![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
――Θ蒼穹都市 ドル・ドナ―― ギルドショップが立ち並ぶ広場の奥。そこには中級ギルドの@HOMEにつながるひとつの扉がある。 「くぬぎ、どこ行くんだよ?」 「《あずま屋 オアシス》の@HOME。渡すモノがあるから」 口調といい、その動作といい、面倒くさいというのが窺えるくぬぎ。 椎は「メンドくさいなら、何で行くんだ?」と思いつつ、ゆっくりとトビラを開いた。 トビラを開くと、そこは台風一過の空のような青色をした部屋だった。そして、あちこちで水音がする。 「いらっしゃいませ―――あら、くぬぎ様。今回はどういったご用件でしょうか?」 「陽翳、いる?」 「申し訳ありません。我がマスターは、今……」 「不在ってことね。………あ。そっか、アリーナに出てるんだったっけ」 「はい」 出迎えてくれたのは受付組であるはずのラギ。 ギルドマスターが不在となれば誰かが代理をせねば――ということで、ラギがその代理だったのだ。 「じゃ、コレを渡しておいて」 そう言ってくぬぎがラギに渡したものは、魔導士であるくぬぎ、そして鎌闘士の椎も使えるはずのない、ひと組の拳当だった。 「……かしこまりました。伝言はいかが致しましょう?」 「そうね。ついでにお願い。―――アリーナといえど所詮はPK。使い慣れてて親しみのあるこっちの方が、気持ち的にもラクでしょ? と。」 「承りました。――あ。私的なことでございますから、料金は結構ですよ」 いつものことで依頼料を払おうとしてしまったくぬぎ。ラギの笑顔に見つめられ、恥ずかしくなって顔を赤らめる。 椎はそんなこととはつゆ知らず、顔を水がめに突っ込んでいた。 「くぬぎ! 金魚がいるぜ、この壺ん中!!」 「………ガキ」 ――Ω闘争都市 ルミナ・クロス―― 『湧き上がるは観客。奮闘するは猛者ども。さぁ、命をかけた壮絶なバトルが、今宵も展開しよう としております!! ―――――………』 実況の熱い声が会場いっぱいに響く中、トネリコたちはその中心にいた。 ―――アリーナ・碧聖宮 準決勝 既に紅魔宮は制覇していた一行。しかし、アリーナの恐ろしさはこれからだった。 「ようやく、ここまで来れましたね……」 「今まで4回ぐらい挑戦したけど、ぜぇ〜んぶ予選敗退だったからねぇw」 「照ちゃん、そこ笑うところか?」 あの、“約束”を果たすために 「相手は初出場か」 「でも僕らの方が、キャリアは上です!」 トネリコの両手に、碧に輝く双剣が握られた。 『それではッ!! 試合開始だぁああぁあ!!!』 実況の声が轟き、戦いの火蓋は切られた。 トネリコたちの対戦相手は魔導士2人と妖扇士1人の、スペル重視のパーティだと、ラギが事前に 教えてくれていた。戦闘パターンもひとつ。 ――まず、妖扇士が仲間(相手)のステータスを上げ(下げ)、魔導士2人が互いに時間差を作ってスペルを用いての遠距離攻撃。SPが減ってくると、とにかく逃げ回り、その間にまた妖扇士が……――とのことだった。 「時間差を作ってるとなると、アーツは無闇やたらと使えねぇな。すぐに反撃されっから」 「妖扇士の方も放っておくわけにはいかないよね。意外とやっかいなスペル持ってるし……どうする、トネリコ。パーティリーダーを徹底的に叩く?」 「いえ、マンツーマンで勝負です。物理攻撃力は僕らの方が上ですから」 「つまり?」 「『攻撃は最大の防御』です。とにかくスペルを放つ隙を与えずに、レンゲキを狙って下さい」 『了解!』 入り乱れるスペルの嵐の中、トネリコたちは冷静に作戦を練る。こちらに回復役がいない以上、速効で勝負を決めないといけなかった。 トネリコの指示通りに動く陽翳、そして照々。 すると相手はラギの言ったとおり、SPがなくなった途端、逃げ回り始めた。 『逃がしゃ、しねぇっての!!』 ――Θ蒼穹都市 ドル・ドナ―― 試合が終わって、トネリコたちは《あずま屋 オアシス》の@HOMEに来ていた。 「お疲れトネリコ」 「うん。……次は決勝、か…」 「長かったねぇ〜ここまでくるのに。……これだけ時間食ってたら、さすがのハセヲも誰かにやられ ちゃったんじゃない?」 「そんなことないですよ! 約束してくれたんですから!!」 あの、ハセヲ先輩がやられるはずがない。だって、この世界を救ってしまったとんでもない人だもの。 トネリコは信じていた。あの人が、約束を破るはずがない、と。 「マスター。先ほどくぬぎ様がいらして、コレを渡してほしいと……」 奥からラギがやってきて、アイテムを陽翳に差し出した。 「ん。コレ、陽翳が使ってた拳当じゃないの?」 「そうだ、なぁ。前に、くぬぎちゃんに売ってもいいからってことで渡したけど……何で今更?」 「くぬぎ様は『アリーナといえど所詮はPK。こっちの方がラクでしょ』――と仰っておりました」 それは、トネリコがプレイを始める以前まで陽翳が使用していた【護拳・隈鳥(くまどり)】だった。 「あ。思い出した!」 トネリコが突然叫ぶ。 「何? アンタがコレを知ってるはずないでしょ?」 「いえ、そうじゃなくって。以前に、陽翳が照さんたちと出逢ったきっかけを訊こうととしたら『後で』って言われたっきり聞いてないんです」 「なぁ〜んだ。そんなこと? この武器が帰ってきたし、ちょうどいいかもね。じゃあ、アタシが教えてあげ―――」 「だぁああぁあ!! オレが言うからいいってばッ!!!」 そんなに嫌なことでもあったのだろうか……? 陽翳は咳払いをすると、思い出話を始めた。 [No.878] 2007/08/09(Thu) 19:34:43 |