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17://www.ruin-ハメツ. (No.791 への返信) - 宴六段


求めるは、力。


比類なき力。


全てを薙ぎ払うが如き。


それなくば、我は―――





16://www.ruin-ハメツ.



******


 片を付けると書いて、片付けると読むらしい。壮大に呆言だけれどさ。

 次々に死体へと変貌させていく。自分自身でも、信じられない。

 鬼神。

 鬼の、神。

 斬る。

 斬る、斬る、斬る、斬る、KILL、KILL、KILL。

 暗雲の立ち込めた、草原の大地。

 PK共を相手に殺し合いを演じる。

 悲鳴をあげ、断末魔の叫びをあげ、似非の殺人鬼たちは倒れていく。

 PKK――など、ロールするつもりはない。

 ただの餌にすぎないのだから。

 彩音を殺したPCを誘き出すための、餌。

 それに、最早PKという人種を許容する事ができなかった。

 最後の一人を血祭りに挙げた。俺の心には、何の感慨も去来しはしなかった。

 去来どころか、去っていくだけ。

 去って、行った。全て、何もかも。

 何も、かも。

「……どうでもいいんだよ」

 独白。

 呟いた言葉は、降り始めた雨に溶けて消えていった。

 始めは小雨だった糸は、次第に身を太くしていく。

 さながら、芋虫のように。

「戯言だ、どうでもいい。全ては虚無」

 虚無。

 人間の視覚も聴覚も嗅覚も――五感の全ては脳の神経を介して感じているだけ。

 目の前にある死体も、存在しない幻。

 まやかし。

 現ではなく夢。

「――――、」

 ただ、彩音だけが真実だった。

 汚れ、汚泥、腐った世界で、唯一の真実。

 それさえ折られた。

 折られた。

 翼は折られた。

 地に堕ちた鳥は、もがくことしかできない。

 否、鳥なんて綺麗なものではなかった。

 死者、そう屍がちょうどいい。

 屍が歩く。

 足を動かし、ゆらゆらとたゆたう。


≪いるか、請負人?≫

「……匂宮」

≪ゲームマスターから依頼を入れる≫

 誰かの声が聞こえた。

 匂宮という、幻。

≪【陰華】の禍つ式¥蒲L者が@Homeの一部に集まっている。禍つ式でもって殲滅しろ≫

 にやり、と口の端を歪めた。鏡を見れば、さぞかし邪悪な笑みを浮かべていることだろう。

 悪鬼の笑みを。




「―――分かった。殺して殺して殺してやる」



******


「があああああああああっ!」

 気迫の声。怒号。轟声。

 地下迷宮のような暗い廊下に、断末魔の悲鳴が絶え間なく響く。今も、俺の放った刃で一人が死んだ。

 二つの禍つ式が次々に敵を斬り伏せていく。

≪更に敵。いずれも禍つ式所有者だ≫

「さすがに飽いてきたな」

 この場所に侵入――匂宮がハッキングで作った特別な転送ホールを使った――して、はや一時間。【陰華】の人員は強大だった。

 いくら斬っても湧いてくる。それに、雑魚だと思われたPCが禍つ式の力によって実力以上を発揮しているのだ。

 簡単には終わらせてくれない。

 右から斬りかかってきた槍を捌き、左の黒刀で突き刺す。突き刺したそれを引き抜き、そのまま前から掛かってきた女を胴体から切断。上半身と下半身に分かれた死体は、虚ろなままに地面へ落ちた。

