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―――グランホエール・模擬戦場――― 「続けて第二回戦はこの二人だぁ!」 武が叫ぶ同時に黒い長髪の青年とヴィータが転送されてきた。 「時空管理局所属、ヴォルケンリッターの鉄槌の騎士、ヴィータ二等空尉行くぜぇ」 ヴィータは声高らかに宣言したのに対し、 「黄昏の騎士団、金剛のガルム……元・ミッドの魔導師だ」 『Xhフォーム』 ガルムと言う青年は静かに、いや、むしろ殺意や憎悪に近い感じの声色でそう告げた。 そのまま彼は白銀のプレートの基調をした鎧(プレートメイル)に身を包み、両腕には護拳が装備された。 装備からして彼のジョブは拳術士だ。 「今、お前「はぁ!」……がっ!」 ガルムはヴィータの言葉の途中で彼女に勢いよく蹴りを入れ壁にぶつけた。 普段のヴィータなら避ける事ができたが今の彼女にはある事が頭を占めていた。 一つは彼の言った「元・ミッドの魔導師」と言う言葉、自分に向けられた憎悪……そして、彼の容姿である。 (あいつ、どこかで見た事がある……でもどこだ?) そう、ヴィータは彼もしくは彼に良く似人物をどこかで見た事がある。 でも、どこだか思い出せない。 だから、必死に記憶の糸を手繰り寄せる。 ――グランホエール・模擬戦控室―― 「何で、ミッドの魔導師が!?」 「知らないわよ」 「でも、彼のジャケットどこか一般隊員を似てない」 「えっ、あっ、あぁ」 「どうしたの? クロノぼうっとして」 「いや、なんでもない(あの動き、いや、しかし彼なのか)」 管理局メンバーは騒然としていた。 ただ一人、クロノを除き。 (ふふっ、気付いているのだろ? クロノ) 突然クロノに念話が流れ込んで来た。 (君か、凰花) クロノは念話からの魔力をたどり念話の主の方へと視線移した。 そこには短い髪の胸の大きな女性だこちら見つめて立っていた。 (君がいると言う事は彼はやはり) (君の父の部下にして闇の書事件の死者の一人フェンリルの弟、ガルムだ) 別の人物が念話に割り込み答えた。 今度は男性だ。 もっとも、こちらも聞き覚えがある。 (オーディン、君もいたのか) (あぁ、まっ、もとも俺だけじゃないぜ。よく周りを見てみな!) クロノは声の主(オーディン)の言うとおりあちらこちらクロノの見覚えの顔があった。 (なるほど、ヴォルケンリッターに実刑を求めた面々か。しかも、父さんの部下達か) (まぁな。お前もわかっているだろ。俺達はお前と違って彼女達を決して許さない!) 声の主はそれだけ言うと念話一方的にきった。 ――グランホエール・模擬戦会場―― 「うらぁぁぁぁ」 先程の打って変わり今度は一方的に押していた。 「こんなものじゃ……こんものじゃ……」 ガルムは防御しながら小さくだが、ヴィータに聞こえる声で呟いた。 「こんなものじゃねぇ。兄さんが、お前らに収集されて死んでった連中の痛みはぁ!」 そして、全員に聞こえる声叫びながら殴り飛ばした。 (思い出した……そうだ。こいつの姿、あの時の、はやての前の持ち主の時、あたしが収集して殺した奴にそっくりなんだ) ヴィータは彼が誰に似ていたのか。 死ぬ直前に何を言ったのか。 そう「弟に……週末休暇……魔法を教えてやるって……だから、俺は負けれないし、こんな所で……死ねない!」とそう自分に言った事を。 今、ここに立っている。 「お前はあの時の奴の言っていた」 「そう、弟だ。あんたが殺したフェンリルのなぁ!」 ガルムは拳を再び構え叫んだ。 ――グランホエール・模擬戦控室―― 「これを聞いてどう思う? 坊主(クロノ)」 ガルムの叫びを聞き全員が固まっている中30ちょいくらいの男がクロノが声をかけた。 「彼女達にも事情があったのは君らも知っているだ。それのに彼女達に復讐をするのはただの私怨だぞ。オーディン」 「あぁ、確かに私怨だ。だけどなぁ、被害者やその遺族や友人にとってはなぁ。加害者の都合なんって知ったこったじゃねぇんだよ!」 クロノの答えにオーディンは明確な怒りを現した。 「それに加害者の都合だけを容認していたら、被害者やその遺族、友人達の怒りはどこにぶつければいい? ただ、耐えろと言うのか? ぶつけどころのない怒りをもって永遠に」 オーディンの言葉に繋げるように凰花は冷たく尋ねた。 「……ッ!」 それを聞いたクロノは完全に黙り込んでしまった。 彼女達の納得いく解を見つける事が出来ず。 ――グランホエール・模擬戦会場―― 「だから、俺らはあんた達に対する実刑を求め続けた! だが、管理局が下した決断は保護観察だった!言わばあんた達を守る方向へと言った! その瞬間俺らはミッドに、管理局に、絶望し、そして、法(ルール)は所詮法でしか無くて決して正義じゃない事を理解した!」 「……!」 ガルムは怒り任せにそして力任せにヴィータを殴り、蹴り、連続で攻撃を入れ続けた。 その攻撃を避けるどころか防御すらしようとなかった。 むしろそんな気力さえ起きなった。 だって、彼の怒りも憎しみもどう考えて当り前の物なのだから。 理由はどうあれ自分は彼の兄を殺したのだから。 いや、むしろそれよりも酷い事をした。 はやてやなのは、自分達のせいで父を失ったクロノが当たり前に接してくれているうちに忘れていた。いや、記憶の隅へ追いやっていたのだから、自分の罪も自分が殺してきたしまった彼の兄やそれ以外の者達の事を。 なにより、保護観察になり管理局勤めになった時自分は、はやてにしか謝らなかった。彼らには謝らなかったむしろこうなった事が他の……なのは達以外被害者にどれだけの絶望を与え心を傷付けたのかを。 だから、当然の罰なのだ。そして、改めて自覚する自分は罪人で犯した罪は許されず一生自分について来るものだと。 なにより、自分を守った法は彼の言うとおり決して正義ではない! 「だから、俺はミッドを捨てたっ!」 『ムーン・クラッシュ!』 ガルムはその言葉共にヴィータを上と一度蹴りあげ、自身も回転しながら飛び上がり、一度追い越しヴィータを地面がめがけて地面を蹴り落とした。 「……ッ!」 無気力状態になったヴィータはなのもせず地面に叩きつけられた。 「まだだ。まだ、終わりじゃない」 着地したガルムは勢いよく拳をヴィータに振り降ろそうとしたが、 「そこまでだよ。ガルム、もう勝負はついている」 その寸前でカイトが双剣で受け止めていた。 「カイト!」 「それ以上はいくらなんでもやり過ぎだ。これは模擬戦であって殺し合いじゃないんだよ。これ以上やるな僕が……」 「チッ、わかったよ。やめるよ」 カイトの言葉にガルムはしぶしぶ拳をおさめた。 「それは良かった。審判、試合終了の号令を!」 「えっ、あぁ、はい、しょ、勝者ガルム!」 カイトの行動に呆気にとられていた武は我に返り慌てて宣言した。 [No.1358] 2012/07/20(Fri) 00:56:59 |