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偽アトガキ - 宴六段 - 2007/08/17(Fri) 17:33:16 [No.892]
2://www."riquest‐イライ. - 宴六段 - 2007/06/28(Thu) 15:19:38 [No.803]
アトガキモドキ(汗 - 宴六段 - 2007/06/28(Thu) 15:29:17 [No.804]
1:www.”world‐セカイ”. - 宴六段 - 2007/06/21(Thu) 17:34:43 [No.792]


3://www.contact-ソウグウ. (No.791 への返信) - 宴六段





選ぶは友か



選ぶは敵か



与えるは生か



与えるは死か



どちらを取ろうが変わらぬ生き地獄













____________________________




















 依頼人にデータを受け渡す日がやってきた。



 彼女は『TaN』などに目を付けられるのは面倒です、と言ってショートメールを送ってきた。 その内容はエリアの指定。



 そこはレベルがかなり低く、恐らくだが初心者達のために用意されているであろうエリアだった。 行ってみてわかったが、成程、この程度のレベルならモンスターたちに邪魔される心配が無いというわけだ。




 しかし。



 しかしなのだが、初心者が多いということは、イコールそれら初心者を狙う下衆なPKもいるとうことである。





 現に今、俺の目の前にPKされそうになっている初心者らしきPCがひとり。 持っている武器からして双剣士(ツインソード)だろうか、敵に立ち向かおうと必死に武器を構えている。




 その勇気は買うが、顔は見えないが三人のPKに囲まれて足が震えている。




 「ちぇ、しゃーねぇなぁ……」




 困っているPCを助けてやるのも請負人の仕事の内、だ。



 俺はゆっくりとPKたちの方へ向かって歩いてゆく。



 馬鹿でも気づくよう、わざとらしく足音を立てて接近。 やはりというかPKたちが一斉にこちらの方を振り返った。



 ……いや、これで気づかなかったら気づかなかったで馬鹿を超越して『愚者』なんだけどね。




 無駄に図体が大きく、筋肉が盛り上がっている猪の様な獣人が「なんだ、てめぇ」と低脳丸出しの阿呆面で言葉を吐き出した。 厳つい体躯に似合いすぎるこれまた厳つい重槍からして、重槍士(パルチザン)だろう。





 「何って、一応PKKのつもりなんだけどね(苦笑)」



 言った瞬間に三人とも大声をあげて笑いだす。 余程俺の言った事がおかしく聞こえたのだろう。


 「三人に勝てると思ってんのか?w」


 言って獣人が巨大なドリルの様な重槍をこちらに向けて来た。 後ろに控えている二人も、追って細身の長剣と小型の銃剣を構える。 どうやら斬刀士(ブレイド)と銃戦士(スチームガンナー)らしい。  この二人は人族型のPCだった。



 「んじゃ、死ねよ」



 なんて単調な言葉。 語彙の乏しさに感動するね。 と、高速思考したところで重槍が突き出されてくる。 




 かなりの速度であることから、素早さを重視したステータスなのだろう。 PK達の動きを見る限り、重槍士が俺の防御を崩して他の二人が一気に攻める、という戦略だという事が予想できた。





