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自らを信じるな 他人を信じろ ただし他人は信用するな …………………… 2://www."riquest-イライ. __________________________________ 世界最大のネットゲーム『TheWorld』。 誰もが、何をすることも、誰になるかも自由。 究極なまでに、自由。 もちろん、自由といったところで、システム面での不自由さは残るものだが。 ひたすら冒険し、強さを求める者もいたし、その強さを『アリーナ』で証明しようとする者もいた。 『チャット』で談笑するものもいれば、アイテムを売って『商人』をロールする者もいた。 ―――――ここには、世界の縮図がある。 何をするのも自由というMMORPGのなかで俺が選んだ生き方は、『請負人』という人生だった。 請負人…………。簡単に言えば『何でも屋』な訳だが、このゲーム『TheWorld』での依頼といえばほとんどが、私情絡みのPK、もしくはギルド同士の抗争においての傭兵だった。 請負人を始めた初期の頃は、レベルもさほど、というか今ほど高くはなかったため、依頼の成功率も当然低かった。 だが、多くの、ありとあらゆる種類の依頼をこなす事によって、多量のPCの集まるΔマク・アヌの片隅に事務所を開くこともできるようになった。 だから今ではそれなりに名が売れている。 「…………で、依頼にいらっしゃったのなら、早く内容をお願いします」 この日事務所を訪ねてきたのは、女性型PCの撃剣士(ブランディッシュ)。 長く墨でも流し込んだような黒い長髪に、日本舞踊で用いるような衣装に近い着物と、ドレスの併せ――――着物ドレスとでも言うのだろうか――――に身を包んでいた。 「あ、はい。今回貴方に依頼したいことはですね……」 そう言って、彼女は手からSS――スクリーンショット、つまりは画像データとでも言えばいいのだろうか――を出現させて、俺に手渡した。 俺はすぐにデータを開く。そのSSには蒼髪のPCが写っていた。 「SSに写っている方、〔オーヴァン〕さんといいます。ご存知ですか?」 「あ〜・・・・・【黄昏の旅団】のマスターで銃戦士(スチームガンナー)の?」 「その通りです^^」 そう言って彼女は軽く微笑んだ。 ―――――――オーヴァン。知っているか、と訊かれて、知らない、と答える者は恐らく少ないだろう。 彼はそれくらい『変人』としてだが有名である。 ま、『The World』をしばらくの間続けているプレイヤー限定だが。 実際、俺も『面識』くらいはある(ゲームで面識というのもおかしな話だが)。話してみたこともあったが、実に掴み所のない奴、というのが俺の中でのイメージとして焼 き付いている。 「あのぅ……」 いつの間にやら、思考が横飛びしていたらしい。心配そうな表情でこちらを見ていた。 「あ、いや、ごめん。 で、続きは?」 「はい、その〔オーヴァン〕さんについて調べて欲しいことがあるんですけれど」 「調査・・・・・・、ですか」 「ええ、でもオーヴァンさんのことについてではなく、彼が昨日接触したPCについて調査して頂きたいのです」 …接触したPC? 何故だろう。 しかし、俺は大切な商談を逃したくないので、笑顔を作った。 商人の如き肯定の表情である。 「了解、あなたの業を請け負います。 調査するPCの容姿など教えてください」 「それも依頼の内、というのはいかがでしょう?」 そう言って彼女は微笑む。 えっと。 それは、『オーヴァンと接触したPCがいる』ということしか知らないってことかな?そう受け取っていいのかな…? ****** 会話のあと、彼女に前金の入金を行ってもらった。 これは@Homeのような機能を要擁した事務所に入金される。 「さようなら。良い結果を期待しております」 そんな決まり文句のような言を述べてから、立ち去ろうとする彼女を見たとき、俺はある事に気がついた。 「そういえば、あなたの名前を訊き忘れていましたよ」 「あぁ、そういえばそうでしたね」 わたし、うっかり忘れちゃうんですよ。 と付け足してまた微笑む。 俺は、本当によく笑う奴だ、と思った。 彼女の微笑むという行動は、無邪気さからくるそれとは違って、清楚な感じの笑みだ。 ―――――だから。 だから何か裏があるのではないか、と考えてしまう。 「わたしのPCネームは〔澪(みお)〕と申します。 さんずいに漢字のぜろ、ですよ?」 