルの『リプメイン』でもすぐに復活できる。

 ただ、そのときの志乃に対してはそのどれもが効果を表さなかったらしい。

 そして――、PCが砕け散るように消失して

「意識を失ったって言うのか……?」

 そう。

 これじゃ。

 これじゃまるで七年前と同じ≠カゃないか。

 意識不明者、未帰還、ゲーム内で殺≠ウれた。

「なあ、ルナ……。俺、どうすればいいんだ……?」

「…………」

「オーヴァンも……志乃も……いなくなって俺は――?」

「それは……」

 力なさそうに、虚ろな目でこちらを見遣るハセヲには自殺志願者の如き悲愴感が漂っていた。

 ハセヲのよりどころがオーヴァンで。

 ハセヲの居場所が志乃だった。

 それら全てを失くした彼は、どうすればいいのだろうか。

「オーヴァンは、どうしていなくなったんだ……?」

「…………」

「あいつがいなくなって、何もかもがッ!」

「ハセヲ……!」

「だってそうだろ!?マグニ・フィの戦いで失踪してから、俺たち旅団はっ!!」

「…………」

 返す言葉もない。その通りなのだから。

 ハセヲは叫んだ。

 声の限りに。

 どうどうと流れ続ける瀑布に向かって、声高に。

 問う。

「どこにいるんだよ……!オーヴァン………ッッ!!」

 答えは、なかった。






「む……?」

 無機質な電子音が、これまた無機質な室内――知識の蛇≠ノ響いた。

「どうかしたのか、八咫?」

 私の問いには答えず、キーの操作を続け、部屋に六角形のウィンドウが多数展開を始めた。

 この世界の千里眼たる知識の蛇を起動したのだ。

「何か――?」

 傍らで作業を続けていたパイが反応。だが、依然八咫は黙していた。

 キーを叩き続け、一際大きいウィンドウに『Serching...』の文字が浮かんだ。どうやら監視プログラムによるエリア検索を行っているようだが……。

 検索が終了し、エリアが表示―――される手前で画面が停止した。

 真っ赤に染まるウィンドウの中央には、薄い赤色で『Eror』の表示。

「やはり、か」

「だから、どうしたんだ」

 八咫に問う。

「異常現象だ。Δ隠されし 禁断の 聖域にて異常現象が見つかった」

「何、だと?」

 見ると、パイも驚愕しているようだった。すぐに主人である八咫に許可を求める。

「では、今から私が急行を――」

「無駄だ。逃げられた」

 無表情のまま、彼女を制す。私はその様な事よりも、違う事の方が気にかかっていた。

「……八咫、昨日も同じ場所で『現象』が起こったのではなかったか?」

「――君の予感は的中している」

 それは。

 何を意味しているのか。

「……エリアにプログラムが入り込むまでの、復旧時間を算出する」

 言う前に既に行動していた。

 ――これだから勘というやつは――――!


******


「……?ショートメール?」

 依然、アルケ・ケルンで黄昏ていた俺に、軽すぎる音が響いた。差出人は、『憐』となっている。

 げ……と思うが、一応開封。いつも憐は他愛もない雑談メールを送ってくるから困るのだ。

 内容は――

「……ハセヲ、ちょっと外す!」

「あ、ああ……」

 疑問符を浮かべるハセヲに対し、俺は慌てて碧色のプラットホームへ向かっていた。

 くそ、まさか憐からのメールがこんなにも重大だなんて、予想だにしていなかった。

 いつもいつも普通のメールばかり故、覚悟をしていなかった。

 続いて、更なる着信。走りながらショートメールを読むという器用な事をしつつ、プラットホームを起動――

 瞬間、凍りつく。

 差出人は不明。誰なのだという疑問以前に、無題であることも気にかかる。

 だが、内容を読んだ所でその様なものは頭のうちから吹き飛んでいた。

「聖域が侵される=Aだと……!?」

 これはグリーマ・レーヴ大聖堂の事を言っているのか?

 先程の憐からの連絡――彩音が一度事務所に来て、慌てて出て行ったという情報と重なって、俺を焦燥させる。

 ――――こういうときの勘はいいから困るんだよっ!

 暗転してデータの読み込みをする時間すら惜しい。

 暗闇が裂け、世界が開けた。背を向けているカオスゲートに振り返り、起動。

 ブックマークコマンドを実行し、履歴から大聖堂を選ぶ。

 また世界が暗転。

 これも俺を焦燥させる結果としかならない。

 聖堂へ向かう一本道でさせ長く感ぜられる。これまでにないくらい全力疾走し、小階段を駆け上り、重い鉄扉を押し開ける。

 硬く閉ざされたそれを、持てる限りの力で押すが、ゆっくりとしか開かない。

 最奥のステンドグラスから漏れた赤光が少しずつ開かれてゆく扉と、隙間の俺を照らした。

 ――――、そして

「―――」

 ――――果たして。

 彩音はそこにいた。

「あ……」

 …………屍として。

 つい先程殺されたように、空中で舞っていた。

「――あ、あ」

 動けない。

 奥に位置する祭壇の前でゆっくりと、スローモーションがかった動きで彩音が地面に向かってゆく。

 背中から仰向けに、身体を打つ。

「あ、やね……っ!」

 ようやく。

 身体がいつもの動きを取り戻した。

 離れていた距離を一気に詰めるために、走る。

 横に並べてある長椅子を目にもくれず、ただ彼女の元へと走った。

 倒れた彩音の頭を右手で起こし、支える。

 左手は彼女の右肩へ。

 彼女は、目を瞑って黙っていた。

 一言も喋らず。

 何も言わず。

 彫像のように。

 ―――死んだように。

「おいっ、彩音!」

 スキルのうちスペルである、『リプス』を発動。『生命の萌芽』の波動が彼女の身体に伝わるが、問題は解決されない。

 なら、復活スペルか!?