 ――――しかし、俺は防御する気など毛頭無い。






 「よっ、と」



 スキル"走影≠右方向に指向性を持たせて発動。迫る槍を避ける。 


 驚きに見開かれる獣人の目。


 圧倒的な速度を持つ槍撃を防ぐには――否、自らの身体に触れさせないためにはそれを超える速度を出せばいいだけのこと。


 俺の特殊スキル"走影≠ヘ、横方向に平行移動するというものだ。 まさにこの様な戦闘では打って付けのスキルだったろう。


 重槍士が態勢を整えようとしている。 俺はSPを消費して"疾地走刃≠発動。 すかさず重槍士を我が愛刀"壱式≠ナ斬り伏せた。


 彼の断末魔の叫びは、獣のそれではなかった。


 獣の様なカタチをしているとはいえ、中に在ってPCを操作しているのは人間。 『人形』の支配権を握っているのは『操り主』しかいない。


 と、ここで無駄思考を排除。


 倒れた獣人の背後に、銃剣を構えている銃戦士が見えたからだ。


 その射線を避けるために、左手の方向から向かってきていた斬刀士を壁にしつつ、射線を防ぐ。


 しかし、うかうかなどしていられない。 狂気の煌きを放つ刀を振り上げた、斬刀士が迫って来ていた。


 「うらぁァァァァッッ!!」


 咆哮しながら斬りかかって来る斬刀士。 彼の刃はしかし、俺へと到達することは無かった。


 俺の構えた、銀の煌きを放つ"壱式≠ェ彼の刃を阻んでいる。


 「んぎぎ……!」


 斬刀士が間抜けな唸り声をあげた。 見た所、膂力の方は俺の方が勝っているようだが……。


 拮抗状態。


 どうしようもなく、拮抗状態。


 ――――どうするかなど、別段迷う必要など無い。 この様な拮抗状態を脱する方法は――――。


 「――――蹴り飛ばすっっ!!」


 迷う事無く下方向から突き上げるような蹴りを放った。


 決して、迷わず。


 まるで迷う事など知らないかの様に。


 ……こういう拮抗状態で、意外、というか唐突な攻撃を受けるのは斬刀士というバランス重視の職業上、とても『痛い』。 その証拠に、


 「がっ!」


 とか無様な声をあげていた。 無論、隙もできる。 それを見逃すはずの無い俺は、斬刀士を文字通り『薙いだ』。


 灰色に変色して倒れていくそいつを視界の隅に見やりながら、また疾駆する。 到達目標は銃戦士。


 斬刀士が倒れたことによって、射線が開いている。


 彼は、銃剣をこちらに向けて構えた。


 続いて銃撃。


 距離にしてリアルの単位で七十メートル程度。


 爆音とともにマズルフラッシュを生み出した銃剣は反動で空へと反りあがった。 マズルフラッシュと硝煙の中を突き抜けるように飛び出してきた銃弾は、迷いも無しにこちらへ向かってくる。


 恐らくそれは、俺を『殺そう』としているのだろう。


 「殺されるか」


 独白している間が一秒未満。


 音速で迫ってきている銃弾に対して、その独白のみという行動は愚の骨頂。


 ただし独白のみならば、だ。


 俺は馬鹿ではない。


 銃戦士はレベルが高くないのだろう。 音速とは言っても、遅い。 ゲームのシステムに縛られている以上、ある程度以上の差はレベルによって左右される。


 "あいつ≠ノ比べれば、こんな弾速なんでもない。


 "あいつ≠ノ比べれば、こんな高速なんでもない。


 見える。


 ここまで高速思考するのに、一秒。


 合計でまだ二秒未満。


 ここで着弾一歩前。


 目の前にある銃弾。


 煌く俺の銀(しろがね)。


 弾かれてあらぬ方向へと飛んでいく銃弾。


 思考を始める前から、下方向より抜き払う様に閃かせていた刀が弾丸を弾いた甲高く、不快な音が大きく響き渡った。


 俺は更に距離を縮めようと疾駆。


 銃戦士は更なる銃撃を加える。


 続く弾丸。


 続く威弾。


 連なるように撃ちだされるそれを、次々と落としていく俺。 硝煙の向こうには銃戦士の焦燥する顔があった。


 銃戦士が引き金を絞り込む。


 しかし、最早弾く必要性は皆無。 防御する重要性は絶無。


 ――――もう刃が銃剣に触れている。


 マズルフラッシュと刃が銃剣を僅かに反らせるのは同時。 軌道を逸らされた弾丸が頭の横を駆け抜けてゆく。


 そのままもう一度振り上げた刀でもってして、縦に一閃。


 断末魔すら聞こえない程の速斬。


 終演。


 人形劇は終了した。


 終焉。


 すべては終了した。


 見ると、初心者は腰を抜かしていた。


 っていうか――――。


 彼は双剣士ではなかった。


 いや、確かに双剣を持ってはいる。 だが、武器以外でのことで俺は気づいた。


 「――――ハセヲ?」


 錬装士だった。


 前回の調査で調べていた初心者PC、ハセヲ。 オーヴァンが自ら勧誘したという異端。 他のほとんどは自ら参加したというのに。


 「……なんだよ?」


 ハセヲがふてぶてしさ全開で、言った。











********








 とりあえず、まだまだ澪が来る気配が無かったので、ハセヲの傍で座り込んでみる。 理由は?と訊かれても「暇潰し」としか答えられないのだが。 俺がその場で座ったのを見てか、ハセヲ俺の目の前に座した。 これで"対話するPCの図♀ョ成。……冗句だけど。


 「…………」


 自分から話しかけておいてなんだが、話す事が無い。 これではどうしようもこうしようも無いので、ハセヲがこの長ったらしい沈黙を破ってくれることを願いつつ、自分自身は厳かに沈黙を護る。 そう、まるで聖堂の宣教師のように!俺よ、口を利くな!


