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「今日のエリアはボス退治? RPGって言ったらやっぱこれだよねぇ^^ どこじゃクセモノ、鮫牙のえじきにしてくれる〜!」 バトルが始まってもいないのに、獲物を取り出しぶんぶんと振り回す。ここがリアルだったらかなり危ない行為だ。 「そういって前、キャリーの自爆に巻き込まれてたのはどこの誰だったっけ? ピンチになっても私は手、かさないよ」 「うぅっ…そこを何とか〜(T^T)」 「一撃で終わっちゃったらつまんないじゃんか。いつもどおりサポはするから、当たって砕けてこ〜い!!」 「……ちぇっ、ケチ(´_ゝ`)」 リオはふてくされて、つま先で石を転がした。 バトルの操作にはぎこちなさがまだ残ってるくせに、感情表現だけはいつも上級者並みだ。見せつけがましくぶーぶー言って、つまらなそうに歩き出したリオの背中が―― いきなり、固まった。 どうしたのかと聞こうとしたができなかった。リオがいきなり苦しそうにうめきだしたからだ。 「ちょ、ちょっと……」 何が起きたのか分からなくて私は焦った。 PCのリオに表情はなかったが、息をするのも苦しいことが、イヤホンを通して嫌というほど伝わった。 ゼェゼェと息が漏れ、腹の底から練りだしたような低い声は、必死で苦痛と戦っている。 「ちょっと、どうしたの? 大丈夫!?」 返事はない。 かわりに、机かなにかを叩くような鈍い音が聞こえた。 FMDを脱ぎ捨てたらしく何の音もしなくなり、そこにはリオの抜け殻と、立ち尽くす私だけが残された。 どうしたらいいのか分からないまま、沈黙はあまりに長く感じられた。 しばらくするとリオは戻ってきて、冗談めいた顔で笑った。 「ゴメンゴメン、餅食べながらプレイしてたんだけど、のどに詰まらせちゃって。いや〜、死ぬかと思った〜( ̄Å ̄;)」 汗をぬぐうモーション。声はあくまで明るかった。 嘘。 あの息の仕方はのどに何か詰まらせたときのものではない。明らかに呼吸器系等の異常だ。 何でほんとのこと言わないの? もしかして、言えないほど大きな病気抱えてる? 相手が隠す以上、気軽に尋ねることなんか出来なかった。 私は悔しさと歯がゆさにかられ、前を行くリオの頭を、後ろから無言で小突いてやった。 [No.657] 2007/04/26(Thu) 20:44:52 |