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――ネットスラム タルタルガ―― トネリコがやって来たのは、見慣れた橙色に輝く、マク・アヌ……ではなかった。 「な、なに? ここ……」 ただのタウンではない。それは一目瞭然だった。 辺りにいるPCは明らかに改造―――すなわちチートPCで、おかしな言動を繰り返している。 広がる風景も、流れるBGMも、とてもじゃないが『The World』のものとは思えない。 しかし中には、トネリコと同じような普通の仕様をしたPCも何人か居た。やはり皆、考えることは同じなようで、互いに「ここはどこなんだ!?」と口にしていた。 「トネリコ!」 声の方に振り向くと、陽翳が駆け寄ってきた。 「陽翳……これ、どういうことなの!?」 「さぁ、オレだって解らないし……」 「ここはネットスラム」 またしても突然、顔を出したくぬぎ。神出鬼没とはこのことか…… 「……ね、ネットスラムって?」 あえてリアクションをとらなかった陽翳。くぬぎは少し不満そうだが、質問にはちゃんと答えてくれた。 「“ネットスラム”―――ハッカーの楽園とも言われている不正規のサーバー。放浪AIや、改造PCが屯している場所」 「だから妙なPCが多いんですね」 「一般のプレイヤーはもちろんのこと、システム側の人間も、ほとんどここの存在を知らない。…… いや、あのCC社のことだから黙認してるのかもね」 そっけなく答えているくぬぎだが、ここまで色んなことを知っていると驚異なものを感じてしまう。 「くぬぎぃ〜! ここ、なんか怖い……」 あとからくっついてきた椎がくぬぎの背中にしがみつく。PCの見た目では年齢もそれほど差がないように見えるが、椎の行動も兼ねると、リアルの二人の年齢差は相当広いようだ。 椎を慰めるくぬぎの表情や声は、母親そのもののようだった。 「けど、オレらは確かに普通にログインしたはずだぞ。こんなことってありえんのか?」 「誰かがいじったことに間違いはない、とは思うけど」 皆で頭を抱え込んでいると、そこにこれまた誰かが声をかけてきた。どこか見覚えがあるような、無いような? 「トネリコ!!」 やっぱり聞き覚えのある声。銀髪のPC。もしかして――― 「あの、もしかしてハセヲ先輩?」 「ああ。ジョブエクステンドして、見た目は変わっちまったけどな」 そうだ、間違いない。見た目は変わってもハセヲには変わりないのだから。 「ハセヲ先輩、これっていった――」 「訊きたいことがあるんだけど」 トネリコの言葉を遮り、ハセヲに問いかけるくぬぎ。どういうわけか、少し怒っているようにも見える。 「?」 「いくら錬装士といえど、ジョブエクステンドできるのは最大でも2回までじゃないの?」 「………」 「答えないってことは、改造でもしたの?」 「……知ってどうすんだ」 「知りたいだけ。別に言いふらすこともないし。何より、その姿の方が似合ってると思って」 そう言ったくぬぎの顔はにこやかで、先ほどまであった怒りの感情のようなものは消えていた。 ハセヲは「後で答える」と言って、トネリコたちに向き直った。 「宮皇。これって、どういうことなんです?」 さすがの陽翳もハセヲには頭が上がらない様子で、口調も礼儀正しいようだった。 「お前たちにも欅からのメールが来ただろ。それが答えだ」 「とにかくクビアゴモラを倒す……?」 「ああ。トネリコの姉ちゃんや、まだ意識を回復してねぇ他の未帰還者たちのためにも、俺たちは戦わなくちゃいけねぇ。あいつらはまだ、この『The World』に居るからな。だから―――」 「協力が必要だと」 「そういうことだ。協力、してくれるか?」 「も、もちろんです!」 「そうか。ありがとな」 ハセヲは「じゃ、気をつけろよ」と言い残して、奥へと消えた。 「………」 ハセヲの強さを、改めて感じさせられた。自分の強さとは比較にならないほどの、“力”の差。 “精神力”の差。 「トネリコ。お前独りでやれとは言ってないんだ―――」 「皆でやれば、何とかなるかもよ?」 「そ、そうだぜ!」 陽翳も、くぬぎも、そして椎も、トネリコと同じ。 それでも、彼らは皆でやれば何とかなると信じていた。そんな仲間を持って、トネリコは幸せだと感じた。しかし――― 「でも、やっぱり怖いんだ。……手が震えるんだよ! 目を伏せたくなるんだよ!! みんなを、姉さんと同じ目にあわせたくないから………!」 トネリコの瞳には、光がなかった。曇って、霞んでいた。…………泣いていた。 そんな彼を見た陽翳は、鼻で嗤って蔑んだ。 「ばっかじゃねぇの!? 『みんなを、姉さんと同じ目にあわせたくない』だ? そんなの、テメェが見たくないだけだろ!? エリアで倒れてる無残なPCを、病院のベッドで横たわるプレイヤーを! 奇遇なことにリアルでも知ってるやつが多いもんな。例えばオレとかよ!!」 トネリコの胸倉を引っつかみ、獣人独特の牙と鋭い眼光を剥き出しに怒鳴りつける陽翳。トネリコも、周りの皆もあまりにも激しい陽翳の行動に驚きを隠せずにいた。 「人間は独りじゃ弱い。けど、同志――仲間がいれば、強くもなれる」 くぬぎが静かに、それでもよく聞こえる声で言う。 「誰だって、興味半分で此処にいるわけじゃねぇんだよ、トネリコ。……そりゃ、オレだって怖いさ。ただのゲームでなくなってる感じは当然だしさ、下手すりゃ命に関わるかもしれねぇし」 陽翳は、いつもの明るい爽やかな顔でトネリコの肩を叩く。 「それに主人公が、ヒロイン助けなくてどうするよ?」 「しゅ、主人公?」 思いがけない単語に、声が裏返ってしまったトネリコ。咄嗟に、椎がツッコむ。 「どっちかっていうとさ、宮皇であるハセヲさんの方が主人公ぽくね?」 「そうね。実際の問題を解決してくれそうなのも、あの人以外考えなれないし」 くぬぎにも言われ、トネリコはちょっとへこんだ。 「マスター。照々をヒロインというもの、かなり無理があると思うのですが?」 ラギも、いつの間にかトネリコたちの輪の中に入っていた。 「……確かに」 くぬぎが頷く。皆も、トネリコも苦笑する。いつしか周りの雰囲気も明るくなっていた。 それはまるで、暗闇の中、一筋の光が差し込んだかのように。 「ってなわけで。いっちょ、もがいてみようじゃねぇの。な、トネリコ?」 周りに居る皆は笑っていた。まだ、何も解決していないというのに。 トネリコを勇気付けてくれる仲間が、そこにいる。 いいんだ。それだけで。 「うん!!」 「よっしゃ! 決まりだな。照ちゃんのためにも、やってやろうぜ!!」 「アタシのために、何かしてくれるの?」 『え?』 反射的に声の主に顔を向ける。すると、そこには―――― ―あとがき― 皆様いかがお過ごしでしょうか? こんにちわ。わん仔です(^^ 唐突ですが。 “そろそろ終わりが近いです” 初投稿が4月でしたから、もう3ヶ月経つんですね…… いやぁ、月日は早いものですなぁ(しみじみ) では、ラストスパートも突っ走って頑張ります!! [No.846] 2007/07/18(Wed) 14:42:09 |