 いやぁ、このエリアは日光が綺麗だなぁ。 綺麗で眩しいから何も見えないなぁ。


 「……なぁ、あんたはいったい何者なんだ。 どうして俺の名前――っていうかPCネーム知ってた?」


 おお、作戦大成功。 まさか本当に沈黙を破ってくれるとは。 何かハセヲっていじりがいがあるなー、とか考えてみる。 ……実際旅団でいじられている風景が目に浮かんだ。 有り得る……。


 「んー……。 前にタウンでPCデータがONになってるのを見た、じゃ駄目か?」


 「そう、か」


 おおぅ、納得しやがった。 俺とかなら「タウンにいる大量のPC一人一人を一々記憶できるのか?」とか訊いてみるんだけども。 彼をよく見てみると、顔は納得していない風だった。 恐らく面倒なことは嫌い、という様な性格なのだろう。 その点では少しだけ共感できなくも無いため、心中でだけ肯定しておこう。


 「もうひとつだけ、訊いていいか?」


 やはり何か気になったようで、ハセヲが訊ねてきた。 なんだろう、何かあったけ。


 「おーう、訊け訊け。 何でも訊けw」


 「何で俺を助けた?」


 ああ、なんだそんなことかよ。 理由なんて訊かれてもな……。


 ――いや、理由はあるんだけどね? 一応は。


 「理由、ねぇ。 ま、強いて言うなら昔の"The World≠知っているから、かな」


 「……?」


 「昔の"あの世界≠知っていながら、今の"この世界≠ナPKと同じ行為をもってPKを殺すなんてのは、矛盾してるし、結構阿呆らしいとは思うんだけどね〜w」


 「昔の"The World≠チて……、あんた、今一体いくつだよ」


 ハセヲは驚いた顔で問うてきた。違和感でもあったのか?


 ……ああ、言葉遣いかな。


 「確か今年で十九かな。一番最初にこのゲームやったのは十二歳の時。っていうか、いきなりリアルのこと訊いてくるなよ」


 「あ……、ごめん」


 十二の時、ね。 今思えば相当ひねたガキだったな。


 十二歳。 あの頃俺は"彼ら≠ノ出会い、"彼女ら≠サして"彼女≠ニも出会った。


 多分、幸せだったのだろう。


 俺の中で一番人生が楽しく、人生が素晴らしく思えた――思うことができた、時期。 世界は酷かったというのにも関わらず。"The World≠ヘ異常だったというのにも関わらず。


 それでも、それでもあの頃、あの時期に俺は。






 ――――――生きる意味を見出していた。





 「十二の頃から? じゃあ、七年間もこのゲームを……?」


 「いや、俺は中途半端が得意でね。 一年くらいで辞めちまった」


 まあ。 その三年後にINすることになった訳だが、それはまた違うお話。 今語るべき話ではないし、人に語れるような立派な話でもない。 俺も人に語りたくないし。


 「じゃあ、何で今になってまたこのゲームを?」


 「――――俺は」


 何で始めたのだったか。


 思い出せない。


 いや、きっかけは覚えている。


 彩音だ。


 しかし、きっかけではなく。


 何を思い、何を決意して始めたのか。


 「多少は成長、したのかな」


 あるいは惰性か。


 上がったのか、下がったのか。


 昇ったのか、降りたのか。


 成長と堕落。


 あるいは。


 あるいは二つ――双つを繰り返しているのか。


 表裏一体。


 「成長していると信じたいが、っと」


 「?」


 と。


 軽い音が響く。 勿論、俺のPC限定だ。


 ショートメールの着信音だったのだ。


 疑問符を浮かべているであろうハセヲを無視して、急ぎメールを開く。


 差出人は、澪。


 <申し訳ありません。 今、少し用事ができてしまいまして……(>_<) Δマク・アヌの港区までお願いいたします>


 え……。 何つーか、面倒臭っ!


 マク・アヌの港区って人通り多くないか?


 ていうか、港区のどこだよ。


 「すまん、ハセヲ。 用事が入っちまった」


 「別に、誤ることでもねぇし」


 ハセヲは拗ねた子供の様な顔で答えた。 そんなふてぶてしさ全開だと、友人関係ぶち壊れるぞ? このゲームじゃ、コミュニケーションも結構重要だと思うんだけどなあ。


 「それじゃ、機会があればまた、な」


 言いつつ腰をあげる。


 次いで、背を向けて立ち去ろうとすると、


 「おい!」


 呼び止められた。 何か不都合でもあったか?


 「名前、教えとけよ」


 そういや名前とか教えてなかったっけ。 年齢は言ったのに。


 PCデータもオフだったか。


 というよりも、名乗る意味なんかあるのか?


