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「僕は只設定どおりにロールするのかなと思ったことを言っただけ。」 そう簡潔に言って、ぷいと興味なさそうにドームの方へ歩き出すノエルに再び藍瑠は声をかけた。 「あの!フ・・・フィールドへ行くのですか?」 今度は振り返らずにぴたりと止まり答えた。 「そうだけど・・。」 「じゃあ、サポートしてください!私、初心者なんです。」 「・・・。」 The World R:2では初心者狩りが横行しているという。だから、このPCノエルと一緒なら安心してフィールドを歩きまわれるし、だいたい呪療士にソロなんてできるワケがない。今は仲間が必要だ。 ―まぁ、先刻この人はPKしたんだけど何故か信用できる。そんな気がした。 「・・あのぅ・・?」 あまりにも無言の時間が長すぎるので藍瑠は先に口を開いた。ノエルはやはり振り返らずに 「仕方ない。」 そう言ってドームの方へ再び歩き出した。・・多分「サポートしてやるか」という意味でいいのだろう・そう思い藍瑠はノエルの後を追った。 カオスゲート前に着いて藍瑠はメンバーアドレスを交換しないとパーティー編成できないということを思い出した。 「じゃ、メンバーアドレスを・・」 どうぞ。と言い終わる前にノエルは何処かのエリアへと転送してしまった。 「え?!」 藍瑠は急いで過去ログを見、ノエルが転送したエリアワードを入力した。 Δ はじまる キミの 巣立ち Lv 1 「・・やっと来た。」 のんきに石の上に座ってそんなことを言ったノエルに藍瑠はついにキレた。 「先刻から失礼だってことに気付かないんですかっ?!初対面なのに敬語は使わないし、人の話を最後まで聞かないで先にエリアに転送するし・・・って、聞いてるんですかっ?!」 ノエルの視線にあわせて怒鳴る藍瑠にノエルは目を丸くするだけだ。 「だいたい・・・」 とそのとき、がさがさと木が揺れた。 「?」 右にあるその木を見る。何の変哲もない木に何かが隠れているようだ。がさがさと右に左に木がしなる。 「・・・。」 ノエルは、人工の空を眺めていた。先刻怒ったばかりだし、あの木には何があるのですか?とか聞きづらいなぁ・・。そう思った藍瑠は勇気をだして、その木に近付いた。近付くと、ターゲットカーソルがでた。恐る恐る決定ボタンを押す。 藍瑠が木を蹴飛ばすモーションをした。 ドンッと、木が勢いよく揺れて・・・ 「キャアアァァァッッ!!!」 ぶにゃ ぶにょ ぐにょん と青紫色のグミのような物体が降ってきた。1匹だけではない。数十匹も。 その藍瑠の悲鳴にノエルは抜刀し、藍瑠の方を向いた。そして、状況を確認して剣をしまった。 「・・チムチム・・か・・。」 「・・え?モンスターじゃないんですか?」 チムチムの説明をきいて、藍瑠はぽかんとした表情になる。 「まぁ、言われてみれば・・」 目は白丸。口はw。4本の足でちまちまと走り、頭には青の光球をつけている。こんな可愛いキャラクターがモンスターなワケないか・・。 「おいで。」 ノエルは動物にするのと同じように手招きでチムチムを呼び寄せた。つやつやのフローリングに指でこすったような「きゅっきゅっ」という泣き声をしながらチムチムはノエルの傍に来た。ノエルはチムチムを撫でると、左手を握り拳にし、右手のひらにあわせ、跪いて祈るモーションをする。 「我等『卑従(ひと)』に蒸気の力を与え給へ・・」 何かまじないのようなものを唱え、チムチムの頭上でふわふわ浮かんでいる光球をぽすんと取った。 「なんか・・チム玉を取るのって大変ですね。」 「いや。普通は蹴っ飛ばすだけ。・・でも、『卑従』から『卑従よりも卑しき者』になりたくないからね・・。」 ・・やっぱり、この人はよくわからないなぁ・・。藍瑠は苦笑した。 ―――続く [No.1253] 2008/06/12(Thu) 10:12:10 |