「澪さん、ですね。了承しました、二日後にまた逢いましょう」 「ええ。それではごきげんよう、ルナさん^^」 澪が出口のドアに付いているドアノブに手をかけると、PCボディに青い光輪がかかって転送されていく。 匂宮によると、事務所のシステムはその様に設定されているのだそうだ。 今頃はマク・アヌの街に降り立っているだろう。 「さぁて、どうしたもんかねぇ………………」 独りごちてみた。 オーヴァンが接触したPC…。恐らく旅団のメンバーでは無いだろう。 旅団のメンバーならば、『【黄昏の旅団】についての調査』という依頼名目でいいはずだ。 その点から思考を飛躍させると、『接触したPC』というのはオーヴァンにとっての重要な存在、という結果に至る。 さらに思考を切り替えていくと、彼にとって何が重要 か、ということに考えなければならない。 ――――――いや。 彼にとって何が重要かなど考える必要などない。 知れたこと。 彼が『TheWorld』を続ける理由さえもが、そこにはあった。 「『キー・オブ・ザ・トワイライト』、か」 しかし、オーヴァン。 あるのかも無いのかもわからないアイテムを探してどうする? いや、R:2以前のヴァージョンでは確かに『それ』は存在した。 俺は直接確認したわけではないが、知らないと言えば嘘となってしまう。 俺自身が確認していた訳ではないのだが………………。 『変人』としてだが有名、というのがオーヴァンの評判なのだが、実際はかなり聡明であることは確かである。 その彼が在る、というのならば…………。 キー・オブ・ザ・トワイライトは、在るのかもしれない=B 俺の推理、というか推論はさらに膨らんでいく。 の ロストグラウンドだって存在するじゃないか。 そもそも、あれは…………。 「っと、思考の飛び過ぎだ」 思考を元の位置へと戻す。 オーヴァンの動向を探っているのはフィロ、と【TaN】の直毘か。 むぅ。 ちょっと悩む。 ……………。 直毘と会うことは、まずありえないな。 @Homeから滅多に出て来ないうえに、というかそれ以前に俺と【TaN】との関係がやばい。 傍から見て、商業ギルドとしての【TaN】と俺との関係はすこぶる良好だ。 依頼の代金として払われるレアアイテムを【TaN】に売るなどしているので、それなりにお得意様、ということだ。 【TaN】の裏の顔たる、通称『暗部』―――――。 それが直毘と会うわけにはいかない原因、である。 確かに【TaN】とは良好な関係を築いていた。 しかし、ついこの間に俺は『敵対』してしまっていた。 『依頼』を終えて、プラットホームを使用して帰ろうとしていたところに現れたPK。 その依頼が気に入っていなかった俺は、腹立ち紛れにそいつをPKKした。 いつもなら、そんなことはせず逃げて帰るのだが、本当にイライラしていたので、殺してしまった。 そして、そのPKはPK専用殺し屋ギルド【陰華(かげはな)】所属のPCだったことが、あとで判明。 教えてくれたのは、匂宮。 余り知られていない…というか、一般PCは知らなくていいことなのだが、【TaN】の暗部のほとんどのPCは【陰華】から派遣されてきている。 つまり、【陰華】は【TaN】の下位組織でもあるのだ。 【陰華】に対する敵対は【TaN】に対する宣戦布告。 そうあちらは受け取ったらしい。 ・ そんなこんなで俺は【TaN】と敵対していた。 「そう考えると、フィロが最善か」 今の時間ならあの爺さんのことだし、Δマク・アヌの橋の上に居るだろう。 俺は立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。 果たして彼はそこにいた。 小さなPCボディに猫のような顔と茶色の猫肌に、フードつきの呪衣を羽織っており、地面から浮いて胡坐を掻いていた。 俺が近づいていくと、彼も気づいたようで目だけをこちらに向けてきた。 「よう、爺さん。元気か?」 「まぁまぁ、と言った所だな。お前さんはどうだね?」 「"まぁまぁ≠ネんて便利な言葉使うな、そう言ったのはフィロだろうが。 自分で使うなよな」 「そうだったな」 微苦笑するフィロ。 俺も昔はよく説教されたものだった。 今となっては、記憶に古い話である。 「ところで。 なんのようでここに来た?」 「は?」 「お前さんが用もなしに儂の所に来るはずが、無いだろう?」 「……………………確かにな」 読まれていた、か…………。 予想はしていたが。 ま、いっか。 「単刀直入に訊くが、いいか?」 