 見出せないなりに答えてみた。


 「ルナ、だ。 職業:請負人。 だから何かあれば連絡しろ」


 そう伝えながら、メンバーアドレスを投げて寄越す。 どうせあちらから連絡してくることは無いだろう。 リアルではどうか知らないが、そういうキャラではないというのが、依頼の調査も含めての話してみての見解だ。


 「……請負人?」


 んな怪訝な顔すんなよ。


 「そ。 要するに何でも屋さw」


 そんじゃ、またな。


 そう言って俺はプラットホームへと向かった。


 振り返りは、しなかった。











********











 港区に来てみた。


 澪はどこにいるのだろうか。 と、辺りを見回してみるが人が多くてわからない。 そういえば、今日は休日なのだったか。 だからINしてるプレイヤーも多いということか。むしろ、"The World≠ネどに限らず多くのオンラインゲーム等は平日から時間のある十代のプレイヤーよりも、成人達の方が多いはずなのである。


 だから、休日。


 いつもはできない分、大人たちは羽目でも外しているのだろうか。―――社会人でもない俺が言えたことではないが。





 ……つーか、位置なんてわかんねぇよ。 港区って結構広いし。


 場所の指定くらいしておけよ……。


 あの人って何気に天然だよな。


 「どうしたもんかねぇ」


 軽く嘆息交じりの独白を吐き出した。 いや、憂鬱なものだ。 相手が期待できない待ち合わせって言うのは、苦手だ。 待ち惚けとかすっぽかしとか、色々あるじゃないか。 


 と、そんなことを思考していたときに、


 「あ……?」


 今、何か見えた、ような……?


 うん、見えた。 凄い変なものが。


 俺の視界に写るほどの狭い範囲で、動く何か。 それは黒い長髪のPCに見えた。


 距離がかなり離れているために良くは見えないが……。


 「澪、だろうな」


 かなり挙動不審なため、周りのPCたちから『退かれている』ように見えた。 ひょっとするとあの動きは、一人一人のPCの顔を覗き込んでるんじゃなかろうか。 え、PCデータONでPCネームが出ている奴が多いのに?


 うわぁ。


 今すげえ話しかけたくない……。


 知り合いとか思われたくない上に、今のあの状態の澪に会いたくない。 もしかしてあれか、漫画とかでよくある性格豹変モードか? 一昔前の『萌え系と思わせてホラー』のヒロインなのか?


 俺はこの場から立ち去ろうと思い、人だかりに対して背を向ける。 今依頼人の澪に会えずとも後に適当な言い訳をして、事務所で報告すれば良いだけの事。


 思考して、一歩を踏み出したその時。


 「ああっ、ルナさんっ!」


 げ、気づきやがった!!


 彼女はこちらに小走りで向かってくる。 既に周りのPCの視線はこちらに向きかけていた。


 くっ、来るなぁぁぁぁぁ!!


 とりあえず、逃げよう!というか逃げなければ!! 周りの視線は向きかけていたものから、完全に集まりつつある。 疾走しよう。 俺は今の場所から程近い傭兵地区へと走り出した。


 「待ってくださいよぉ!」


 待てと言われて待つ奴がいるかよ、待ってたまるかっ!


 ……って、澪から逃げている俺も怪しい気がするんだが。 でも逃げるしかないって、実際。 立ち止まって話しかけてもかなり怪しまれるし、今更止まることなんてできないし。


 しかし、止まらないわけには行かないことは、自分でもわかっている。 理解している。俺だって、走り続ける意味など全く無いという事くらい知っている。


 それでも、しばらく走り続けた。 周りに人が集まってこないよう、一応のつもりで。


 やはり休日。人が多すぎて、無人の場所など無いかのようだ。


 しかし、少ない場所を探すことはできる。 少し進んだところにその場所を発見できた。


 さて、そろそろ止まってやるかね。 考えて、俺は飛行機が制動をかけるようにして足を止め、そうして停止した。 当然、いくらか滑るように進んだが、そこは流石にゲームだろう。 すぐに速度を殺し切ることができた。


 リアルでは上手くいかないことができる、それがゲーム。


 思考していたときだった。


 「ひゃうっ!」


 奇声を発しつつ俺の傍を転がり抜ける物体が一つ。 それは俺の右側をぬけ、ある程度進んだ上で建物のレンガ壁に激突。 ようやく停止した。


 勿論、澪だった。


 「……何やってんだ」


 どうやら俺のように上手く止まれず――――というか、俺がいきなり止まったせいもあるのだろうが――――転倒し、そのまま速度を落とさず激突したらしかった。


 転ぶのかよ。


 転ぶのかよ!ゲームなのに……。


 「酷いですよぅ、ルナさん……」


 額を打ち付けたのか、赤く腫れている澪が言った。


 いや、そんな俺が悪いみたいな目しないでくれよ、罪悪感が……。


 というか。


 「やっぱり、リアル過ぎだよな。 このゲームは」


 ゲームの中の行動で額が赤くなるなんて、数年前には考えられなかったぞ……?


