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コントローラーを握り直す。 直後、私はすんでのところで放たれた銃弾を避けていた。 まずい、こっちには余計な戦闘する時間も体力も残ってないってのに……! 無情な攻撃が止むことはなかった。見たところ妖扇士が攻撃してくる様子はなかったが、銃戦士はバトルと名のついた暴力をとても楽しんでいるようだった。 「ッハハ、逃げるばっかりか? レベルはいくつだ!? そんなんでソロやっていけるほど、ここのサーバーは甘くはねえよ!!」 確かにそうだ。私もそれは分かっている。 「でも、それでも…!」 銃弾を、すべて避けた。レベルで追いつけないなら技術で勝負するしかない。 指の皮がめくれるほど強くコントローラーのスティックを倒す。こんなところでやられるわけにはいかない。こんなところで……!! 相手の予想外の動きに、銃戦士の顔から笑いが消える。むしろそれは懐まで踏み込まれたことで焦りへと転じていた。 「なっ…」 銃剣は遠距離の武器、間合いに入ってしまえばむしろこちらのペースだ。相手が体制を整えようとしている。妖扇士が駆け寄ってくる。でもそれよりも先に―― それよりも先に、銃弾の死角まで来た私はその場に手を突きひざまずいていた。 PKたちが固まる。 「お願い、見逃して!!」 叫ぶかのように嘆願する。PK達は突然のことに、ただただあっけにとられるばかりであった。 ここで戦ってたとえ勝てたとしても、消耗戦は必死だろう。クエストクリアは間違いなく無理になる。それじゃだめなんだ。 「友達が今日でやめるの。今日が最後なの!! バカが付くほど明るい子で、でも今すごく大変な病気と闘ってて……! 元気付けてあげるにはもうこれくらいしか方法が思いつかない。このクエストは絶対クリアするの! だから…お願い……!!」 声の最後が震えた。 泣き虫だけはどうにも直りそうにない。M2Dの隙間から頬に伝った熱い雫は、コントローラーを握り締めた手の上に落ちていた。 目の前にあるはずの画面はあふれる涙で歪んでいき、私はギュッと目を瞑る。 「…ちっ、うッぜえの。辛気くせぇ〜w」 一気にやる気が失せたらしい。銃戦士が背を向けて帰ろうとした。 が。 「そのクエスト、何人まで参加できるの?」 はっとしてM2Dをはずし、目を拭いた。再びかけ直すと、いつの間にか妖扇士のほうが紫陽花のすぐそばまで来ていた。 「は? おいおいみささぎぃ、冗談だろ? そんなんほっといてさっさと行こうぜw」 そういう銃戦士を一瞥しただけで、みささぎと呼ばれた彼は言った。 「ここであったのもなにかの縁だって、さっき言ってたのはお前のほうだろ?」 「おいおいおい、まさかマジか? マジでいってんのか?」 「前にも言っただろ? おれはフェミニストだって。それにPKやめるいい機会じゃないか。いつまでも意地なんか張ってないで、コーディーにばれる前にここで止めといたほうがいいって」 「姉貴…いや、そうじゃねぇよ! だいたいなんで俺が…」 どうやら、2人の間にもこちらには分からない事情があるらしい。しばらく講義しあった結果、先に折れたのは銃戦士のほうだった。 「………ちっ」 「えっと…」 どういう顔をするべきなのか… 陵は、うろたえる私に向かって笑いかけた。 「大丈夫だよ。あいつ今姉弟でごたごたしてて少し気が立ってるだけなんだ。へいきだって。根はバカみたいにお人よしなやつだからさw」 そういって私の頭に手を置き、安心させようとする。 もしかしたら、思ってたよりいい人達なのかも…… 「でも何でですか? 見逃してもらえるだけでも嬉しいのに、助けてもらう理由なんて…」 「あいつの憂さ晴らしに付き合ってやってたけど、やっぱ女の子いたぶるなんておれの趣味じゃないしな。おまけに涙まで見せられといて放置と来ちゃあ、おれの沽券にかかわるんだよ。大丈夫。おれはかわいい子の味方だw」 そういって陵は私を励ました。 ロール? それとも素? でも、今はそんなことどうでもいい。 「あ……ありがとうございます!」 裏返った声でお辞儀した。 今はただ優しさがありがたくて、また涙が止まらなくなっていた。 [No.685] 2007/04/30(Mon) 21:23:38 |