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all .hack//スケープゴート - 狐憑き - 2007/05/18(Fri) 12:44:02 [No.739]
第四幕 - 狐憑き - 2007/07/29(Sun) 21:32:21 [No.865]
回想編 2 - 狐憑き - 2007/06/19(Tue) 16:42:57 [No.783]
第三幕 - 狐憑き - 2007/06/19(Tue) 14:56:02 [No.782]
第二幕 - 狐憑き - 2007/05/19(Sat) 15:33:47 [No.744]
第一幕 - 狐憑き - 2007/05/18(Fri) 13:18:44 [No.741]
回想編 1 - 狐憑き - 2007/05/18(Fri) 12:53:26 [No.740]


回想編 1 (No.739 への返信) - 狐憑き

彼が初めて目を開けたとき、最初に見たのは光だった。


何もない空間。色も輪郭も、影すら存在しない。
ただ何億という光の線が、遥か彼方から遥か彼方へと、目で捉えることが不可能なスピードで駆け抜けていくばかりであった。
光自体の速さは刹那だが、軌跡が残っていることによって、かろうじてそれが存在していたことを確認できる。
空間に不規則に、だがすべて平行に並んだ膨大な量の光の閃光。
それらの真ん中に立っていると、まるでそこが巨大な光のトンネルであるかのようだった。

足が付かない。地面がないから。
そこにあるのは、すべて宙だった。
彼はその無の空間に、まるで彼だけが異質であるかのようにポツリと存在していた。
果てしなく広い空間を星達が一斉に走り出したかのような光景に、生まれたばかりの彼はそれだけで胸が詰まってしまい、恐れをなして小さくうずくまる。


ふと彼は、たくさん流れている光の中にも、止まっているものがあるのに気が付いた。

そして彼は気付く。その光は止まってなんかいない。自分がその光と同じスピードで動いているだけなのだと。
そう。彼もまた光なのだ。
理解の範囲を超えた速さで駆け抜け、遥か彼方を目指す光だ。

彼はべつにどこかに行こうとしているわけではない。どこかにいきたいわけでもない。しかし、いずれはこれらの光すべて、どこかそれぞれの居場所へとたどり着いていくのだろう。


彼は、ゆっくりと目を閉じた。
やがてはたどり着くであろう、まだ見ぬ先を思って―――。



生まれたばかりの彼にはまだ知る由もなかったのだが、その果てしないと思われた空間はネットを網羅する回線の内部で、そこに流れる無限の光はすべて、


………そう、すべてデータなのだということを、彼は遠からず知ることになるだろう。


[No.740] 2007/05/18(Fri) 12:53:26

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