 「なんでこんな事するんですかー!(`3´)ノ」


 「―――いや、すみませんね」


 流石にこのまま言わせておくと完全に悪者になってしまうと考え、意味は無いと考えつつも澪へと手を差し出す。 彼女は差し出された手を見、少し不思議そうな顔をしたものの、次の瞬間には微笑を浮かべながら手を取った。


 「リアルだったらあれですけど―――、ゲームですから」


 「……さいですか」


 「あら、古風な表現ですね」


 なんというか。


 人を憎めない性格とやらなのだろうか、彼女は。 その点彩音と似ているような似てないような……。


 ああ、違う。 彩音は憎めないんじゃなくて、疑えないんだったか。


 ま、どうでもいいか。


 「ところでお訊きしたいのですが、何故わたしから逃げていたのです? 理由が全くわからないんですが……」


 え。


 客観的に見て、変人だとしか思えない奴と周囲の人間に知り合いだと思われたくなかった、が理由なんだが。 言える訳ないよなぁ、傷つかれても困るし。 なにより"お金様=\―じゃなかった、"お客様≠ネわけだし。


 「ふふふ、俺だって考え無しに走ってたわけではないのだ」


 「ふえ? なんでですか?」


 「実は俺の嫌いな港区から逃げて、傭兵地区におびき出すための作戦だったのだ!」


 「えええっ、そんな理由がっ……!?」


 いや、嘘ですよ?嘘なんですよ? こんな冗談みたいなテンションと言動なんてしたこと無いし、やりたくも無かったし。


 天然……、やはり天然なのか?


 「しかし、まあ。 それはこの辺に置いといて」


 自分の両手対にし、左の方に持っていく。


 「仕事の話に移りましょう」






********












 「――――メールにテキストファイルを添付して送りましたし、以後の報告はメールでもよろしいでしょうか?」


 一通りの『旅団』についての報告と、ファイルについての説明を終えた俺は、澪にそう尋ねてみた。 いちいちゲーム内のショートメールで待ち合わせの約束をして直接対面、そこで報告を行うのは面倒すぎる。 ゆえに、双方に負担のかからない方法を取りたかったからだ。


 しかし彼女は、


 「嫌です」


 ………………………。


 …………"無理≠ニかじゃなくて"嫌≠ネの………?


 言葉を失っている俺に気づいたのか、澪は注釈を付け加えるかの様に言う。


 物凄い満面の笑みで。


 「だって、メールよりも直接会って会話する方が何だか温かみがあるじゃないですか」


 …………いや。


 いやいやいやいや。


 いやいやいやいやいやいやいやいや。


 ゲームで温かみとか言われてもっっ!!


 「……? 違い、ますか?」


 「いえ、その通りですね……」


 依頼人にはできるだけ抗わないのが、俺の請負人流。 一応の肯定だけはしておくことにしよう。


 でも、まあ。 この依頼に限っては今回限りだし。


 この場でさっさと説明やらを済ませて、落ちるとしよう。


 と、思考して口を開こうとしたとき――――


 「ええっと、次の依頼の連絡をしておきましょう」


 「っ!?」


 まだあるんですか!? 今回限りの依頼、オーヴァンやら旅団やらの調査で終わりじゃないんですか!?


 嫌だなぁ、この人なんか苦手だし。


 「……? どうかされましたか?」


 「いえ、気にしないでください……」


 「気になんてしてませんよ〜♪w」


 何だろう。 ゲームの中とはいえ、本気で女性を殺したいと思ったのはこれが初めてだ。


 何だこいつ。


 もう一度言おう。


 何だこいつ!!


 「えーっとですねぇ、次の依頼は旅団の監視らしいです」


 "らしい≠チて何だよ。 つーか、監視、だって?


 「詳しいことは後でメールしますね」


 メールって――――、メールが嫌だといってたのはどこのどいつでありやがりますか!?