「答えられることなら、な」 これは俺の予想通り、的中。 「……………………オーヴァン…………」 「?」 「オーヴァンが昨日接触したPCを知らねぇか?」 「ああ、知っとるよ」 「はぁっ!? 何を………っっ!?」 超予想外。余りの驚きに言葉に詰まってしまった。『知らないが、情報ならある』という答えを予想していたのだが。 「本当か?」 「ああ。さっきも会っておったよ」 …………………フィロって……………。 ったく、この爺さんどんだけ人脈広いんだよ…………。 しかしながら、この人脈は『使える』。 「詳しく訊かせてくれないか、フィロ?」 フィロから訊いたPC、名前は『ハセヲ』というらしい。 黒い錬装士(マルチウェポン)で、昨日INしたばかりの初心者。 まさかオーヴァンがそんな奴に接触したとは考えがたいが…………。 しかし、固定概念というのは、請負人という職業には邪魔なだけなので無視しておこう。 「……問題はハセヲが何処にいるか、だよなぁ……」 フィロは元旅団員である『Bセット』を紹介してやった、と言っていた。 Bセット…………。 双剣士(ツインソード)、いや銃戦士だったか? PCの名前と職業なら、事務所に帰れば調べられる。 だが、今更戻っているだけの時間はない。 Bセットは錬金地区から出ない…………。そんなことは俺も会った事があがゆえに、百も承知である。 だからこそ見つけることは容易だ。 容易、ではあるのだが、彼女は旅団時代のことを他人に話したがらないので、多分ハセヲを違うPCへと紹介するだろう。 …………いや、元旅団員はゴードくらいしかいないわけだが。 彼を捜すのも面倒くさいな。 ふむ。 匂宮にでも捜してもらおうか。 奴はシステム管理者だから、わからんことも無いだろうが…………。でも、これって公私混同って言うのかなぁ…………。 なので、俺は匂宮にショートメールを送って、ゴードのエリアワードと座標を送ってもらう事にした。 ****** 「それで?依頼内容は全てこなせたの?」 「ま〜な。でも色んな所廻って疲れた…………」 「『The World』って、マップ広いもんね。 ごめん、昨日用事があって…………」 マク・アヌの事務所で俺は、"助手≠ニも呼べるPCと話していた。 依頼をこなしたのは昨日のこと。 彼女が興味を持ったらしかったので、話してやっていた。 「彩音が謝る必要ないだろ?用事っつったって病院だろーが」 「まぁ、そうなんだけどね…………。って、あぁぁっっ!!ルナ、今わたしのこと『彩音』って呼んだでしょ!?」 「ああ、ごめん、紫」 紫は、縁日で見かける様な浴衣姿で、長い黒髪を後ろで束ねている。職業は呪療士(ハーヴェスト)。請負人の助手である彼女は、それ以前にリアルでの知り合いでもある。だから、リアルでの名前―――――彩音―――――で呼ぶととても嫌がった。 リアルでの自分と『ここ』での自分は分けていたいのだろうか。 しかしながら、俺は本名で呼ぶ癖が一向に治らなかった。 「そういえば、ルナ。昨日ちゃんと学校に行った?」 「ん?いや、午前だけだったぜ?」 「うわ。 昨日病院から帰ってきてずっと待ってたのにぃっっ!!」 いや、そんなの知らないし……。 でも連絡してなかった訳だし、一応謝っておくか。 「ごめんごめん。 メールでもしときゃ良かったな…………」 「メールでも見たかわかんないよ?」 「…なんで?」 「携帯部屋に置いてたし」 「…………未開人…………」 なんで携帯電話なのに携帯してないんだよ。 そう突っ込みを入れたくなったが、我慢して一言だけに留めた。 「ふーんだ。 いつでも携帯持ってる現代人がおかしいんですよ〜だ」 「いや、携帯は携帯すべきだから携帯なんだろ」 ってなんか訳わからんな、いまの台詞……。 「携帯電話ならぬ携帯談話なんてどーでもいーよ。 どーでも」 彩音は、肩をすくめて手を横に開くポーズをする。 まるで一昔前の外国映画に出てくる俳優の真似だ。 そういえば、彩音は昔の映画を見るのが好きだったんだっけ。 なんか忘れてた。 「本題は、あれだよ?」 「あれってなんだよw」 代名詞で言われても。 「ん〜、これははぐらかさないで欲しい、かな」 「…………」 「三点リーダ四つで黙んないでよ……」 ああ。 こういう口調の彩音になったときは注意すべきだったんだっけ。 久しぶりに会った、そういう訳ではないのにど忘れしていた。 最近、黙ってる台詞多くないかな? 「『ハセヲ』ってPCのことは調べたんだよね?」 「ああ。一応、見た目とかもまとめといたけど?」 