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No.1237へ返信

all .hack//short―※初回必読 - 宴六段 - 2008/05/07(Wed) 18:40:29 [No.1233]
[削除] - - 2008/05/14(Wed) 18:51:41 [No.1241]
…入替世界…【後編】 - 宴六段 - 2008/05/12(Mon) 16:17:23 [No.1237]
…入替世界…【前編】 - 宴六段 - 2008/05/07(Wed) 18:41:12 [No.1234]


…入替世界…【後編】 (No.1233 への返信) - 宴六段




 ぶぅん、という音と共に光の輪が広がり、中からヒトガタが現れる。

 見覚えのある白銀のPCボディ。

 まさしく、俺の求めていた『ハセヲ』――内実は『アトリ』だった。

「アトリっ!」

 『アトリ』の顔で彼女を呼んだ。

 あれ?『ハセヲ』だから、『彼』なのか?

 いや、今はどうでもいい!

「……ハセヲさ、ん……?」

 声に気付いてか、振り返る『ハセヲ』。だが、動きが凍りついていた。

 それはそうだろう、あるべき姿の『自分自身』が立っているのだから。

「来いっ!」

「え、何――」

「いいから!」

 『ハセヲ』の腕を掴んで引っ張り、強引に連れて行こうとする。

 だが、彼女は脚が絡まったようで、よろめいて誰かの肩にぶつかってしまった。

「痛ぇ……」

 見るとそれは頑強な男だった。俺も見覚えのある、PK。

「って、お前は死の恐怖……!」

「きゃっ!」

 俺の顔で言うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 俺の、『ハセヲ』の身体で小さく縮こまるなっ!

 『ハセヲ』の姿で目を瞑るなぁぁぁっ!

「……、きゃっ?」

 疑問に思った彼が、それを口にした。

「すみませんすみませんっ!」

 『ハセヲ』のまさかの平謝り!

「え、いや……死の恐怖が言うなら……」

 何とか穏便に済んだらしい。

 PKの彼はすぐにどこかへ行ってしまった。

 だが、そこから小さな声が漏れ出していた。

 微かな音量だが、確実に聞こえる声。

 そう、それは囁き。

「おいおい……あの死の恐怖がPKに謝ってるぞ……?」

「うわ、ホントだ……。何があったんだ?」

「いや、あいつにも何かあったんだろ。そっとしといてやろうぜ」

「そうだな……」

 何か同情されてるぅぅぅぅぅ!?

「い、行くぞ、アトリ!」

「え、あ、はい」

 ……今の図を想像してしまった。

 女性らしい戸惑い姿を見せる『ハセヲ』の腕を引っ張る、男らしい動きの『アトリ』。

 ……は、はは……。もう何かどうでもいいや……。


******



「……よく連れて来れたわね、ハセヲ?」

「うるせぇ」

「喧嘩腰は良くないですよ、ハセヲさん!」

 パイに食って掛かる『アトリ』に、それを愛想笑いでなだめる『ハセヲ』。

 気持ち悪ぃぃぃぃぃぃぃぃ!

 一々想像して、自己嫌悪に陥っている。

 既にアトリには事態の全て伝えていた。

 目の前の八咫は風邪が悪化したのか、どうも無口になりがちだったが、早く直してもらうことにした。

「ともあれ、今からデータの修正を開始する」

 やはりどこか苦しそうに言う八咫。

 特別なソフトウェアキーボードが浮かび上がり、プログラムが起動する。

 それは全てを治癒する救世主、のはずだった。

 一瞬の黒い闇の後、再び『知識の蛇』の薄暗闇を目にした。

 目の前には、元の姿をしたアトリ。

 どこか驚いているような顔をしているが、彼女の様子がそれなら俺も大丈夫なのだろう。

 いやあ、良かった良かった。

 これで万事解決、清々しいな。

「ハセヲさん、ですよね……?」

「あ?何言ってるんだよ、成功したじゃねぇか」

「ハセヲ……その姿は……」

 え、何、この痛い視線は。

 っていうか、今度はどこか目線が高すぎる様な……。

 あれ?髪が長くね?

 というか、濃い蒼……?

 この姿は『ハセヲ』ではない。

 これは――

「エンデュランス―――!!?」

「……どうやら、ゴホッ、間違えたようだ」

「間違えたじゃねぇよ!一番たち悪いって!!」

 風邪の八咫、どうやら本調子ではないらしい。

「八咫様も連日の仕事で疲れてらっしゃるのよ」

「だからって間違っていいわけねぇだろうがぁぁぁぁぁっ!」

 『エンデュランス』の姿で叫ぶ。




 これで、また人探しか……。



******

 今度は既にログイン中なので、中央区を中心に探してみる。

 自分のPCとして『エンデュランス』を扱うのは先程の『アトリ』と違って、悪くはないのだが、それはそれで『ハセヲ』の様子が気になる。

 逆にたちが悪かった。

 というか、先程から熱い視線を感じる……。

 熱烈なファンも多いとは聞いていたが、まさかここまでとは。

 とにかく、あいつを探――



「ハセヲぉぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉおおぉおおおおおッ!!」

 いきなりかぁぁぁぁあああぁぁッッ!