 やばいよ、この人。 真性の天然だ……。 一応依頼は受けるけど、あまり関わり合いにはなりたくない。


 「ではでは失礼します〜(^_^)ノシ」


 言ってから彼女は近くのワープポイントへと向かい、この場から立ち去って行った。


 しばらくその後姿を眺めていたが、疲労がどっと身体に押し寄せてきたため、俺は近くの壁に背を預ける。


 目を閉じる。


 勿論、リアルもゲームもほとんど同時に、だ。


 あーあ、結局依頼受けちまったな……。 匂宮に上納する、事務所の維持費たる今月分のGPはまだ貯まっていないのだけれど。 『黄昏の旅団の監視』―――きな臭過ぎ。 何だかやばい匂いがする。


 「なんにしても、ログアウトして考えるか……」


 思考と同時の独白。 ため息混じりに吐き出した、そのときである。


 とん、と肩を叩かれた。


 「――――」


 叩かれたのは右肩。閉じていた両めのうち、右目だけを開けてみる。


 そこに在ったのはPC。 頭よりも大きく、かつ丸く平らに広がった帽子を被り、全身が白に包まれた看護士か何かを連想させられる呪療士(ハーヴェスト)。 もちろん女性、だ。


 少し見覚えがあるような、無いような……。


 「――――どちら様?」


 「志乃、"黄昏の旅団≠フ。一度だけあったことがあるはずだけど……?」


 問うた俺に、彼女は微笑みながら答えた。 ……質問に質問を返さないで。


 「……ああ、旅団のサブリーダーか。 オーヴァンはどうした?」


 「いつものように不在。 『情報収集』って言ってたけど、ね」


 ま、これは社交辞令みたいなものだ。 今の状況においてオーヴァンは関係ない。


 「んで、志乃さんが俺に何の用?」


 一応のところはわかりきっている答えではあるが、訊いておくに越したことは無い。


 牽制の意味もある。


 「んー……」


 こちらの意が伝わったのか、それとも悟ったのか志乃が少しだけ唸った。


 「"黄昏の追求へのお誘い=\―――ってところかな?」


 「……成程」


 ずいぶんと洒落た言い方するじゃねえか。


 というか、さっき唸っていたのはこれを考えていたからか?


 やはりというか、志乃の事はよくわからない。


 「――オーヴァンね」


 続けて志乃は言う。


 「君を待ってると思うんだ」


 「……」


 志乃は、言う。


 あくまでも優しい声音で。


 優しく、優しく。


 母のように。 姉のように。


 まるで優しく俺を責めるかのように。


 それは脅迫にも似た、優しすぎる『優しさ』。 度を、越えている。


 感じるのは恐怖。 例えまやかしだとしても。 俺の幻『覚』だとしても。






 ――――優しいのは、嫌いだ。





 慣れて、いないから。


 「……いや」


 「?」


 「遠慮しとくよ。 興味、無いしな」


 「そう……」


 見るからに残念そうだった。


 ……去るか。


 思考して、立ち去ろうと行動する。


 「じゃ、俺は――――」


 「っ君は!」


 言を遮られた。 見ると、ほんの少しだけ、微量の困惑の表情が見て取れる。


 本人も自分の咄嗟の行動に驚いているようだった。


 それでも志乃は続けた。 これが重要だとい言わんばかりに。


 「君は…………"キー・オブ・ザ・トワイライト≠知ってる……そうでしょう?」


 「……」


 黙して語らず、という訳ではないが彼女の言葉に鼻白んでしまった。


 いきなりか。


 ああ、彼女としては外堀から埋めて行き、そうした上で"キー・オブ・ザ・トワイライト≠フ核心を突こうという思惑だった。 だが、思ったよりも早く俺が逃げようとした―――だから、不自然とはいえ事の核心を突いた……ということか。


 "黄昏の鍵=A"キー・オブ・ザ・トワイライト=B


 「……知らないわけじゃない、ってレベルだ」


 「それでも、知ってるなら……!」


 「――駄目だな」


 「……」


 「お前らじゃ、きっと見つけられない」


 探す方がどうかしている。


 だってあれは。


 可視にて不可視。 在るのか無いのか。 彼岸と此岸をゆらゆらとたゆたう様なモノ。


 そして、たゆたった末にどこに行き着くことも無いままに消えてしまったモノ。


 夢幻を築く、ユメのアト。


 「……志乃さん、俺、もう落ちるから」


 「―――そう」


 その答えは。


 一体何に対してだったのか。


 無駄に苦い後味を味わいつつ、俺はログアウトを開始した。










********










 "俺≠ヘ"世界≠ゥら抜け出、真の"世界≠ヨと帰還した。


 "本当の世界≠ニは言っても、マンションの一室、それも俺の寝室に置いてあるPCの前なわけだが。


 M2Dを外して目を外気へと晒す。


 いつもよりも長い時間ログインしていたためか、目がしばしばする。 瞼を開けたり閉じたりして乾燥した目を潤そうとしてみたが、こういう時にばかり上手くいかないものだ。 仕方なく顔を洗いに洗面所へいく事に決めた。


 デスクトップPCの前に置いてある椅子に座っていた俺は、手に持っていたM2Dを放る様にしてディスプレイの横に置き、立ち上がった。 電源は……切っておくか。 この後に出かける予定があるからだ。