「うん、それなんだけどね…………」 ……? なんのことだろう。 彩音は何が言いたい? 何か、忘れてる? 「実は、オーヴァンが接触したのは、ハセヲくんだけじゃないんだよね」 「…………? …………!!」 な……!? 何ぃぃぃ!!? 嘘っっ!? なんで? why? ハセヲだけじゃないって、じゃあ、誰が!? 「うん、確か名前は『タビー』ちゃん、だったっけ」 うわぁぁぁぁぁぁ!! 誰だよ、タビーって! 今更そんな奴のこと調べられるかっ! 今何時と思ってんだ! P.M.20:00だぞ!? P.M.ってのは、即ち午後って意味だ!! って、なんで冷静に解説してるんだよ! 依頼人『澪』に報告するのは明日(土曜)のA.M.10:00だぞ!? A.M.ってのは、即ち午前って意味だ!! って、なんで冷静に解説してるんだよ! 「あぁぁぁぁ……」 ここで終わり、か。 請負人に限らず、【TaN】の様な商業ギルドや便利屋などの二次的職業は『信用第一』が基本の『ルール』であることは、言うまでも無い。 言うまでも無いから、失敗してはならない。 商業ギルドの信用とは『価格』。 対して請負人は『依頼の達成率』。 これは遵守しなければ、ゲーム内での噂やらBBSやらで『ルナは依頼するに足りない請負人だ』と言われてしまう訳だ。 だから、【TaN】の様に大きくなったギルドは、取引マニュアルなどを作ってメンバーに渡して安全性と『価格』やクレーム対策を設定、請負人として有名になってきた俺は、どの依頼にも全力で当たったし、ほぼ失敗は無かった。 だが、そんな俺の尽力伝説も終わり…………。 今回の依頼だけじゃん? そう思ったら大間違いである。 噂の力を舐めてはいけない。 個人系BBSの『よもやまBBS』に出入りしている連中は、そういう話題が大好きだ。 知り合いのPC、噂好きで『噂屋』の異名をとる『ヌァザ』などは喜んで俺の噂を流すだろう。 尾鰭をつけて。 知り合いなど問答無用で。 「駄目だ、死ぬ……」 「なんだか困ってるみたいだけど?w」 「請負人は『信用第一』だから……」 そこまで言って俺は、脱力してうな垂れた。 彩音は、俺を見てふふふ、と笑う。 何がおかしいんだよ。 「これ、何かわかる?」 何かのデータを手中に出現させて、言う。 『The World』では、SSや文書データ(容量が軽いものに限るが)は他人に見せたり、渡したりできる。その機能を使っているのだろう。 昨日も澪が使っていたか。 「何? 文書データっぽいけど?」 「ああ、これ?」 彩音の微笑。 いつもなら癒されてる所だが、今の俺には癒されてるような余裕は皆無。 「ルナが調べ損ねた『タビーちゃんの全て・全一巻』だよ〜^^」 全一巻て…………。 「何で持ってんの?とか突っ込むべき所は色々あるけど……」 まだ他にもあるけど。 なんで(^^)の顔文字?とかあるけど。 「正直言って、欲しいっ!」 「ほ〜い^^」 そう言ってデータを投げて寄越す彩音。 気付かなかった俺は、それをギリギリでキャッチする。 ……? 何か、素直だな。 「いいのか?」 「うん。 タビーちゃんの事、全部と言っていい程調べ尽くしてあるからね」 「へぇ? 何かあんの、条件でも?」 なーんか嫌〜な予感がするぞ。 こういう時は。 「ふふふ…………w」 うああ。 超嫌な予感なんですけど。 「データ欲しいなら、代わりに何か今度奢ってよ?」 「…………リアルで…………?」 訊ねると、彩音は少し頬を膨らまして、「当たり前〜〜♪」とだけ返してきた。 う〜、意外と今月ピンチなんですけど。 しかし、これは今後の事務所、請負人の存続に関わる問題だ。 俺は、請負人の稼ぎを一定分上納することで、マク・アヌに事務所を置かせてもらっている訳だが(上納先が匂宮であることが腹立たしいが)、これが払えなくなると事務所は跡形も無く消えてしまう。 金 つまり、GPがなくなった瞬間、請負人稼業は終わりを告げる。 今月は『The World』でもリアルでもピンチだった。 「――――――分かった。 何が奢って欲しい?」 ここで先手を打つ。 こういう時にこそ言っておかなければ、後で何をねだられるか判ったものではないからだ。 さぁ、どうでてくる、彩音? 「今はまだ欲しい物ないし、欲しい物ができたら言うから今はパス〜〜vV」 …………作戦の裏を掻かれました(滝涙) 2://www."riquest-イライ=c………了。 [No.803] 2007/06/28(Thu) 15:19:38 |