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◇ 玉繭の如き雲は今 暮れ行く空を包み込む 黄金の皿は岩戸の中へ 死に逝く今日は忘れられ 地べたを這いずる昨日を悔やみ 望まぬ過去とするならば 明日こそ優雅に飛ばんとするか 己が姿も見ぬくせに ● リオと冒険を始めてから、もう一週間が過ぎようとしていた。 この短い間にずいぶんと仲良くなり、暇さえあれば冒険の毎日だ。 私もそうだったのだが、始めっから見事なはまりっぷりだ。リオはよっぽどThe worldが気に入ったらしい。 「みてみて! ビョウキ発見〜」 「それアンラッキーアニマルだよ?」 言った次の瞬間には体当たりされている。 ぶつぶつ馬鹿にされた挙句、リオの体をステータスダウンのエフェクトが包み込んだ。 「あっちゃ〜…」 「言ったでしょ? あんまり行き当たりばったりなのもダメだって」 「ドンマイ!狽(・w・) あっ、気が揺れてる!! チムチムだっけ? み〜っけ!」 人の話なんか聞きやしない。止めるのも聞かずに木に突撃すると、今度はキングチムチムに下敷きにされていた。 「ふぎゃ〜〜っ!? なになに、なんで襲ってくんの!? 今までの恨み? どーほーの仇!?」 「落ち着きなさいって。隙を見て蹴り返せばいいだけなんだから」 言いながら、私はキングに蹴りを入れる。 王の割には扱われ方がぞんざいだ。ボフッと短く音を立てると、光の束となって消えてしまった。 「わ〜、チム玉一気に50も増えた〜ヽ^o^/」 「あんたねぇ…」 横目で睨むモーションをかける。 リアルの私はというと、必死で笑いを噛みこらえていた。 最近、少しずつだが気持ちが前向きになっていた。 クラスの子達に対しても前よりは恐怖心が薄れたので、まずは相手を見つめることから始めてみた。 みんなの見ている番組を見たり、好きなタレントの話をしたり。 前はなんだかみんなとあわせることで、自分が消えていく気がして抵抗を感じていたが、強要されてる、なんて変な被害者意識さえ持たなければ、純粋に楽しんでいる自分がいることに気がついた。 いきなりはさすがに無理だけど、少しずつなら変えていける。そう信じることができるようになった気がした。 異世界に、あこがれていた。 それはきっと、環境さえ変われば嫌な自分とも決別できると信じていたから。 人はそんなに簡単には変われないと思っていた。 物語の英雄たちは、想像も絶する苦難を乗り越えてやっとハッピーエンドを迎える。 だから何か大きなきっかけさえあれば私だって強くなれる。逆を言えば、それがないと強くなれないんだと信じ込んでいたのかもしれない。 実際に私を変えたのは、ネットの中での小さな出会いと、そこにつくまでの長い時間だった。 そして本当に変わるべきものは、周りではなく自分のほうだということを知った。 まだ独りよがりかもしれない。 また間違っているのかもしれない。 でも、今の自分にはそれで充分だった。 そう思えることが大切だったのだから。 [No.656] 2007/04/26(Thu) 20:34:25 |