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ハセヲに呼ばれてログインした日から、数日が経った。トネリコはあの日以来、一日も『The World』にログインしていなかった。その所為か、メールボックスには毎日のように友人からのメールが届く。 その内容もほとんど同じ。ログインしなくなったことへの心配と、 ―――― 一緒にPKしないか? という誘い。今まで、そんなことはなかった。どちらかといえば、PKに反対していた友人の方が多いくらいだ。しかし、アリーナ竜賢宮改め“PKトーナメント”の開催が決定してからというもの、ハセヲに指 導してもらった経験があるというだけでこういったメールが増えたのだ。 たった一人、陽翳を除いて。 彼だけは、毎日『The World』で起きたことを報告するだけだった。今日も、その報告メールが受信された。 【送信者:陽翳 件名:無題 トネリコ、『くぬぎ』っていうPC憶えてるか? 前にオレのギルドに依頼してきた女の子。 その子がPKトーナメントに選抜されたらしいんだ…… ってか、たまにはログインしたらどうだ? 『The World』に居てもさ、オレも暇で暇でしょうがないんだよ(^^;】 「くぬぎさん―――あの子が?」 以前、照々とギルド体験をしたとき依頼主だった女の子だ。あんな大人しそうな子が何故PKトーナ メントなんかに? 「そっか……陽翳も、照さんが居なくなって困ってるんだ………ちょうど母さんも出かけてるし、たまにはインしようかな」 今はタウンでもPKが可能になってしまっていると陽翳は教えてくれた。少々不安もありながら、 ログインした。 ――Θ蒼穹都市 ドル・ドナ―― 数日ぶりに見る、碧の楽園。だが、以前にも増して人が多く、皆が不安げな表情をしている。 ここはPK禁止区域だからだ。そのため、主だって初心者と思えるPCの数が多い。 その向こうから、見慣れた一人が駆け寄ってきた。 「トネリコぉ!!やっと来たんかよ」 「陽翳……ごめん」 この数日でずいぶん卑屈になってしまったトネリコ。それを目の当たりにした陽翳は「はぁ……」と、 深い溜め息をついた。 「んな、謝るなよ。家庭の事情ってヤツだろ?お前の姉ち――照ちゃんもログイン表示のままだしな」 「………?―――陽翳、照さんのプレイヤーが僕の姉さんだってこと、知ってたの?」 「んぁ……と。照ちゃんからは口止めされてっけど、いっか。照ちゃんの方が先に、オレのリアルに 気付いたんだよ。ただ、あんな真面目な人だから、周囲の人にゲーム――ましてネトゲなんかしてるのを知られたくなかったらしいんだ。だから、オレはわざわざロールしてたって訳さ」 いつものふざけた感じではなく、トネリコが知っているリアルの陽翳そのものが居た。 「陽翳は普段からそんなキャラじゃない?……ついでに訊くけど、照さんは今まで何をしてたの?」 「ん〜、オレがギルドを設立するまではハンターとして活動してたみたいだな。というより、実際ギルドを立てようって言ったのも照ちゃんだし。ってか、マジで照ちゃんに何があったんだ?」 半ば好奇心でワクワクしながら陽翳は訊いた。それを感じたトネリコはちょっとムッとして答える。 「メールで、あったこと全部書いたよ?……例の場所のエリアワードだって――」 「行こうとしたさ。でも結局、あの時トネリコが行ったっきりエリアは封鎖されちまったし、今や無敵のハセヲさんにまで止められるしで―――」 「止められた?ハセヲ先輩に?」 「あぁ、なんかウィルスが見つかったとか何とか言って、危ないからってな」 確かに以前ハセヲと話をしたときも、バグがどうとか言っていた。それに、照々をPKしたPCのことを感染者とも――― 「………てことは、やっぱりハセヲ先輩は何か知ってるんだ」 「あの人はAIDAっていうウィルスを探しては駆除してるんだって」 と、何処からともなく突然くぬぎが顔を出した。寝ぼけ眼のような垂れ目をした小さな女の子だ。 「く、くぬちゃん!?