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◇ 哀れなキミが叫んでる 出口の見えない闇だのと 光の届かぬ闇だのと なんて滑稽なんだろう 目を閉じたまま叫んでる ひたすら小さな人間が 汗するピエロを見て哂う 他人を蔑み得られた悦で 勘違いの中酔っている 高見を決め込む傍観者気取りの者達よ 今に見てるがいい、次は君たちの番だ 夢中に踊れる熱も知らずに 全てを外から欲するものよ 理解と誤解を履き違え 全てを得たと驕れるものよ 己が罪科に背を向けて お前はお前で踊るがいい お前は誰にも邪魔されないさ 誰もお前に気付かない やがて、本当の闇が訪れ――― ● とあるPCが、草原エリアに座り込んで一息ついていた。 こんなに殺風景な場所に、よくもまあちょうどいい椅子があったものだ。 ごつごつしていて灰色。 不自然で不恰好なその椅子は、よく見ずとも、さっき葬ったPC達の亡骸の山だった。 椅子の材料になっているのは全員PKK。こいつらの標的は俺だった。 今の俺はPKではない。結構前から自粛している。 それでもかかってくるということは、今までの悪評を聞きつけてきた、とでもいうところだろう。 PKK自体は別に嫌いではない。遊びのうちだと俺も思う。 だが純粋に“PKK”としてではなく、“正義の味方”気取りのロールでかかってくるやつらは、正直かなりウザかった。 戦闘前にも言ったはずだ。今の俺はPKではない、と。 だが、そしたらやつらはなんて言ったと思う? なんの遠慮もなしに、初対面のオレに対して。 『やめさえすればすべて許されるとでも? そんなもので、いままでPKされた人達が浮かばれるとでも思うのか!! 貴様の様な傲慢な輩のせいで、The Worldを平穏に暮らすほかのプレイヤー達が脅かされているのを知らぬわけではないだろう! それを黙ってみているだなんて……オレにはできん!! もう一度この世界に秩序と安寧を取り戻すため、今まで貴様が犯した罪……その身でとくと思い知れ!!』――― まるで最初から用意していたかのような、台本どおりの御立派な台詞。始めからこちらの言い分など聞くつもりもなかったのだろう。魂胆が見えみえだ。 “秩序と安寧のため”、だと? ………ハッ。笑うしかねえよな。 別に罪滅ぼしって訳でもねぇが、オレはもうPK止めたって言ってんだろ。 それを承知でかかってくるってことは、つまりはそういうことだ。 ようはこいつら、自分の正義を見せ付けたいだけさ。 自分のものさしで気に入らない相手を一方的に悪だと決めつけ、負かしてやりたいだけなんだよ。 そもそも、やられた本人が雪辱でかかってくるっていうんなら、俺だって文句は言わないさ。 そのときは正々堂々受けてたつ。それが俺のプレイスタイルだ。 だが俺や、こともあろうかやつらの言う“被害者”とさえ面識のない第3者が、他人の古傷を大義名分に俺を裁くとはどういうことだ? 赤の他人を言い訳にして、更生中の俺を徹底的に叩きのめす。 本当にPKされたやつらを侮辱してるのは、オレから言わせりゃあいつらのほうさ。 しばらく思いにふけたのち、うんざりしながら腰を上げる。 くだらない。本当に――― ここにいるのにも嫌気がさして、銃剣士「ウィンチェスター」は、草原エリアを後にした。 [No.741] 2007/05/18(Fri) 13:18:44 |