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Episode2「死神」 ――力を与える。 オーヴァンが言ったその一言が、いつまでもハセヲの耳から離れない。しかも、傷だらけのハセヲはその場に座ったまま動けずに居た。次々と、破損箇所から壊れていくハセヲ。 「はぁ…。こんな所で止まっている時間は無いのに…」 気持ちだけが焦りそうにり、大きく深呼吸をした。息を吐いて、少し落ち着きを取り戻したハセヲは、自分の身に起きている異変に気付いた。 「何だよこれ…?」 壊れて行ったはずのハセヲの体は、新たなデザインへと変わっていく。亀裂は消え、データが剥がれていた部分には新しいデータが出来てくる。 今までも十分黒がメインの色だったが、当たらしデザインは更に禍々しく、黒が濃いイメージのデザインになっている。まさに黒い死神だ。 腰の部分から、引きずってしまうほど長くて黒いマントのような物が加わり、風になびいている。肩からは大きな赤黒い棘が出ている。 「力だ…。はははははは!これが力か?!はっははは!礼を言うぜ!オーヴァン!はははっ!最高だぜ!」 一人、怪しく笑いをあげるハセヲは完全に力に溺れていた。ずっと求めていた力が手に入り、最高に気分のいいハセヲは、この力を試すべく、違うエリアへと行こうと、マク・アヌへと帰還した。 転送が完了し、目の前が明るくなると、そこには白くて大きな帽子をかぶり、緑色の服、まるで妖精のようなデザインの女のPCが目に入った。だがハセヲは、そのPCに見覚えがあった。 「志乃?」 ――志乃とは。 ハセヲが力を求め、戦い続ける理由になったPCだった。8ヶ月前ハセヲは、志乃をトライエッジにPKされ、目の前で消された。そして、志乃のプレイヤーは意識不明になった。それ以来、ハセヲはトライエッジをKILLするため、力を求めていた。志乃を助け出すために。 ハセヲが驚いている間にそのPCはマク・アヌの街に消えて行ってしまった。そしてすぐにハセヲはそのPCを追った。志乃じゃない事は分かっていた。だけど、追わなくては居られなくなっていた。 少し走り、橋を渡った先の中央広場に着いた時、噴水の辺りにあのPCが居るのを見てハセヲは駆け寄った。そして歩き出そうとしていたそのPCの手を掴んだ。 「え!?…誰ですか?」 振り向いたそのPCは驚きながらハセヲの顔を見た。ハセヲはその声で我に帰り、掴んだ手を急いで離した。 「悪い…人違いだった」 ハセヲは自分自身が恥ずかしくなって下を向いた。目の前のPCは困ったように笑った。 「アトリ、遅くなってすまない。」 後ろから男の声がしてハセヲが振り向くと、そこには緑色の髪をした男が立っていた。その男はハセヲの顔を見ると、鼻で笑って言った。 「君が死の恐怖か…まさにその名の通りだな。殺気が漂っている」 ハセヲはその言葉を聞いて、しばらくその男を睨んで舌打ちをしてその場を去ろうと、男の横を通ろうとしたハセヲにもう一度言った。 「君は自分を正義だと思っているのか?PKKも、実際の所はPKと同じ事をしていると、いつになれば気付くのだ?」 それを聞いたハセヲは立ち止まると、背中から大剣を取り出して男に向けた。 「あんまり俺を怒らすんじゃねーよ…殺すぞ!」 殺意に満ちたその言葉は男に動揺を与えると思われたが、アトリと言うPCがハセヲの前に立ち、剣をしまう様に言って来た。もちろんハセヲは聞こうとはせずに居たが、真剣な目付きで自分を見るアトリに、志乃の影を重ねてしまい、思わず大剣をしまってしまった。 「ちっ…紛らわしいんだよ」 すると再びハセヲはゲートの方へと歩き出した。 つづく ――あとがき―― 更新が大分遅くなりましたが、更新します! [No.1210] 2008/04/11(Fri) 15:11:57 |