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15://www.revenger-フクシュウシャ. (No.791 への返信) - 宴六段


黄昏の先には真なる闇


貪り尽くす獣の咆哮


全ては誰の為か


15://www.revenger-フクシュウシャ.

____________________________


 ひび割れた地面。巨大な山と見紛いそうな崖が聳え立っている。

 空は夜と間違えるほど黒雲に覆われており暗く、時折聞こえる雷鳴からしてすぐに大雨でも降りそうな勢いだった。

 世界に点在する荒野のフィールド。

 植物も少なく設定された、荒涼とした大地が果てもなく広がるその地に、獣は潜んでいた。

 じっと待っていた。

 荒れる息は、この天候の中の気温のせいか白い。

 故に、姿を隠していた。

 見つからぬよう、山ともとれる丘陵の上に這いつくばっていた。

 獣の見つめる先には―――人の集団がわらわらと集まっていた。

 彼らは言うなれば狩人だった。

 別に言えば殺人者。

 弱者を囲い、多勢に無勢、自らの得物で彼らを嬲っていた。その光景は凄惨を極める。

 この世界における生命力の証を減らしていき、死亡しそうになった所で回復薬を使用する。

 いわば永遠に続く生き地獄。

 彼らは皆が皆哄笑をあげていた。弱者の無能ぶりを嘲るが如く。

 自らの力を誇示するが如く。

 彼らはかくも悲しき強者≠セった。

 どれだけ凄惨で、どれだけ卑怯であろうとも、この世界では『力』こそが絶対唯一。

 狩人たちは狩猟を続けた。

 なんと歪んだ世界。

 それを覗き見る、獣。

 じっと見つめるその瞳には、凍えた怒りが。

 視線で生物を殺せるとはこの事だろうか。

 赫怒の死線で獣は睨み続けた。

 彼らは嗤う。

 自分達が絶対的優位な立場にある『狩人』なのだと。

 絶対の力を行使する『狩人』なのだと。




 ――だが、獣もまた狩人だったのだ。




「……何だ……?」

 殺人者の内一人が声をあげた。何かの視線を――死線を感じ取ったのだ。

 だが、遅すぎた。

 仲間達が彼の声に気付いたときには、彼は既に死んでいた。

 もんどりうって囲いの中央に躍り出た彼は灰色。

 その彼がいたはずの場所にはまさしく獣がいた。

 悪魔とも死神とも言い換えることのできる、『それ』はとにかくそこに存在していた。

 燃え盛るような赤い髪に真紅の瞳。赫怒の色合いに対し、纏っている衣服は黒一色。

 長外套の裾が、風に靡いた。

 人族と呼ぶのもおこがましい。

 まさに鬼神の顕現。

 鬼神の体現。

 目にはふつふつと沸き起こる怒りだけが支配していた。奥に秘めたるは悲しみ。

 哀愁にして悲哀。

 どこまでもどこまでも深い紅色の瞳。

 底が知れない、奥深さ。

 殺人者たちは総じて――恐怖した。

 総じて怯怖した。

 彼らが知覚できたのはそこまで。

 次の瞬間には獣は、紅風と化していた。

 瞬く暇もない程に風が舞う。

 それはまるで、爽やかな風だった。

 全てを薙ぎ払う疾風と化し、次々とヒトガタが屠られていく。

 まさに、風。

 ―――ありったけの悪意の篭もった。

「お前―――!」

 そこまで言語化できただけでましだったかもしれない。

 言い終わらないうちに、周囲にいた仲間達は全て殺戮されていた。

 十数人もの軍勢だったにも関わらず。

 死屍累々と屍が転がる大地。

 まるで天災にあったが如く、しかしこれは人為的に行われた行為だった。

 鋭利な太刀を突きつけられた殺人者――浅黒の肌の彼女は、生理的な、直感的な恐怖に震えた。

 あるいは怯怖かもしれない。

「な、んなんだよぉ……」

「…………」

 獣は答えない。黙したまま、殺意を具現化していた。

 喉に突きつけられた刃が、ちらりと動く。彼女はそれに恐怖して、口を開いた。

「お前、何者だ……っ!」

 答えたのか、刃の動きが止まった。凍て付くような赤に、蔑む様な色が交わる。

 しばしの沈黙。

 両者が曇天の中、静寂を保っていた。

 そして―――

「……PKKのルナだ……」

 『獣』は小さく、独白するかの様に言い捨てた。

 自らの存在を。

 自分の現在を。

 まるで自分とこの世界、そして殺人者供に教えてやるかの様に。

 ――自分を追って来い、と。

 それは告死と同じ行為。

 告げたあとには首が飛んでいた。

 まさに一瞬の早技。

 どさり、と首が地面に叩きつけられる。

 残ったのは獣のみ。

 既に殺されていた新米の冒険者は、世界から欠落していた。

 曇天。大きく雷鳴。

 轟く。

 雨が降り始めた。 再び落ちてきた雷に、獣の横顔が照らされる。

 濡れて頬に髪が張り付くが、獣は気にも留めていなかった。

 目は限りなく虚ろ。虚構だけが瞳を支配している。

 獣はしばらく太刀を手に提げて佇んでいたが、何かに気付いたように、この世界から消失した。


******




 ブラウザを開き、大手の掲示板群を覗いてみた。

 板は勿論、The World板。ここに自分が立てたスレッドがあるはずだ。

 スレッドタイトルは『請負人活動報告スレ』。

 我ながらネーミングセンスが疑わしくなるが、最近になって書き込みは増えているようだ。

 スレ主……つまり自分が書いた文は、こうだ。

 『最近になって請負人のPC『ルナ』がPKになったと聞いたのですが、誰か詳細知りませんか?』

 無論、名前欄は『名無し』。他のレスに関しても全て名無しで通されているのがこの掲示板の特徴だった。

 匿名性、とやらだ。

******

名無し:正確にはPKKな。

名無し:つかこないだ俺やられたんだけどwww

名無し:請負人ってあんなキャラだっけ?