 立ったままOSの終了動作をし、後はコンピューターが終了するのを待たずに歩き出した。


 扉を開き、廊下を隔ててすぐの『洗面所兼バスルーム』に入る。


 蛇口を捻り、水を流す。 水を手にすくって充分な量を溜めてから顔全体にぶつけるようにして、洗った。


 それを二、三度繰り返した後に、側に常備してある洗顔用タオルで水滴を全て拭き取った。


 ふと、鏡を見る。


 映っているのは勿論自分。 ……自分以外が映っていたのなら、それはそれで怖いが。


 先程までゲームをやっていた為か、自分の顔――すなわち"真田 流奈≠ナある――とゲームでの"ルナ≠ェダブる。 しかし、まあ、仕方ないだろう。 "THE WORLD≠フ"ルナ≠ヘリアルの自分に似せて、偽て作ったのだから。


 ゲームでのルナは燃え盛るような緋色の髪、リアルの俺は日本人らしく黒髪という絶対的な違いはあるが。


 思考中に気づく。


 ――――いや、それは間違いだったか。


 あのPCは俺自身が作ったわけではないのだから。 今ではもう、結構前の話なので思い出そうとも思わないが。 記憶を辿るとかの行為はそんなに好きじゃない。


 「……髪、伸びてきたかな……」


 無駄思考を排除するために独白で誤魔化す。


 ついでに鏡の中の自分に自己紹介でもしておくか。


 名前は『真田 流奈』。歳は、ハセヲにも公開してしまった通りに、某私立大学に通う十九歳。 彩音とは大学も同じである。 ちなみに俺も彼女も一人暮らし。


 俺の髪はいつも彩音に切ってもらっていた。 彩音はプロの美容師になれるんじゃないかと思うほど、器用なのだ。


 ……今日にでも切ってもらうかな。


 確か今日は彩音の家に行く予定だったはず。


 洗面所から出、再び寝室に向かって歩き出す。 眠るために行くのではない、寝室にあるクローゼットに用があるのだ。


 俺は二週間に一度程度、彩音の家――と言ってもマンションの一室ではあるが――に招かれる。


 招かれる、などと言っても色っぽい事情ではない。 ほとんど強制的に晩飯を作らされるのだ。


 クローゼットの扉を開き、また思考する。


 彩音の所へ行くと言う事は、変な格好で行ってはならないと言う事である。 ……理由は……、『推して量れ』、である。


 今来ているものは上下黒のTシャツ(勿論長袖)とジーンズ。 今の時期は冬、と言う事は上着を羽織らなければならない、というか寒いだろう。 今の時間帯が夕方である事も影響することも考え、白のジャケットを取り出した。


 ふむ。


 では、行くか。


 俺は大学生が一人暮らしをするには広過ぎ、かつ金銭的に大丈夫なのか?と疑問に思われるであろう一部屋2LDKの部屋を後にした。


 勿論、親が金を出している―――という訳ではない。


 というか、俺には親どころか家族もいない。


 ……その辺りの話は、思い出したくはないが、悲しいわけでもないしそんな『不慮の事故』的な涙ぐましくも、格好いい理由があるわけではない。


 ただ、家族がいない。 それだけ。


 家族代わりがいる、いや、この場合は『いた』、か。 この近くにいるわけでは無いから。


 その家族代わりが家賃やらの生活費を全て負担しているのだ。 無論、自分の使いたい金は自分で用意しているが。


 エレベーターで最下階に降りた。


 扉が開き、エントランス(ロビーとかいう気もするが)に出る。


 一昔前のオートロックを採用しているために内側からは自動ドアと化す扉を抜け、完全に外に出た。


 冬であるせいか、既に夕日が半分ほど落ち始めている。


 歩き出す。


 彩音の住んでいるマンションへは、ものの十分もかからない。 ちなみに、彩音の住んでいる所は俺が住んでいるところと違って、かなり近代的な最新設備の整った場所である。 これまた、大学生は無理だろうと思われるようなマンションではあるが、彩音の苗字を知っている者……、『紫上家』だと分かれば、納得いくであろう。


