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神様の気まぐれは、運命という。 悪魔の気まぐれは、不幸という。 ではこれは、はたしてどちらなのだろうか? 〜第二幕 「転がる賽」〜 呪紋使いの少年エルクと、ネコの姿をした不思議なPC、ミア。 二人はエリアでのんびりとエノコロ草を集めて遊んでいた。 ついこの間まで、命を懸けた戦いがあったなど信じられない穏やかな時間。 この時間を取り戻すまでに、沢山の戦いがあった。その中で一度失われてしまったミアを、やっと取り戻した。 エルクは幸せだった。一番はもちろんミアだけど、他にも友達が出来た事も嬉しさを一層引き立てる。 「ミア、見てみて!こっちにも沢山あったよ!」 エルクは満面の笑みで腕一杯にエノコロ草を抱えて、ミアのほうを振り向いた。 「・・・・・」 「ミア?」 ミアは、空を見上げて黙り込んでいた。 「どうしたの、ミア?調子悪いの?」 エルクは慌ててミアに駆け寄る。 「え・・・あぁ、大丈夫だよエルク。何かメールが来てたみたいだからちょっと確認してた」 「え?メール?」 今はエリアに居るので、エルクの様な一般PCにはメールをチェックする事はできない。「普通ではない」ミアだからこそ出来る芸当だ。 「エルクにも来てるみたいだよ。送信者は・・・カイト。珍しい腕輪を持ってるあの子だよね?」 「カイトからメール?どんな内容なの?」 ちょっと待ってね、とミアは言うと空をじっと見つめた。まるでそこにディスプレイがあるといわんばかりの動作である。 そして、やがて顔をエルクに戻す。 「景色が綺麗だって評判のエリアがあるから行かないかってさ。でも送信時間から考えると、もう一人で行っちゃってるかも」 「そっか、お誘いメールなのに悪い事しちゃったかなぁ」 エルクは少し落胆した。自分が初めて自らの意思で庇った少年であるカイトは、ミアを失った原因でもあり、ミアを取り戻す事が出来た原因でもある。 優しく、勇気のある友達だ。その友達の誘いに気づかなかったのは、ちょっと悪かったなと思う。 「エルク、エノコロ草も集まったし、そろそろタウンに戻ろうか?」 「う、うん・・・」 「・・・ボク、今日はこれで落ちようと思ってるんだ」 エルクの顔をジッと見ていたミアが、突然そんなことを言い出した。 「え?落ちるの?」 エルクは驚いた。ミアから落ちるというのは珍しい。というか初めてではないか。 「うん、だからエルク、カイトを追いかけなよ。急いでいけばダンジョンで落ち合えると思うよ?」 ミアはとても、とても優しく微笑んだ。 「行ってきなよ。友達なんでしょ?」 「ブラックローズ、悪いな。つき合わせて」 「ごめんね〜(><)」 NOVAとチムニに別に全然、と返して、ブラックローズは微笑んでいた。 ゲーム内での壮絶なまでの戦いは終わった。 それは他の一般PCにはまったく知られていない戦いだったが、間違いなく彼らが無事で居られるのはあの戦いがあったから。 今までのブラックローズは「助けるために」「戦うために」ゲームをしてきた。 だが今、こうして彼らと笑って「遊ぶために」ゲームをプレイすることができる。それがブラックローズには嬉しかった。 今日誘われてブラックローズが訪れたのは別段代わったことの無い普通のダンジョンだ。 レベルは高すぎず低すぎず。ただしブラックローズから見れば、かなり攻略が簡単そうなレベルではあったが。 「ここの最深部にある武器が欲しいんだよねーw」 チムニは相変わらずどこまでも明るく、その辺をぱたぱたと走り回っている。 「ちょっと待ってよチムニ!おいてくつもりー?」 ブラックローズが走り出そうとして、・・・足を止めた。 「・・・?何?」 NOVAがこっちを見ていた。 「いや、なんかブラックローズ、・・・変わったなって思ってさ」 「私が?」 思い出す。NOVAとチムニに出会った頃、ブラックローズはカズを助けるためにゲームをプレイしていた。 その様子には鬼気迫るものすらあっただろう。NOVAはゲームを純粋に楽しんでいるようには見えないブラックローズの事を不思議に思っていた。 そして、何か自分の察しないところで何か「とてつもなく大きな事」に巻き込まれていることも、薄々感じ取っていた。 「・・・終わったから、さ。全部。もう気張らなくてもいいの」 ブラックローズは大きく伸びをしながら、それだけ言った。 巻き込みたくないと思って、あの時は殆ど何も言うことはなかった。 そしてこれからも、何も言うことはないのだ。 「・・・そか。よかったな」 NOVAもそれを悟って、笑ってくれた。 「ちょっと二人ともー!早く早くー」 チムニがせかす声が聞こえて、NOVAとブラックローズは顔を見合わせた。 自然と、笑みがこぼれる。 「んじゃ、ちゃっちゃと行くか」 「そうだね」 二人は、手を振るチムニの元へと駆け出した。 あとがき〜 更新が亀の如く、本気でそんな感じですがやっと書けました。 ・・・ていうかGUメンバー居ないし(笑) ゲームでは完全サブキャラのNOVAに小説版のオリキャラだったチムニなんかを出してます。はい、大好きです。ごめんなさい。 次回はアトリを。そしてハセヲを・・・! 頑張ります。 [No.359] 2007/03/16(Fri) 19:42:31 |