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all 青い鳥の名は - 狐憑き - 2007/04/24(Tue) 21:24:14 [No.639]
おまけ ハミング・エイジ - 狐憑き - 2007/05/02(Wed) 20:37:05 [No.705]
最終回 雨に打たれて開く花 - 狐憑き - 2007/05/02(Wed) 20:32:49 [No.704]
第11話 ミラージュ - 狐憑き - 2007/05/01(Tue) 22:19:04 [No.696]
第10話 傷付いてもそれは - 狐憑き - 2007/04/30(Mon) 21:23:38 [No.685]
第9話 障壁 - 狐憑き - 2007/04/29(Sun) 20:16:08 [No.672]
第8話 arbun blue - 狐憑き - 2007/04/28(Sat) 19:57:49 [No.668]
第7話 柳の音 - 狐憑き - 2007/04/27(Fri) 19:53:44 [No.666]
第6話 足音はいつも突然 - 狐憑き - 2007/04/26(Thu) 20:44:52 [No.657]
第5話 雨上がり - 狐憑き - 2007/04/26(Thu) 20:34:25 [No.656]
第4話 明日も明日は来るから - 狐憑き - 2007/04/25(Wed) 21:03:02 [No.648]
第3話 秋霜烈日 - 狐憑き - 2007/04/25(Wed) 20:58:02 [No.647]
第2話 春風の申し子 - 狐憑き - 2007/04/24(Tue) 21:55:44 [No.641]
第1話 ヒクツノカタマリ - 狐憑き - 2007/04/24(Tue) 21:32:36 [No.640]


第9話 障壁 (No.639 への返信) - 狐憑き

 ◇
蝋にともりし灯火は 消え行く刹那になお燃ゆる
死に逝く今日の灯火は 隠るる間際になお光る
仰ぎて見れば星々の なんと矮小なることか
内に秘めたは偉大とて 秘めしままならただの塵

光ってみせよ 煌々と

叫んでみせよ 私はここだ!

それとも塵は塵のまま 儚きわが身に酔いしれるのか
そして燃えつき砕けし灰を 弱き奴等とわらうのか


 ●
――転送先は草原エリア。あいつと初めて会った場所もそうだった。

「このクエストのボスを倒すためには、まずはおびき寄せて、相手に倒すべき実態を与えなければならない……よし!」

誰にともなく、もしくは自己確認のためにつぶやく。
クエストの内容は簡単。ヴァイタルビスタにもらった3つの装置を、それぞれ祭壇に取り付け相手をおびき寄せる。それを倒せばクエストクリアだ。
…死ぬ前にお目にかかれれば、の話だが。



「はあぁッ!!」

すさまじい打撃音が鳴り響く。それでもなおモンスターは動じない。

「やっぱ一筋縄じゃいかないか…」

やはりレベルが足りなさすぎた。手数で勝負しても、やっとのことで十数ドット分のHPを減らせるぐらいだ。


オオォーーン!!

「!!」

獣のうなり声。次の瞬間には、紫陽花の華奢な体はバトルフェンスまで吹っ飛ばされていた。
捨て身の突撃をもろにくらった紫陽花の体力は、半分以上をごっそりと持っていかれていた。

「くっ……!」

思わずリアルで吐息が漏れた。私は急いで回復アイテムを使う。何度も、何度も。
惜しむことはない。
さっきのタウンで、今まで集めた装備は全部、アイテムの代に換えてきた。

「このぉ!!」

ダダダンッ!!
 渾身の一撃が入る。獣はグラリと揺れたかと思うと、灰色になって消えていった。



「まずは一個…!」

装置を祭壇に取り付ける。ボスを実体化させるためには、最低でもあと2回は戦わなければならない。
今の戦闘で少しレベルが上がった。装備も宝箱から出てきた高レベルのものに付け替える。時間がない、早く決着をつけなければ。



二つ目の祭壇。
レベルが上がったといっても、やはりたった1レベルでは何の足しにもならなかった。大量に買い込んだアイテムにも限界がある。このままのペースでは、ボス戦の途中で底を尽きそうだ。

「まだまだぁッ!!」

ダダダダッ!!
クリティカルヒット!心地の良い効果音とともに、愚鈍な子鬼は地に伏した。



「あと一個! 祭壇は…」

顔をあげて見回した。でもそのときはまだ、“彼ら”の存在に気付いてもいなかった。





「奇遇だな、お嬢さんww」

声は、背中のほうから降ってきた。
ただでさえ気を張っていたときだ。このエリアには自分以外だれもいないと思っていたので、余計に驚いた。
 振り向いてはみたが、見たことのないPCだ。あばずれな風格の銃戦士と、その横には特徴のない平凡な顔つきにエディットされた妖扇士が一人。口元に浮かべた人の悪い笑みと、手にした武器を隠そうともしない。

 顔から一気に血の気が引いた。
まずい、PKだ。

「覚えてねぇってか。まぁアタリマエだなw あの時チビのツインソード追っかけてたのは、俺の2rdキャラだったんだし」

銃戦士が言う。
チビのツインソード? そういえばリオと初めて会った時、あいつはまさにPKされる寸前だった。それなのにリオときたらその状況を笑ってたもんだから、妙に印象に残っている。

まさか、あのときの鎌闘士?

「にしても、初心者狩りで世話になった相手と、まさかこんな上級エリアで再開できるなんてなw これもなにかの縁じゃねぇ?」

だとしたら今すぐ縁切り神社に直行だ。こんな最悪の状況で出会うだなんて、神様ってやつはなんて残酷なんだ。

 恐る恐る相手をターゲットしてみる。
銃戦士…名前はウィンチェスター。妖扇士は……陵? 読めなかった。

「あの時邪魔してもらったお礼、よければここでさせてもらおうかな」

銃剣を肩に担いだまま、ひょうきんな口ぶりでずかずかと無遠慮に歩み寄ってくる。
心臓が早鐘のように高鳴り、私はそれを必死で隠した。

「…私は手を出した覚えないんだけど」
「や、でもお前が来たからPK中断せざるを得なかったことには変わりないだろ? なんせ、あっちのPCはまだLv.7だったんだし」

そんなんでPKをやっていたのか? 妙なところで感心してしまった。

「あ〜も〜、本気にすんなって! 別にそんなんで仕返ししようだなんてせこいこと思ってねぇよw ただ…」

男はゆっくりと右腕を上げる。顔には笑顔。張り付いている。


「せっかく逢えた運命の相手、このまま逃すわけもねぇよな?」


銃口は、私の眉間を捕らえた。


[No.672] 2007/04/29(Sun) 20:16:08

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