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すべてを知る者でさえ、察知出来なかった。 この世界に忍び寄る、終焉の気配に。 .hack//Eqzeter cp.5 「すみません、ハセヲさん、志乃さん、クーンさん、揺光さん。 やむを得ず、強制転送プログラムを実行させてもらいました」 気がつくと、そこは―――『世界』であって『世界』で無い場所、"ネットスラム"のブリッジだった。 知識の蛇のシステムを移設しただけあって、空中には様々なモニターが映し出されている。 その前にはこのネットスラムの主―――俺たちを強制的にここに転送した張本人、欅が居た。 「―――やっぱり欅、お前だったか。 それで、あの"白い点"は一体何だったんだ?」 そして、俺は欅にあの『白い点』のことを尋ねた。 おそらく欅も、あの白い点の出現に気がついて俺と志乃を強制転送させたんだろう。 しかし、あの点―――AIDAと似ているが、根本的に、何かが違うような気がした。 「白い点? ハセヲ、何かあったのか?」 クーンがいつになく真面目な顔で聞いてくる。 と言うか、クーンも揺光も欅に転送されてきたんだから、あの白い点を見たのかと思っていたが。 そしてその問いに、俺ではなく欅が答える。 「クーンさんと揺光さんはハセヲさんの言う"白い点"を直接見ては居ませんが、あなたたちの居たエリアにその"白い点"らしき存在が確認されたんです。 勝手かもしれませんが、こちらで強制転送を実行しました」 欅はさらに続ける。 「そして、その"白い点"についてですが…… 現状の所、何も分かっていないに等しいです。 ですが、あれはデータ的にはAIDAに限りなく近いもの―――あれに侵食されたPCは、もしかすると未帰還者になる可能性もあります」 「何だと!?」 ―――馬鹿な。 あれに侵食されると、未帰還者になる可能性があるだと? これじゃ、AIDAの再来じゃねぇか。 だがあの時、『再誕』で完全にAIDAは消え去ったはずだ。 影も形も残っちゃいねぇ。 もしかすると、AIDAと同じような現象が別の原因によって発生したのか…? と、俺があれこれ考えていると、『知識の蛇』にひとつの大きなモニターが表示された。 その途端、 『ああああああああああ!!!!!』 ブリッジに、けたたましい叫び声が響いた。 モニターには、とある草原フィールドが移っている。 そして、そこには一人のPC。 うつぶせに倒れているそのPCを見下す、"白い点"を身体中に纏っているPC――― 「―――!?」 ―――身体中に纏っている…… まるで、AIDAが感染したような――― ―――感染者!? そして、白い点を身に纏った男によってPKされたPCは、ゆっくりと消滅していった。 さらにその男は、ゆっくりとこちらを振り返る。 まるでモニターされているのが見えているかのように、こちらをじっと見つめる。 そして口を、開いた。 「見ているんだろう、『モルガナの子供達』。 今見た通り、俺はキルした相手のPCを消滅させリアルの人間を未帰還者にすることが出来る。 お前らの言う、この『白い点』によって、それが可能となっているのさ。 だが勘違いするな。 この白い点は、AIDAのような"欠陥品"では無い。 それもこれも、すべては俺と貴様等が会った瞬間に分かるだろうがな。 しかし、俺はいきなり貴様ら『モルガナの子供達』を狙ったりはしない。 貴様らの知り合いから初めて、じっくりと、貴様らの精神から根こそぎ刈り取ってやるよ……!! ハハハハハハハハハ!!!」 そして、プツン、と。 モニターの映像が、消えた。 「―――っ、」 その場に居た誰一人、言葉が出なかった。 未帰還者が一人、出た。 そして、男の言葉が本物なら、今回の相手はAIDAを超える未知の敵。 そんなものが出現したことに、その場に居た誰一人、声を発することは出来なかった。 [No.304] 2007/03/04(Sun) 00:55:05 |