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all .hack//Pledge - わん仔 - 2007/04/21(Sat) 22:16:02 [No.624]
.hack//Pledge 最終話 - わん仔 - 2007/07/25(Wed) 16:59:11 [No.859]
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.hack//Pledge 第七話 - わん仔 - 2007/05/08(Tue) 23:46:31 [No.732]
.hack//Pledge 第六話 - わん仔 - 2007/05/08(Tue) 22:03:02 [No.731]
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.hack//Pledge 第四話 - わん仔 - 2007/04/25(Wed) 21:41:37 [No.649]
.hack//Pledge 第三話 - わん仔 - 2007/04/22(Sun) 17:40:02 [No.630]
.hack//Pledge 第二話 - わん仔 - 2007/04/22(Sun) 00:22:02 [No.626]
.hack//Pledge 第一話 - わん仔 - 2007/04/21(Sat) 22:57:57 [No.625]


.hack//Pledge 第14話 (No.624 への返信) - わん仔

姉が意識不明になった翌日。
トネリコのプレイヤーは一日の大半を家の中、それも自身のベッドの上で過ごしていた。
母親は姉の入院している病院。父親は先月から単身赴任で地方。家の中は、彼ただ独り。
食事も摂らず、ただうつ伏せになっていた。

それでも、気にはなっていた。
自分では何もできないもどかしさを感じていた。
だからこそパソコンの電源は入れっぱなしにしている。
昨日、強制シャットアウトしたおかげで復旧にやや時間はとられたが、全てのデータは無事だった。

彼が寝返りを打とうとしたその時、一通のメールが受信された。送り主は彼の恩師である『ハセヲ』


 送信者:ハセヲ
 件名:ちょっといいか?
 トネリコ、お前に訊きたいことがある。
 ドル・ドナまでちょっと来てくれないか?


「ハセヲ先輩……?」
彼は悩んだ。おそらく数十分間。
そして『The World』に抵抗がありつつも、彼は意を決してログインした。


――Θ蒼穹都市 ドル・ドナ――
ハセヲは、カオスゲートの前で待っていた。不機嫌な素振りもせず、ただカオスゲートを見上げて。
ようやく、トネリコがやってきたのに気付くと彼は声をかけた。

「久しぶりだな、トネリコ」
「はい。ご無沙汰してますね、ハセヲ先輩。……遅くなって申し訳ありませんでした」
「いや。今のお前にしてみれば、無理もないだろ」
「――?……そういえば、碧聖宮を制覇されたんですよね、ハセヲ先輩。おめでとうございます!!」
「俺だけの力じゃないさ。仲間のおかげだな」
そう。トネリコが照々たちと戯れている間に、ハセヲはアリーナ無敗二連覇していたのだ。

「それで、僕に訊きたいことというのは―――?」
トネリコが覇気のない声で言うと、ハセヲの顔が急に変わった。何かを心配するような、そんな表情。

「ここじゃ話しにくいな……。エリアに出るか」
「はい」


――Θ焦りゆく 三日月の 雷雲――
「こ、ここは………」
ハセヲの後をついていたトネリコの動きが止まる。彼は、明らかにこの場所を拒んでいた。

「昨日このエリアで――バグが見つかったんだ。昨日、トネリコはここに居たよな?」
「はい……」
「その時、ここで何かなかったか?……エフェクトがおかしくなったとか、ノイズが走ったとか…」
「………」
「答えたくないか?」
「すみません……」

そのことに触れたくなかったトネリコ。顔は俯いたままだ。
ハセヲはそのことをまるで解っているかのように、それ以上、強要はしなかった。

「……昨日、このエリアに来ていた一人のPCが感染者にPKされた」
「………?」
「PKされたPCのプレイヤーは同時に意識不明になったらしい。そのPC、お前の知り合いだろ?」
「!!?………何故、それを?」
トネリコは驚いた。

「聞かせてくれないか?」
ハセヲはこれまでにないくらい優しい声で訊いた。
(先輩には何も隠せない……)そう確信したトネリコは、全てを話した。

「僕の、姉だったんです。そのPCのプレイヤー。学校の講習会から帰ってきたら、家の前に救急車が止まってて。そして、このエリアには照さんが――姉の、PCが―――」

思わず涙声になってしまったトネリコ。
今更、悲しさと悔しさが込み上げてきた。さっきまでは感情が抜けていたように、何に対しても無関心でいられたのに、ハセヲの真っ直ぐな瞳と声を感じた瞬間から、涙が溢れてくる。

「そうか……悪かったな、イヤなこと思いださしちまって」
「……いえ、ハセヲ先輩に全部お話したら、なんかふっ切れちゃいました」
「なぁ、トネリコ。………絶対の力が欲しいと想うか?」
「え?」
「………いや、何でもない。お前に限ってあるわけないよな――――復讐なんて」
「ハセヲ、先輩?」

どこか遠くを見つめるハセヲ。トネリコには、最後の一言がよく聞き取れなかったために、不思議そうな顔をしている。

「そういえば、アトリさんと揺光さんはお元気ですか?」
「あぁ。アトリは相変わらずだ。………揺光は――」
悔しそうに拳を固く握りしめるハセヲ。どうやら彼女にも何かあったようだ。

「あ、すみません……」
「んな、トネリコが謝ることじゃねぇって。わざわざ呼びだして悪かったな。ここ最近、バグとか多いから気をつけろよ」
「はい。僕、しばらくログインは控えます」
「いや、別にそこまでしなくてもいいじゃねぇか……」
ちょっと困った表情のハセヲ。それを見たトネリコはクスッと笑った。

「まだ……怖いんですよ、ログインするのが。あの照さんのPCの姿が思い起こされちゃって」
「………」
「それに、母さんに心配はかけたくありませんから」
「だったら余計に悪かったな……」
「そんなに謝らないで下さい。むしろ、僕はお礼を申し上げたいくらいです」
「お礼?」
「姉が、ここで何があったのか知れましたから」
そういって振り返ったトネリコの顔は嬉しそうで、悲しそうで、どこか儚げな笑顔だった。

「……心配すんなよ。お前の姉ちゃんは――もちろん揺光だって、必ずこの『The World』に居る」
「そうですよね……じゃあ、僕はこれで失礼します。ありがとうございました!!」

“真実”とは、時に鋭い刃となって心に突き刺さる。
しかし、深い傷を負わせるだけではない。
その傷から新たな希望や感情が見えてくる。
それが探求というものであれ、復讐というものであれ、形は違えど真実から得たものに変わりはない。

このことは、ハセヲが一番、痛感していることだろう。だからこそ、ハセヲは伝えたのだろう。

二度と、もう二度と自分と同じ行ないをする者が現れないように。強く願いながら。


[No.801] 2007/06/27(Wed) 17:26:50

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