 地獄の様相、は言いすぎか。こちらも禍つ式で強化しているので、なんと言う事は無いがそろそろ疲れてきた。

 禍つ式の使用は、精神との間接的な癒着と等しい。ゲームのシステムを改竄し、リアルの感覚をゲーム内で与えている。

「面倒といいますか、なんといいますか」

 背後の敵を後ろ蹴りで蹴り上げ、振り返り際に一閃。煌いた漆黒が、敵を飲み込んだ。

 疲れた、というよりも飽きてきた。

 禍つ式で強化されているとはいえ、もともとの値が俺以下なのであれば結果は同じである。

 残念ながら、俺自身もこの事態を解決する術を知らない。

 たったひとつだけ。

 敵方を全て殲滅し、全滅し尽くすしか、知らない。

 切り刻む、切り刻む、斬り切り刻む。

 血を浴び、返り血を浴びる。

 汚れていく体。穢れていく身体。




「―――まさに鬼神だなぁ、おい」




 声。誰かの声。

 今までの狂気に駆られたPK共とは、全く違う声。冷静で、かつフランクな声。

「お前が柏木か……」

 振り向くと男は、着物姿の優男。均等円の眼鏡を掛け、白い着物の両袖に手を突っ込んでいた。

「ああ、違う違う。俺はただの下っ端――三葉の一人さね」

 黒い髪を一つに束ねた頭を振り、笑顔を向けてくる。緊張感のない男だった。

 物穏やかな瞳を向けながら口を開く。袖から出した右手には、既に銃剣を握っていた。

 凶器の色は、どこまでも闇色。

 狂気の色は、どこまでも夜色。

「俺は『戯画図』、三葉の一人で銃戦士。んじゃまぁ―――」


 はじめますか、と言って弾丸が放たれる。

「―――っ」

 速い。

 銃剣を構えた素振りがなかったのに、側面に飛んだ俺のすぐ脇を、弾丸が駆け抜けていった。

 即座に反応。両刀を持ったまま体を落とし込む。そして疾走。

 色あせた煉瓦造りの床を蹴り、接近。

 敵の禍つ式の銃撃。通常の弾丸の、数倍の速度で飛来する弾を横に飛んで回避。だが、なおも直進する。

 超速度で撃って来る銃弾に対して、超反応で回避を行う。前衛職と後衛職の戦い。

 さらに数発撃ちかけられる弾丸を今度は回避せず、右の刀で弾き、左の刀で受け流す。

 敵までの距離は数メートル。あと少し踏み込むだけで、俺の間合い。

 違和感。

 【陰華】の精鋭『三葉』の一人にしては、簡素すぎる攻撃。戯画図の顔を直視。

 彼の顔に張り付いていたのは、へらへらとした締まりのない表情。まるで面でも被ったように変わらない。

「胸糞悪ぃな、本当に―――」

 誰かを彷彿とさせ、誰とは断定せずに、踏み込んだ。

 侍の使う、超速度での間合い取り。あとは刀を薙ぐだけで戦いは終了する。

 黒刀の獰猛な狂気が、白い着物を切り裂く。中身の身体に到達させるため、更に力をいれていく。

 彼の身体を斬り終わる、その前に。

 まるで簡単に、回避された。

 紙一重。

 後ろにすり足で下がったかのように、離れた場所で銃剣を構えていた。

「危ねー危ねー」

 などと言いながら、へらへらと笑っている。

 ふむ、手強い。

 衣服を切り裂かれるのを見て、相手の間合いを知り、そして回避へと派生させた、ね。

 とんでもねえ空間把握能力。これも禍つ式に増強された力なのだろうか?

 一瞬の休息は、相手の銃撃で狩猟を告げる。

 刹那に判じ、上方へと跳躍。

 先程まで足をついていた場所に、爆光。大量の呪紋が炸裂するのを確認。

 赤く燃え盛った炎が俺の姿を照らした。

「一対一ではなかったのかね」

「そんな確約はしてないしなぁ」

 同時に、空中の俺に火線が集中される。多くの銃弾、呪紋が俺を狙う。

 火球を黒刀で切り裂き、数条の光を身体を捻ってかわした。銃弾は自由にしていた左の刃で弾く。

 あまりにも危険すぎる回避方法。だが、今の俺にはそれが似合いと思考し、錯誤した。

 錯誤錯誤錯誤。

 頭のおかしくなった俺の行動。もはや人間でいることすら自分自身が許さない。若干、呆言だけれど。

 なんだか思考がおかしくなってきている。異常者であることを課した、つけか。

 明快な描写は必要としない。脳が上手く働いてくれない。

 自ら否定した、PKという殺人を、許容している自分。もう、どうでもいいか。

 石畳に着地。即座に場に蹴って移動。

 跳躍、壁を蹴って更に跳躍跳躍。

 呪紋と銃弾による弾幕が張られているが、ここまで加速した俺を捉えることはできない。

 そのまま直下に着地。

 予想外の加速と、挙動に驚いたのか戯画図が眼を見開いた。だが、次の瞬間には口の端を歪めて笑う。

 幾重にも重なる、呪紋と銃弾。着地点を予測されていたらしい、火線の集中。



 ―――回避不可、とどこか他人事に判断。



 これは、絶命確定だな。目の前の火球を見、絵空事。

 回避しようにも、地に足がついて間もない。タイムラグというか、ロスのせいで一瞬の隙が生まれている。戯画図はこれを狙っていたか。

 あーあ、PC台無しだな。

 なんかどうでもいいけど。

 また生まれ変わっても、きっと俺は奴を――――




******



「禍つ式≠フ変化、とは」

「まさかの展開か?」

「いや―――想定の範囲内だ」

 いつもと変わらぬ殺風景な室内。ただ光源の変化を起こし続けるウロボロスの文様と壁だけが、この部屋を照らす。

 蓮の葉に乗って画面を操作する八咫は無表情。

「あれは『異常現象』と同等の数式を持っている」

「ほう、それは初耳だな」

 我々の追っているモノと同じ、か。成程、それは得心いった。

 なればこそ、請負人は異常現象そのものと言えるのではないのだろうか?