名無し:さっきPKKされてきた俺が来ましたよっと。

 レスは尚も続く。

名無し:いつのまにか書き込みがPKだらけにw

名無し:The World≠ネんてそんなもんだろwww

名無し:で?請負人がどうしたって?

名無し:PKKされたって……。お前、実際はやられてないだろ……

名無し:なんでんなこと言えるんだよw

名無し:こう……なんていうか、もうログインしたくなくなるみたいな、怖いみたいな……

名無し:ちょwww電波www

名無し:ネトゲで怖いとか言われてもなw

名無し:別に信じてもらえなくてもいいんだけどよ。

名無し:つってもそんな噂が出てくるのは気になるな。


******

 これ以上は話が進まなかった。

 飽きて、ウィンドウを消す。

 次に違うスレッドを開いた。タイトルは『PK報告スレ』。

 話題にあげていた『奴』の話は流れたようで、違う話が展開されていた。

 失望してウィンドウを消した。

 携帯を開いて確認すると、切迫する程に時間が迫っていた。

 PCをシャットダウンさせて冬物の黒いジャケットを纏って外出。

 出かけ先は病院。

 駅前に位置するそこに、目的。

 受付に簡素な言葉を投げかけて移動。

 結構な上階の個室に入室。

 そこに―――。




「…………」



 眠り姫がいた。

 眠り姫? 自分の表現に嫌悪。

 何という的確な表現だろうか。

 気持ち悪い。

「彩音……」

 陶磁器のような白い顔で、彼女は眠っていた。

 まるで――死人みたいに。

「……っ」

 何だ、これは。

 備え付けられたパイプ椅子に座りながら、毎度のように思う。

 死んでなんかいないさ。

 ああ、生きてる。

 ただ、言葉を喋れないし動けないだけだ。

 けれど。

 だけれど、それは死んでいるのと何が違うのだろう?

 理解しない。

 理解しない。

 できないのではなく、しない。

 したくない。

「呆言だけどさ……」




「暗くて深いそこから―――助け出してやるから」



 俺――真田 流奈は独白するのだった。



******





 マク・アヌ。

 黄昏の古都に射す光が眩しい。

 俺は、一歩一歩ドームへと歩んでいく。

 踏みしめ、踏み固め。

 生きる事。

 どうでもいいが、暇なので思考。

 生きるみたいに、踏みしめる。

 呆言に過ぎないが。

 道を行くPCの幾人かが、俺を振り返った。どうやら、BBSの宣伝効果は絶大らしい。

 それに……、今の格好も効果的かもしれない。

 いつもの灰コートではなく、闇よりも尚濃い、黒――夜色の外套を羽織っている。

 あまりに邪悪だとは思うが、実はこれが本来の姿なのだ。

 匂宮に頼み込んで、灰色のコートに『改造』してもらっていた。

 灰にしていたのは、単純に嫌だったからだ。リアルのあの頃を思い出しそうで、怖かった。

 だが、そんなことも関係ない。

 今は奴を――彩音を意識不明にした奴を殺すだけ。

 ならば今までの自分の姿を思い切り晒してやろう。

 『紅風』なんかではない、PKKの俺として。

 請負人として、自分の業を背負う。

 背負う。

 背負って、解消してみせる。

 本気。

 今までの自分など、生温い。

 本気だ。

「やってやろうじゃねぇか」

 いつまでも視線を感じながら、請負人事務所の扉を開いた。

 いつものように入室すると、そこには数人の影。

「遅かったな」

「遅刻ですね」

「…………」

 匂宮に澪が口々に言い、憐が黙ったままだった。

「…………」

 俺は、口を開かない。

 わかっているさ。

 俺は、何でも利用して成し遂げてやる。

 成立させてやる。

 完全に無欠にわかっている。

 彼らだって、俺に好意を抱いているのもわかっている。

 俺はそれすら利用する。

 躊躇なんてしない。

 絶対に、助け出す。

 哄笑でもあげたい、気分だった。

 彩音。

 今俺の姿が見えているなら嗤ってくれ。

 俺の姿を。

 俺の無様な、最低な行為を。

 最低な好意を。

 ここから物語は幕をあける。

 今までのは前座に過ぎなかった。

 狭小な俺を許せ。

 全て、やってやる。



 それでは皆様。

 ここからは醜き復讐者の物語。

 どうか、笑ってご覧下さいませ―――。



15://www.revenger-フクシュウシャ.…………了。


____________
アトガキ
____________

どうも宴です。
挨拶が冴えない事に定評があります、すみません(何

いや、もう全然更新できなくてすみません(二回目…)
何か、あれですよ。
受験生。

でも更新は自重しないつもりです、すみません(三回目!)

ええ、まあ。
序章書いただけのやっつけ仕事なので、今日はこの辺で。

宴でしたっ!


[No.1250] 2008/06/05(Thu) 19:02:48

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