 大昔、それこそ明治以前から続いていると言っても過言、嘘にならない名家、『紫上家』。


 元は小さな日本貴族だったらしいが、戦後の高度経済成長期に乗じて大きな利益を上げ、今の様な大家となったらしい。


 そんな、ただ家にいるだけでも豪奢な暮らしが保障されるであろう紫上家にありながら、しかし彩音は彼女いわく『家出娘』だった。


 だが、紫上家の力をもってしても家出娘が家に戻っていない事実が何か引っかかった俺は、彼女を問い詰めてみた。


 軽くウザがれながらも最後に訊き出した家出の実際は、『勘当』、であった。


 紫上家の党首……つまり、彩音の父親と諍いを起こした彼女は、何をどうしたのかは知らないし、知りたくもないが、膨大な量の手切れ金を用意させやがったのだ。 ただ、膨大な量と言っても紫上家全体の資産からすれば一部に過ぎないだろう。


 しかし、紫上家は顔に泥を、それこそ『たっぷりと』塗られたはずである。 『家出娘』ならぬ『勘当娘』はかの名家、『紫上家』の党首に大きな打撃を与えて去っていったのであった。


 全く、なんて奴だ。


 そんな彼女の事を考えつつ歩いていると、遂に到着した。


 地上十九階立て、高級マンションに分類されるであろうそこは、古めかしい俺の住んでいるところの様な鍵式オートロックではなく、最近になって一般普及した指先の静脈照合型。 一応、俺の静脈も登録したあるため、認証させてドアを開きエレベーターに向かう。


 静脈認証をしたため、彩音の部屋にも俺がここにいるという情報がいっただろう。






 さて、今日は何を作らされる事になるのやら…………。









********




 今、俺の目の前では彩音が物凄い勢いでパスタを啜っていた。


 「ごく普通のパスタなんだけど……、そんなに美味いか?」


 「はっへ、ふふぁはひょうひふまいひゃもん!」


 「……は?」


 彩音の部屋で料理――今回はパスタだった。材料は彼女が用意していたが――を作り終わり、食べていたときである。 結構凄い勢いだったので、訊いてみた。


 「……口に物を入れて喋らない」


 注意。


 それに応じてか、急ぎ口内のものを噛み砕き、飲み込む彩音。


 「そんな急いで食べんでも……」


 まだ口の端からパスタが一本垂れている。


 彩音の部屋に来た俺は、彼女のために料理を振舞った。 半年ほど前から続いている習慣で、彩音自身は『二週間に一度の流奈'sディナー』とか呼称している。


 ……センスを疑ってしまったじゃないか!


 彩音が材料を買ってきてくれていたのと、俺の手際のいい調理によって三十分程度で料理が完成した。


 彼女の皿には多めに、俺は作っているだけで満腹感が出てきたため、少なめに盛られている。


 口の端の一本に気づいたのか、するすると啜り飲み込んで彩音はようやく口を開いた。


 「だって、流奈、料理上手いだもん」


 あー……、さっきのはそう言いたかったのか。


 彩音は"The World≠ナの姿の様に髪は結い上げず、肩までかかるセミロングにしてあった。 髪色は薄いブラウン。 これは染めたのではなく、もともとの自然の地毛なのだそうだ。 総じて俺の主観を含めると――含まずにも――、可愛い。


 「お前だって、一人暮らししてんだし、上手くなってるはずだろ?」


 「…………」


 「どーした? ……まさか作ってない、とか……?」


 「うぅ……三日に一回は作ってるよ……?」


 「三日に一回って……。 一ヶ月に十日しか作ってないって事かよ!? しかもお前、朝は食パンのトーストだし、昼食は大学の食堂じゃねーか……」


 ちょっと絶望。 弁当とか作ってもらいたかったんだけどなー……。


 「それでも少しは上手くなってきてるよ!?」


 ぷー、と怒った様に頬を膨らませる、彩音。


 あー、可愛い。


 「いやいや、一番最初に作ってもらったシチュー、あれを食べた瞬間、口内に石炭鉱山が出現した理由は何?」


 反論した俺に彼女は黙り込んだ。 しまった、俺ってば好きな奴には意地悪したくなるから…………。


 と、思考したところで彩音が再び口を開く。


 「ざ、斬新な味だったんだよ。 世界で一番……!」


 「ま、そういう事にしとこうかな?」


 「うわ、ひどーい」


 言いながらも笑う彩音。 滅多に笑う事が無い俺も、つられて微笑む。


 笑うのって結構苦手だけど、こいつの前でなら自然に笑える気がする。 本気でそう思った。


 ゆえに望まずにはいられない。


 例え時間という概念が有限だとして。


 この幸福な時間が永遠に続く事を。





 ――――――それから俺達は雑談を交し合った。


 本当に他愛の無い、意味の無い雑談。 本当に意味の無いそれは、かなり遅くまで続いた、


 しかし、明日も一応学校があるため、「また明日」と言って俺は部屋を出、帰路に着いた。


















3://www.contact-ソウグウ.…………了。


[No.891] 2007/08/17(Fri) 17:29:54

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