 彼の『追っているモノ』と同じく――。

「絶対者と同じもの、か」

「……パイ、何か発言したそうだが?」

「――いえ、何もありません」

 彼女の思案していることは手に取るようにわかる。現実世界でも隣に近い場所にいるせいか、理解力を深めていた。

 きっと彼女は、こう考えているのだろう。

 『この仕様から逸脱したPCを削除した方がいいのではないか』、と。

 妥当だ。

 これ以上なく妥当な意見であろう。

 だが、八咫と私、無類のピーピング・トム――覗き見趣味の人間は、興味をそそられて仕方がないのだ。

 この請負人は、流しておいた方が、より面白い。



******



 炸裂したと思った。

 死んだと思った。心でもおかしくなかった。

 でも死ななかった。

 死んでいれば楽だったのに。

 死んだあとにしばし眠っていれば、意識がなくなっていれば。

 眠らせてくれていれば、次に目を覚ましたときには事が解決していたのだろう。

 だが、まだ死なせる気はないらしい。

 この手にある、禍つ式≠ノは。

「まだ戦えってのか?随分と嗜虐趣味な凶器なんだな」

「―――てめー」

 二刀であったはずの凶器が、ひとつになっていた。

 それだけではない。元の形の何倍もの大きさに変化し、もはや大太刀とは形容しきれないレベルにまで『進化』していた。

 曰く、それは大剣と呼ぶが相応しい。

 何の装飾もない真闇の刀身に、大きな目玉が象嵌されていた。

 その目が、どこかグロテスクに、どこか艶かしく、ぎょろりと蠢いた。

 柄を握る感触は――鉄棒を握る感覚に近い。どうやら握り心地に配慮はしてくれなかったらしい。ただの呆言だが。

 人の身長を悠に超える長大な刃に、同じ長さの柄を見る限り、それは『薙ぎ払う』という事に特化しているようにさえ見えた。

 それを特性として捉えるのならば、鎌に近いのかもしれない。

「『矛盾』にのみ内包される『成長機構』、か。柏木の野郎の言っていたこともあながち……」

 何事か呟いている戯画図。意識を外しながらも銃口は依然と俺の頭をポイントしている。

「――面倒だぁな。ここで終わらしといたほうが、後々楽っぽい」

 放て、と号令が飛ぶ。

 戯画図の背後に控えていた多数の銃剣士に魔導士、加えて妖扇士までもが射撃と魔法を発動。

 瞬時に殺到してくる銃弾に高位魔法の嵐。

 遠距離攻撃をこれでもか、と投入した攻撃を、俺は幅広の刃で受けるのみだった。

 禍つ式≠ェ、教えてくれる。

 我が身は何があろうと折れはしない、と。

 もうもうと上がる煙の中、自分の身は無傷だった。

 煙を切り裂いて、疾駆。

 あまりに大きすぎる大剣の峰をを右の肩に乗せ、レンガ床を翔ける。これだけ巨大な凶器であるのに、全くをもって重さを感じない。

 それこそが仕様外の骨頂。

 硬直ディレイの終了したPCが弾丸と魔法を次々に撃ちかけてくるが、禍つ式≠ノよって身体能力の向上した俺の敵ではない。

「貴様ッ――」

 一瞬で懐に飛び込んだ。驚愕の顔をあらわす戯画図の表情の隅から隅まで全て把握できる。

 薙ぎ払うように、その巨大な刃を振った。

 上半身と下半身が寸断され、床に落ちていく戯画図の屍骸。

 なおも攻撃を続ける陰華どもに、刃を振るう。

 刃に非ない、黒き衝撃波が生まれ、多数のPCを巻き込みながら薙いでいった。

 香り立つ、死の匂い。

 俺はその匂いに酔ったかのように哄笑をあげ続けていた。




16://www.ruin-ハメツ.…………了。



____
アトガキ

どもども、お久しぶりです。
受験も終了して、新生活にも慣れてきたので連載再開させていただきます。
過疎気味ですけど頑張りますよー(何
それでは今日はこの辺で。
宴でしたっ。


[No.1291] 2009/05/03(Sun) 11:59:23

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