 噴水より前方から疾駆してくる白銀のPCボディ。エンデュランスの扱う『ハセヲ』だった。

 とんでもない速度で俺に肉迫する『ハセヲ』。

 噴水など余裕で飛び越えて、『エンデュランス』の目の前に立ちやがった。

「気付いたら、僕が君で君が僕でっ!」

 熱い想いをぶつけるかの様に一気に喋る喋る。

 『ハセヲ』の姿で熱く語る彼に対し、いつもらしくなく冷静に対応する『エンデュランス』。

「君と僕が一体化してる……。僕、こんなに嬉しいことはないよ……!」

 こんなに危ない発言はない!

「どうして俺の居場所がわかった?」

「君の居場所ならどこでもわかるさ……!」

 うわああああああああ!

 すぐに見つかって嬉しいけど、素直に喜べねぇぇぇぇぇぇ!!

「とにかく、八咫の所までいくぞ」

「……え……」

「何そのあからさまに残念そうな顔」

 そして『ハセヲ』の顔で上目遣いにするなっ!

「とにかく、俺は早く元の体に……」

 熱く語る『エンデュランス』に対し、『ハセヲ』はどこか虚ろな顔で想いを馳せていた。

 そのうち、何かを思いついた様で、

「はっ!今、僕とハセヲが一体ならあんな事やこんな事まで…………!!」

「ちょ、待てぇぇぇぇぇぇぇ!」

 慌てて『ハセヲ』を押さえつけた。

 今奴を野放しにしたら何をしだすかわからないっ!

「わあ、元宮皇が『死の恐怖』を押し倒してるぞ!」

「本当だわ……あのお二人、噂はあったけど、ガチだったのね……!」

「これが本物のBL……!」

「美しいわ……!!」

 え、何この空気。

 薔薇が咲き乱れてそうなこの空気は。

「ハセヲ……僕は知っていたよ?君の心の奥に秘めたる思いは……」

「だぁぁぁああああぁぁぁああっ!埒があかねええええ!」

 どこか憂いを帯びた瞳で、頬を赤らめる『ハセヲ』。

 頼むからやめてくれ!





******



「……はあっ……はぁっ……」

 疲れた。

 これ以上も以下もなく、可も不可もなく、絶対的に疲れたっ!

 もう無理、限っ界!

 『エンデュランス』の姿で、『知識の蛇』の冷たい床にへばっていた。

「……八咫、今度こそ、頼むぞ……!」

 息も絶え絶えに言う。

 言うが早いか、彼の作業は始まっていた。

 やはりの一瞬の暗闇の後、光を抜ける。

 『ハセヲ』のいた場所にはちゃんとエンデュランスが存在していた。

 やっと……、やっと終わりか……。

 長かった。

 本当に、一日が長かった。

 もう、こんな思いはしたくない。

 さあ、希望の扉を……!

「……あ……」

 うわあ、やめてくれよ、そんな不吉な声は。

「ハセヲ?」

 軽く既視感。

 デジャ・ヴという奴か。

「……八咫、多くは望まない。結果だけを教えてくれ」

「…………」

「早く」

「……またも間違えたようだ」

 やはり本調子ではなかったか。

 だがこう何度も続くと、冷静でいる事に慣れてしまっていた。

「今回は誰だ?」

「……『ハセヲ』の姿をモニターで見てみよう」

 ぶぅん、という鈍い音と共にウィンドウが巨大化。 すぐに『ハセヲ』の姿が映される。

 誰だ……、今回は誰だ……!

≪んー?≫

 声からすると、男なのだろう。彼は自分の状況に気が付いたようだ。

≪これは……『ハセヲ』、か?≫

 冷静に状況を分析。

 よし、ここまで冷静なら安心して――

≪ひゃっほぅ、これならモテヲを満喫できるんじゃね!?≫

 八咫が告げる。

「クーンのようだ」

 えええええええええええええ!?

≪これを気に水仙ちゃんと牡丹ちゃんを……!!≫

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 本気で止めねばなるまい。

 くそ、一刻も早く――、

「……ハセヲ……」

 エンデュランスの凛とした声。

「どうした?俺は早くクーンを――」

「僕に任せて、ね?」

 そこで少し笑う。

 満面の笑み。これで女だったら一撃だったろう。

 ただ、目が笑っていない。

「ふふ……僕のハセヲセンサーに狂いはないよ。すぐに君の身体を見つけ出してあげる」

 目がっ!

 目が笑ってないって!

「大丈夫……君の身体に悪い事はしないよ……?」

 前科、前科!!

「君の身体を弄ぶ様な輩は許さない……」

 お前には言われたくねぇぇぇぇぇ!!!






 その後、クーンは一週間ほどログインしてこなかったという。





   おしまいっ☆


_______________
アトガキ
_______________
狐憑き様に皆様……、すみません


宴は大変なキャラ崩壊を起こしました!
むしろ、ゆっくりしていってね!!!

……ギャグ、です。多分。
キャラが崩壊してますね……orz
ていうか、なんだこの『俺があいつであいつが俺で』……。
とりあえず、ここでキャスト解説でも。


ハセヲ……叫び役。決して突っ込み役ではない。ええ、決して。

アトリ……今回ばかりは脇役。

八咫……ドジっ子。

エンデュランス……いつも通り。(ぇぇぇぇ

パイ……八咫が風邪ならやってやればいいのに、やらない鬼畜なある意味『黒幕』。

クーン……死亡フラグ確定。



……。

とってもカオス!(何)
では、ここで締めとさせて頂きます。

そして感想、お待ちしています(ぁ


[No.1237] 2008/05/12(Mon) 16:17:23

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