何だってここに?確かPKトーナメントに出たはずじゃ………」 「あんな怪しげな大会に誰が参加するっていうの?伊達に社会の裏を見て来たわけじゃないよ」 一瞬にして沈黙が走った。社会の裏……?思い切って陽翳が訊く。 「くぬちゃん、リアルの歳いくつよ?」 「それ、女性に対して訊いちゃいけない質問のひとつ」 『…………』 違う。この子のリアルは絶対、いたいけな小学生じゃない…!!と、確信したトネリコと陽翳で あった。 「と、ところで椎さんは?いつもご一緒なのに」 無理矢理に話を逸らしたトネリコ。言われてみれば、いつもならくぬぎの周りにくっついているはずの椎が居ない。 「あの子は………」 「まさか………!?」 不安がよぎる。まさか、あの子までもが!? 「―――――プール」 『はぁっ!?』 あまりにも素っ頓狂な声を出した男子2名。くぬぎよりも周りのPCたちが驚いていた。 「友達のガキんちょ達と、近所の市営プール」 『……………』 (この人の言うことは真に受けちゃいけねぇな……) この時、見事にトネリコと陽翳の心がシンクロしたそうな。 「あの、さっきアイダとか言ってましたけど、それっていったい何ですか?」 先ほどまでとは一転して、真面目に質問するトネリコ。くぬぎ自身は大して気にしていないようだが。 「CC社上層部が追っかけてるウィルスやバグのようなものらしいの。ま、正確にはAIの異常らしい けどね」 「……詳しいな」 「人脈のおかげw」 光る白い歯。無邪気な笑顔。絶対、この人を敵に回してはいけないと本能的に学習した陽翳。 「でも何故、たかがウィルスごときであんな大企業の上層部が動くんです?そんなの末端にいる デバッガーの仕事じゃないですか」 トネリコの言うとおり、ちょっとしたウィルスやバグの場合、運営している企業または委託しているデバッガーが駆除をするはずだ。CC社ほどの大きな会社の、まして上層部が動くなど大袈裟すぎる。 そこにハセヲが加わっているとなると尚も不可思議だ。宮皇とはいえ、彼も一般PCには変わりない。 「さぁ?私もそこまでは」 肩をすくめるような動作をした後、スッとくぬぎが手を差し伸べた。 「あの、この手は?」 「情報料。1000……いや、50000GP」 「えぇ!?い、一気に50倍に上がりましたよ!!?」 トネリコの感情があらわになった瞬間だった。 「だって、極秘情報だもん」 「じゃ、トネリコよろしくww」 ポンと肩を叩いてニンマリと微笑む陽翳。トネリコはさらに「訳わかんねぇよ!!」と怒りを表す。 「なんで!?陽翳だってもろ聞いてたじゃんか!!」 「別に、訊きたいとは一言も言ってないし」 「そんなの僕だって同じだよ!!」 「どっちも払わないんだったら、オアシス全売上金の半分くらい戴こうかな。なんたって極秘情報だし」 「そ、それは勘弁してください……」 急にしおらしくなった陽翳。そしてブツブツとトネリコと相談した。 「で?」 『25000GPずつでお払いします………』 結局は割り勘となったらしい。 「さて、と。じゃ、私はこれで」 トネリコたちと団欒(?)のひと時を過ごした後、くぬぎはその場を離れた。 「ったく、なんでオレまで金払うんだ?」 くぬぎの姿が見えなくなったと途端にふくれっ面になる陽翳。 「ていうか、くぬぎさんが勝手に語ってたよね」 「……今度からあの人の依頼料、倍にするか」 「逆に何かやられそうだけど?」 「う……」 どうやら、陽翳はくぬぎが苦手なようだ。いや、もはや天敵? 「ところで、僕はいったい何のために呼ばれたの?」 「あ、そうそう。久しぶりにクエストでもどよ?」 「うん。じゃ、行こう!」 二人はクエスト屋へと向かった。 ―あとがき― なんだかちょっと長くなってしまった15話です; トネリコのキャラも、ちょっとずつ変わってきちゃってます。 こんなつもりではなかったんですけどねぇ…… では。今回はこれにて失礼させていただきます(^^ [No.809] 2007/07/04(Wed) 20:35:08 |