 またスキル、『リプメイン』を発動させるものの、彩音が目を開ける気配はない。

 どういうことだよ!

「リプス!リプメインっ!くそっ、聞こえてんのか!?彩音っ!」

 何度も詠唱するが、効果が見られない。

 そのうち、彼女の腕が――

 テクスチャが剥げ、ワイヤーフレームが剥き出しになった。

「…………!?」

 そして砕け散り、向き質なデータの塵が俺の鼻先を飛んで消えていった。

 腕だけではない。彼女の脚が、腰が、身体が、首が、顔までもにひびがはいってゆく。

「おい……、何だよ、コレ……!」

 いずれも硝子が割れるような音を立て、崩壊を始める。

 彼女の身体を――冷たくしか感じられないその身体を抱きしめる。

「おい、返事してくれよ!彩音ぇ……!!」

 俺の腕の中で、彼女の身体が消失した。

 消失した。

 消えた。

 消えた。

 消えた。

「……あ、ああぁ……」

 何だこれは。

 何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれは何だこれはぁっ!!

 どうして、こうなる?

 意味がわからない。

 理解できない。

 理解したくもない。

 目の前で、割れた硝子の様な欠片が宙を舞い。

 そのまま自然に消えてゆく。

 理解できない。

「何なんだよ……!」





 どうして――――死んでるの?





「……電話……」

 そうだリアルに戻って、

 掛けていたM2Dを乱暴に引っぺがし、床に放った。

 一瞬で現実世界に戻るが、今は感情などどうでもいい。

 今は感傷などどうでもいい。

 黒の冬物ジャケットを羽織り、携帯のアドレス帳から彩音の携帯に電話をかける。

 ……。

 …………。

 しばらくコール音を聞くが、出ない。

「くそっ!」

 玄関で靴を履くのももどかしい。左足のスニーカーが上手く履けず、踵部分を踏んでしまうが、構うものか。

 余りの慌てように足がもつれそうになりながら、部屋を飛び出し、階段を駆け下りる。

 外に出、彩音の部屋までの最短ルートを走る。

 途中、中途半端にしか履いていなかったために左の靴が脱げてコンクリートの地面をそのままで走るが、構っている時間はない。

 息が切れて過呼吸に陥りそうだが、どうでもいい。

 彩音の住んでいるマンションに到着。玄関先を顔見知りの管理人が箒で掃いていたが、無視する。

 裏口の階段扉を鍵で開き、先程とは逆に階段を駆け上った。

 彩音の部屋がある階に辿り着くと、近所迷惑も上等な(といっても一つの階に一部屋しかないが)足音を立てて扉の前に立つ。

 ノブを回すと、鍵が掛かっている硬い感触。

 前に貰っていた合鍵を取り出し、差し込もうとするが、焦っているせいで上手く鍵穴にはまらない。

「入れ、入れっ!」

 がちゃがちゃと、関係のない場所を突いてしまう。

 数度の往復の後、やっと鍵穴に入れる事が出来た。

 ドアを開け、片方しかない靴を投げ出すようにして脱いで侵入。

 広い廊下をまっすぐにPCのある部屋に向かった。

 ドアを開き、中に突入といってもおかしくない勢いで入室した。

「……彩音!」

 PCの前に彼女は倒れていた。

 横向きに。

 不本意に。

 あまりにも自然に。

 あまりにも不自然に。

「は、はは……嘘、だよな?」

 歪に笑いながらゆっくりと歩み寄る。

「いつもの、悪戯だろ?」

 そう、彼女は意地の悪い悪戯が大好きなのだ。

 これはいつもの悪戯にすぎない。

「ああ、そうか。こないだ約束してからずっと、何も奢って無いから怒ってるのか」

 自業自得だな、それじゃ。

 上手く動かない身体で、膝を付いてゲーム内と同じく右手で頭を持ち上げた。

「それとも何か、ああ、この間『愛してる』って言わなかったからか」

 彼女は、冷たい。

 身体は、冷たい。

 無意識に語りかける。

「なあ……いくらでも言ってやるから……」

 冷たい。

 怜悧。

 冷水。

 冷氷。

 どの言葉を取っても表わせない。

「愛してる、って何度でも言って、叫んでやるから……」

 願望。

 願い。

「愛してる、愛してるから……。お願いだから目を開けてくれ……、目を……」













「彩音ぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええぇぇえええぇぇえぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!」















13://www.tragedy-ヒゲキ.…………了。





______
悲劇的かつ喜劇的なアトガキ
______

今日は無難にこんにちはと言ってみようかでも期待してくれる人も居たりするんだろうなぁとか戯言を吐いてみる、宴です、こんにちわ(ぇ

はい、このお話で区切りです。
ちょうどRootsも折り返し地点。
私的にもルナ的にも、です。
もはやこのシリーズはプロローグですらありません。
ただの基盤。
ただの基本。

ルナの根底にあるものを晒しているだけにすぎません。
根底にして根源。
全ての水には源があるというお話です。

……こんな話はRoots編最終回にでも回しますか(←)

えぇと、閑話休題。

トリロジ届きましたっ!^^*
いやはや、福岡の上映会でも見ましたが、本当に良作品に仕上がってますね(笑)
パロディも相変わらず笑わせてくれますしw
……でも雑誌は売ってる書店が見つからず……orz
明日くらいにアニメイトやら行ってみたいと思います(ぁ

でも本編最後のシーン……。
あれ、次回作があると考えていいんですよね!?
次に期待して良いんですよね、社長!

おっと、このまま語り続けると時間が全然足りないので……。
それでは今日はこの辺で。


[No.1188] 2008/03/28(Fri) 15:09:35

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